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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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1191/1293

『ヒロインたちの都市対抗――真夏のエアードーム! 白球、郷土愛、戦隊ショーが全部乗せ!?』 ――勝つのは選手だけじゃない。ベンチもスタンドもヒロインも、都市の誇りを背負って大騒ぎ!

東京都文京区。


真夏。


空から降り注ぐ陽光を跳ね返すように、巨大な白い屋根が都心に浮かんでいる。


エアードーム。


その内部は朝から、既に異様な熱気に包まれていた。


外の気温とは関係ない。


三塁側からは勇壮な吹奏楽。


一塁側からは大太鼓。


チアリーダー。


応援団。


横断幕。


法被。


社旗。


都市名を叫ぶ何千人もの声。


客席では会社員が立ち上がり、家族連れがメガホンを叩き、OBが昔話をし、地元から夜行バスや新幹線でやって来た人々が声を枯らす。


グラウンドでは、日本のアマチュア野球最高峰に連なる選手たちが白球を追う。


その名は――。


都市対抗野球大会。


社会人野球の祭典。


真夏の祭典。


そして。


ただの「企業対抗野球大会」ではない。


都市対抗。


ここが重要なのである。


普段は製鉄所。


ガス会社。


製紙工場。


自動車メーカー。


鉄道会社。


金融機関。


さまざまな企業の名前を背負って戦う選手たちが、この舞台では、


「姫路市代表」

「大阪市代表」

「石巻市代表」


と、自分たちの街を背負う。


だから応援席も。


会社の宣伝だけでは終わらない。


地元の祭りが来る。


郷土芸能が来る。


名物が登場する。


地域に縁のある音楽が流れる。


観光名所を模した巨大な大道具まで出てくる。


吹奏楽、応援団、チアリーディング。


時には寸劇。


時にはダンス。


時には、


「それ、もう野球の応援なのか?」


と尋ねたくなるほどの大演出。


ところが。


それがいい。


試合だけではない。


応援席まで含めて、


「俺たちの街が一番だ!」


と全力で競い合う。


エアードームそのものが、全国の街を一度に詰め込んだ巨大なお祭り会場になる。


しかも選手のレベルは一級品。


大学球界のスター。


プロ入りを逃して社会人で鍛え直した選手。


若手の逸材。


百戦錬磨のベテラン。


この大会で一気に評価を上げ、プロ野球ドラフトで指名される者も珍しくない。


そこから国内球界のスターへ。


さらに海を渡り、世界最高峰のリーグへ進む者すらいる。


会社へ出勤し。


仕事をこなし。


その一方で野球にすべてを懸けてきた男たちが。


この真夏の数日間だけは。


何万人もの観客の中心に立つ。


そして。


この大会には独特の制度まである。


補強選手制度。


地区予選で敗れたチームから有力選手を選び、本大会へ進む地区代表チームへ加える仕組み。


昨日まで本気で倒そうとしていた相手のエース。


ライバルチームの四番。


敵だった守備職人。


それが今度は。


「地区を代表して勝とう」


と同じベンチへ入る。


企業の垣根を越える。


ライバル関係も越える。


地区の総力戦になる。


だから。


都市対抗なのである。


グラウンドだけではない。


ベンチも。


応援席も。


街も。


会社も。


家族も。


全員参加。


そして今年。


その真夏のエアードームには。


なぜか戦隊ヒロインまで、あちらこちらに入り込んでいた。


まず。


姫路市代表の応援席。


一人の男が、腕を組んでグラウンドを見つめている。


年齢を重ねた今も肩幅は広く、現場仕事で鍛えた身体には張りがある。


表情は厳しい。


だが。


その目は温かい。


西川剛史。


「播州の烈火」こと西川彩香の父。


かつて。


姫路市の製鉄所を母体とする名門社会人野球チーム、


大日本製鉄広畑。


その外野を長く守った男だった。


現役時代。


剛史は派手な本塁打を量産する打者ではなかった。


だが。


打つ。


右へ。


左へ。


投手の球に逆らわず運ぶ。


二死二塁なら走者を返す。


無死二塁なら右方向へ進める。


守れば。


一歩目が速い。


抜けたと思った飛球へ追いつく。


余計な進塁を許さない。


外野三ポジションを高い水準でこなし。


走れば速い。


そして。


何より。


チームのために必要なことを、一つずつ確実にやる選手だった。


若い頃の夢は。


プロ野球選手。


社会人へ入った後も、その夢は消えていなかった。


ある年。


剛史のもとへ、パ・リーグ球団の担当スカウトが頻繁に姿を見せるようになった。


打撃。


守備。


走塁。


野球への姿勢。


高く評価された。


そして。


ドラフト前。


かなり具体的な話まで進んだ。


五位で指名する。


そう伝えられた。


剛史自身も。


家族も。


チーム関係者も。


「ついにプロへ行く」


と思った。


ドラフト当日。


名前は呼ばれなかった。


一巡。


二巡。


三巡。


四巡。


五巡。


それでも。


呼ばれない。


そのまま。


指名終了。


後日。


担当スカウト本人が広畑を訪ねてきた。


申し訳なさそうだった。


剛史と向き合い。


深く頭を下げた。


「すまん」


そして。


「オレはかなり強く推したんや」


「けど、最後に編成部長がな」


「外野手としてはパワーが足りん。それでダメやって」


約束を反故にした本人が悪いわけではない。


それくらい剛史にも分かった。


分かったからこそ。


余計につらかった。


「そうですか」


それしか返せなかった。


スカウトが帰ったあと。


剛史はしばらく一人で座っていた。


野球を辞めよう。


本気でそう思った。


プロへ行くために続けてきた。


そこまで届かなかった。


それどころか。


届いたと思った瞬間に、目の前で扉が閉まった。


もう十分じゃないか。


会社員として生きればいい。


野球を続ける理由はない。


だが。


数日。


練習場へ戻る。


後輩がいた。


先輩がいた。


スタッフがいた。


いつも通り。


「おはようございます!」


と声を掛けてくる。


そして。


グラウンドの外には。


自分たちを応援してくれる人がいた。


そこで。


剛史の気持ちが変わった。


プロへ行けなかったから野球を辞める。


それでは。


今まで自分を使い続けてくれたチームへ何も返していない。


ならば。


考え方を変える。


「プロに必要とされんかったんやったら、このチームに絶対必要やと言われる選手になったる」


そう決めた。


そこから。


剛史の野球は変わった。


いや。


もともと献身的だった野球が。


さらに研ぎ澄まされた。


自分が一番目立つ必要はない。


勝てばいい。


走者を進める。


カバーへ走る。


ベンチから声を掛ける。


若い外野手へ位置取りを教える。


自分が打てなくても、守備で一本防ぐ。


一本防げなければ、中継へ正確に返す。


一本でも先の塁を防ぐ。


それを積み重ねた。


結果。


プロへ行けなかった男は。


別の場所で。


日本を代表する選手になった。


社会人日本代表。


胸に日の丸。


国際大会。


外国の強豪選手を相手に。


日本代表の外野を守った。


あのドラフトで、


「パワーが足りない」


と評された男が。


日の丸を背負って国際舞台に立つまでになった。


都市対抗。


自チーム。


補強選手。


何度も真夏の大舞台を経験した。


そして。


地元の社会人野球ファンが。


いつしか彼を呼ぶようになった。


「ミスター姫路」


彩香が生まれた頃。


剛史はもう現役を退き、コーチになっていた。


だから。


娘は父の現役時代を知らない。


だが。


製鉄所の社宅には。


知っている人間が腐るほどいた。


幼い彩香が外を歩けば。


「あんたのお父ちゃん、昔ほんま凄かったんやで」


別の日。


「センター抜けた思た打球、追いつきよった」


また別の日。


「日本代表まで行った男やぞ」


彩香。


幼い頃から。


耳にタコ。


そして家へ帰れば。


本人。


剛史。


「彩香。人に応援してもろたら、そのありがたさ忘れたらあかんぞ」


小学生。


「分かった」


中学生。


「分かっとうって」


高校生。


「父ちゃん、それ何回言うん?」


成人して。


「もう百回以上聞いとうで」


剛史、


「百回程度で足りるかい」


彩香、


「まだ言うん!?」


「一生言う」


その言葉は。


本人が思っている以上に。


娘の中へ残った。


彩香が現場で。


誰か一人の手柄よりチーム全体を優先する。


応援してくれる人を粗末にしない。


目立たない仲間の働きを見落とさない。


その源流には。


プロ野球へ行けなかった代わりに。


「誰かのために野球をする」ことを極めた父の背中があった。


今年。


彩香はエアードームには来ていない。


それでも。


剛史はいつもの場所にいる。


姫路市代表のスタンド。


後輩の打者が追い込まれる。


剛史の目。


鋭くなる。


「外の変化球やろ」


投球。


外。


打者。


逆らわず右へ。


一、二塁間。


安打。


剛史。


小さく。


「よし」


それだけ。


隣の若い社員が尋ねる。


「西川さん、やっぱり都市対抗は特別ですか?」


剛史。


グラウンドを見たまま。


そして。


少しだけ笑った。


「都市対抗はええで」


播州の響き。


「スタンドとグラウンドがひとつんなれるんが、ほんまええねん」


グラウンドには。


自分より二十歳も三十歳も若い後輩。


スタンドには。


会社の仲間。


家族。


姫路から来た人々。


「選手だけで野球しとるんちゃう」


「はい」


「応援してくれる人がおる。せやから頑張れるんや」


その横顔は。


厳しい。


でも。


温かかった。


きっと。


今度彩香に会ったら。


また言う。


「応援してくれる人への感謝を忘れるな」


百一回目か。


百五十回目か。


本人たちにも。


もう分からない。


同じエアードーム。


今度は。


石巻市代表。


北洋製紙石巻。


ベンチ。


そこへテレビカメラが向く。


一人の女性。


菅野真結。


まゆちゃん。


四年連続。


ダイヤモンドサポーター。


試合は終盤。


接戦。


真結は両手を胸の前で組み。


本当に祈るような顔でグラウンドを見ていた。


実況。


「北洋製紙石巻のベンチでは、今年もダイヤモンドサポーターを務める菅野さんが祈るように戦況を見つめています」


映像だけ見れば。


この女性。


かなりの野球通。


四年連続でベンチ入り。


選手のことを熟知し。


野球への理解も深そう。


ところが。


実際。


全然知らない。


それでもなぜ四年間ベンチにいるのか。


理由。


選手たちから妙に評判がいいから。


若い選手からすると。


「お姉さん」


なのである。


試合前。


緊張している新人。


真結、


「大丈夫?」


「はい……いや、ちょっと緊張してます」


「緊張しますよね。こんなに人いますもん」


「菅野さんもですか?」


「私、試合しないから」


「そりゃそうですけど」


笑う。


それだけで。


少し緊張が抜ける。


飲み物が足りない。


真結が先に気づく。


タオル。


場所を知っている。


選手が、


「あれ、どこ置いたっけ」


と言えば。


「さっき右の棚に入れてましたよ」


なぜか覚えている。


困ったときのかんちゃん、みんなのまゆちゃん。


工場総務時代から変わらない。


ただ。


野球だけが分からない。


六回。


北洋製紙石巻の先発投手が連打を浴びる。


監督。


交代。


投手。


肩を落としてベンチへ戻る。


真結。


そっと近づく。


「お疲れさまでした」


「……すみません」


「大丈夫ですよ」


「でも、打たれちゃって」


真結。


優しい笑顔。


「また後半に出番があるかもしれませんから」


投手。


「…………」


真結、


「?」


「菅野さん」


「はい」


「僕、もう今日は登板できません」


「えっ?」


「交代したんで」


「…………」


真結。


目を丸くする。


「一度代わったら戻れないんですか?」


後ろ。


控え選手。


吹き出す。


「かんちゃん!」


「何?」


「四年目ですよね!?」


「四年目だけど」


「何で知らないんですか!」


真結、


「誰も教えてくれなかったから……」


投手も。


思わず笑う。


数十秒前まで。


俯いていた男。


いま。


笑っている。


真結、


「じゃあ今日はもうないんですね」


「はい」


「そうなんだ……」


少し考え。


「でも次の試合なら出られますよね?」


「出られます」


「だったら次、頑張りましょう」


投手。


「……はい」


それでいい。


まゆちゃんは。


野球のルールを教える人ではない。


落ち込んだ選手の気持ちを。


少しだけ上向きにする人。


別の場面。


一死一、三塁。


ベンチ。


緊張。


真結。


小声。


「今、かなり大変なんですか?」


若手野手。


「めちゃくちゃ大変です」


「何が起きたら一番困ります?」


「点入ることです」


真結、


「それは私も分かります」


「そこは分かるんですね!」


打者。


スクイズの構え。


真結、


「何ですか今の?」


「スクイズです!」


「スクイズ?」


「後で説明します!」


「分かりました」


翌イニング。


「ところでスクイズって――」


「今ですか!?」


そんな具合。


戦術的には。


まったく役に立たない。


しかし。


ベンチ内評価。


高い。


「かんちゃんいるとピリピリしすぎない」


「負けてても普通に接してくれる」


「選手を成績で見ない」


「若手にもベテランにも同じ」


「たぶん野球知らないから誰がスターかも分かってない」


最後の評価。


本人が聞いたら困る。


だが。


かなり正しい。


テレビ中継。


再び。


祈るようにグラウンドを見る真結。


全国の視聴者。


「真剣だなぁ」


本人の頭の中。


「今アウトはいくつなんだろう」


それでも。


北洋製紙石巻ベンチにとって。


彼女は欠かせない。


四年連続。


ダイヤモンドサポーター。


野球知識。


ほぼゼロ。


人を支える力。


満点。


そして。


大阪市代表の応援席。


こちらは。


石巻ベンチとは真逆だった。


とにかく。


派手。


太鼓。


吹奏楽。


チアリーダー。


応援団。


巨大フラッグ。


そして。


ステージ中央。


赤嶺美月。


「大阪ーっ! 行くでーっ!」


声。


デカい。


動き。


デカい。


笑顔。


デカい。


大学のチアリーディングサークルへ、大阪市の大手ガス会社チームから応援要請。


今年も。


美月参加。


ジャンプ。


ターン。


キック。


仲間と呼吸を合わせる。


観客を煽る。


満面の笑顔。


美月。


完全に水を得た魚。


スタッフ、


「美月、次の曲終わったら一回下がって!」


「分かったー!」


「五回裏終わったらショーだからね!」


「分かってる!」


「着替え三分!」


「短っ!」


それでも。


嬉しそう。


仲間に言われる。


「美月、忙しそうやな」


美月。


笑う。


「ウチ、応援すんのも応援されんのも、どっちも好きやねん!」


「欲張りやな」


「せやで!」


五回裏。


終了。


美月。


猛ダッシュ。


「時間ない時間ない時間ない!」


舞台裏。


チアリーディング衣装。


脱ぐ。


戦隊ヒロイン制服。


着る。


ブーツ。


髪。


小物。


スタッフ、


「あと一分半!」


「宝塚でもこんな早着替えせえへんで!」


坂井まどか、


「喋っとらんと着替え!」


谷口佳乃、


「美月さん、右手袋逆です」


「うわっ!」


「あと五十秒」


「忙しいわぁ!」


だが。


笑顔。


めちゃくちゃ楽しそう。


そして。


三人。


スタンバイ。


今年の応援団コンクール。


大阪市代表の目玉。


戦隊ヒロインショー。


美月。


坂井まどか。


谷口佳乃。


名付けて。


トリオ・ザ・大阪。


一方。


敵。


ジェネラス・リンクのザコキャラ役。


人選。


水無瀬澪。


南部沙羅。


宮本美知留。


一条知佳。


沙羅。


衣装を見ながら。


まだ納得していない。


「どうして私が美月に簡単に倒される役なんですか?」


スタッフ、


「暇そうだったので」


「そこじゃありません!」


美知留、


「いいじゃん、楽しそうだよ」


知佳、


「私は近所なので助かります」


沙羅、


「参加理由が全員軽い!」


澪。


募集要項を見ている。


「でも条件いいよ」


沙羅、


「何がです?」


澪、


「エアードーム弁当」


「……」


「エアードームで使える商品券千円」


「……」


「遊園地半日パスポート」


沙羅、


「……」


澪。


さらに。


「決勝まで五試合やったら商品券五千円になる」


沙羅、


「何で積立みたいに考えてるんですか!」


澪、


「五千円は大きいよ」


「私のプライドは五千円より高いです!」


「じゃあ商品券いらない?」


「それとこれとは別です!」


知佳、


「受け取るんですね」


沙羅、


「受け取りますよ!」


美知留、


「素直じゃないなぁ」


スタッフ、


「そろそろお願いします」


ザコ四人。


ステージへ。


照明。


音楽。


澪、


「わー。大阪市代表を負けさせるぞー」


沙羅、


「演技!」


澪、


「悪いことするぞー」


「もっと感情を込めてください!」


知佳、


「悪役の演技指導まで始めましたね」


美知留、


「沙羅、真面目だなぁ」


そこへ。


照明。


ドン!


トリオ・ザ・大阪。


登場。


美月、


「待てぇーい!」


大歓声。


まどか、


「大阪の勝利を邪魔する悪党ども!」


佳乃、


「ここから先は通しません!」


沙羅、小声。


「私、横浜なんですが」


澪、


「川崎」


知佳、


「文京」


美知留、


「設定だからね」


沙羅、


「分かってます!」


美月。


全力。


本当に全力。


殺陣。


決めポーズ。


まどか。


華麗。


佳乃。


意外なほどノリノリ。


ザコ四人。


順番に倒される。


知佳、


「くっ、ここまでとは!」


ぱた。


美知留、


「やられたー!」


ぱた。


沙羅。


プライドがあるので。


妙に芝居がうまい。


「お、おのれ……大阪市代表……!」


倒れる。


最後。


澪。


美月が決め技のポーズ。


澪、


「わー」


ぱた。


沙羅。


倒れたまま。


「雑!」


観客。


笑い。


美月、


「よっしゃ、最後や!」


三人。


中央。


背後。


巨大な横断幕。


バン!


《必勝! 大阪市》


ズバッ!


決めポーズ。


客席。


大歓声。


大拍手。


美月、


「決まったぁ!」


スタッフ、


「美月! 次の応援!」


「もう!?」


「着替え!」


「忙しいっちゅーねん!」


走る。


また着替え。


でも。


笑う。


「めっちゃ楽しい!」


その日の応援団コンクール。


トリオ・ザ・大阪の戦隊ヒロインショー。


ファン投票。


トップ。


美月、


「よっしゃ! このまま決勝まで行くでー!」


澪、


「決勝まで行けば五千円」


沙羅、


「あなたはそこから離れてください!」


そして。


試合後。


ザコキャラ役の四人。


戦隊ヒロインショー。


終了。


弁当。


食べた。


商品券。


もらった。


そして手元には。


遊園地半日パスポート。


澪、


「遊園地行こう」


沙羅、


「早いですね」


「何が?」


「切り替えが」


「せっかく付いてるのに使わないともったいない」


知佳、


「それは正論です」


美知留、


「行こ行こ!」


四人。


エアードームそばの遊園地。


さっきまで。


大阪市代表の敵。


今。


普通に遊ぶ。


ジェットコースター。


沙羅、


「待って待って待って!」


ゴオオオッ!


急降下。


「きゃああああああ!」


澪。


無表情。


知佳。


意外と平気。


美知留。


笑いっぱなし。


終了。


沙羅、


「澪!」


「何?」


「怖くなかったんですか?」


「怖かったよ」


「顔に出してください!」


次。


お化け屋敷。


澪、


「これパスポート対象?」


知佳、


「対象です」


「じゃあ入ろう」


沙羅、


「お化けを怖がるかどうかではなく料金から確認するんですね」


中。


美知留、


「きゃっ!」


沙羅、


「ちょっと今の怖っ――!」


知佳。


壁を見る。


「この仕掛け、恐らく赤外線センサーですね」


沙羅、


「分析しないでください!」


澪。


天井を見る。


「人件費かかりそう」


「経営分析もしなくていいです!」


次。


射的。


知佳。


撃つ。


外れる。


もう一回。


外れる。


黙る。


美知留、


「知佳?」


「もう一度やります」


沙羅、


「火がつきましたね」


澪、


「商品券使える?」


沙羅、


「今日は全部そこですか!」


最後。


観覧車。


夜。


ゴンドラ。


ゆっくり上る。


眼下。


東京。


道路。


鉄道。


ビル。


街の明かり。


そして。


エアードーム。


昼。


何万人もの歓声。


太鼓。


吹奏楽。


応援。


白球。


今は。


少し静か。


澪が窓へ顔を向けた。


「綺麗だね」


沙羅、


「ええ」


知佳、


「昼間とは全然違います」


美知留、


「本当だね」


しばらく。


四人。


静か。


そして。


澪。


ぽつり。


「今日、あそこに何万人もいたんだよね」


沙羅、


「いましたね」


「みんな誰かの応援に来てたんだ」


知佳、


「会社だったり」


美知留、


「街だったり」


沙羅、


「家族だったり、仲間だったり」


グラウンド。


西川剛史。


プロ入りという夢を失い。


それでも。


チームへ。


街へ。


応援してくれる人へ。


野球で恩を返した。


「スタンドとグラウンドがひとつんなれるんが、ほんまええねん」


ベンチ。


まゆちゃん。


野球は分からない。


だが。


若い選手が笑顔を取り戻す方法だけは知っている。


応援席。


赤嶺美月。


踊る。


叫ぶ。


着替える。


走る。


自分が応援する。


自分も応援される。


その両方を。


心の底から楽しむ。


そして。


沙羅たち四人。


ザコキャラとして倒される。


たった数分。


でも。


その馬鹿馬鹿しい寸劇で。


数千人が笑い。


拍手し。


「大阪市!」


と声を上げた。


沙羅。


窓の外を眺める。


「都市対抗って、野球する人だけの大会じゃないんですね」


知佳、


「そうみたいですね」


美知留、


「応援する人も参加者なんだよ、きっと」


澪、


「うん」


一拍。


そして。


「決勝まで行ったら五千円だし」


沙羅、


「今いい話してたじゃないですか!」


知佳。


笑う。


美知留。


笑う。


澪も少し笑う。


観覧車。


夜空。


エアードーム。


この日。


勝ったチームもある。


負けたチームもある。


夢へ近づいた選手も。


最後の都市対抗になった選手もいる。


歓声を受けた人。


応援する人。


ベンチで祈った人。


チアリーダーとして跳ねた人。


ザコキャラとして倒された人。


遊園地で商品券の計算をしている人。


全員。


それぞれ違う。


だけど。


同じ一日を。


同じ真夏のエアードームで過ごした。


都市対抗。


それは。


社会人野球最高峰の戦い。


プロへの登竜門。


都市のプライド。


会社の誇り。


郷土色むき出しの応援合戦。


昨日まで敵だった選手が仲間になる補強制度。


何万人もの大声援。


そして。


野球を愛する人。


野球をあまり知らない人。


それでも誰かを応援したい人。


みんなが一緒になれる。


真夏の祭典。


翌日になれば。


また別の都市がやってくる。


別の応援歌。


別のユニフォーム。


別のドラマ。


別のヒロインが。


どこかのスタンドにいるかもしれない。


白球が飛ぶ。


太鼓が鳴る。


都市名が叫ばれる。


そして。


今年も。


エアードームの夏は。


まだまだ終わらない。

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