表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

797/838

ヒロ九クエスト 第11話 港はまだ終わらない ― 佐世保、小さな出会いが未来を変える ―

長崎の熱気をそのまま引きずるように、ヒロ九ラッピングバスは佐世保へと入った。

軍港の街、異国の空気、でかいバーガー、うまい魚、そして全国通販で有名な企業の本社――やたら情報量の多い街である。


「なんか強い街ですね」


澪が呟く。


「バーガー食べたい」


沙羅が即本音。


「仕事です!!」


菜々子のツッコミが響くが、香澄が笑う。


「終わったら食べればよかですたい」


それで全員納得するのがヒロ九である。


今回のイベントは商業施設の一角。

規模は小さいが、距離が近い分、観客の反応がダイレクトに伝わる。


「こういうのもええな」


ひなたが言うと、澪も頷く。


「はい、空気が分かりやすいです」


香澄の進行で場は温まり、彩香のキレのある受け答えが締める。

まずまず好評――だった、その時。


「なんやその態度は!」


前列で怒号。


どうやら列の整理で注意された客が不満を爆発させたらしい。

そして矛先は、近くにいた彩香へ。


「そっちが割り込みみたいな動きしたから言うただけやろ」


即応戦。


「それはあかんやつ!!」


沙羅が頭を抱え、澪が止めに入ろうとするが、火はつきかけていた。


「客に向かってなんやその言い方は!」

「ほんならちゃんと並べや!」


正論と感情のぶつかり合い。最悪のパターンである。


――その時。


「まあまあ、よかじゃなかですか」


すっと割って入った女性がいた。


距離の取り方が絶妙だった。対立の真ん中ではなく、少し横。

声は柔らかいのに、よく通る。


「せっかく来とるとやけん、楽しく見た方がよかでしょう?」


客の視線が、彼女へ移る。


「この子も真面目やけん、つい強う言うただけですけん」


彩香のフォローも自然に入れる。


さらに一言。


「ここで揉めたら、一番損するのはお客さんですたい」


空気が止まる。


怒っていた男が、急に言葉を失った。


「……まあ、そこまで怒っとるわけでもなか」


「よかったです」


女性はにこっと笑う。


「ほんなら、今日は楽しんでいってください」


「……おう」


――終わった。


いや、終わったどころではない。


「ちゃんと盛り上げろよ」


さっきまで怒鳴っていた男が、応援側に回っている。


「何今の」


沙羅が素で言う。


「魔法ですか?」


澪も呆然。


ひなたは目を輝かせる。


「よかですねぇ、ああいうの」


彩香は腕を組んだまま固まっていた。


「……うち、言い過ぎたな」


珍しく反省。


「いや、正しいことは言ってました」


菜々子がフォローする。


「でも、ああやって丸く収めて、しかもファンにしてしもたやん」


そこだった。


“収める”を超えて“味方にする”。

それはもう技術の域だった。


イベント後、ヒロ九はその女性に声をかける。


「ありがとうございました」


「いえ、ついクセで」


落ち着いた笑顔。


「川原つばさです。コールセンターで働いとりました」


その一言で全員納得する。


「……あの人、何者?」


沙羅が小声で言う。


誰も答えないが、全員同じことを思っていた。


イベントはその後、むしろ良い空気のまま終了した。


「さっきの人ら、ええな」

「また来てほしか」


観客の声も温かい。


「まずまず成功ですね」


菜々子が言う。


「いや、かなり良かったでしょ」


ひなたが笑う。


彩香はまだ考え込んでいた。


「……うち、修行せなあかんわ」


「珍しいですね」


澪が言う。


「ほんまに。あれはすごい」


その目は、本気だった。


夕暮れの佐世保港。

ヒロ九バスは再びエンジンをかける。


ゴロロロロ……


「この音、大丈夫なんですか」


「味ですたい」


「もうええですその理屈」


笑いが起きる。


バスは次の街へ走り出す。


この日、ヒロ九はまた一つ“人”と出会った。

そしてその出会いが、未来を変えることを――


この時は、まだ誰も知らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ