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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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議事録は五分、麻雀は夜明けまで!?――修善寺湯けむり女子会、凜花と麗奈の冷戦と最高戦略会議の惨劇

修善寺温泉の夜は、静かだった。


桂川のせせらぎ。行灯に照らされた石畳。川沿いに延びる竹林の小径と、長い歴史を持つ温泉街の落ち着いた佇まい。昼間には観光客で賑わっていた町も、日が暮れると、旅館の明かりが山あいの闇に柔らかく浮かび上がる。


少なくとも、この晩の修善寺は、平和であるはずだった。


寸又峡温泉の猟銃立てこもり事件によって台無しになった奥大井鐡道旅行。そのお詫びとして企画された、昭和の名曲『天城越え』の舞台を訪ねる日帰りバスツアーは、大成功のうちに終了した。


浄蓮の滝で歌碑を眺め、天城の山道を巡り、藤原詩織のアカペラに聞き惚れた参加者たち。百二十人は三島駅で満足そうに解散し、葛城正男室長代理ことまさにゃんと福鉄旅行静岡支店の担当者も、ようやく肩の荷を下ろした。


その後、ヒロ室東海(仮称)の面々とヒロ室フロント、福鉄旅行のスタッフ、そして宿泊オプションを希望した一部の参加者は、貸切バスで修善寺温泉へ向かった。


宿泊先は、桂川沿いにある老舗旅館「桂月楼」。


檜の大浴場と露天風呂、手入れの行き届いた日本庭園、伊豆の海の幸と山の幸を組み合わせた料理を自慢とする宿である。仲居に迎えられ、一行は落ち着いた和の空間へ案内された。


玄関をくぐった芹沢遥室長は、しみじみと言った。


「こういうのを待ってたのら……」


隣の隼人補佐官が頷く。


「今回は予定どおり終了しましたね」


「誰も銃を持ってないし、ヘリコプターも飛んでこないのら」


「それが普通の旅行です」


遥室長は、深く頷いた。


「普通って、素晴らしいのら」


一行が受付を済ませていると、赤嶺美月が見慣れた影に気づいた。


タツノオトシゴのマスコット、たつをである。


前回の事件では、いつの間にか現場に現れ、全国の報道番組にまで奇妙な姿を映された五歳児。今回は「一般参加者枠」でバスツアーに申し込んでいたが、修善寺温泉の宿泊オプションにまで名前が載っていた。


美月は一応、尋ねた。


「……お前も泊まるんか?」


たつをは参加証を見せた。


そこには確かに宿泊オプションの記載があった。


「もうええわ。好きにしてくれ」


美月の諦めは早かった。


寸又峡事件以来、たつをの行動を一つひとつ理解しようとすると、時間ばかりかかることが分かっていたからである。


ただし、遥室長は旅館側と宿泊名簿を照合し、安全管理について確認した。前回のような騒動は、もう御免だった。


それが済むと、ヒロインたちは待ちに待った温泉へ向かった。


檜の香りが漂う大浴場。庭園の木々を眺めながらつかる露天風呂。昼間、天城の旧道を歩き回った身体に、柔らかな湯が染み渡る。


杉山ひかりは、気持ちよさそうに息を吐いた。


「はぁ……いいお湯だねぇ」


隣の館山みのりが微笑む。


「ひかりさん、今日は本当にたくさん歩きましたね」


「みのりちゃんと一緒だったから、楽しかったよぉ」


「……私もです」


二人は自然に顔を見合わせた。


少し離れたところで、美月が目を閉じる。


「……温泉でまで百合度上げんといて」


真央が笑った。


「美月さん、今日ずっと二人を気にしとったがね」


「そら気になるやろ! 浄蓮の滝から旧天城トンネルまで、ずーっと距離縮めとったんやで!」


「よう見とるがね」


「ツッコミ担当の宿命や!」


湯上がりには、それぞれ旅館の浴衣へ着替えた。


大宮麗奈は落ち着いた色合いの浴衣を端正に着こなし、すらりとした姿勢がひときわ目を引いた。一方、土屋凜花は明るい柄の浴衣を選び、元アイドルらしい愛らしさと華やかさを見事に引き立てている。


廊下で二人を見かけた仲居が、思わず声をかけた。


「まあ、お二人とも、よくお似合いですねえ」


麗奈は上品に微笑む。


「ありがとうございます」


凜花も小さく首を傾げた。


「ありがとうございます♡」


どちらも完璧だった。


だが、二人の視線は合わない。


昼間のバスツアーでは、互いの写真映えを意識していることが参加者にも伝わるほどだった。旧天城トンネルでは美月を挟んで飲み物を買いに行こうとし、河津七滝ループ橋ではようやく一度だけ自然に笑い合った。


その成果が、旅館の浴衣姿になった途端に消えていた。


美月は頭を抱えた。


「……昼間、ちょっと仲良うなったんちゃうん?」


麗奈。


「何の話、美月ちゃん?」


凜花。


「私たち、別に仲が悪いわけじゃありませんよ♡」


「それをウチ経由で言うな!」


真央は、湯上がりの牛乳を飲みながら感心していた。


「美月さん、まだ板挟みやっとるがね」


「慰労旅行で慰労されへんの、ウチだけちゃうか!」


夕食は、桂月楼の宴会場で開かれた。


伊豆近海で水揚げされた地魚の刺身、金目鯛の煮付け、地元のわさび、椎茸や旬の野菜、伊豆牛を使った一品。山の幸と海の幸が、器の色合いまで考えられた会席料理として並んだ。


真央は早速、金目鯛を一口食べた。


「これはええがね! 身がふっくらしとって、煮汁の味がよう染みとる!」


美月も箸を伸ばす。


「ほんまや。めっちゃうまい!」


「わさびも少し添えると、また違った味わいになるがね」


「……真央、今日何回目の食レポや?」


「おいしいものを紹介するのに、回数制限なんてないがね!」


希望して宿泊オプションに参加した旅行客たちとの交流も、和やかだった。


前回の奥大井旅行にも参加した夫婦が、ひかりへ声をかける。


「杉山さん、寸又峡では本当に大変でしたね。あの時はありがとうございました」


ひかりは、少し恐縮した表情で頭を下げた。


「いえ……皆さんが無事で、本当によかったです」


「今日の旅行も楽しかったですよ。前回のことがあったから、参加するか少し迷ったんですけどね」


「そうだったんですねぇ」


「でも、来てよかったです」


その一言に、ひかりは心から嬉しそうに笑った。


「ありがとうございます。そう言っていただけると、嬉しいら」


少し離れたところでは、凜花が男性参加者と談笑していた。


「凜花さん、いつもRINKA MODEを見てます」


「あっ、りんか民の方なんですね♡ ありがとう!」


「事件の後の配信も見ましたよ。今日はこうして普通の旅行ができて、本当によかったですね」


「うん。私もそう思います」


ところが、その男性は続けた。


「それと、美月さんにもお会いできて嬉しいです」


ちょうど通りかかった美月が振り向く。


「ん? ウチ?」


男性は満面の笑顔で言った。


「世界デビュー、おめでとうございます!」


美月の笑顔が消えた。


「……あの写真の話かい!」


寸又峡事件の解決直後、たつをを叱りつけている美月の写真が通信社によって世界中へ配信された一件である。


男性は嬉しそうだった。


「海外の記事も見ました!」


「そんなとこまで追いかけんでええねん!」


凜花は笑いをこらえきれなかった。


「美月さん、世界的な人気者ですね♡」


「人気の方向性が間違っとるやろ!」


宴会場に笑いが広がった。


前回は銃声に怯えた人々が、今夜は同じ旅行仲間として料理を楽しみ、笑い合っている。事件の恐怖が一晩で消えるわけではないが、新しい楽しい思い出が一つ増えたことは確かだった。


まさにゃんと福鉄旅行の担当者は、その様子を少し離れた席から見ていた。


「……企画してよかったですねえ」


まさにゃんが言うと、担当者も頷いた。


「ええ。本当に」


夕食会が終わる頃、美月はふと辺りを見回した。


「そういえば、たつをは?」


真央が首をかしげた。


「さっきロビーにおったけど、どこ行ったか知らんがね」


「……まぁ、ええか」


会話は、それで終わった。


少なくとも一行の前には姿を見せなくなっていたが、誰も大騒ぎしなかった。宿泊先での所在確認は旅館側の担当者へ任せ、美月は目の前のデザートへ意識を戻した。


今夜こそ、余計な騒動は起こらない。


その願いは、半分だけ叶うことになる。


夕食会の後、ヒロ室フロントの六人は小会議室へ集まった。


議題は、代替ツアーの実施報告と、今後のヒロ室東海(仮称)の活動方針である。


遥室長が議長席に座った。


「それじゃあ、フロントミーティングを始めるのら」


隼人補佐官が報告する。


「本日のバスツアーは、事故なく予定どおり終了しました。参加者の皆様からも好意的な感想を多数いただいています」


まさにゃんも資料を開いた。


「福鉄旅行さんとの調整事項も、ほぼ片づいておりますわ。今後の観光振興イベントにつきましても、継続して検討する方向でよろしいかと」


すみれコーチが頷く。


「ヒロインたちもみんな、よく頑張ったよ。体調面も問題なさそうだしね」


波田顧問が腕を組んだ。


「よし。これからもやっていこうぜ」


遥室長。


「異議なしなのら。では、以上で閉会!」


琴音が時計を見た。


四分三十八秒。


議事録には、たった数行しか書けなかった。


『代替ツアーは予定どおり終了。参加者の反応は良好。ヒロ室東海(仮称)の活動継続を確認。以上。』


琴音は少し困った顔をした。


「……これじゃ、議事録に書くことがほとんどねえじゃん」


遥室長は平然としていた。


「短い会議は、いい会議なのら」


琴音が頷く。


「まあ、それもそうずらね」


二人は立ち上がった。


その時点で、波田顧問が時計を気にしていることには気づいていた。


隼人補佐官は、なぜか机の寸法を確認している。


まさにゃんは椅子の配置を気にしている。


すみれコーチの横には、大きなバッグが置かれていた。


遥室長は一瞥しただけで言った。


「……どうせ、やるんでしょ」


波田顧問がにやりと笑った。


「おう」


「静かにやるのら。それだけなのら」


琴音も手帳を閉じた。


「こっちの議事録は、もうつけんからね」


二人はさっさと部屋を出た。


そして、扉が閉まると同時に、波田顧問の声が響いた。


「よーし、やるぞー!」


隼人補佐官が机を動かす。


まさにゃんが椅子を並べる。


すみれコーチがバッグを開いた。


ジャラジャラジャラッ。


麻雀牌である。


正式名称は、実に壮大だった。


「戦隊ヒロインプロジェクト最高戦略会議」。


実態は、ただの徹夜麻雀である。


開始前、まさにゃんが手を挙げた。


「ちょっとよろしいですやろか。議事進行上、一点確認させてもらいたいんですわ」


波田顧問が眉をひそめる。


「あん?」


「寸又峡での前回の対局なんですけどな。あれは、わたしが大幅にリードしていたところで事件により中断されましたやろ?」


隼人補佐官が嫌な予感を覚えた。


「……その話ですか」


「いや、重要な話ですわ。中断理由は不可抗力やったわけですから、今回はサスペンデッドゲームとして、前回の続きから再開するんが合理的ちゃいますやろか」


三人が黙った。


波田顧問が最初に口を開いた。


「ふざけんな!」


隼人補佐官も反対する。


「前回は全員の合意で終了しましたよね?」


すみれコーチは笑った。


「それに牌、全部片づけちゃったじゃん。続きなんかできないよ」


まさにゃんは、いかにも窓口で制度説明をする小役人のような表情で手帳を取り出した。


「いやいや、そこはご心配なく。中断時の点数は、こちらにきちんと控えてありますねん」


びっしりと書き込まれた点数表。


波田顧問は目をむいた。


「お前、そんなもん持ち歩いてんのかよ!」


「記録を残すんは、後日の紛争防止のためですさかい」


隼人補佐官。


「今、紛争を起こしているのはあなたです!」


すみれコーチは、牌を並べながら言った。


「じゃあ採決しようよ。続きからやりたい人!」


まさにゃんが手を挙げた。


一人。


「ノーゲームでいい人!」


残る三人が挙手した。


すみれコーチ。


「はい、否決!」


まさにゃんは不満そうだった。


「……多数決で少数意見を切り捨てるんは、あまり感心しませんなあ」


波田顧問が机を叩いた。


「お前が採決に応じたんだろうが!」


こうして、寸又峡の対局は正式にノーゲームとなった。


まさにゃんの優勢は、なかったことになったのである。


本人はしばらく点数表を眺めていた。


「……あそこまで積み上げた点が、手続きひとつで消えるとは……」


すみれコーチが笑う。


「だったら、今夜また勝てばいいじゃん!」


まさにゃんは気を取り直した。


「……せやな。ほな、改めてお願いしますわ」


この時点では、まだ威勢がよかった。


同じ頃、ヒロインたちが集まる大部屋には、華やかな空気が満ちていた。


浴衣姿の少女たちが座布団を並べ、テーブルには和菓子、果物、チョコレート、炭酸飲料、温かいお茶が並んでいる。温泉旅館の和室に、現代の女子会がそのまま移動してきたような光景だった。


凜花の周囲には、元アイドル時代の話や動画配信の裏側を聞きたいメンバーが集まっている。


麗奈の周囲には、ファッションやメイク、イベント現場での立ち居振る舞いに興味を持つメンバーが集まっていた。


派閥というほどではない。


だが、二人の座る位置は、微妙に離れていた。


そして、その真ん中に美月がいた。


凜花が菓子の皿を差し出す。


「美月さん、これ、おいしいですよ♡」


「あ、ほんま? もらうわ」


麗奈がお茶を勧める。


「美月ちゃん、こっちのお茶もどう?」


「おお、ありがとう!」


凜花の方へ。


麗奈の方へ。


再び凜花の方へ。


そして麗奈の方へ。


真央は、その動きを見守っていた。


「美月さん、昼間のループ橋みたいだがね」


「ウチを道路構造物に例えるな!」


詩織が感心した。


「美月さん、運動量が多いですね」


「誰のせいやと思っとんねん!」


そこへ遥室長と琴音が入ってきた。


「みんな、楽しそうなのら」


琴音も微笑む。


「こっちはずいぶん賑やかじゃんね」


美月は救いを求めた。


「室長! ウチ、ずっと二人の間を往復してるんですけど!」


遥室長は凜花と麗奈を見た。


二人とも、完璧な笑顔で挨拶した。


「お疲れ様です♡」


「お疲れ様です」


遥室長は頷いた。


「……美月ちゃん、頑張るのら」


「助けてくれへんのかい!」


部屋は大笑いだった。


やがて話題は、昼間の旅行からファッション、将来の夢、そして恋愛へと移っていった。


きっかけは、あかりの何気ない一言だった。


「なあ、好きって気持ちと、ただの憧れって、どう違うんやろ?」


真央の目が輝く。


「おっ、恋バナだがね!」


凜花は少し考えてから答えた。


「私は、その人と会ってない時にも、何してるかなって考えちゃうことかな。面白いものを見つけたら、真っ先に教えたくなるとか♡」


麗奈も頷く。


「それに、その人の前で自然体でいられるかどうかも大切だと思うわ。憧れだけだと、どうしても自分をよく見せようとしてしまうでしょう?」


二人の言葉は、どちらも的確だった。


遥室長も、真剣に耳を傾けていた。


今度は明日香が尋ねる。


「仕事とか活動が忙しい時って、恋愛とどう両立すればいいじゃんね?」


麗奈は落ち着いた声で答えた。


「全部を相手に合わせようとしないことね。お互いに自分の生活があるんだから、会えない時間まで不安になる関係だと、長く続けるのは大変よ」


凜花も続ける。


「短い連絡でも、気持ちが伝わると嬉しいよね♡ でも、返信を急かさないのも大事かな」


琴音が頷いた。


「無理に合わせすぎねえって、大事なことだと思うじゃん」


遥室長も感心する。


「仕事の人間関係にも通じる話なのら」


麗奈は、さらに一歩踏み込んだ。


「好きな人ができると、嫌われたくなくて本当の自分を隠したくなることもあるでしょう。でも、ずっと背伸びしなければ続かない関係なら、いつか苦しくなると思うの。相手を大切にすることと、自分を粗末にしないことは、両立できるはずよ」


部屋が静かになった。


真央が感心したように呟く。


「……麗奈さん、説得力あるがね」


あかりも大きく頷いた。


「なるほどなあ……」


ひかりは、隣のみのりをちらりと見た。


みのりも同じタイミングでひかりを見る。


二人は、少し照れくさそうに笑った。


美月は、見逃さなかった。


「……そこ、何で今、目ぇ合わせたん?」


ひかり。


「えっ?」


みのり。


「何のことですか?」


美月。


「もうええわ!」


恋愛相談では、凜花も麗奈も頼もしいお姉さんだった。


それならば。


美月は、二人に直接聞いてみることにした。


「なあ、凜花さんと麗奈さん」


凜花。


「はい?♡」


麗奈。


「どうしたの、美月ちゃん?」


「二人とも、相手と距離縮めるアドバイス、めっちゃ上手いやん?」


凜花は微笑んだ。


「そうですか?♡」


麗奈も少し照れた。


「大したことじゃないわよ」


美月は、満を持して言った。


「ほな、二人も自分から歩み寄ったらええやん!」


沈黙。


凜花と麗奈が、同時に言葉を失った。


部屋中の視線が集まる。


真央が小声で呟いた。


「……急に説得力が消えたがね」


美月は叫んだ。


「何でウチが言わせなあかんねん!」


部屋は大爆笑になった。


しかし、凜花と麗奈は互いを嫌っているわけではなかった。


同い年。


同じイベントコンパニオン。


華やかな容姿と、人前に立つための高い技術。


麗奈には、正統派の気品と洗練された美しさがある。


凜花には、元アイドルらしい愛嬌と、相手の心をつかむ華やかさがある。


互いに、自分にはないものを相手が持っていると認めていた。


だからこそ、どうしても意識してしまう。


麗奈が、ぽつりと言った。


「……凜花さんの明るさって、私にはないものだから」


凜花も、小さく頷く。


「麗奈さんの落ち着いた華やかさ、私も素敵だと思ってますよ♡」


美月は、二人を交互に見た。


「……ほな、本人の目ぇ見て言うてみ?」


二人。


「…………」


またしても沈黙。


「まだ無理なんかい!」


女子会で、その夜一番の笑いが起きた。


それでも、昼間よりは確かに距離が縮まっていた。


やがて女子会はお開きになり、ヒロインたちはそれぞれ客室へ戻っていった。


ひかりとみのりは、翌朝の帰路について話しながら廊下を歩いていく。


遥室長と琴音も、ようやく眠れると安心していた。


ところが、凜花はスマートフォンを取り出した。


「私、少しだけRINKA MODEを配信してから寝ますね♡」


そして美月を振り向く。


「美月さんも、一緒に出ませんか?」


美月は嫌な予感がした。


「……少しだけやで?」


配信開始。


「りんか民のみんなぁ、ごきげんよう♡」


凜花が笑顔で挨拶すると、コメント欄が一気に動き始めた。


《陛下こんばんは》


《修善寺温泉!》


《バスツアーどうだった?》


《詩織さんの歌すごかったらしいね》


凜花は今日の旅行を楽しそうに振り返った。


浄蓮の滝。


旧天城トンネル。


天城の山々。


詩織の歌声。


そして、修善寺温泉。


「今日は本当に楽しかったよ。参加者の皆さんにも喜んでもらえて、嬉しかったな♡」


しばらくして、凜花が隣の美月へ顔を向けた。


「今日は美月さんも一緒です♡」


美月が画面に顔を出す。


「どうもー!」


コメント欄。


《うわっ出た!》


美月は即座に反応した。


「出たって何や? ウチはお化けか!?」


《wwwwww》


《草》


《いつもの来た》


《世界の美月降臨》


《定番の挨拶》


凜花は笑いをこらえている。


「美月さん、すっかりお馴染みですね♡」


「定番にすな!」


コメント欄は止まらなかった。


《美月が来ると安心する》


《今日も平和》


《世界基準のツッコミ》


《国際的たつを叱責者》


「まだあの写真の話しとるんかい!」


凜花はとうとう声を上げて笑った。


「美月さん、もう……面白すぎます……!」


しばらくすると、美月がふと口にした。


「……ウチも、配信始めよかな?」


コメント欄。


一瞬、止まった。


次の瞬間。


《みつき帝国建国》


《独裁権威主義国家になりそう》


《コメント欄に言論統制》


《みつき民、毎日説教される》


《みつき民絶対に嫌~》


《国民全員にツッコミ義務》


美月。


「やかましいわ!」


《wwwwww》


《草生える》


《初代皇帝の第一声》


《即位演説きた》


美月は画面を指さした。


「誰が皇帝や! 普通の配信したいだけや!」


《普通とは》


《怒鳴る配信?》


《初回ゲスト:たつを》


「絶対呼ばん!」


凜花は、もう笑いを止められなかった。


「美月さん……もう、お腹痛い……!」


本来は短時間で終える予定だった配信だったが、美月とりんか民の掛け合いがあまりにも面白く、凜花は終了のタイミングを完全に失っていた。


美月が何か言う。


りんか民が茶化す。


美月がツッコむ。


凜花が笑う。


その繰り返しで、時間ばかりが過ぎていった。


最後に、美月が宣言した。


「もう寝るで! ウチ、明日も早いねん!」


《おやすみ皇帝》


《みつき帝国、夜間外出禁止》


《国民も就寝》


「最後までやかましいわ!」


配信終了。


凜花は、笑いすぎて涙を拭いていた。


「美月さん、また一緒にやりましょうね♡」


美月は、疲れ切った顔で答えた。


「……配信者って、ほんま大変やな」


その頃。


別室の最高戦略会議は、絶好調だった。


「ロン!」


「馬鹿野郎!」


「いやいや、ちょっと待ってくださいや!」


「はい、また私の勝ちー!」


すみれコーチが勝つ。


また勝つ。


さらに勝つ。


波田顧問は悪態をつきながら、楽しそうに牌を並べる。


隼人補佐官は慎重に進めるが、すみれの勢いを止められない。


そして、まさにゃん。


「……あれ? おかしいですなあ」


波田。


「何がおかしいんだよ!」


「寸又峡の時は、もうちょっと流れがよかったんですけどな……」


すみれ。


「寸又峡はノーゲームでしょ!」


「いや、それは手続き上の話でして……」


「負けは負けだよ!」


まさにゃんの点数は、みるみる減っていった。


そして、ついに。


ハコテン。


波田顧問が机を叩いて笑った。


「ハッハッハ! 寸又峡の勝ちを持ち越すどころじゃねえな!」


まさにゃんは、点数表を呆然と見つめていた。


「……サスペンデッドを認めてもろてたら……」


隼人補佐官。


「まだ言うんですか!」


すみれコーチは、余裕の笑顔で牌をかき混ぜる。


「じゃあ、もう一回やる?」


まさにゃん。


「……お願いしますわ」


波田顧問。


「よーし、次だ!」


誰もやめようとしなかった。


時刻は、午前四時。


旅館の廊下に、声が響いていた。


「ロン!」


「馬鹿野郎!」


「またですか!」


「次こそは取り返しますわ!」


遥室長は客室で目を開いた。


「…………」


隣の琴音も、すでに起きていた。


「……まだやってるじゃんね」


遥室長は、ゆっくりと布団から出た。


「もう、うるさいのら……」


二人は会議室へ向かった。


扉を開ける。


四人が、相変わらず牌を並べている。


テーブルの上には、飲み物と菓子。


すみれコーチだけが、妙に元気だった。


遥室長。


「もう、うるさいのらあああ!」


四人が振り向いた。


波田顧問。


「おう、遥! 起きたか!」


「起こされたのら!」


すみれコーチ。


「あと少しで一区切りだよ?」


「何時間、一区切りしてるのら!」


まさにゃん。


「いや、わたしも次こそ取り返せる予定でしてな……」


「その予定は一生来ないのら!」


隼人補佐官。


「……申し訳ありません」


遥室長は、補佐官をじっと見つめた。


「帰ったら、話があるのら」


隼人の顔が青くなる。


波田顧問は平然としていた。


「まあまあ、これも最高戦略会議だからよ!」


遥室長は問い詰める。


「じゃあ、何の戦略を話したのら!?」


四人。


「…………」


沈黙。


ようやく隼人が答えた。


「……ヒロ室東海(仮称)の活動を、今後も継続する方向性は確認しました」


遥室長。


「それ、五分の正式会議で決まったのら!」


まさにゃんが慌てて補足する。


「伊豆方面の観光振興についても、前向きな意見交換がありましてな……」


琴音。


「具体的には、どんな話をしたでえ?」


まさにゃん。


「……伊豆には、また来たいですねえ、と」


琴音は、黙って手帳を閉じた。


正式会議、四分三十八秒。


最高戦略会議、七時間以上。


成果。


『ヒロ室東海(仮称)の活動を継続する。伊豆にはまた来たい。』


以上。


遥室長は、天井を仰いだ。


「……もう、何も言いたくないのら」


すみれコーチ。


「じゃあ、もう一局だけ?」


「やめるのらあああ!」


しかし、四人は結局、もうしばらく牌を片づけなかった。


修善寺温泉の静かな夜明けに、再び牌の音が響いた。


翌朝。


一行は朝食を済ませ、桂月楼をチェックアウトした。


遥室長と琴音は、昨夜の騒動のため少し眠そうだったが、仕事に支障はなかった。


一方、最高戦略会議の四人は、明らかに二つの集団へ分かれていた。


すみれコーチ。


元気。


非常に元気。


「おはよー! 今日もいい天気だね!」


残る三人。


波田顧問。


「……おう」


隼人補佐官。


「……おはようございます」


まさにゃん。


「……もう少し寝かせてほしいですわ」


美月が呆れた。


「何やねん、この三人……」


すみれコーチは、満面の笑顔で答える。


「昨日は楽しかったよ!」


遥室長は、疲れた顔で言った。


「すみれコーチだけ元気なのが、一番腹立つのら!」


一行は修善寺駅へ向かった。


帰路は、特急「踊り子」号である。


列車がホームに入り、ヒロインたちとフロントの面々が乗り込む。大きな窓からは、伊豆の朝の景色が見えた。


発車。


列車は、修善寺を離れ、三島へ向かって走り始めた。


車内の座席に収まった途端、徹夜麻雀明けの三人は、一斉に眠り始めた。


波田顧問。


爆睡。


まさにゃん。


爆睡。


隼人補佐官。


爆睡。


しかも、まさにゃんの手には、なぜか麻雀の点数表が握られていた。


すみれコーチだけが、元気に飲み物を開けている。


「やっぱり、旅の締めは列車だね!」


遥室長は、三人を見渡してため息をついた。


「……誰のせいで寝不足なのら」


車内では、ヒロインたちがそれぞれの時間を楽しんでいた。


ひかりとみのりは、並んで座っていた。


みのりの膝の上には、一冊の文庫本。


川端康成の『伊豆の踊子』である。


「ひかりさん。今回、天城を巡ったでしょう?」


「うん。歌の舞台を歩いたの、楽しかったねぇ」


「『伊豆の踊子』も、伊豆の旅が大切な舞台なんです。旅先で出会った人々と道を共にして、相手の純粋さに触れて、自分の心が変わっていく……そういう部分が、とても好きなんです」


ひかりは、みのりの話を真剣に聞いていた。


「ただ景色を見るだけじゃなくて、誰と旅をするかでも、その景色の意味が変わるんだねぇ」


みのりは頷いた。


「はい。旅先での出会いには、日常と違う特別な時間が流れている気がします」


「……今回の私たちも、そうだったのかな?」


「そうかもしれません」


みのりは、少しだけ微笑んだ。


「でも、私たちは旅が終わっても、また会えますから」


ひかりも微笑む。


「うん。また会えるよぉ」


二人の会話は、静かで理知的だった。


恋愛を大げさに語るわけではない。


文学の世界を通じて、旅と出会いと別れについて考える。


その中に、互いへの大切な気持ちが自然に滲んでいた。


別の座席では、詩織とあかりが窓の外を眺めていた。


「わあ、見て! 川が見える!」


詩織が声を弾ませる。


あかりも身を乗り出した。


「ほんまや! ええ景色やなあ!」


二人は、まるで初めて列車に乗った子どものように、車窓を楽しんでいる。


そこへ、元気なすみれコーチがやってきた。


「二人とも、楽しそうだね!」


詩織。


「はい! 昨日は歌ってばかりだったので、今日は景色をゆっくり見られて嬉しいです」


あかり。


「すみれコーチも元気やなあ。昨日、寝てへんのやろ?」


すみれは平然と答えた。


「うん! でも、勝ったから気分がいいんだよ!」


あかり。


「勝つと寝不足も平気なんや……?」


詩織。


「すごいですね……」


すみれ。


「二人とも、今度麻雀やってみる?」


あかりと詩織は、同時に首を横へ振った。


「遠慮しとく!」


「私も、ちょっと……」


すみれは笑いながら、自分の席へ戻っていった。


さらに別の座席。


稲生明日香と伊吹真白は、なぜか大型トラックの構造について語り合っていた。


明日香。


「やっぱり大型車は、車軸の配置と荷重のかかり方が重要じゃんね」


真白。


「そうやねえ。荷物の積み方ひとつでも、走り方が変わるでな」


明日香。


「エアサスペンションの調整も、乗り心地に直結するじゃんね」


真白。


「そうそう。長距離走ると、ああいう違いが疲れに出てくるんやわ」


二人の会話は、完全に技術者と運転手の専門談義になっていた。


近くの参加者が、思わず耳を傾けるほどである。


その少し後ろでは、麗奈と美月が雑談していた。


こちらは、実にくだらなかった。


麗奈。


「美月ちゃん。今朝の旅館の枕、ちょっと高くなかった?」


「せやな。ウチ、二回折った座布団みたいになっとったわ」


「私、途中で外しちゃった」


「ウチもや。結局、枕なしの方が寝やすかったわ」


麗奈。


「でも、枕なしだと髪が変な方向にはねるのよね」


美月。


「朝、めっちゃ爆発しとったん?」


「少しだけね」


「少しだけで済むん、麗奈さんの顔面偏差値のおかげやろ!」


麗奈は吹き出した。


「何それ!」


美月も笑った。


二人は、いつの間にか枕の高さから浴衣の帯、旅館の歯ブラシの硬さへと話題を移していた。


内容はくだらない。


しかし、実に楽しそうだった。


一方、真央と凜花、美音の三人は、真面目な話をしていた。


真央。


「今回のバスツアー、参加者の皆さんに喜んでもらえてよかったがね」


凜花も頷く。


「うん。前回の事件があったから、今回は皆さんが安心して楽しめることが一番だったと思う」


美音。


「静岡には、まだ紹介できる場所がいっぱいあるに。海も山もあるし、食べ物もええでね」


真央。


「地域ごとに魅力が違うのが、静岡の面白いところだがね」


凜花は、今後の配信企画について考え始めた。


「次は、観光地だけじゃなくて、地元のお店や働いている人にも話を聞いてみたいな。景色だけじゃ伝わらない魅力もあると思うんです」


美音が頷く。


「それ、ええに。地元の人の話って、やっぱり面白いもん」


三人は、今回の旅行を単なる慰安で終わらせず、次の活動につなげようとしていた。


そして、前方の座席。


遥室長と琴音は、仕事の話をしていた。


遥。


「今回のバスツアーは成功だったのら。次は、参加者の満足度をもう少し詳しく分析したいのら」


琴音。


「アンケートの集計、帰ったら進めるじゃんね」


遥。


「それから、ヒロインたちの活動日程も調整する必要があるのら」


琴音。


「凜花さんの配信予定と、麗奈さんのイベント予定が重ならんようにした方がよさそうじゃん」


遥は少し考えた。


「……その二人は、今度一緒の仕事を入れた方がいいのか、離した方がいいのか迷うのら」


琴音。


「美月さんに聞いたら、絶対『離してくれ』って言うと思うじゃん」


二人は、思わず笑った。


「……それは間違いないのら」


列車は、三島駅へ近づいていた。


ここで、ひかりは列車を降りる。


みのりは、そのまま首都圏方面へ向かう。


それぞれの帰路に分かれる時間だった。


みのりは、文庫本を閉じた。


「……ひかりさん」


「ん?」


「今回の旅、本当に楽しかったです」


ひかりは、少し寂しそうに微笑んだ。


「私もだよぉ。また一緒に行こうねぇ」


「はい。約束です」


列車が三島駅へ到着する。


ひかりは荷物を持ち、ホームへ降りた。


みのりは、車内に残る。


窓越しに、二人が向き合った。


ひかりが、そっと手を振る。


みのりも手を振り返す。


「……またねぇ」


「……また、会いましょうね」


発車の案内が流れる。


扉が閉まる。


列車が、ゆっくりと動き出す。


みのりは、窓の外を見つめたまま、文庫本を胸に抱いた。


ひかりの姿が、少しずつ遠ざかる。


旅先で生まれた特別な時間が、静かに終わっていく。


まるで映画のラストシーンだった。


ただし、隣の席では。


美月が、窓の外を見ながら呟いていた。


「……何やこれ。完全に映画のエンディングやん」


真央が笑う。


「文学少女のみのりさん、世界観に入り込んどるがね」


美月。


「いや、分かるけど! 昨日までずっと一緒やったやん!」


凜花も微笑む。


「いいじゃないですか♡ 素敵ですよ」


麗奈も頷いた。


「若いって、いいわね」


美月。


「二人まで急にお姉さん目線になるな!」


列車は、三島駅のホームを離れていく。


みのりは、最後まで窓の外を見つめていた。


そして、美月は。


なぜか、少し涙ぐんでいた。


真央が気づく。


「美月さん、泣いとるがね」


「泣いてへん!」


「目、赤いがね」


「……うるさいわ!」


笑いと、少しの切なさが入り混じる車内だった。


こうして、ヒロ室東海(仮称)の伊豆旅行は、無事に終了した。


しかし、物語には、もう一つだけ後日談が残っていた。


東京都港区。


隼人補佐官と芹沢遥室長が同棲している自宅マンション。


帰宅した隼人は、ようやく荷物を置き、ソファへ座ろうとした。


その瞬間。


遥室長が声をかけた。


「……隼人補佐官」


隼人の動きが止まった。


「はい……」


「最高戦略会議の議事について、説明してほしいのら」


隼人は、ゆっくり振り向いた。


「……議事、ですか」


「そうなのら。七時間以上も会議したんだから、何か決まったんでしょ?」


「……はい」


「何が決まったのら?」


沈黙。


隼人は、しばらく考えた。


「……ヒロ室東海(仮称)の活動を、今後も継続する方向で……」


遥室長。


「それは四分三十八秒で決まったのら」


「……はい」


「ほかには?」


「……伊豆方面の観光振興について……」


「具体的には?」


「……また来たいという意見が……」


遥室長は、テーブルに湯呑みを置いた。


「……それだけ?」


隼人は何も答えられなかった。


遥室長は、さらに詰める。


「七時間もあったら、新しいイベントの企画ぐらい決まったはずなのら」


「……そうですね」


「予算は?」


「……特に」


「日程は?」


「……特に」


「役割分担は?」


「……特に」


「じゃあ、何を議論してたのら?」


隼人は、追い詰められた。


そして、つい本当のことを言ってしまった。


「……すみれコーチが、非常に強くて……」


遥室長。


「そこじゃないのら!」


隼人は慌てた。


「いや、牌の流れがですね……」


「だから、そこじゃないのら!」


「まさにゃんさんが、寸又峡のサスペンデッドを主張して……」


「麻雀の話は聞いてないのら!」


隼人は、完全に黙り込んだ。


遥室長は、深くため息をついた。


「……つまり、七時間以上かけて、麻雀しただけなのら?」


隼人。


「……はい」


「会議の成果は?」


「……特にありません」


遥室長は、静かに言った。


「五分で決まったことを、七時間かけて確認したのら?」


隼人は、頭を下げた。


「……申し開きできません」


その時。


隼人のスマートフォンが震えた。


すみれコーチからのメッセージだった。


『次の最高戦略会議、いつやる? 今度はもっと早い時間から始めよっか!』


隼人は、無言でスマートフォンを伏せた。


遥室長が目を細める。


「……今、誰からなのら?」


「……何でもありません」


「見せるのら」


「…………」


港区のマンションに、遥室長の怒鳴り声が響いた。


「もう、最高戦略会議は禁止なのらあああ!」


こうして、修善寺温泉の夜は、ようやく本当に終わった。


ただし。


波田顧問は、次の対局を楽しみにしている。


すみれコーチは、相変わらず絶好調。


まさにゃんは、寸又峡のサスペンデッドをまだ諦めていない。


そして隼人補佐官だけが、次の会議には絶対に参加しないと心に誓った。


その誓いが守られるかどうかは、誰にも分からない。

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