世界級スポンサー三社が本気で場所取り!? ぽかぽかトリオ大阪公演、美月ついに演出家デビュー!
未就学児向け戦隊ヒロインユニット――ぽかぽかトリオ。
体操のお姉さん、白浜麻衣。
工作のお姉さん、宮沢萌音。
歌のお姉さん、藤原詩織。
三人は今や、全国の子育てイベント関係者から、
「呼べば間違いない」
とまで言われる人気ユニットになっていた。
子どもたちから人気がある。
それは当然。
だが。
プロモーターからも人気。
自治体からも人気。
スポンサー企業からも人気。
理由。
三人とも。
遅刻しない。
挨拶する。
スタッフに横柄な態度を取らない。
控室を散らかさない。
SNSで余計なことを書かない。
酒を飲んで騒がない。
公演終了後にはスポンサーへきちんと礼を言う。
予算を渡せば、その範囲内で普通に食事する。
そして何より。
子どもたちが笑顔で帰る。
谷口佳乃――けちのんですら、
「この三人なら安心して経費を預けられます」
と太鼓判を押している。
芹沢遥室長に至っては、
「ぽかぽかトリオは私の癒やしだよ」
と公言。
そんな三人へ。
今度は大阪市から大型公演の依頼が届いた。
大阪。
商都。
食い倒れ。
笑い。
巨大ターミナル。
高層ビル。
劇場。
スポーツ。
企業。
何でもある。
しかも今回の会場は、大阪都心部にある大型演劇ホール。
普段はミュージカルや舞台公演にも使われる本格的な施設だ。
午前。
午後。
一日二公演。
イベント名。
『ぽかぽかトリオとあそぼう! なにわ・にこにこファミリーステージ』
そして。
スポンサー。
豪華。
豪華すぎた。
一社目。
関西ガス。
大阪を本拠に、都市ガス、エネルギー、電力、地域事業を展開する世界規模の巨大企業。
二社目。
西日本コミュニケーションネットワーク。
旧逓信行政の流れをくみ、かつて国営だった通信事業を源流とする西日本最大級の通信インフラ企業。
三社目。
中央生命。
大阪に本社を置き、国内最大級どころか世界的規模を誇る生命保険会社。
三社とも。
世界級。
三社とも。
大阪本社。
三社とも。
協賛金。
完全に同額。
ここから。
戦いが始まった。
ただし。
戦うのはヒロインではない。
企業広報担当者だった。
パンフレット制作会議。
担当者。
「特別協賛三社のロゴはこちらへ――」
関西ガス広報、
「すみません」
通信会社広報、
「一点よろしいでしょうか」
中央生命広報、
「確認させてください」
三人。
同じ場所。
指。
パンフレット裏表紙。
最上段。
関西ガス、
「開催地は大阪ですから、弊社を上へお願いできませんか」
通信会社、
「弊社も大阪に本社がございます」
中央生命、
「弊社もです」
関西ガス、
「弊社は大阪の生活インフラを――」
通信会社、
「通信も生活インフラです」
中央生命、
「生命保険も社会インフラです」
担当者、
「…………」
関西ガス、
「それではロゴサイズを少しだけ――」
通信会社、
「協賛金は同額ですよね?」
中央生命、
「当然、同サイズでしょう」
関西ガス、
「なら左端は弊社で」
通信会社、
「左端が最も視線へ入りやすいというデータもございます」
中央生命、
「中央配置が公平では?」
担当者。
心の中。
子ども向けイベントなのだが。
一方。
表紙。
麻衣。
笑顔。
萌音。
笑顔。
詩織。
笑顔。
虹。
星。
風船。
花。
「みんなでたのしくあそぼう!」
その裏で。
世界企業。
一ミリの場所取り。
まず。
関西ガス。
切り札。
赤嶺美月。
都市対抗野球の応援。
地域イベント。
チアリーディング。
以前から関西ガスとは付き合いが深い。
広報担当。
「美月ちゃん」
「はーい!」
「ちょっとお願いがあるんやけど」
数分後。
美月。
電話。
新橋。
「遥室長!」
『何?』
「関西ガスさん、スポンサー欄一番上でええよな?」
『何で?』
「大阪やし!」
『三社とも大阪本社だよ』
「…………」
『しかも協賛金同額』
美月。
少し考える。
「ほんなら、昔からの付き合い!」
『それ美月ちゃん個人の話でしょう』
「大阪の人情や!」
『企業広告に人情持ち込まないで』
失敗。
しかし。
関西ガス。
次の一手。
美月を。
舞台演出アドバイザー。
として公演制作へ投入。
本人。
大喜び。
「ついにウチも演出家デビューや!」
遥、
『アドバイザーだよ』
「ほぼ同じや!」
『違うよ』
その頃。
西日本コミュニケーションネットワーク。
こちらも。
黙っていない。
美月を関西ガスに押さえられた。
ならば。
別ルート。
ターゲット。
葛城正男室長代理。
通称。
まさにゃん。
夜。
大阪。
繁華街。
高級キャバクラ。
まさにゃん。
ソファ。
隣。
美女。
目の前。
高級フルーツ。
通信会社広報。
「葛城室長代理、今後とも良い関係を――」
まさにゃん、
「いやいや、こんなんしても掲載順は変わりませんて!」
女性、
「まさにゃんさん、飲んでますぅ?」
「飲んでますけど!」
広報、
「例えば弊社ロゴだけ、ほんの数ミリ――」
「数ミリが一番アカンやつやないですか!」
翌朝。
新橋。
遥、
「昨日どこ行ってたの?」
まさにゃん、
「……接待されてました」
「何で正直に言うの?」
「隠したらもっと怒るでしょ」
波田顧問、
「何か約束したのか?」
「してません!」
「じゃあ酒と飯だけ得したな」
遥、
「波田さんまで!」
しかし。
まさにゃん。
役職。
室長代理。
悲しいかな。
世界企業同士の力比べをひっくり返すほどの政治力。
ない。
美月、
「通信会社、現状最下位やな」
まさにゃん、
「何の順位やねん!」
最後。
中央生命。
こちらは。
カード。
強烈。
隼人補佐官。
電話。
着信表示。
見る。
顔。
固まる。
遥、
「誰?」
「大学時代の先輩です」
「怖い?」
「非常に」
京都の国内最高峰クラスの国立大学。
学生時代。
有名なアメリカンフットボール部に所属していた先輩。
現在。
中央生命の幹部。
電話。
『おう、隼人』
隼人。
背筋。
ピン。
「ご無沙汰しております!」
遥、
「声変わってる」
電話。
『今度の大阪のイベント、ウチもスポンサーやろ?』
「はい」
『ウチ、一番上でええな』
「いや、それが三社同額で……」
『何や?』
「三社同額であります!」
遥、
「何で軍隊口調なの?」
隼人、
「先輩だからです!」
電話。
少し間。
『お前、七年前の合コン覚えてるか?』
隼人、
「その件は関係ないでしょう!」
遥。
食いつく。
「何?」
『格好つけてワイン注文してな』
「やめてください!」
『銘柄読めんで店員に――』
「本当にやめてください!」
遥、
「続き聞きたい」
「室長まで!」
電話。
『二軒目では――』
「それは墓まで持っていってください!」
隼人。
完全敗北。
電話。
終了。
遥、
「で?」
隼人。
目。
泳ぐ。
「……中央生命は世界最大級の保険会社ですし」
美月、
「歯切れ悪っ」
「スポンサーとして極めて重要でありますので、多少の配慮は……」
遥、
「脅されてない?」
「脅されてません!」
美月、
「昔の合コン暴露されただけや」
「それが一番嫌なんです!」
三社。
関西ガス。
美月カード。
西日本コミュニケーション。
まさにゃん接待。
中央生命。
隼人の怖い先輩。
互角。
いや。
まさにゃんだけ。
明らかに弱い。
それでも。
企業本体は三社とも。
一歩も引かない。
ついに。
会議。
波田顧問。
登場。
三社の担当者。
資料。
広告位置。
ロゴサイズ。
背景色。
読み上げ順。
公式サイト。
看板。
パンフレット。
延々。
波田。
五分。
聞く。
そして。
「……それだけか?」
三社。
「?」
波田。
元。
政府中枢。
安全保障。
外交。
諜報。
国家機密。
本人曰く。
「墓場まで持っていく」
という案件を。
両手の指では数えきれないほど知っている。
その中には。
表へ出た瞬間。
国際関係。
安全保障。
世界の力関係。
全部ひっくり返りかねないものまである。
遥。
隣。
「たまにこの人、本当に怖いな……」
波田。
三社を見る。
「あんたら、全員大阪本社」
「はい」
「協賛金、同額」
「はい」
「目的、子ども向けイベント支援」
「はい」
「じゃあ全員同じでいいだろ」
関西ガス、
「しかし掲載順が――」
「子どもが見んのか?」
沈黙。
「幼稚園児がパンフレット開いて、“関西ガスさんが二ミリ上ですね”とか言うのか?」
誰も。
言わない。
波田。
決める。
表紙下部。
三社ロゴ。
横一列。
同じ大きさ。
舞台。
左右。
同じ面積。
公式サイト。
同じサイズ。
場内アナウンス。
同回数。
パンフレット紹介。
同文字数。
順番。
ページごとにローテーション。
そして最後のページ。
三社合同。
「大阪の子どもたちの未来を、私たちは一緒に応援します」
波田、
「これなら三社とも一番だ。文句あるか?」
三社。
沈黙。
やがて。
関西ガス、
「……ございません」
通信会社、
「弊社も問題ありません」
中央生命、
「了承いたします」
終了。
遥、
「波田さん、すごい」
「こんなの簡単だよ」
「世界企業三社ですよ?」
「世界の本当のパワーバランスがひっくり返るような揉め事に比べりゃ、赤子の手ぇひねるようなもんだ」
遥、
「それ以上は聞かないことにします」
「その方がいい」
そして。
公演当日。
大阪市。
大型ホール。
朝。
美月。
黒い服。
インカム。
腕組み。
完全に。
自分を演出家だと思っている。
まどか。
やって来る。
「美月ちゃん、えらい格好決めてるねぇ」
「今日は演出家やからな!」
まどか。
穏やかに笑う。
「ふふ、そうなんや。ほな頑張ってな」
佳乃、
「アドバイザーですが」
「けちのんは黙っといて!」
まどか、
「まあまあ。美月ちゃん、張り切ってんねんからええやん」
「まどかだけや、ウチを分かってくれるの!」
「でも調子乗ったら止めるで」
「やっぱり味方ちゃう!」
その頃。
ぽかぽかトリオ。
通常運転。
麻衣。
ストレッチ。
萌音。
工作材料。
詩織。
「麻衣ちゃぁん」
「何ですか?」
「台本どこぉ?」
「詩織さんの手にあります」
「……あったぁ」
美月、
「演出以前の問題やな」
午前公演。
開幕。
麻衣。
ステージ。
「大阪のみんなー! こんにちはー!」
子ども。
「こんにちはー!」
美月。
舞台裏。
モニター。
腕組み。
「うん。入り完璧や」
スタッフ、
「通常進行です」
「演出家には空気が分かんねん!」
まず。
麻衣。
体操。
照明。
いつもより少し華やか。
子ども。
ジャンプ。
親。
笑顔。
麻衣。
「上手にできなくても大丈夫! いっぱい動いてねー!」
美月、
「ええで麻衣! その調子や!」
聞こえない。
次。
萌音。
工作。
美月案。
大阪の街並みをイメージした巨大パネル。
子どもたちが作った紙飾りを。
自由に。
貼る。
完成。
みんなで作る、にこにこ大阪。
萌音、
「どこに貼ってもいいよー!」
子ども。
楽しそう。
美月。
自信満々。
「これはウチの企画や!」
佳乃、
「これは確かに良いですね」
「やろ!?」
「これは」
「一言余計や!」
続いて。
詩織。
歌。
舞台。
照明。
小さな星。
淡い光。
詩織。
歌う。
天使のような声。
会場。
静か。
聞き入る。
美月。
「……完璧や」
まどか。
舞台袖。
そっと。
「詩織ちゃん、ほんま綺麗な声やねぇ」
美月、
「演出も見て!」
まどか、
「見てる見てる。星、綺麗やよ」
「やろ!」
優しい。
そして。
最後。
親子全員参加。
あの。
エビとカニをモチーフに。
両手。
ハサミ。
身体。
横。
ジャンプ。
誰でも。
初見でも。
小さな子どもでも。
一緒に踊れる。
超定番の愉快な体操ダンス。
本番前。
舞台裏。
麻衣、
「最後ですよ!」
萌音、
「準備OK」
詩織、
「歌うよぉ」
そして。
美月。
なぜか。
準備運動。
麻衣、
「美月さん、出ませんよ?」
「知ってる!」
イントロ。
ステージ側。
麻衣。
「エビ!」
会場。
「エビ!」
萌音。
「カニ!」
「カニ!」
その瞬間。
裏。
観客から絶対見えない舞台袖。
美月。
わざと。
あり得ないくらい大げさに。
両手。
チョキ。
腰。
ガクン。
肩。
上下。
顔。
変顔。
「エッビィィィ!」
裏方。
「ぶっ!」
次。
腰。
逆。
膝。
曲げすぎ。
「カァニィィィ!」
スタッフ。
笑い。
麻衣。
横目。
「美月さん、動き違います!」
美月。
小声。
「ええねん! 客席から見えへん!」
今度は。
カニ。
横歩き。
異常に低姿勢。
「カニカニカニカニ!」
裏方。
笑いを堪える。
詩織。
歌いながら。
袖を見て。
吹き出しそう。
萌音。
笑顔。
さらに。
美月。
今度。
エビ。
腰。
反る。
両手。
ぴょん。
「エビィ!」
スタッフ、
「赤嶺さん、やめて、笑う!」
美月。
ニヤッ。
「これでええねん」
本番中。
スタッフは。
どうしても緊張する。
時間。
音響。
照明。
子どもの安全。
保護者。
スポンサー。
事故。
だから。
わざと。
美月は。
馬鹿馬鹿しいくらい大げさに踊る。
自分が笑われる。
裏方。
笑う。
張り詰めた空気。
少し。
緩む。
「エビ!」
「カニ!」
舞台上。
子ども。
笑顔。
舞台裏。
スタッフ。
笑顔。
美月。
満足。
「これも演出や!」
佳乃、
「それは認めます」
「珍しく褒められた!」
まどか。
穏やか。
「美月ちゃん、こういうとこ上手やねぇ」
「やろ?」
「自分が笑われ役になるの、嫌がらへんもんね」
美月。
少し照れる。
「まあな」
午前。
大成功。
午後。
二公演目。
さらにスムーズ。
美月。
舞台裏。
また。
「エビィ!」
「カニィ!」
スタッフ、
「また始まった!」
むしろ。
期待されている。
三社。
スポンサー席。
公演が始まれば。
さっきまで。
ロゴ。
位置。
数ミリ。
掲載順。
揉めていた人々も。
子どもたちが、
「エビ!」
「カニ!」
と叫ぶ姿を見て。
普通に。
笑っていた。
夕方。
二公演。
終了。
美月。
腕組み。
「よし。演出家デビュー、大成功や!」
佳乃、
「舞台演出アドバイザーです」
「最後まで言うん!?」
そして。
夜。
一行。
大阪市内。
人気お好み焼き店。
『てっぱん坂井』
坂井まどかの実家。
鉄板。
熱。
ソース。
香ばしい匂い。
暖簾。
店。
賑やか。
まどか。
エプロン。
「みんなお疲れさん。今日はよう頑張ったなぁ」
美月、
「腹減ったー!」
「はいはい。今焼くから座っとき」
麻衣、
「お邪魔します!」
萌音、
「いい匂い!」
詩織、
「お腹空いたぁ」
今日。
主役。
名物。
ネギ焼き。
薄めの生地。
たっぷり。
青ネギ。
香ばしく焼く。
ソース一辺倒ではなく。
醤油系。
さっぱりした味。
鉄板。
じゅうううう。
まどか。
慣れた手。
ひっくり返す。
美月、
「これこれ! ウチ、これ好きやねん!」
まどか。
笑う。
「美月ちゃん、うち来たら毎回それ言うてるやん」
「好きやもん!」
皿。
ネギ焼き。
湯気。
麻衣。
一口。
「おいしい!」
萌音、
「ネギ甘い!」
詩織、
「ふわふわぁ」
まどか、
「熱いから気ぃつけて食べや」
詩織、
「はぁい」
五人。
ソフトドリンク。
ネギ焼き。
焼きそば。
鉄板料理。
完全に。
女子会。
そして。
美月。
本題。
胸張る。
「ほな! 本日の演出について忌憚のない意見を!」
まどか。
優しく。
「ほんまに忌憚なく言うてもええの?」
「もちろん!」
麻衣。
「じゃあ」
「おう!」
「最初の照明、少し眩しかったです」
美月。
「…………」
萌音。
「街のパネルはすごく良かった」
美月。
復活。
「やろ!」
「でも工作スペース、ちょっと狭かった」
「…………」
詩織。
「星の照明、綺麗だったぁ」
「ほら!」
「でも歌の途中で光が動くと、ちょっと気になったぁ」
美月。
また。
沈む。
鉄板。
じゅうううう。
まどか。
くすくす。
「美月ちゃん、分かりやすい顔するねぇ」
「まどかはどう思った?」
「うーん」
ネギ焼き。
切る。
「子ども向けやから、見せる演出より、一緒にやれる演出の方がええんとちゃうかな」
美月。
静か。
まどか。
さらに。
穏やかに。
「美月ちゃんの“大阪の街をみんなで作る”っていうのは、めっちゃ良かったと思うで」
「ほんま?」
「うん。子どもが参加できたもん」
「そっか……」
麻衣、
「私もそう思います」
萌音、
「私も」
詩織、
「わたしもぉ」
美月。
ネギ焼き。
一口。
もぐ。
そして。
珍しく。
「……もっと演出の勉強するわ」
四人。
「…………」
まどか。
笑顔。
「えらいやん、美月ちゃん」
美月、
「ウチかて反省する時くらいあるわ!」
萌音、
「珍しいから」
麻衣、
「すみません」
詩織、
「えらいえらい」
「何で詩織に子ども扱いされなあかんねん!」
一同。
爆笑。
美月。
すぐ。
元気。
「次はもっと子ども参加型にする!」
麻衣、
「いいですね!」
「客席から巨大バルーン飛ばして――」
萌音、
「危ない」
「スモーク焚いて――」
詩織、
「歌いにくい」
「レーザー――」
麻衣、
「未就学児向けです!」
美月、
「三人とも否定早い!」
まどか。
ゆっくり。
「まあまあ。ちょっとずつ勉強してったらええやん」
美月。
ネギ焼き。
食べる。
「……うん」
まどか、
「美月ちゃん、今日ほんま楽しそうやったで」
「そら楽しかったもん」
「舞台出てへんのにな」
美月。
ニヤッ。
「裏方もおもろいな」
麻衣。
少し。
嬉しそう。
「美月さんが裏で変な踊りしてたから、スタッフさん楽しそうでした」
萌音、
「わざとだったんだね」
美月、
「当たり前や!」
詩織、
「わたし笑いそうになったぁ」
「そこは我慢して!」
また。
笑う。
ネギ焼き。
次。
焼く。
まどか、
「もう一枚いこか?」
全員、
「はい!」
美月、
「大盛り!」
まどか、
「ネギ焼きに大盛りって言い方あんまりせえへんよ」
「ネギ多め!」
「はいはい」
鉄板。
じゅう。
ソース。
香り。
そこから。
普通のガールズトーク。
麻衣。
幼稚園教諭。
萌音。
飯能のテーマパーク。
詩織。
歌。
美月。
大学。
まどか。
店。
スポンサーの話。
萌音、
「でも、世界的な会社三つが本気でパンフレットの位置で揉めるってすごいね」
美月、
「大人は細かいねん」
麻衣、
「子どもは三社の順番、見てなかったですよね」
まどか、
「そら見てへんやろなぁ」
詩織、
「わたしも見てなかったぁ」
美月、
「スポンサーさんの前でそれ言うたらあかん!」
全員。
笑う。
世界級企業。
三社。
プライド。
大きい。
協賛金。
同額。
広告。
一歩も譲らない。
その争い。
政府中枢を渡り歩いた波田顧問が。
数分。
まとめた。
そして。
当日。
誰も。
ロゴ位置のことなど気にしていなかった。
子どもたちは。
麻衣と踊り。
萌音と作り。
詩織と歌った。
保護者も。
笑った。
スタッフも。
笑った。
美月も。
舞台裏。
全力。
「エビ!」
「カニ!」
それで。
良かった。
三社共同のメッセージ。
「大阪の子どもたちの未来を、私たちは一緒に応援します」
結局。
一番大事なのは。
そこだった。
てっぱん坂井。
夜。
最後のネギ焼き。
美月。
箸。
止める。
「なあ」
まどか、
「ん?」
「次の大阪公演もウチ、演出やってええかな」
まどか。
にっこり。
「今日の反省、ちゃんと覚えとるんやったらええんとちゃう?」
美月、
「覚えとる!」
麻衣、
「照明控えめ」
萌音、
「工作スペース広め」
詩織、
「歌の時、光動かさない」
美月、
「もうメモしたわ!」
まどか、
「ほな次はもうちょっと上手になるな」
美月。
胸張る。
「次は敏腕演出家・赤嶺美月や!」
まどか。
穏やかに。
「まず“自称”を取れるよう頑張ろな」
美月、
「まどかぁ!」
五人。
大笑い。
ぽかぽかトリオ大阪公演。
午前。
午後。
満員御礼。
スポンサー三社。
最終的に全社満足。
そして。
自称敏腕演出家。
赤嶺美月。
初仕事。
成功。
反省。
ほんの少し。
成長。
たぶん。
翌日。
美月の企画ノートには。
大きく。
こう書いてあった。
「次回案――子ども参加型を増やす。スモークは要検討」
遥室長。
それを見て。
「まだスモーク諦めてないの!?」
大阪公演。
最後まで。
とても平和だった。




