「推しがおらんオールスターなんて!」――ヒロイン、美月の嘆き節
休日の午後。
赤嶺美月はお気に入りのカフェ「ミモザ珈琲店」のテラス席で、カフェラテをかき混ぜながら深いため息をついていた。対面には、凛とした佇まいの西園寺綾乃。小ぶりのストロベリータルトにナイフを入れながら、ちらと美月を見やる。
「なぁ綾乃……今年のオールスター、もう全然アカンわ」
「まぁ、投票結果はファンの声どすけど……何がそんなに不満どす?」
「いや、うちのマリーンズ、出場選手ほとんどおらんやん!なんでや!どう考えても藤原恭大は出るべきやろ!」
テーブルを軽く叩いて美月が熱弁をふるう。周囲の客が少しこちらを見たが、美月は構わず続ける。
「打率もそこそこ、守備も走塁も華あるし、なにより顔がええ!あんなん出んで誰が出るねん!」
「ふふ……ヒロインやなくて、ただの追っかけファンになってはりますえ」
「しゃーないやん、恭大のスライディング見てるだけでご飯三杯いけるもん」
「せやけど、今年のマリーンズ自体がやや低空飛行ですさかい……」
「それ言わんといてぇええ!うちは戦うヒロインやけど、現実の順位表は敵すぎるやんか!」
二人は顔を見合わせて、ふっと笑った。
戦隊ヒロインであることも、マリーンズ推しであることも、美月の中では等しく“本気”なのだ。
「……せめてファン投票で恭大入れてやりたいな。特撮枠とか作ってくれへん?」
「球宴で“変身ポーズ始球式”とか……ある意味、観たいかもどすな」
そうして午後の陽射しの中、二人のヒロイントークはオールスターの話題から、“推しの尊さ”へと移っていくのであった。




