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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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1179/1295

港ヨコハマ・ブルーライン――偽装貨物を追え! KANA☆WAVE、夜の埠頭で危険な追跡戦 ――八人全員が主役。港ヨコハマでKANA☆WAVEの「型」が生まれる夜

川崎臨海部で鮮烈な初陣を飾ったKANA☆WAVE。


八人は、結成時にはただ「神奈川県に住んでいる」という理由だけで集められた寄せ集めだった。


藤沢。


川崎。


横浜。


相模原。


沖縄から来た者。


青森から来た者。


秋田から来た者。


そしてアメリカ・コロラド州デンバーと日本をルーツに持つ者。


生まれも育ちも違う。


性格も違う。


得意分野も違う。


しかし川崎の夜、平塚美波が全員の個性をフィールドプレーヤーの役割へ落とし込むと、不思議なほど噛み合った。


その結果を見たノースフロント仙台分室の菅野真結――まゆちゃんは、回収されたジェネラス・リンクの中継装置をさらに解析。


そこで、新しい異常を見つけた。


横浜港。


開港以来、日本の玄関口として世界とつながってきた巨大な国際港。


現在の横浜港には、みなとみらいに代表される華やかな都市景観がある一方、本牧や大黒、南本牧方面へ目を向ければ、今なお巨大なコンテナ船とガントリークレーン、倉庫群、トレーラーが動き続ける現役の物流拠点としての顔がある。


観光地としての横浜。


港町としての横浜。


働く街としての横浜。


新しいものを受け入れ続けてきた国際都市でありながら、一歩裏へ回れば、古い倉庫や港湾道路、昔ながらの食堂などが残る。


昼は爽やかな港。


夜はネオンと作業灯。


そしてさらに奥には、少しだけ胡散臭い、昔の港町映画を思わせる影がある。


今回、KANA☆WAVEが踏み込むのは――その「影」の方だった。


新橋のヒロ室本部。


大型モニターへ表示された貨物データを前に、真結が説明していた。


「川崎で回収した装置から、横浜港の貨物管理情報へ断続的にアクセスした痕跡が出ました」


美波が腕を組む。


「何運んでんだ?」


「それが、分かりません」


「分かんねえ?」


「正確には、“存在していることになっているのに、現物の移動が確認できない貨物”があります」


阿部柚葉がすぐ画面へ身を乗り出す。


「記録上は入港している?」


「はい」


「搬出は?」


「別便に積み替えられたことになっています」


「なのに実際には?」


「ゲート通過記録がありません」


南部沙羅が眉を寄せる。


「幽霊貨物……?」


真結が頷く。


「私もそう呼んでいます。ゴースト・カーゴです」


書類上には存在する。


電子データにも出てくる。


しかし、本物のコンテナがどこを通ったのかは分からない。


さらに奇妙なのは、その番号が数時間ごとに別の実在貨物へ重なり、また消えていること。


ジェネラス・リンクは、巨大な横浜港の物流情報へ一瞬だけ「幽霊の荷物」を作り、その陰に何かを隠して動かしているらしい。


真結が続ける。


「川崎で作ろうとしていた情報中継網を制御する機材かもしれません。あるいは、別のネットワークを作るための部品かもしれません」


美波、


「どっちにしろ放っとけねえな」


芹沢遥室長が頷く。


「KANA☆WAVE、次の任務は横浜港です」


その瞬間。


沙羅が立ち上がった。


「来ましたね!」


全員が見る。


沙羅は胸を張る。


「私のホームです!」


一秒。


二秒。


三秒。


誰も反応しない。


沙羅、


「……何ですか?」


美波が尋ねる。


「お前んち、どの辺だっけ?」


沙羅の表情が微妙に曇る。


「横浜市です」


「それは知ってる」


「横浜市内です」


「だから場所」


「……西の方です」


澪、


「すごく西の方だよね」


「澪!」


沙羅の実家は確かに横浜市内。


ただし、世間一般が想像する「港ヨコハマ」とはかなり違った。


まず横浜駅から、神奈川県の西部・県央方面へ伸びる大手私鉄に乗る。


この私鉄は横浜駅を巨大ターミナルとして、二俣川、大和、海老名、湘南台方面など神奈川県内の住宅地を力強く結び、近年は都心方面との直通運転によってさらに存在感を増した。


派手に観光地を結ぶ路線というより、神奈川県民の日常を背負って走る実用派。


横浜西部に暮らす人々にとっては、まさに生活の大動脈である。


沙羅はその路線へ乗る。


しかも、かなり先まで。


終点に近い駅で降りる。


そこからさらにバス。


神奈川県内を縦横無尽に走る、カナリア色を思わせる明るい車体の大手路線バス。


駅前から住宅地。


丘陵地。


ニュータウン。


昔ながらの集落。


大規模団地。


時には山あいまで。


鉄道駅と駅の間を丁寧につなぎ、「神奈川県民の最後の数キロ」を支える、知る人ぞ知る巨大バス網。


沙羅はそこからさらに乗る。


かなり乗る。


終点近くまで乗る。


そして到着。


ニュータウン。


住宅街。


少し先に畑。


さらに雑木林。


農道。


そして看板。


『マムシ注意』


美波、


「……お前んち、港どこ行った?」


沙羅、


「横浜市です!」


澪、


「住所だけならね」


紗耶、


「最寄りの海、何キロあるの?」


「距離で地元を決めないでください!」


美波、


「“ハマのマムシ注意”」


沙羅、


「その異名は絶対に嫌です!」


しかも美波は止まらない。


「“ハマの終点近く”」


「やめてください!」


「“ハマのバス乗り継ぎ”」


「やめてください!」


「“ハマの畑が見える女”」


「美波さん!」


澪がさらっと追加する。


「私、川崎市幸区だけど、ここまで電車とか車なら沙羅んちよりずっと早く来られるよ」


沙羅、


「あなた川崎市民でしょう!」


「うん」


「じゃあ横浜港は私の方が地元です!」


「でも私の方が近いよ」


「そこは関係ありません!」


美波、


「ある程度あるだろ」


さらに金城伊織。


那覇市出身。


現在は横浜市鶴見区在住。


沖縄にルーツを持つ人々が昔から暮らす地域にも近く、横浜市内ではあるが川崎と隣接する生活圏。


伊織、


「うちもここなら沙羅さんより早く来られるさー」


沙羅、


「伊織まで!」


「別に競争してないさー」


そして最大の刺客。


エミリー・ハート。


父はアメリカ人。


母は日本人。


日米ハーフ。


幼少期から日本とアメリカ双方の環境で育ち、日本語も英語もほぼ完全なネイティブ。


現在は横浜市中区のタワーマンション暮らし。


窓から横浜港の灯りが普通に見える。


美波、


「……どう考えてもエミリーの方が“港ヨコハマ”だべ」


エミリー、


「そう?」


「家から港見えるんだろ?」


「見えるよ。夜すごく綺麗。Sometimes I just sit by the window and watch the ships」


沙羅、


「なんでそんな自然に絵になるんですか!」


エミリー、


「え?」


本人は全く気にしていない。


美波、


「本日の港ヨコハマ代表、デンバー出身エミリー・ハート」


エミリー、


「別に代表じゃなくていいよ」


沙羅、


「いらない人に代表を渡さないでください!」


さらに白石陽菜。


相模原市在住。


しかし彼女が通う大学は、横浜・山手の丘にキャンパスを構える、長い歴史と品格を持つ名門女子大学。


落ち着いた街並み。


異国情緒。


港の空気。


中区方面への通学機会も多い。


つまり、生活拠点こそ相模原だが、この界隈を全く知らないわけではない。


陽菜が沙羅を優しくフォローした。


「でも沙羅さん」


「陽菜……!」


「横浜って、とても広いですからね」


沙羅、


「そう! それです!」


「港も横浜ですし、山の近くも横浜ですし、畑があるところも横浜ですから」


沙羅、


「……」


「住んでいる場所が港から遠くても、横浜が好きなら地元でいいと思いますよ」


沙羅の表情が少し緩む。


「陽菜……」


美波、


「ただしマムシ注意」


沙羅、


「美波さんは黙ってください!」


しかも、もう一つ事実。


沙羅は横浜生まれですらなかった。


両親は二人とも東北出身。


父の仕事の都合で、沙羅が五歳の時に一家で横浜へ移住してきた。


美波、


「五歳から?」


「はい」


「生まれは?」


「……東北です」


「じゃあお前、横浜“生まれ”じゃねえじゃん」


沙羅、


「五歳からずっと住んでいたら地元でしょう!」


伊織が穏やかに、


「それならうちも横浜は地元になってきたさー」


エミリー、


「Me too」


澪、


「私はそもそも隣」


沙羅、


「だから私の地元を奪わないでください!」


美波は大笑い。


だが。


その笑いは、任務開始と同時に消えた。


夜の横浜港。


巨大船の灯り。


倉庫群。


コンテナ。


トレーラー。


古い港湾道路。


そして、再開発から少し外れた架空の旧保税倉庫地区。


錆びた鉄扉。


褪せた外国語の標識。


古い木箱。


港湾食堂。


遠くには現代的な高層ビル群。


まるで昭和の港町刑事ドラマと現代の国際物流港が、一枚の画面に同居している。


美波がサングラスを軽く上げる。


ブロンズヘアーが海風になびく。


背後には港のネオン。


「よし」


八人が見る。


「川崎とはやり方変えるぞ」


柚葉、


「固定フォーメーションを崩すんですか?」


「ああ」


川崎では各自の位置を明確にした。


それが成功した。


だが横浜では、情報も人間も物資も多い。


一つの役割へ縛れば、逆に動きづらい。


美波は言う。


「今回は、その時一番向いてる奴が前へ出ろ」


沙羅、


「エースを固定しない?」


「そう」


「では誰が主役です?」


美波、


「全員だべ」


八人が少し黙る。


「誰か一人が全部やる必要ねえ。それぞれ、自分が一番強い場面で前出ろ。残りは支えろ」


美波が笑う。


「それで行く」


最初に前へ出たのは――沙羅だった。


散々いじられた。


ホーム疑惑までかけられた。


それでも。


横浜が好きなのは本物だった。


「港から遠かろうが何だろうが、横浜は私の地元です」


企業関係者。


港湾職員。


倉庫管理者。


相手へ臆せず話しかける。


いつもの妙なプライドが、今回は積極性に変わっている。


「ジェネラス・リンクが横浜港を利用しているなら、見過ごせません」


美波、


『お前んちマムシ出るけどな』


「通信切りますよ!」


しかし沙羅の聞き込みで、「書類だけ存在する貨物」が旧倉庫地区へ一度だけ運ばれたという情報が出る。


次に前へ出たのはエミリー。


外国船関係者へ英語で確認。


話し方が自然すぎる。


「Excuse me, we're checking a cargo transfer from three nights ago. Do you remember anything unusual?」


返答。


エミリーは即座に日本語へ切り替える。


「三日前、積荷の予定変更があったって。ただ、現場側には正式な変更通知が来なかったらしい」


沙羅、


「完全に怪しいですね」


さらに別の外国人スタッフから質問される。


エミリー、


「Yeah, we're working with the local team. Don't worry, we're not stopping operations」


すぐ振り返って、


「美波、向こうの作業は続けて大丈夫だって伝えてある」


美波、


「助かる」


日本語。


英語。


切り替えを意識すらしていない。


沙羅が横で小さく、


「……本当に港ヨコハマ似合いますね」


エミリー、


「何?」


「何でもありません!」


次の主役は紗耶。


一人の作業員を見る。


作業着。


ヘルメット。


ID。


一見完璧。


沙羅、


「普通の港湾関係者ですよね」


紗耶、


「違う」


「何が?」


紗耶は足元を見る。


「靴」


「靴?」


「綺麗すぎる」


八戸。


港町育ち。


紗耶には、港で本当に働いている人間の「汚れ方」が分かる。


「この時間までこの辺歩いて仕事してたなら、あんな靴じゃない」


男の表情が変わる。


一秒。


逃走。


美波、


『当たり!』


沙羅、


「追います!」


紗耶、


「私も」


港の旧倉庫街へ走り込む。


今度の主役は伊織。


逃走者が鶴見方面へ向かう。


沙羅、


『伊織、そっち分かります!?』


『うちの生活圏に近いさー』


『……』


『何?』


『何でもありません!』


伊織は相手より先へ回る。


曲がり角。


静かに待つ。


相手が現れる。


「どけ!」


伊織は構えることすらしない。


半歩ずれる。


腕を取る。


重心を崩す。


一瞬。


男が膝をつく。


「ここまでさー」


美波、


『伊織、確保?』


「確保」


美波、


『さすが横浜ホーム組』


沙羅、


『ホームは私です!』


全員、


『まだ言ってる!』


その頃。


水無瀬澪。


港湾食堂。


カウンター。


ラーメン。


ズルズル。


美波、


『澪』


「何?」


『お前、何してんだ』


「聞き込み」


『ラーメン食ってるぞ』


「食べながら聞いてる」


店主、


「姉ちゃん、チャーハンも食う?」


澪、


「食べる」


美波、


『追加注文すんな!』


澪は店主へ聞く。


「最近、この辺で見慣れない車来なかった?」


「白いバンなら来てるぞ」


「いつ?」


「閉店前くらい。三日続けて」


「どこ行く?」


「向こうの旧倉庫」


澪、


「ありがと」


ズルズル。


無線。


「美波さん。白いバン。三日連続。旧倉庫」


沈黙。


美波、


『……お前また核心引いた?』


「たぶん」


『何で?』


「ラーメン食べただけ」


「納得いかねえ!」


澪、


「あとチャーハンも美味しい」


『グルメ情報いらねえ!』


そして、散らばった情報を一つにするのが柚葉だった。


沙羅の証言。


紗耶が見抜いた偽装作業員。


エミリーが聞き出した貨物予定変更。


澪の白いバン。


真結の解析データ。


全てを地図へ落とす。


柚葉、


「つながりました」


美波、


「どこ?」


「旧保税倉庫第七区画」


真結も仙台から、


『私も同じ結論です』


柚葉、


「白いバンの移動時刻とゴースト・カーゴのデータ発生時間が一致しています」


美波、


「よし」


ここから空気が変わる。


旧倉庫。


ジェネラス・リンク側も察知。


特殊制御装置をケースへ収納。


白いワゴンへ積み込む。


逃走。


「動いた!」


沙羅が叫ぶ。


美波、


「一般車両巻き込むな!」


陽菜が前へ出る。


戦隊ヒロイン一とも称される美少女。


夜の港でも圧倒的に目立つ。


しかし今回は、その華が守りになる。


「こちら側へお願いします! 安全確認中です!」


作業員。


一般車。


自然に誘導される。


敵の一人が陽菜を見て叫ぶ。


「また目立つ女がいる! 主力はあっちだ!」


陽菜、


「……」


美波、


『どうした?』


「私、敵にも“目立つ人”で覚えられてるんですけど」


『スターってことだべ』


「嬉しくありません!」


その隙にエミリーが動く。


ワゴンが旧倉庫裏へ。


ケースを持った構成員が二階通路へ走る。


エミリー、


「He's going up!」


美波、


「行け!」


「Got it!」


エミリーが疾走。


長いブロンズヘアーが港の光を弾く。


古い鉄製階段。


しかし使わない。


横の低い構造物へ足。


一気に身体を持ち上げる。


手すり。


壁。


跳躍。


港のネオンを背に宙を舞う。


巨大船。


クレーン。


コンテナ。


そのすべてを背景に、赤・白・青をまとったエミリーの長身が弧を描く。


完全にアメコミヒロイン。


下から沙羅。


「何でデンバー出身者が一番横浜で映えるんですか!」


美波、


「沙羅! 今それどうでもいい!」


「重要です!」


「重要じゃねえ!」


一方で紗耶は地上。


逃げる別の男の足取りを見る。


「右へ行く」


沙羅、


「まだ曲がってないですよ?」


「行く」


次の瞬間。


右。


「ほら」


沙羅、


「何で分かるんです?」


「身体が右向いてたから」


そして長い脚で横へ切り込む。


相手の進路を潰す。


沙羅が逆から寄せる。


二人で挟む。


柚葉は中央。


各員の位置情報を整理。


「美波さん、北側一名抜けます」


「伊織!」


『見えてるさー』


「エミリー、ケース優先!」


『OK!』


「沙羅、追い過ぎんな!」


『分かっています!』


紗耶、


『分かってないです』


『紗耶!』


美波の指示が港全体へ飛ぶ。


ゲームメーカー。


川崎で生まれた役割が、横浜ではさらに自由になっていた。


そして最後。


ケースを持った構成員がワゴンへ飛び乗ろうとする。


エミリーが着地。


一気に追いつく。


「Stop!」


相手が振り返る。


エミリーの手がケースへ。


双方が引く。


一瞬。


エミリーの特殊インナーが動きを支える。


腕力だけではない。


全身を使った一気の引き。


ケースが離れる。


「Got it!」


同時に伊織。


一人制圧。


紗耶。


一人の進路を消す。


沙羅。


「こちらも逃がしません!」


柚葉。


「南側封鎖!」


陽菜。


「一般区域、安全です!」


澪。


遠くから道路を見る。


「その先行っても戻るよ」


美波、


「何で?」


「工事してる」


「じゃあ行かせろ!」


敵は突破したと思い込んで逃げる。


数十秒後。


本当に戻ってくる。


澪、


「おかえり」


敵、


「何なんだお前!」


「川崎市民」


「ここ横浜だろ!」


「近いから分かる」


美波、爆笑。


最後は八人が別方向から集まる。


倉庫。


運河。


フェンス。


港湾道路。


逃げ道。


一つ。


二つ。


三つ。


全部消える。


美波が無線。


「KANA☆WAVE、閉じろ!」


伊織が止める。


エミリーが取る。


沙羅が追い込む。


紗耶が読む。


柚葉がつなぐ。


陽菜が守る。


澪が逃げ道を消す。


そして美波が動かす。


誰が欠けても、この形にはならない。


数分後。


静寂。


ワゴン停止。


特殊制御装置確保。


一般被害なし。


港湾作業への大きな支障なし。


真結から連絡。


『確認できました。ゴースト・カーゴに使われていた制御装置です。横浜港ルート、完全に停止しました』


任務完了。


夜の港。


八人が並ぶ。


沙羅は髪を整えて満足そう。


「やはり地元任務は気分が違いますね」


澪、


「私の方が先に帰れるけど」


「まだ言います!?」


伊織、


「うちも先に帰れるさー」


エミリー、


「私、家あっち」


港の向こうを指差す。


美波、


「デンバー出身者、圧勝」


沙羅、


「地元は通勤時間で決まりません!」


陽菜が笑う。


「まあまあ。横浜は広いですから」


沙羅、


「陽菜だけです、私の味方は!」


陽菜、


「でも大学からなら私も沙羅さんの家より近いかも」


沙羅、


「…………」


美波、


「全滅だべ」


ひとしきり笑う。


しかし。


美波は港の灯りを眺めながら、ふと七人を見る。


川崎とは違った。


川崎では全員を固定ポジションへ置いた。


今回は違う。


沙羅が地元愛で前へ出た。


紗耶が港町育ちの目で偽装を見抜いた。


澪が食堂で核心情報を拾った。


柚葉が全部を一本へ結んだ。


エミリーが言葉と身体能力の両方で国際港を駆けた。


伊織が生活圏の土地勘と琉球空手で静かに止めた。


陽菜が華やかさをそのまま市民保護の力へ変えた。


そして美波がその全員を動かした。


誰か一人が最初から最後まで主役だったわけではない。


その瞬間。


その場所。


その仕事。


一番向いている人間が前へ出た。


残りの七人が、その一人を支えた。


次の瞬間には、別の誰かが主役になる。


美波が口を開く。


「なあ」


七人が見る。


「ウチらさ」


少し考える。


「これで行こうぜ」


沙羅、


「何をです?」


「このやり方」


美波は一人ずつ指差す。


「エース決めねえ。主役決めねえ。必要な奴が必要な時に前へ出る」


伊織が微笑む。


「全員が主役になるんですね」


「そう」


柚葉、


「固定エースがいないことを弱点ではなく特徴にする」


「そういうことだべ」


紗耶、


「誰か調子悪くても、別の誰かが前に出られるしね」


陽菜、


「私もいいと思います」


エミリー、


「Everyone gets their moment. I like that」


澪、


「私も?」


美波、


「もちろん」


澪、


「今日ラーメン食べてたけど」


「そのラーメンが事件解決につながってんだから認めるしかねえだろ!」


八人が笑う。


美波も笑う。


川崎でチームになった。


横浜で、自分たちなりの戦い方を見つけた。


KANA☆WAVE。


八人全員が主人公。


同時に、七人全員が誰かを支える脇役。


誰か一人の物語ではなく、八人の物語。


違う個性が順番に前へ出て、一つの大きな波になる。


それが、このチームだった。


そして最後。


沙羅が横浜港の夜景を背に、びしっとポーズ。


「これから私を――」


美波、


「嫌な予感しかしねえ」


「“ハマの港湾女王・南部沙羅”と――」


美波、


「マムシ注意」


澪、


「バス終点近く」


紗耶、


「畑あり」


伊織、


「港遠いさー」


エミリー、


「Long way from here」


陽菜だけ、


「横浜は広いからね」


沙羅、


「陽菜だけは優しい!」


美波、


「でも陽菜んとこの大学の方が港近いぞ」


沙羅、


「もう帰ります!」


怒った沙羅が歩き出す。


澪、


「でも帰るの一番時間かかるよ?」


沙羅、


「澪ぉぉぉぉぉ!」


夜の横浜港に、七人の大笑いが響いた。


その後ろでは巨大なクレーンが静かに動き、コンテナ船の灯りが海面へ揺れている。


華やか。


危険。


洒落ている。


そして、少しだけ馬鹿馬鹿しい。


それもまたKANA☆WAVEだった。


横浜港任務――完了。

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