ヒロ九クエスト 第16話 返しに来ただけなのに!? ― 熊本本社で、またも巻き込まれる“ついでクエスト” ―
黒煙をたなびかせながら、ヒロ九ラッピングバスは今日も元気に――いや、若干不安な音を響かせながら走っていた。
ゴロロロロ……モクモク……
「……これ、ほんとに大分まで行けるんですか?」
菜々子支配人が真顔で聞く。
「気合いで行けます!」
ひなたが即答。
「気合いでエンジン動かないです!!」
お約束のやり取りである。
とはいえ、いきなり大分へ――とはいかなかった。
「工具、返しに行きます」
菜々子の冷静な一言。
現実的。
ということで、ヒロ九一行は再び熊本産業交通本社へ。
バスが到着すると、社員たちが一斉に振り返る。
黒煙+謎ラッピング+大人数。
どう見ても怪しい。
「また来たばい……」
担当者が呟く。
香澄がにこやかに頭を下げる。
「この前はお世話になりました。道具ば返しに来ました」
真央も続く。
「ちゃんと直したで。屋根、もう漏らん」
「ほんとに直したとね……」
担当者、若干引き気味に感心。
だが、その奥から聞こえてきた。
「はい、もう一回やり直し!」
「声が小さい!」
「お客様役、もっと怒ってください!」
不穏。
覗いてみると――
新人バスガイド研修、真っ最中。
・マイクを握る新人たち
・鬼のようにダメ出しする指導役
・やたらノリノリの“クレーム役社員”
軽い修羅場。
「……あれ、懐かしかです」
香澄がぽつりと呟く。
次の瞬間。
スイッチON。
「ちょっと、代わってよかですか?」
気づけば前に出ていた。
「はい、まずは姿勢からです」
一気に空気が変わる
「マイクはこう持って、声は無理に張らんでよかです」
優しいのに説得力
「お客様は“安心感”ば聞いとります」
名言
新人たち、ピタッと動きが止まり、
全員が真剣な顔で聞き始める。
メモを取る音まで聞こえるレベル。
「……講師、戻ってこんでよかとですかね」
真央が小声で言う。
「もう戻れんと思う」
ひなたが笑う。
さらに――
「少しよろしいですか」
川原つばさ、参戦。
「クレーム対応は、“否定しないこと”が大事です」
「まず受け止めて、それから解決に向かいます」
実演。
社員(クレーム役):
「さっきから聞こえんぞ!」
つばさ:
「申し訳ありません。では聞こえるように工夫しますね」
一瞬で空気が柔らぐ
新人たち、ざわつく。
「すごい……」
「全然違う……」
つばさは淡々と続ける。
「正解は一つじゃありません。でも、“安心させる”のは共通です」
刺さる。
ヒロインたちも自然と動く。
・ひなた → 雰囲気づくり
・真央 → マイク調整
・麻衣 → 新人のフォロー
・美紀 → 体調チェック(なぜか全員分)
・陽菜 → 静かに見守る(存在感だけで安心感)
完全チームプレー。
気づけば――
研修、めちゃくちゃ濃密。
終了後。
講師役だった香澄の後輩が駆け寄る。
「香澄先輩……ありがとうございます!」
深々と頭を下げる。
「つばささんも、本当に助かりました!」
香澄は笑う。
「いやいや、みんなが頑張ったけんよ」
つばさも静かに言う。
「少しお手伝いしただけです」
謙遜。
だが――
二人とも、どこか誇らしげだった。
新人たちが集まってくる。
「香澄さんみたいなガイドになります!」
「つばささんみたいに対応できるよう頑張ります!」
香澄、ちょっと照れる。
「そがん言われると、照れるねぇ」
つばさも小さく笑う。
菜々子はその様子を見ていた。
ヒロ九の“価値”が広がっている
「……いいですね」
ぽつりと呟く。
ひなたが笑う。
「人、育てとりますねぇ」
すべてが終わり、工具も無事返却。
ヒロ九ラッピングバスは再び走り出す。
ゴロロロロ……ブォン……モクモク……
「……煙、増えてません?」
菜々子がまた言う。
「成長です」
香澄が即答。
「何がですか!?」
ひなたが笑う。
「大分、楽しみですねぇ」
バスは黒煙を引きながら、次の目的地へ。
いよいよ大分編、突入。
■一言まとめ
「返しに行ったら、育成までやって帰ってきた」




