仲間は現地調達!? ― 雨漏り本部から始まるヒロ九ドタバタ遠征計画 ―
熊本市郊外――というより、ほぼ山の中。
プレハブ小屋の天井から、規則正しく水滴が落ちていた。
ポタ。
ポタ。
「……なんで晴れとるのに雨漏りするとですかね」
古賀菜々子は、無表情でバケツをずらした。
「湿気ですかね!」
横で有村ひなたが元気に答える。
「湿気でこの量はおかしいです!!」
ここがヒロ室九州――ヒロ九の拠点である。
一方、東京・新橋のヒロ室は今日も快適だった。
「向こう、大丈夫ですかね」
小宮山琴音がコーヒーを飲みながら言う。
「まあ、なんとかするでしょ」
安岡真帆は書類をめくる。
その頃、熊本の山奥では――
「なんとかならんです!!」
と、菜々子が叫んでいた。
ヒロ九は今、二拠点体制で動いている。
・新橋(文明)
・熊本山奥
差がひどい。
そんな中、救世主となったのが――
有村ひなた。
元駅伝選手、現在はほぼ雑用係。
「バス、洗っときました!」
「助かります」
「床も拭いときました!」
「助かります」
「草も抜いときました!」
「助かりすぎます!!」
仕事が速い。
とにかく速い。
そして元気。
「楽しいですね!!」
「どこがですか!?」
だが本当に楽しそうなので、菜々子はそれ以上ツッコめない。
そんなヒロ九の最大の問題は――
人がいない。
致命的に。
ある日の夕方。
プレハブの中。
資料に埋もれた菜々子が言った。
「……旅に出ます」
「え?」
ひなたが顔を上げる。
「九州全土を回るイベントツアーをやります」
「いいですね!!」
食いつきが早い。
「各地でイベントをやって」
「はい」
「その場で仲間を増やします」
「……」
ひなた、少し考える。
「ゲームみたいですね」
「そうです」
即答。
「どこかの有名なRPGみたいに」
・町に入る
・人に会う
・仲間にする
「そんな感じです」
ひなた、爆笑。
「軽すぎません!?」
「軽くないです!!」
だが発想は完全にそれだった。
問題は山積み。
「ルート、どうします?」
「まだです」
「宿は?」
「未定です」
「人員は?」
「いません」
「……大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないです!!」
それでも進めるしかない。
なぜなら――
もう言ってしまったからだ。
ひなたは外で動く。
「タイヤ見ときました!」
「そこまで!?」
「あとエンジン音、ちょっと怪しいです!」
「一番ダメなやつです!!」
そのバス。
ヒロ九ラッピング仕様。
・見た目は華やか
・デザインは完璧
だが――
ゴロロロロ……
「……音が」
「元気です!」
「元気じゃなかです!!」
中では菜々子が資料と格闘。
「このルートなら……いや無理……でもいける……」
完全にパズル。
ポタ。
「……」
ポタポタ。
「……バケツ追加します」
夜。
二人は外に出る。
星が綺麗だった。
「いいですね」
ひなたが言う。
「何がですか」
「なんもないとこ」
一拍。
「だから、なんでもできる」
菜々子は少し黙る。
そして小さく笑う。
「……そうですね」
新橋では、琴音が資料を整え。
真帆が裏で根回しを進める。
表には出ないが、支えは確実に増えていた。
「次、どこ行きます?」
ひなたが地図を覗く。
「九州全部です」
「いいですね!!」
「軽く言わないでください!!」
こうして始まる。
ヒロ九、初の本格任務。
それは――
バス一台で九州を巡り、仲間を集める“冒険”だった。
その先に何があるかは分からない。
・トラブルは確実に起きる
・人が見つかる保証もない
・バスが途中で止まる可能性も高い
だが――
止まらない。
なぜなら。
ここにはもう――
走る女と、仕切る女がいるからだ。
ポタ。
「……」
「……屋根、直します?」
「その前にバスです!!」
ヒロ室九州。
その戦いは今日も続く。
まずは――
雨漏りとの戦いから。




