サスペンデッド解除!――青空の柏崎、高田美雪“約束の大脱出”と恋人岬の鐘
一か月前。
新潟県柏崎市を朝から覆っていたのは、灰色の雲だった。
新潟新報社創立百十周年記念事業、
「越後の未来へ! 日本海・戦隊ヒロイン夢の大感謝祭 in 柏崎」
は、雨の中で強行開催された。
東西の人気戦隊ヒロイン。
地元新潟の本間菜帆。
世界的イリュージョニスト・高田美雪。
それだけの豪華メンバーが集まりながら、イベント最大の目玉「高田美雪・柏崎スペシャル大脱出」を目前にして天候が悪化。
安全を優先し、イベントは途中終了。
ただし。
中止ではなかった。
美雪が口にしたのは、
「サスペンデッドにしましょう」
という言葉だった。
途中で止まったものをなかったことにするのではなく。
そこまでを残し。
後日。
その続きから再開する。
そして。
約一か月後。
その「続きの日」が来た。
柏崎の空は。
笑ってしまうほどの快晴だった。
雲がない。
日本海は青い。
陽光を受けた水面が遠くで輝き、会場へ吹く風も穏やか。
新潟新報社イベント事業部の担当部長は、朝六時半に会場へ入るなり空を見上げた。
「晴れた……!」
隣で隼人補佐官が腕時計を見る。
「見れば分かります」
「いや、補佐官。これは感慨深いんですよ」
「そうですか」
「この一か月、天気予報が怖くて」
「昨日も雨雲レーダー見てました?」
担当部長は胸を張った。
「百二十七回」
「見すぎです」
「前回のトラウマです」
「一分に一回更新しても天候は変わりませんよ」
「分かってはいるんです」
「分かってない人の数字ですよ、それ」
担当部長はそれでも青空を眺めた。
百十周年。
会社を挙げて企画したイベント。
新聞広告も打った。
スポンサーも集めた。
柏崎市内だけでなく県内各地から観客を呼んだ。
一度は雨に阻まれた。
それでも。
今日。
続きをやれる。
それだけで。
担当者には既に泣きそうなくらい嬉しかった。
しかも。
出演者名簿を確認して、さらに胸が熱くなる。
前回の出演者。
全員参加。
赤嶺美月。
西川彩香。
西園寺綾乃。
杉山ひかり。
館山みのり。
月島小春。
大宮麗奈。
氷見ゆりえ。
阿部柚葉。
本間菜帆。
そして。
高田美雪。
一人も欠けていない。
最初に会場へ姿を見せたのは。
意外にも菜帆だった。
帽子。
動きやすいパンツ。
スニーカー。
肩には小さなバッグ。
華やかなヒロインというより、近所の農業イベントへ来た大学生に近い。
担当者が驚く。
「本間さん、早いですね」
「地元ですから〜」
「まだ出演者用受付も全部準備できてないんです」
「じゃあ何か手伝います?」
「いやいやいや!」
菜帆は既にスタッフが運んでいた折り畳み椅子を一脚持っている。
「本間さん!」
「はい?」
「出演者です!」
「はい」
「椅子運ばなくていいです!」
「でも一脚余ってますよ〜」
「こっちでやりますから!」
菜帆。
「そうですか?」
担当者は椅子を奪うように受け取る。
「今日は主役側にいてください」
菜帆は首を傾げる。
「主役は美雪さんじゃないですか?」
「皆さん主役です!」
「じゃあスタッフさんも主役ですね〜」
担当者。
「そういうところなんだよなあ……」
前回。
雨の中で最後まで観客へサインを続けていた菜帆。
あの姿が新潟新報一面を飾った。
今回も。
本人には全くその自覚がない。
少しして。
会場入口。
前回も来ていた親子が姿を見せる。
少年が菜帆を見つけた。
「菜帆ちゃん!」
「あ」
菜帆も気づいた。
「また来てくれたんだ〜」
少年。
「約束したから!」
「そうだったね」
「菜帆ちゃんも来た?」
「私も約束したからね〜」
少年は嬉しそうに笑った。
その様子を担当部長が遠くから見る。
そして部下へ小声。
「本間さんの写真、今日も多めに押さえとけ」
「美雪さんが主役じゃ?」
「両方だ」
そこへ。
派手なサングラス姿。
赤嶺美月。
「眠い……」
到着第一声だった。
彩香。
「オフ返上した英雄の第一声がそれかい」
美月。
「だってほんまにオフやってんもん!」
「自分で来る言うたんやろ」
「そら来るわ!」
美月はサングラスを外す。
「このまま中途半端で終わってしもうたら、前回雨ん中ずっと待っとった柏崎の皆さんに申し訳ないやろ」
少しだけ。
真顔。
彩香も一瞬黙る。
「……たまには、ええこと言うやん」
美月。
「“たまには”いらんわ!」
綾乃。
「感動、三十秒ももちまへんなあ」
「綾乃まで!」
続いて。
小春と麗奈。
小春。
「うわ、今日マジで空きれいじゃん」
麗奈。
「前回の分まで晴れた感じね」
小春。
「今日の日本海、絶対写真映えする」
麗奈。
「終わった後、時間あったら撮りたいわね」
「それな」
「ただし風強かったら髪終わるから」
「そこ現実的」
「イベントコンパニオンは風と湿気に厳しいの」
「プロすぎるって」
二人とも都会的。
会場入りの段階から華やかだった。
そして。
ひかり。
みのり。
二人並んで進行表を確認しながら歩いてくる。
ひかり。
「今日は風速も安定してるね」
みのり。
「湿度も前回より低いし、視界も良好。装置を使う条件としてはかなりいいと思う」
「でも安全チェックは最後まで必要だね」
「もちろん。晴れてる時の方が油断しやすいから」
ひかり。
「さすが千葉の叡智」
みのり。
「そっちは駿河の良心でしょ」
二人。
笑う。
その後ろを歩いていた美月。
「二人だけ会話の偏差値高ない?」
彩香。
「お前が低すぎるんや」
「喧嘩売っとるな!」
「朝から元気やな」
午前九時。
海外公演帰りの美雪も到着。
黒を基調にした装い。
サングラス。
長い髪。
立っているだけで空気が変わる。
新潟新報社担当者が駆け寄る。
「高田さん!」
「おはようございます」
「本当に来てくださったんですね」
美雪。
「約束しましたから」
「スケジュール、大丈夫だったんですか?」
美雪はサングラスを外す。
妖艶な笑み。
「私はイリュージョニストですよ」
隼人。
「それ一か月前にも聞きました」
「便利な言葉でしょう?」
「実際はマネージャーが地獄を見たそうですね」
美雪。
「そこは言わない約束よ」
開演時刻。
観客席は再び満員になっていた。
前回のチケットを持つ人。
今回新たに来た人。
家族連れ。
ヒロインファン。
美雪ファン。
そして。
「あの日の続き」を見届けたい柏崎市民。
ステージへ。
杉山ひかり。
マイク。
笑顔。
「柏崎の皆さん――」
少し間。
「ただいま!」
観客。
「おかえりー!」
大歓声。
ひかりも嬉しそうに笑う。
「一か月前、雨で途中までになってしまったこのイベントですけど」
「今日は最初からやり直すんじゃありません」
客席。
静かになる。
「あの日、止まったところから」
「続きを始めます!」
拍手。
ひかりは少し説明を加える。
「サスペンデッドというのは、野球などで雨や日没のため途中で続けられなくなった時、全部やり直すのではなく、止まった状態を残して後日そこから続けることです」
「だから今日は、別のイベントじゃありません」
笑顔。
「前回の続きです」
菜帆が舞台袖で客席を見る。
「ちゃんと待っててくれたんだね〜」
柚葉。
「嬉しいですね」
菜帆。
「うん」
そして。
この日のために。
一か月待った。
メインイベント。
ステージ中央。
幕が外される。
現れたのは。
銀色の鋼鉄ケージ。
「高田美雪 柏崎・日本海鋼鉄ケージ大脱出」
工業都市・柏崎をイメージした金属フレーム。
精密加工された鋼材。
その周囲には、日本海の港町を思わせる太いロープと漁網風装飾。
背景スクリーン。
青い海。
波。
船舶灯をイメージしたランプ。
前回より広告費を使ったのではないかと思うほど。
新潟新報社の煽りナレーションも凄かった。
「一か月前――」
「雨によって封印された幻の大脱出――」
「本日!」
「ついに!」
「柏崎の青空の下!」
「その封印が解かれる!」
隼人。
「新聞社ですよね?」
担当部長。
「百十周年ですから!」
「理由になってないです」
音楽。
煙。
美雪登場。
歓声。
ひかり。
「美雪さん!」
「はい」
「一か月越しです」
「そうね」
「準備はいいですか?」
美雪。
カメラを見る。
そして。
いつもの妖艶な笑み。
「私、失敗しないから」
ひかり。
「そのセリフ、聞くたびに職業が変わった気がします!」
客席爆笑。
美雪。
「大事なのは結果よ」
「そこまで含めてどこかで聞いたことあるんです!」
さらに笑い。
美雪。
鋼鉄ケージへ。
扉。
ロック。
幕。
演出開始。
カウント。
六十。
五十九。
五十八。
観客。
静か。
四十。
三十九。
その時。
ドン!
予定より早い爆発音。
舞台端から火花。
煙。
ひかり。
「えっ!?」
みのり。
「まだ四十秒あるよね?」
スタッフが慌ただしく走る。
もちろん。
演出。
だが。
観客には知らされていない。
三十。
二十九。
幕が大きく揺れる。
二度目。
ドン!
ひかり。
「ちょっと待ってください!」
声が本気で焦っているように聞こえる。
「美雪さん!」
返事。
ない。
二十五。
ひかり。
「美雪さん、大丈夫ですか!?」
美月が舞台袖で小声。
「ひかり、演技うまない?」
彩香。
「今それ言うな」
美月。
「でも泣きそうやで」
その時。
みのりが。
自然にひかりの手を握った。
ひかりも握り返す。
みのり。
「大丈夫」
「美雪さんだから」
ひかり。
「……うん」
菜帆が横から見て。
「二人とも仲いいね〜」
美月。
「そこだけ別番組や」
十。
九。
八。
照明。
音。
煙。
五。
四。
三。
二。
一。
ゼロ。
爆発音。
白煙。
幕。
落下。
鋼鉄ケージ。
中。
誰もいない。
一瞬。
完全な静寂。
ひかり。
「……美雪さん?」
その時。
会場後方。
「ひかりちゃん」
声。
全員。
振り返る。
観客席後方の高台。
美雪。
立っている。
衣装も。
髪も。
何一つ乱れていない。
両手を広げる。
大歓声。
ひかり。
「美雪さーん!」
みのり。
「よかった!」
二人。
思わず手を取り合う。
そのまま。
ぴょんぴょん。
喜ぶ。
美月。
「あーもう!」
彩香。
「何や」
美月。
「グレースフォースが尊すぎる!」
ひかり。
「聞こえてるから!」
みのり。
「今そこじゃないでしょう!」
観客爆笑。
美雪。
悠然とステージへ戻る。
ひかり。
「美雪さん!」
「はい?」
「爆発、早かったですよね!?」
「そうだった?」
「絶対早かったです!」
「イリュージョンには予想外の出来事がつきものよ」
「全部演出ですよね!?」
美雪。
妖艶に微笑む。
「さあ?」
ひかり。
「もう!」
観客。
大爆笑。
そして。
大拍手。
一か月越し。
高田美雪。
約束の大脱出。
成功。
その瞬間。
新潟新報社創立百十周年記念事業は。
ようやく。
本当に。
完結した。
イベント終了後。
舞台裏。
担当部長。
出演者全員へ深く頭を下げる。
「皆さん、本当にありがとうございました」
声が少し震えている。
「一か月前、雨で途中終了になった時は、正直どうなるかと思いました」
「もう一度これだけの皆さんに集まっていただくなんて、難しいと思っていました」
美月。
「来る言うたやん」
担当者。
「でも赤嶺さん、今日オフだったと」
「せやけど」
美月は少し照れくさそう。
「柏崎の皆さんに“続きやる”言うてんから、やらなあかんやろ」
彩香。
「今日はええことしか言わへんな」
美月。
「今日“は”って何や!」
笑い。
担当者。
「高田さんにも、本当に」
美雪。
「私も地元新潟の人間です」
「帰ってくる理由としては十分でしょう」
そして。
菜帆。
担当者。
「本間さん」
「はい?」
「前回のサイン会も、今回も」
「本当にありがとうございました」
菜帆。
「私は何もしてないですよ〜」
担当者。
「またそれですか」
菜帆。
少し考える。
「でも」
客席を見る。
「前回、雨の中で長い時間待ってくれた皆さんが」
「今日もう一回来てくれたことが一番嬉しいです」
「イベントって、出演する人だけじゃできないですよね」
スタッフ。
観客。
主催者。
ヒロイン。
「みんなで一か月かけて」
菜帆。
笑う。
「今日、ようやく最後までできたんだと思います〜」
担当部長。
しばらく黙る。
そして。
深く頭を下げる。
「……創立百十周年、忘れられない記念事業になりました」
大成功。
予定通りではなかった。
むしろ。
予定外だらけだった。
でも。
一度止まったイベントを。
全員で続きをやった。
だからこそ。
忘れられない。
帰り。
まだ少し時間があった。
麗奈。
「ねえ」
「この天気で、そのまま帰るのもったいなくない?」
小春。
「分かる!」
「今日の日本海、絶対やばいって」
菜帆。
「じゃあ恋人岬行きません?」
全員。
「恋人岬?」
菜帆。
「景色いいですよ〜」
美月。
「名前が気になるな」
彩香。
「お前絶対そっちやろ」
そして。
ヒロイン御一行。
柏崎の景勝地。
恋人岬。
日本海。
青空。
遠くまで続く水平線。
風。
小春。
「うわ」
「これガチでデートスポットじゃん」
麗奈。
「いいわね」
「海も空も色がきれい」
小春。
「麗奈、こういうとこ彼氏と来たい?」
「仕事をちゃんと理解してくれる人なら」
「条件から入るんだ」
「大事よ」
麗奈は髪を押さえる。
「華やかな仕事って、外から見るよりずっと忙しいし、不規則だから」
小春。
「分かる」
「束縛強い人とか絶対無理」
麗奈。
「でも放っておかれすぎても嫌でしょう?」
小春。
少し間。
「……まあ」
麗奈。
「ほら」
小春。
「恋愛めんどくさ」
麗奈。
「だから楽しいのよ」
美月。
「都会組、恋愛観がオシャレやな!」
小春。
「美月は?」
「何でうちに振るねん!」
彩香。
「好きな男くらいおるやろ」
「おらん!」
綾乃。
「即答が早すぎて逆に怪しいどすなあ」
「おらんて!」
ゆりえ。
「うちはお父ちゃんに恋愛知られたら大変やちゃ」
柚葉。
「どうなるんです?」
「漁船で迎えに来る」
「どこまで?」
「東京まで」
柚葉。
「それは見てみたいですね」
全員笑う。
菜帆は聞き役。
美月。
「菜帆は?」
「え?」
「恋バナや」
菜帆。
「私?」
「そう」
菜帆。
少し考える。
「田んぼ忙しいからね〜」
美月。
「逃げた!」
「逃げてないですよ〜」
「農業を盾にした!」
「農家なので」
その時。
みのり。
「ひかり」
「何?」
「鐘」
恋人岬の鐘。
ひかり。
「鳴らす?」
みのり。
「せっかくだから」
二人。
並ぶ。
一緒に紐を持つ。
一回。
カーン。
日本海へ響く。
二回。
カーン。
三回。
カーン。
風。
光。
水平線。
二人。
顔を見合わせて笑う。
あまりに自然。
あまりに絵になる。
美月。
「……何なん」
彩香。
「何が」
「この完成度」
綾乃。
「長年連れ添ったご夫婦みたいどすな」
美月。
「熟年夫婦や!」
ひかり。
「誰が!」
みのり。
「まだそんな年齢じゃないから!」
小春。
「年齢の問題じゃなくて、空気感の話じゃない?」
麗奈。
「旅行雑誌の表紙、そのままいけるわね」
菜帆。
「すごくいい写真ですよ〜」
パシャ。
新潟新報社同行カメラマン。
撮影。
ひかり。
「ちょっと!」
「新聞に載せないでくださいね!」
カメラマン。
「検討します」
みのり。
「その返事が一番怖い!」
翌朝。
新潟新報。
一面。
予定通り。
高田美雪。
約束の大脱出。
ただし。
社会面。
想定外。
グレースフォース。
恋人岬。
大きなカラー写真。
ひかり。
新聞を開く。
沈黙。
みのり。
覗き込む。
沈黙。
美月。
後ろから見る。
爆笑。
「載っとる!」
彩香。
「しかもデカい!」
ひかり。
「何で!?」
みのり。
「大脱出の記事より写真大きくない!?」
美雪。
新聞を見る。
「私、一か月越しに脱出したのだけれど」
菜帆。
「美雪さんは一面ですよ〜」
「そういう問題かしら」
その日の新潟新報朝刊は。
こうなっていた。
――――――――――
新潟新報 朝刊
一面
青空に帰った約束
高田美雪さん「柏崎・日本海鋼鉄ケージ大脱出」成功
一か月越しのサスペンデッド解除 出演ヒロイン全員再集結
【柏崎】
新潟新報社創立110周年記念事業「越後の未来へ! 日本海・戦隊ヒロイン夢の大感謝祭 in 柏崎」の続行イベントが昨日、柏崎市内の特設会場で開催された。
約一か月前の初回イベントは悪天候のため途中終了し、世界的イリュージョニスト高田美雪さんによる大脱出など一部演目を後日に持ち越す「サスペンデッド」としていた。
この日は朝から晴天に恵まれ、初回に出演した戦隊ヒロイン全員が再集結。妙高市(旧新井市)出身で世界各地で活動する高田さんも海外公演の日程を調整して帰県した。
メインイベント「柏崎・日本海鋼鉄ケージ大脱出」では、工業都市柏崎と日本海をイメージした鋼鉄製舞台装置を使用。
高田さんがケージへ入った後、特殊効果が予定より早く作動したように見える演出などで会場を緊張させたが、最終的には客席後方から無事に姿を現し、満員の観客から大きな歓声と拍手を受けた。
高田さんは、
「一か月待ってくださった柏崎の皆さんに、ようやく続きをお見せすることができました」
と語った。
司会を務めた杉山ひかりさんは、
「前回から今日まで含めて、一つのイベントになったと思います」
と笑顔を見せた。
新潟市秋葉区在住の戦隊ヒロイン本間菜帆さんは、
「前回、雨の中で待ってくれた皆さんが今日また来てくださったことが一番嬉しい。出演者だけでなく、来場者、スタッフ、主催者みんなで一か月かけて最後までやり遂げたイベントだと思います」
と話した。
新潟新報社記念事業担当者は、
「初回は荒天に見舞われたが、出演者の皆さまが再度スケジュールを調整してくださり、来場者にも再び足を運んでいただいた。創立110周年にふさわしい、忘れられない記念事業となった」
と感謝した。
今回の続行イベントをもって、創立110周年記念事業「日本海・戦隊ヒロイン夢の大感謝祭 in 柏崎」は全日程を終了した。
【写真】
特殊効果の煙が晴れた後、観客席側から姿を現し両手を広げる高田美雪さん。ステージ上では杉山ひかりさんと館山みのりさんが手を取り合って成功を喜ぶ=柏崎市
――――――――――
社会面
大脱出の後は「幸せの鐘」
グレースフォース 恋人岬で息ぴったり
同行ヒロイン「熟年夫婦みたい」
新潟新報社創立110周年記念イベントを終えた出演者らは、帰路につくまでの時間を利用し、柏崎市内の景勝地・恋人岬を訪れた。
青空と日本海の景観を楽しむ中、戦隊ヒロインユニット「グレースフォース」の杉山ひかりさんと館山みのりさんは、二人並んで鐘を鳴らした。
二人が一本の紐を握り、息を合わせて三度鐘を鳴らす姿を見た赤嶺美月さんは、
「長年連れ添った熟年夫婦みたいやった」
と評し、西川彩香さんも、
「大脱出より自然に息合うてた」
と笑った。
これに対し杉山さんは、
「普通に観光していただけです」
館山さんは、
「そこを記事にする必要あります?」
とそれぞれ苦笑した。
なお、本紙写真部は、
「日本海の景観を含め非常に絵になる一枚だった」
としてカラー写真を大きく掲載した。
【写真】
青い日本海を背に笑顔で鐘を鳴らす杉山ひかりさん(左)と館山みのりさん=柏崎市・恋人岬
――――――――――
ひかり。
「写真部さん!」
みのり。
「コメントまで載ってる!」
美月。
腹を抱える。
「永久保存版や!」
彩香。
「ええ記念になったな」
二人。
「ならない!」
菜帆。
横で新聞を畳む。
「でも」
みんなを見る。
「いいイベントでしたよね〜」
美雪。
「そうね」
菜帆。
「一回止まったからこそ、今日またみんなで集まれたし」
海。
鐘。
雨。
青空。
笑い。
拍手。
サイン。
約束。
全部を思い出す。
菜帆は。
いつものように。
静かに笑う。
「途中で止まっちゃう日があっても、いいんですよ〜」
「続きをやる約束があって」
「またみんなで集まれたら」
少しだけ。
間。
「ちゃんと最後まで、つながりますから」
美雪が微笑む。
ひかり。
みのり。
小春。
麗奈。
ゆりえ。
柚葉。
美月。
彩香。
綾乃。
みんな。
その言葉を聞いていた。
サスペンデッド。
それは。
失敗ではない。
終わりでもない。
もう一度。
続きをやるために。
途中で残しておく。
そんな言葉だった。
そして。
新潟新報社創立百十周年記念事業は。
雨の日も。
晴れの日も。
全部ひっくるめて。
大成功だった。
柏崎の青い日本海の向こうへ。
恋人岬の鐘が。
もう一度。
小さく響いた。




