意味は分からん、でも楽しい ~竹原で完成した“謎の成功体験”~
広島県竹原市。
瀬戸内海に面した、古き良き町並みが残る「安芸の小京都」。白壁の家々、静かな石畳、ゆったり流れる時間――
そんな風情をぶち壊すように、ヒロヒロが乗り込んできた。
「はい集合ー!今日のイベント説明するけぇ!」
江波のどかが元気よく仕切る。
その後ろには、前日の会議で生まれた“奇跡の産物”が掲げられていた。
『竹原まるごとヒロイン体験!精神統一もみじ饅頭×町並みかくれんぼフェス』
意味は分からない。
「いやほんとにやるのこれ?」
平塚美波が腕を組む。
「ていうかさ、ここ竹原だよ?風情ある町だよ?それに“精神統一”ってなに?」
湘南風の軽いツッコミが飛ぶ。
「面白そうじゃん!絶対ウケるって!」
大宮麗奈は完全に乗り気。
すでにマイクを握る準備万端である。
その横で。
「ウチ鬼やるからな!」赤嶺美月。
「いやウチや言うとるやろ!」西川彩香。
開幕前から揉めている。
「え、チョコ味はどこで食べるの?」
山根梨乃、安定の別世界。
「……始まる前から終わっとる気がするっちゃね」
安岡真帆が遠い目をする。
そこへ、新たな戦力が到着。
「はーい!現場入ります〜」
現れたのは松山のベテラン地下アイドル、越智美晴――通称みーちゃん。
「こういうカオス現場、嫌いじゃないよ〜」
経験値が違う。
さらに。
「準備は任せとき」
元競輪選手、大西結月が機材を軽々と運び込む。
「段取り組むで。時間は無駄にせぇへん」
無駄にされる未来しか見えない。
そして。
静かに立つのが神門結衣。
(……また、すごいことになりそうです)
冷静である。
イベント開始。
「竹原のみなさーん!今日はヒロヒロが来たよー!」
麗奈の軽快な関東弁が響く。
「ちょっと変わったイベントだけど、絶対楽しませるからねー!」
美波も続く。
この二人、やはり強い。
観客のハートを一瞬で掴む。
そして始まる。
「まずは精神統一タイム!」
のどかが高らかに宣言。
参加者、正座。
目の前にはもみじ饅頭。
「これを前にして、どれだけ冷静でいられるか!」
「意味分かんないけど面白そう!」
なぜかウケる。
みーちゃんがフォローに回る。
「はいここ、深呼吸してね〜。アイドル修行みたいなもんだと思って〜」
無理やり納得させる。
結月はタイム管理。
「はい30秒!はい次!」
競輪仕込みの進行力。
その横で。
「粒やろ!」
「こしや言うとるやろ!」
また始まる美月と彩香。
「チョコ味は!?」梨乃。
「いやだからそれ別枠だから!」美波。
カオス。
だが。
「……こちら、かくれんぼの受付です」
結衣が静かに動く。
「はーい!参加する人こっちー!」
梨乃が元気に呼び込む。
そして奇跡が起きる。
成立している。
結衣が整え、梨乃が広げる。
「走らないでくださいね」
「でも楽しいからちょっとだけ急ごー!」
噛み合っている。
観客が一番分かりやすく動く。
「この二人、分かりやすいね」
「安心して参加できるわ」
のどかが遠くで呟く。
「……なんで成立しとるん?」
真帆も腕を組む。
「……意味分からんっちゃね」
みーちゃんが笑う。
「いやこれ、“バランス”ってやつだよ〜」
結月も頷く。
「極端同士やと、真ん中できるんやな」
誰も理解していないが、現象だけは起きている。
イベントは進む。
カオスのまま。
だが崩れない。
最終的に。
「なんかよく分からんけど楽しかった!」
観客、大満足。
終了。
控室。
全員ぐったり。
「いやー今日も最高だったねー!」
麗奈は満足げ。
「ほんと意味分かんなかったけどね」
美波は呆れ顔。
「ウチの勝ちや!」美月。
「いやこしや!」彩香。
まだやっている。
のどかと真帆。
視線を交わす。
「……結衣」
「……あの子おらんかったら」
同時に言う。
「完全崩壊しとったね」
その横で。
「お疲れさまでした」
「おつかれー!」
結衣と梨乃が、同時に動く。
やはりおかしい。
だが。
ヒロヒロにおいて――
成立してる時点で、正解である。
「出雲の静謐」




