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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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1203/1267

富士川の研修よりうるさい!?――女王陛下・土屋凜花、新橋で「河内のスピーカー」と「寝てる時だけ静かな尾張娘」に挟まれる!

国家特務戦隊ヒロイン中央研修複合学習センター富士川分室。


長い。


とにかく長い。


土屋凜花ですら、研修初日に建物の看板を見上げて、


「国家特務戦隊ヒロイン中央研修複合学習センター……富士川分室」


と一度だけ律儀に最後まで読んだものの、二日目からは普通に、


「富士川分室」


と呼んでいた。


そもそも職員までそう呼んでいる。


正式名称を噛まずに言える人間が何人いるのか。


責任者の芹沢遥室長ですら怪しい。


そんな富士川分室で行われた土屋凜花の新人研修は、驚くほど順調だった。


基礎体力。


高得点。


持久力。


問題なし。


柔軟性。


優秀。


救命講習。


優秀。


危機対応。


優秀。


接遇。


文句なし。


戦闘基礎についても、長年ダンスで培った身体感覚がものをいい、太田すみれコーチが一度フォームを直せば、次には修正されている。


イベント運営に至っては。


元人気アイドル。


そして現在も第一線のイベントコンパニオン。


場数が違う。


元小学校教諭にして現在は近江商人、さらに戦隊ヒロインの研修まで手伝う堀井琴葉に、


「これ以上うちが教えること、あんまりあらへんなぁ」


と言わせ。


すみれコーチからも、


「即戦力。すぐ現場に出していい」


との評価。


凜花本人。


当然。


嬉しい。


かなり嬉しい。


褒められること。


評価されること。


注目されること。


土屋凜花の三大好物である。


ただし。


研修評価表の一番下。


集団行動・協調性――要観察。


そこだけ。


妙に慎重な評価がついていた。


本人。


あまり気にしていない。


というより。


見なかったことにしている。


そして。


正式加入が決まった夜。


静岡県沼津市。


凜花の自宅。


りんか民からは勝手に、


「らぶりんか王国王宮」


と呼ばれている部屋。


リングライト。


点灯。


カメラ。


角度。


確認。


髪。


左右。


確認。


前髪。


確認。


照明。


確認。


そして。


録画ランプ。


点灯。


土屋凜花の動画配信チャンネル。


『RINKA MODE』


配信開始。


画面いっぱい。


凜花。


先ほどまで鏡の前で真剣な顔をしていた人とは思えない。


目元。


ふわっ。


柔らかい。


口角。


絶妙。


少しだけ首を傾ける。


両手。


胸元の前。


小さく。


合わせる。


「りんか民のみんなぁ、ごきげんよう♡」


コメント。


爆発。


《陛下ああああ!》


《かわいい》


《今日も女王陛下が尊い》


《ごきげんようございます!》


《御意》


凜花。


画面。


見る。


ふふっ。


笑う。


「今日もちゃんと来てくれたんだぁ?」


《来ました》


《毎日来ます》


《呼ばれなくても来ます》


凜花。


さらに。


少しだけ。


カメラ。


近づく。


「ほんと? じゃあ、今日も最後まで私だけ見ててね♡」


《無理尊い》


《もちろんです》


《女王陛下しか見ません》


《忠誠》


凜花。


満足。


知っている。


自分がどう笑えばファンが喜ぶか。


どの角度で首を傾ければかわいく見えるか。


少し声を柔らかくした方がいい場面。


逆に女王様らしく顎を上げる場面。


全部。


分かっている。


偶然。


かわいいのではない。


計算してかわいい。


元アイドル。


伊達ではない。


凜花。


突然。


いつもの凛とした表情へ。


「さて。りんか民の皆さまに、女王陛下から正式なご報告があります」


《御意》


《何でしょう陛下》


凜花。


わざと。


二秒。


黙る。


焦らす。


コメント。


《気になる》


《早く》


《陛下焦らすな》


そこで。


にこっ。


「富士川分室での研修、ぜーんぶ終わりました♡」


《おおおおお》


《おめでとう!》


《さすが陛下》


《首席?》


《当然の結果》


凜花。


髪。


耳。


かける。


「かなり良い評価だったみたい」


そして。


少し。


上目気味。


「りんか民のみんな……褒めてくれる?」


《かわいいいい》


《よく頑張りました》


《えらい》


《天才》


《世界一》


凜花。


満足。


「よろしい♡」


完全。


掌。


りんか民。


転がしている。


コメント。


《研修中どこに泊まってたの?》


凜花。


「泊まってないよ?」


《え?》


「毎日、沼津のお家から電車で通ってました」


《毎日!?》


《沼津から通勤》


《女王陛下が電車通勤》


《らぶりんか王国王宮から出勤》


《定期持ってる陛下》


凜花。


眉。


上。


「持ってるわよ! 女王陛下だって電車くらい乗ります!」


《庶民派》


「庶民派言うな!」


《朝のホームに凜花様いたら二度見する》


凜花。


少し。


得意げ。


「まあ……いつ誰に見られてもいいようにはしてましたけど♡」


実際。


朝。


眠い。


でも。


髪。


整える。


服。


綺麗。


姿勢。


良い。


研修所だから。


適当。


など。


凜花の辞書。


ない。


「見られる仕事をしている以上、綺麗でいるのは礼儀」


それが本人の哲学だった。


そして。


配信。


少し。


空気。


変わる。


凜花。


コメント。


眺めてから。


静かに。


「あとね。研修を受けて分かったことがあります」


「戦隊ヒロインって、イベントで歌ったり踊ったり、地域をPRしたりするだけじゃないんだって」


「本当に危険な戦闘任務へ行くこともあるみたいです」


コメント。


《心配》


《危ないことしないで》


《無茶しないでね》


《凜花様が怪我するの嫌》


凜花。


読む。


少し。


黙る。


そして。


ここ。


元アイドル。


土屋凜花。


ファンの心。


掴む。


ポイント。


完全。


理解。


カメラ。


真正面。


見る。


声。


少し。


優しく。


「でも、大丈夫」


間。


「だって私には、守りたい宝物があるから」


《え》


《宝物?》


凜花。


微笑む。


「りんか民のみんな♡」


コメント欄。


止まる。


一瞬。


そして。


爆発。


《尊い》


《尊い尊い尊い》


《泣いた》


《陛下ーーーー!》


《推しててよかった》


《一生りんか民》


凜花。


さらに。


畳みかける。


「私の大切なりんか民に何かあったら嫌だもん」


少し。


唇。


尖らせる。


「だから危険な任務でも、みんなを守るためなら頑張るね♡」


《無理かわいい》


《尊死》


《守られたい》


《女王陛下万歳》


凜花。


満面。


「よろしい♡」


その表情。


完全。


勝者。


りんか民。


歓喜。


女王陛下。


大満足。


なお。


言葉。


嘘。


ではない。


凜花。


本当に。


りんか民。


大切。


ただし。


伝え方が異常にあざとい。


そこへ。


《ところで協調性は?》


凜花。


一瞬。


無表情。


「はい、次のお便り」


《逃げた》


「逃げてない!」


《研修評価表見せて》


「見せません!」


《要観察?》


「何で知ってるのよ!」


女王陛下。


今日も。


順調。


統治。


されているのか。


りんか民に遊ばれているのか。


分からない。


そして。


数日後。


正式加入した土屋凜花に。


最初の仕事。


決定。


戦隊ヒロインとしての。


お披露目イベント。


担当。


ヒロ室東海(仮称)。


資料。


見た。


凜花。


「……あの」


隼人補佐官。


「はい」


「この“仮称”って、いつ取れるんですか?」


「未定です」


「正式名称が決まってない?」


「ですから仮称なのです」


「ずっと?」


隼人。


一瞬。


目。


遠い。


「私も少々心配しています」


イベント前。


まず。


フロントメンバー。


顔合わせ。


場所。


東京。


新橋ヒロ室。


土屋凜花。


24歳。


元アイドル。


現役イベントコンパニオン。


芸能。


イベント。


キャリア。


長い。


初対面。


強い。


こういう場所。


慣れている。


だから。


何も。


心配。


していなかった。


ヒロ室の廊下へ来るまでは。


「せやからウチが言うとるんはな!」


廊下。


響く。


別。


声。


「だで、それはこっちの話とは違うがね!」


「何が違うねん!」


「違うって言っとるがね!」


「ほんなら昨日の話は何やってん!」


「昨日は昨日だがね!」


凜花。


止まる。


隼人。


歩く。


凜花。


「隼人さん」


「はい」


「中、揉めてます?」


「いいえ」


凜花。


耳。


傾ける。


「……喧嘩じゃないんですか?」


「通常会話です」


「あれで?」


隼人。


「あの二人にとっては」


扉。


向こう。


赤嶺美月。


そして。


山田真央。


一人ずつ。


なら。


まだいい。


赤嶺美月。


通称。


河内のスピーカー。


しゃべる。


明るい。


声。


大きい。


何でも。


話題。


する。


一方。


山田真央。


静かなのは寝ている時だけ。


尾張弁。


明るい。


よく。


しゃべる。


こちらも。


何でも。


話題。


する。


問題。


二人。


組み合わせ。


一人。


しゃべる。


相手。


話題。


拾う。


そこから。


別。


話。


始める。


元。


話していた方。


それ。


拾う。


また。


話。


増える。


結果。


話題。


永久増殖。


美月。


「ほんでな、そこの店のおっちゃんがな!」


真央。


「店のおっちゃんで思い出したけど、この前名古屋でさぁ!」


「待て待て! ウチの話まだ終わってへん!」


「美月、前置き長すぎるがね!」


「真央に言われたない!」


「うちの方が短いわ!」


「どこがやねん!」


五分。


十分。


十五分。


まだ。


話す。


離れたデスク。


小宮山琴音。


資料。


整理。


しながら。


時々。


二人。


見る。


そして。


甲州訛り。


混じり。


ぽつり。


「ようまあ、あんだけしゃべって話の種が尽きんじゃんねぇ。そこだけは大したもんずら」


近くの職員。


「琴音さん、そこに感心するんですか?」


琴音。


「だって、うちなら十分で話すことなくなるじゃん」


「あの二人、二十分超えてます」


琴音。


「すげえこんだよ」


褒めるところ。


そこ。


やがて。


遥室長。


現れる。


廊下。


聞く。


「今日も元気だねぇ」


隼人。


「室長、“元気”で処理するには音量が大きすぎます」


遥。


「美月ちゃんと真央ちゃん二人いるんでしょ?」


「はい」


「じゃあ仕方ないら」


凜花。


心。


思う。


何が仕方ないんだろう。


でも。


口。


出さない。


ここ。


ヒロ室。


自分。


新人。


猫。


かぶる。


完璧。


扉。


開く。


遥。


「二人とも、ちょっといい?」


奇跡。


静か。


美月。


「ん?」


真央。


「なに?」


遥。


凜花。


隣。


呼ぶ。


穏やかな。


駿河弁。


「新しいメンバー紹介するだよ。土屋凜花さん。私と同じ静岡県出身だら」


凜花。


綺麗。


一礼。


隼人。


「凜花さんは元アイドルで、現在はイベントコンパニオンとして活動しています」


「沼津市在住ですので、今後はヒロ室東海(仮称)で活躍していただきたいと考えています」


凜花。


すっ。


一歩。


前。


「土屋凜花です。24歳です」


声。


明瞭。


笑顔。


控えめ。


「戦隊ヒロインとしてはまだ新人ですので、皆さんからいろいろ教えていただきたいと思っています」


「どうぞよろしくお願いします」


深すぎず。


浅すぎず。


完璧。


礼。


さっき。


RINKA MODE。


「りんか民のみんなぁ♡」


と言っていた。


女王陛下。


どこ。


行った。


完全。


猫。


しかも。


かなり。


上質。


かぶっている。


美月。


凜花。


見る。


一秒。


二秒。


三秒。


そして。


「うわっ!」


凜花。


一瞬。


びくっ。


美月。


目。


輝く。


「ものっすごい美人やん!」


「何これ!? キラッキラやん!」


「顔ちっちゃ! 脚長っ! めっちゃ華あるやん!」


凜花。


涼しい。


微笑み。


「ありがとうございます」


内心。


もっと言って。


でも。


言わない。


猫。


かぶる。


美月。


「イベントコンパニオンって、やっぱ立ち姿からちゃうなぁ!」


凜花。


「そんなことないですよ」


内心。


そんなことある。


美月。


顔。


見る。


「いや絶対嬉しいやろ?」


「普通です」


「今、口元ちょっと緩んだで」


凜花。


「気のせいです」


速い。


猫。


守る。


次。


真央。


凜花。


見る。


こちら。


好意。


全開。


「ほんと綺麗だがね!」


「写真も見せてもらったけど、実物の方がずっと華やかじゃん!」


凜花。


「ありがとうございます」


真央。


さらに。


「でも笑うと結構かわいい感じなんだね。もっとクールで近寄りにくい人かと思っとった」


凜花。


「そうですか?」


「うん! 元アイドルって聞くと納得だわ」


美月。


「元アイドルなんやろ? 歌えるん?」


凜花。


「はい。一応」


「踊りは?」


「ダンスもやっていました」


美月。


「ええやん! めっちゃ戦力やん!」


真央。


「しかも沼津だもんね。静岡東部のイベント、すごく助かるがね!」


遥。


嬉しそう。


「そうなんだよぉ。私、東部から一人欲しかったんだよねぇ」


美月。


満面。


「凜花さん、よろしくな!」


真央。


「分かんないことあったら何でも聞いて!」


凜花。


「はい。ありがとうございます」


完璧。


礼儀正しい。


穏やか。


協調的。


真帆が聞いた。


業界評。


「自分だけ目立ちたい」


「立ち位置を奪う」


「前へ前へ出る」


その片鱗。


ゼロ。


隼人。


少し。


不思議。


遥。


少し。


安心。


本人。


心。


「最初から自分出す必要ないでしょ。新人なんだし」


土屋凜花。


世渡り。


できない人。


ではない。


むしろ。


できる。


必要なら猫をかぶれる。


問題。


いつ。


脱ぐか。


そして。


顔合わせ。


次。


美月。


真央による。


ヒロ室東海(仮称)。


説明会。


凜花。


ノート。


出す。


ペン。


持つ。


「よろしくお願いします」


美月。


「ほな、まず活動エリアなんやけどな!」


真央。


「基本は静岡、愛知、岐阜、三重だがね!」


美月。


「そうそう! ほんで案件によってはな――」


真央。


「県境あんまり関係ない仕事もあるでね」


「今それウチが言おうとしてた!」


「別にいいがね!」


「ほんで地域イベントが――」


「企業案件も――」


「スポンサーが――」


「自治体が――」


凜花。


真剣。


メモ。


「イベント……企業……自治体……」


美月。


「静岡は横長いやろ?」


真央。


「愛知も尾張と三河じゃ全然違うでね!」


美月。


「せやけど三重もまた独特やん?」


真央。


「岐阜も美濃と飛騨で――」


美月。


「あ、飛騨言うたらこないだ――」


真央。


「それで思い出した!」


脱線。


開始。


五分後。


名古屋。


モーニング。


十分後。


浜松餃子。


十五分後。


東名高速。


新東名。


どっち。


好き。


二十分後。


なぜか。


サービスエリアのソフトクリーム。


凜花。


ノート。


ページ。


半分。


戦隊ヒロイン業務。


残り。


半分。


食べ物。


「…………」


美月。


しゃべる。


真央。


しゃべる。


河内弁。


尾張弁。


高速。


凜花。


研修。


思い出す。


体力訓練。


楽。


戦闘基礎。


楽。


救命。


楽。


座学。


楽。


今。


難しい。


とうとう。


凜花。


静かに。


手。


上げる。


「すみません」


二人。


同時。


「何?」


凜花。


微笑み。


猫。


まだ。


かぶる。


「できれば……一人ずつお話しいただけると助かります」


沈黙。


美月。


「あ、ごめん」


真央。


「ごめんね」


凜花。


「いえ。私がまだ慣れていないので」


違う。


二人が。


同時。


しゃべっているから。


でも。


新人。


凜花。


相手。


立てる。


隼人。


少し。


感心。


「非常に丁寧な言い方ですね」


凜花。


「普通ですよ」


その。


三十秒後。


真央。


「そういえば、もう一個言っとかないかんことあった!」


美月。


「あ、それならウチも!」


再開。


凜花。


視線。


一瞬。


天井。


「…………」


隼人。


そっと。


横。


「お疲れですか?」


凜花。


顔。


笑顔。


そのまま。


小声。


「富士川分室より大変かもしれません」


隼人。


小声。


「私もそう思います」


妙。


仲間意識。


発生。


小宮山琴音。


遠く。


聞きながら。


「新人さん、よう耐えとるじゃんねぇ」


ただ。


しばらく。


聞く。


凜花。


気づく。


二人。


確かに。


うるさい。


かなり。


うるさい。


でも。


意地悪。


ゼロ。


新入り。


警戒。


ゼロ。


むしろ。


歓迎。


100%。


美月。


「凜花さん沼津やろ? 東部の現場やったら地元枠で強いやん!」


真央。


「そうそう。地元の人がおるだけで、お客さん安心するでね」


美月。


「それに元アイドルで現役コンパニオン。ステージなんか慣れたもんやろ?」


凜花。


「はい。ステージには慣れています」


真央。


「ならお披露目イベントも安心だがね!」


凜花。


止まる。


「お披露目イベント?」


美月。


「せやで。凜花さんの戦隊ヒロイン初ステージ」


瞬間。


凜花。


瞳。


わずか。


輝く。


美月。


敏感。


「あっ」


「何ですか?」


「“ステージ”言うた瞬間、めっちゃ目ぇ輝いた」


「輝いてません」


真央。


「輝いたがね」


「気のせいです」


美月。


ニヤニヤ。


「お客さん、結構来ると思うで」


凜花。


「そうなんですか?」


「食いついた!」


「業務上の確認です」


真央。


「取材とかカメラも来るかもしれんよ」


凜花。


一瞬。


間。


「……そうなんですね」


美月。


「今の一秒、何や!」


凜花。


「何でもありません」


猫。


必死。


ただ。


心。


中。


観客。


カメラ。


取材。


戦隊ヒロインとして初ステージ。


いい。


非常に。


いい。


美月。


「凜花さん、結構目立つん好きなんちゃう?」


凜花。


笑顔。


「人前に立つ仕事ですから、注目されることには慣れています」


嘘。


ではない。


質問。


少し。


ずらした。


真央。


素直。


「頼もしいじゃん!」


美月。


「ステージ強い人来てくれんの助かるわ!」


凜花。


「ありがとうございます」


また。


猫。


その後。


集合時刻。


衣装。


リハーサル。


MC。


地域PR。


スポンサー。


注意事項。


説明。


ようやく。


終了。


凜花。


ノート。


閉じる。


「今日はありがとうございました。いろいろ教えていただいて助かりました」


美月。


「堅い堅い! 凜花さん年上やろ? もっと普通でええって!」


真央。


「そうそう。もう仲間なんだで」


凜花。


一瞬。


止まる。


仲間。


アイドル時代。


少し。


苦手。


だった。


言葉。


でも。


今日は。


嫌。


ではない。


「……じゃあ、そのうち」


美月。


「そのうち?」


凜花。


微笑む。


「慣れたら」


真央。


「早く慣れてね!」


美月。


「そしたら飯でも行こ!」


凜花。


「はい」


今は。


まだ。


優等生。


土屋凜花。


猫。


ぴったり。


かぶる。


美月。


真央。


まだ。


知らない。


目の前。


丁寧。


控えめ。


笑顔。


新人。


数時間後。


沼津。


王宮。


リングライト。


前。


どうなる。


か。


夜。


RINKA MODE。


配信。


開始。


凜花。


さっきより。


ずっと。


柔らかい。


顔。


指先。


小さく。


手。


振る。


「りんか民のみんなぁ、お待たせ♡」


《陛下ーーー》


《待ってました》


凜花。


頬。


片手。


添える。


少し。


首。


傾ける。


「今日ね、新しい仲間に会ってきたの」


《どうだった?》


《美人いた?》


《仲良くなれそう?》


凜花。


考える。


わざと。


考える。


「んー……」


《溜めるな》


そして。


「とーっても元気な人たちでした♡」


《元気》


《それだけ?》


《うるさかった?》


凜花。


笑顔。


「私、そんなこと一言も言ってませんけどぉ?」


《言ってる顔》


《声が物語ってる》


凜花。


頬。


膨らませる。


「もう。りんか民って、すぐ私のこといじめるよね?」


《かわいい》


《あざとい》


《計算》


凜花。


「計算って言った人、あとで覚えておくから♡」


《怖い》


《ご褒美》


「喜ぶな!」


しかし。


次。


お披露目イベント。


話。


出す。


凜花。


急に。


楽しそう。


「それでね。私の戦隊ヒロインとしての初ステージ、決まりました♡」


コメント。


大爆発。


《絶対行く》


《りんか民集合》


《初陣》


《最前列》


《陛下を見に行く》


凜花。


人差し指。


立てる。


「はい。りんか民に女王陛下から命令があります」


《御意》


「場所取りで揉めない」


《御意》


「スタッフさんの指示には絶対従う」


《御意》


「他のお客さんに迷惑をかけない」


《御意》


凜花。


満足。


「いい子♡」


《尊い》


《もっと言って》


凜花。


少し。


顔。


カメラ。


近づける。


「ちゃんとお約束守って来てくれたら……」


間。


「女王陛下が、とびっきりかわいくして待っててあげる♡」


《うわあああ》


《絶対行く》


《チケットどこ》


《仕事休む》


凜花。


画面。


見て。


大満足。


これ。


ヒロ室。


美月。


真央。


見たら。


多分。


驚く。


あの。


礼儀正しい。


「今日はありがとうございました」


と。


同一人物。


思えない。


でも。


凜花にとって。


どちらも。


本物。


仕事。


新人。


場。


読む。


ヒロ室。


猫。


かぶる。


りんか民。


相手。


ファン。


喜ばせる。


全力。


サービス。


する。


そして。


最後。


凜花。


少し。


真面目。


「初めて戦隊ヒロインとして人前に立つから、ちゃんと最高の状態で行くね」


「りんか民のみんなが、“凜花を応援しててよかった”って思えるステージにするから」


コメント。


《尊い》


《絶対応援する》


凜花。


微笑む。


「だから……ちゃんと私を見ててね♡」


《もちろん》


《陛下しか見ない》


そして。


小さく。


本音。


「……せっかく出るんだもん。一番目立ちたいし」


《出た》


《通常運転》


《女王陛下》


《協調性》


凜花。


即座。


「協調性って書いたりんか民、前へ出なさい!」


《御意》


「出てくるんじゃない!」


配信。


大笑い。


同じ頃。


東京。


新橋ヒロ室。


隼人補佐官。


次回イベント。


進行表。


眺める。


出演者。


赤嶺美月。


山田真央。


土屋凜花。


三人。


並ぶ。


遥。


横。


「どうしたの?」


隼人。


「いえ」


「何か心配?」


一拍。


「今日の土屋さんは非常に礼儀正しく、協調的でした」


遥。


「そうだら?」


「はい」


「じゃあ大丈夫じゃん」


隼人。


少し。


遠い目。


「“今日の”というところが、なぜか気になるだけです」


遥。


「隼人くん、心配性だねぇ」


「室長が楽観的すぎるんです」


遥。


笑う。


「大丈夫だらぁ」


隼人。


進行表。


もう一度。


見る。


河内のスピーカー。


寝ている時だけ静かな尾張娘。


そして。


元人気アイドル。


現役イベントコンパニオン。


らぶりんか王国。


絶対君主。


女王陛下。


「……予定通り終わりますように」


誰に。


祈ったのか。


本人にも。


分からない。


富士川分室の研修を。


高成績。


突破した。


土屋凜花。


24歳。


戦隊ヒロイン。


正式加入。


新橋。


初顔合わせ。


無事。


終了。


美月。


好意的。


真央。


好意的。


凜花。


礼儀正しい。


協調的。


実に。


平和。


今のところは。


なぜなら。


二人。


まだ。


知らない。


ヒロ室で。


おとなしく。


「よろしくお願いします」


と頭を下げていた新人が。


沼津へ帰った途端。


カメラの前で。


「りんか民ぃ♡ ちゃんと私だけ見ててね♡」


と笑う。


筋金入りの。


女王陛下。


であることを。


そして。


その女王陛下が。


初めて。


戦隊ヒロインとして。


観客。


大勢。


カメラ。


前。


立つ日。


もう。


すぐ。


そこまで。


迫っていた。


猫をかぶった土屋凜花が。


ステージの上でも。


最後まで。


猫をかぶっていられるのか。


それは。


次の公演で。


明らかになる。

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