ヒロ九クエスト 第14話 覚悟は声に出る ― 新橋、静かな面談で“正式加入”確定 ―
新橋の雑居ビル。その一角にあるヒロ室は、今日も相変わらず雑然としていた。
段ボール、資料、誰のものか分からない差し入れのお菓子、そしてなぜか壊れたホワイトボード。
だが――ここが戦隊ヒロインプロジェクトの中枢である。
「……本当にここが本部ですか?」
川原つばさが小声で言った。
「見た目で判断したらダメだよ」
隣で安岡真帆が即答する。
「中身も大概だけどね」
「フォローになってません」
その奥の会議室。
今日の主役は、川原つばさ。
そして対面するのは――
・遥室長(穏やかな顔して強い)
・真帆(穏やかな顔してもっと強い)
逃げ場なし。
「じゃあ、話してもらうだよ」
遥室長が柔らかく言う。
だが、その“柔らかさ”が逆に圧になるタイプである。
つばさは一度深呼吸して、話し始めた。
・コールセンター勤務
・クレーム処理担当
・怒鳴り声、言いがかり
・長時間の対応
・理不尽な内容
・そして体調不良
「……女性だからという理由で、下品なことを言われることもありました」
「あるあるですね」
真帆、即反応。
「あるあるなんですか!?」
つばさが思わず聞き返す。
「ありますね」
「あります」
即答×2
「いやそれ“あるある”で済ませていい話じゃないですよね!?」
思わずツッコむつばさ。
この時点でだいぶ回復している。
つばさは続ける。
「正直、かなりきつかったです」
・眠れない日
・何を言われても動じない自分への違和感
・それでも頼られる現実
「気づいたら、壊れかけてました」
部屋が少し静かになる。
だが、つばさは止まらない。
「それで、療養に入りました」
「今も完全ではありません」
「無理はできません」
全部出す
真帆がペンを止める。
「……普通、ここ濁すんですよ」
つばさは小さく笑う。
「濁したら、あとで困るのは自分なので」
遥室長が、ふっと笑う。
「ええね」
一拍。
「ここまでちゃんと話せる人は、信頼できるだよ」
つばさが顔を上げる。
「一緒にやろう」
即決。
「……え?」
つばさが一瞬固まる。
「採用です」
真帆が淡々と言う。
「え、面談ってこんな早く終わるんですか?」
「長いと疲れるでしょ」
合理的すぎる
「よろしくお願いします」
つばさは深く頭を下げた。
正式加入、決定。
場面は変わって――ヒロ九準備室。
新橋ヒロ室の中でも特に“仮設感”の強いスペースである。
「では現状報告を」
菜々子支配人が資料を広げる。
その横で、ひなたが勝手に座る。
自称副支配人。
「ヒロ九の現状ですが――」
・熊本の山中に拠点(雨漏りあり)
・バスはボロい
・人手不足
「……ですが」
一拍。
「恐ろしいくらい順調です」
「なんでやねん」
真帆が即ツッコむ。
「人材が良いです」
菜々子、即答。
「ひなた副支配人のサポートが大きいです」
「副支配人です」
ひなたがすかさず言う。
誰も任命してない。
遥室長がにこっと笑う。
「やっぱり、菜々子に任せて正解だったのら」
菜々子、フリーズ。
照れてる
ひなた:
「ですよねぇ〜」
便乗
「あなたは黙ってください」
即切断
だが空気は悪くない。
むしろ――いい流れだった。
「現在のヒロイン空白地帯ですが」
菜々子が次のページをめくる。
「大分、沖縄です」
遥室長、即答。
「沖縄はなんとかなるだよ」
「雑すぎません?」
「大分、お願い」
丸投げ
「やっぱりそうなりますよね」
菜々子、即受諾。
慣れてる
ひなた:
「温泉ですねぇ」
真帆:
「いいですね」
遥室長:
「ええ人材おるら」
次回決定
ヒロ九クエスト:大分編
会議終了。
つばさは少し離れたところから、その様子を見ていた。
「……なんか、すごい組織ですね」
「慣れるよ」
真帆がさらっと言う。
「慣れたくない気もしますけど」
「それが普通です」
つばさは少し笑った。
まだ完全ではない。
だが確実に、自分の場所に近づいている。
新橋の窓の外。
都会の喧騒の向こうに――次の戦場が待っている。
■一言まとめ
「覚悟は、ちゃんと声に出すと採用される」




