会議が一番うるさい組織って何? ~出雲の静謐、ついにキレる~
佐伯区ショッピングモール事件――
通称「炎上未遂事件」の翌日。
ヒロヒロは反省会……ではなく、
企画会議を開いていた。
場所は広島市内の貸し会議室。
ホワイトボード、長机、ペットボトルのお茶。
見た目だけは、まとも。
「はいじゃあ次のイベント案いこうか!」
仕切るのはノムさん。
その横でのどかがすでにニヤニヤしている。
この時点で、まともな会議ではない。
参加メンバーは昨日の面子。
大宮麗奈、平塚美波、赤嶺美月、西川彩香、山根梨乃。
そして新人、神門結衣。
全員が席についた時点で、空気はすでにざわついている。
「ほいじゃあワシの案!」
ノムさんが立ち上がる。
「“もみじ饅頭早食い選手権ヒロイン版”じゃ!」
昨日の続きである。
「いいじゃんそれ!絶対ウケるって!」
麗奈が即乗る。
「いやいや、ウケるけど意味ある?」と美波。
腕を組みながら、湘南っぽく冷静にツッコむ。
「それさ、ただの早食い大会じゃね?ヒロイン関係なくない?」
正論。
だが、のどかが被せる。
「そこに“精神統一”とかつけたらええけぇ!」
意味不明。
「それやったらウチ優勝やろ!」と美月。
なぜか乗る。
「いやいや、そもそも企画として成立してへんやろ……」
彩香が苦笑い。
「ヒロヒロの企画会議、噂には聞いてたけど……これはあかんわ」
ようやく正常な感覚の人間が出てきた。
だがその横で。
「え、それにチョコ味部門作らない?」
梨乃、再び登場。
論点を破壊する天才である。
「それ別枠やろ!」彩香。
「いや統一感なくなるやろ!」美波。
「チョコもありやろ!」梨乃。
「いや違うやろ!」美月。
カオス突入。
「じゃあ次の案!」
ノムさんがさらに畳みかける。
「“広島市内全域かくれんぼ大会”!」
スケールがでかい。
「面白そうじゃん!」麗奈。
「いや許可どうすんのそれ」美波。
「全部貸し切ればええけぇ!」のどか。
無理である。
「やるならウチ鬼や!」美月。
「いやウチもや!」彩香。
また喧嘩が始まる。
時間だけが過ぎる。
一時間後。
まだ何も決まっていない。
二時間後。
議題が増えている。
三時間後。
動物園。
誰も座っていない。
誰も議論していない。
ただ各自が好き勝手にしゃべっている。
美波がため息。
「ねえこれさ、もう会議じゃなくない?」
麗奈が笑う。
「まあまあ、こういうのもヒロヒロっぽいじゃん」
彩香は頭を抱える。
「……綾乃呼んだ方がええんちゃうか」
その時。
静かに、椅子が引かれる音がした。
神門結衣。
立ち上がる。
マイクもない。
声を張るわけでもない。
ただ一言。
「……いい加減にしてください」
空気が、凍る。
ピタッ。
全員、止まる。
「……え?」
美月が口を開ける。
結衣は続ける。
「会議は、結論を出すためのものです」
静か。
だが逃げ場がない。
「思いつきを出すことは大切ですが、収拾がつかなくなるのは違います」
正論。
「今の状態では、時間を無駄にしているだけです」
誰も、何も言えない。
のどかですら、黙る。
ノムさんも座る。
梨乃も「え?」と固まる。
美月がぽつり。
「……なんや今の」
彩香が震える。
「……めっちゃ普通のこと言うただけやのに」
そして。
美月が小声で呟く。
「……綾乃より恐ろしい」
全員、無言で頷く。
結衣は、何事もなかったかのように座る。
「……続けてください」
その後。
会議は信じられないほどスムーズに進んだ。
・イベント案が整理され
・役割分担が決まり
・スケジュールが確定する
奇跡である。
会議終了後。
のどかと真帆が小声で話す。
「……あの子」
「……ヤバいねぇ」
「ヒロヒロに一番必要なタイプかもしれんけぇ」
真帆が頷く。
「おらんかったら、一生決まらんっちゃね」
その頃。
結衣は一人、静かに資料をまとめていた。
誰よりも普通。
だが、誰よりも効く。
それが、この女。
「出雲の静謐」




