↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1177/1295

神奈川八州会!? 名前がどう見ても任侠団体――新ユニットKANA☆WAVE、川崎臨海部へ! ――神奈川県在住ヒロインだけで、県内の厄介事を全部片付けろ!

東京の隣にありながら、東京の付属物ではない。


横浜がある。川崎がある。湘南がある。鎌倉がある。横須賀がある。相模原がある。丹沢がある。箱根がある。三浦半島もある。


巨大都市、国際港、工業地帯、海水浴場、古都、山岳地帯、温泉郷まで、一つの県の中へ無理やり詰め込んだような土地――それが神奈川県だった。


東京へ行こうと思えばすぐ行ける。


しかし、横浜駅へ行けば大概の買い物は済む。川崎駅周辺も十分すぎるほど都会だ。湘南には湘南の生活圏があり、県央には県央、相模原には相模原の世界がある。


つまり神奈川県民は、


「東京? 必要なら行くけど」


くらいの距離感で生きている者も多い。


本作で少々ステレオタイプに描くなら、神奈川県民は都会的で、それなりに服装や店選びにも気を使い、他人との付き合いもそつなくこなす。


一見すると社交的。


しかし意外に地元志向が強い。


横浜の人間は横浜で満足する。


川崎の人間は川崎で済ませる。


湘南の人間は湘南からあまり出たがらない。


相模原の人間は「神奈川は横浜だけじゃない」と静かに主張する。


東京人のように「首都です」と構えるでもなく、大阪人のように前へ前へ出るわけでもない。


ガツガツしていない。


洗練されているようで、案外マイペース。


外へ開かれた県に見えて、県民は結構内向き。


そして最大の特徴は――。


県内だけで大抵のことが片付く。


そんな神奈川県で、妙な動きが始まっていた。


最初に異変を拾ったのは、神奈川県ではない。


遠く仙台。


ノースフロント仙台分室だった。


最新鋭の情報解析設備が並ぶ一室。


壁一面の大型モニターには、首都圏の地図や通信記録、物流データが次々と表示されていた。


その中央に座るのは、菅野真結。


通称、まゆちゃん。


イベント現場では来賓対応から導線管理、司会進行、トラブル処理まで何でもこなす万能調整役。


「困ったときのかんちゃん、みんなのまゆちゃん」


などという妙なキャッチフレーズまで定着しつつある彼女だったが、仙台分室に入ると雰囲気が少し変わる。


真結は画面を睨んでいた。


「……やっぱり多いな」


一つ一つは、小さな異常だった。


川崎市沿岸部で数秒だけ現れる暗号通信。


物流施設付近で短時間のみ動作する不明端末。


横浜港周辺で使用者情報と一致しない通信機器。


車両追跡データ上に突然現れては消える妙な空白。


一件だけなら雑音。


二件なら偶然。


しかし十件、二十件と重なると話は違う。


真結は過去のジェネラス・リンク関連事件を呼び出した。


「通信時間……似てる」


周波数の移動。


接続時間。


切断タイミング。


特定地点を避けるような車両移動。


そして、物流施設ばかりを狙う特徴。


真結はマウスを操作した。


赤い点。


また赤い点。


さらに赤い点。


川崎市沿岸部。


横浜市鶴見区。


横浜港方面。


そして内陸側へも、薄い反応が伸びる。


真結は少し身を乗り出した。


「点じゃない」


隣にいたスタッフが聞く。


「何が?」


「これ」


真結が画面を拡大する。


「点が増えてるんじゃなくて……つながり始めてる」


ジェネラス・リンク。


過去にも彼らは大きな施設を一つ建設するのではなく、社会インフラの隙間へ小さな装置を潜ませる手法を使っていた。


小型端末。


物流。


通信。


車両。


人。


それらをつなぎ合わせ、表面上は何も存在しない巨大な情報網を構築する。


真結の顔から普段の柔らかな笑みが消える。


「早めに報告した方がいいね」


数十分後。


新橋。


ヒロ室本部。


芹沢遥室長と波田顧問の前に、仙台からオンライン回線が開かれた。


画面に真結が映る。


「お疲れさまです。仙台分室、菅野です」


遥が頷く。


「まゆちゃん、お願いします」


「はい」


神奈川県の地図が表示される。


真結はまず結論を述べた。


「神奈川県内で、ジェネラス・リンク関係と思われる活動が明確に増えています」


波田顧問がすぐ問う。


「確定か?」


「ジェネラス・リンクによる大規模作戦開始、とまでは断定できません。ただ――」


赤い点が次々表示される。


「偶然で説明するには数が多すぎます」


真結が川崎市沿岸部を拡大する。


「特に川崎臨海部です。工場、物流施設、港湾道路周辺で短時間通信が集中しています」


遥、


「通信内容は?」


「解析不能です。暗号形式も過去のものとは違います」


「じゃあ、どうしてジェネラス・リンクだと?」


真結は別のグラフを出す。


「暗号文ではなく、通信の癖を見ました」


「癖?」


「通信を始める時間。終了するまでの秒数。周波数をずらすタイミング。この三つが、過去のジェネラス・リンク系通信と非常によく似ています」


波田が腕を組む。


「方式は変えても、運用の癖までは変え切れてないわけか」


「そう考えています」


さらに物流データ。


「それと、不審車両が同じ地点へ何度も出入りしていません」


遥、


「普通なら不自然じゃないように思えるけど」


「逆です」


真結は車両履歴を並べる。


「一台を繰り返し使うと追跡されます。なので毎回違う車両を使っている可能性があります」


波田、


「使い捨てか」


「車そのものではなく、役割を使い捨てています」


遥の表情が引き締まる。


真結は最後に赤い点を線で結んだ。


川崎沿岸部を中心に、網のような形が浮かぶ。


「まだ完成していません。でも、ジェネラス・リンクが複数の小規模中継点を作っていると仮定すると、かなり説明できます」


波田、


「蜘蛛の巣だな」


「はい。そんな感じです」


そして真結は淡々と付け加えた。


「今なら、まだ芽の段階です。大きくなる前に潰せると思います」


報告終了。


遥は神奈川県の地図を見つめた。


「東京側から応援を出しますか」


普通ならそうなる。


ところが波田顧問が腕を組んだまま、


「いや」


と言った。


遥が見る。


「神奈川だけでやろう」


「神奈川だけ?」


「神奈川県在住者だけで全部片付けてもらう」


遥、


「ずいぶん雑な発想ですね」


「合理的だろ」


波田はヒロイン名簿を開く。


「川崎に住んでる奴がいる。横浜にもいる。相模原にもいる。地方出身でも神奈川暮らしが長い奴もいる」


遥、


「確かに多いですね」


「神奈川なんて県内に何でもあるんだ。任務だって県内で片付くだろ」


「その理屈は若干乱暴です」


「神奈川県民なら分かってくれる」


「たぶん怒られますよ」


それでも召集命令は出た。


新橋ヒロ室。


数時間後。


会議室へ八人の女性が集められた。


まず一人目。


平塚美波。藤沢市在住。


今回の最年長格。


元レディース総長。


現在はライフセイバーとしても活動する、海辺の現場にめっぽう強い姉御肌ヒロイン。


口は悪い。


毒舌。


怒鳴る。


しかし後輩に何かあれば真っ先に助けに行く。


本人は、


「リーダーとかめんどくせえべ」


と言うが、全員の体調や位置を誰より見ているため、結局リーダーになるタイプ。


二人目。


水無瀬澪。川崎市出身・在住。


大学生。


非常に庶民的。


脱力系。


普段は、


「まあ、いいんじゃない?」


「何とかなるよ」


で大概のことを流す。


ところが川崎で生まれ育ったため、今回の任務地域への土地勘は抜群。


駅前の綺麗な川崎だけでなく、工業地帯へ向かう交通や、地元民しか使わないような道まで知っている。


しかも存在感が強すぎない。


潜入には意外と向いている。


三人目。


南部沙羅。横浜市在住。


自称・横浜代表。


都会派。


スタイリッシュ。


という自己認識を持つ。


何でも「ハマの○○」と呼びたがる悪癖があり、


「ハマの情報戦女王・南部沙羅として――」


まで言ったところで、


美波から、


「今回の現場、川崎だべ」


と止められる。


「まだ何も言ってません!」


だが人当たりがよく、施設や企業への聞き込み、交渉には強い。


四人目。


白石陽菜。相模原市在住。


神奈川県内陸部代表。


華があり、若者受けも良い正統派。


横浜・川崎だけで神奈川県を語られがちな状況に、


「相模原も神奈川ですからね」


と静かに圧をかける。


PR能力や一般市民対応が高く、人前へ出る仕事では強い。


五人目。


エミリー・ハート。アメリカ・コロラド州デンバー出身、横浜市在住。


国際派。


長身。


身体能力が高い。


横浜での生活も長く、外国人関係者が絡む国際物流の現場では大きな戦力になる。


日本語も流暢だが、時々非常に率直な英語が出る。


六人目。


金城伊織。沖縄県那覇市出身、横浜市鶴見区在住。


琉球空手の達人。


教員志望。


「清く、正しく、美しく」を信条とする正統派ヒロイン。


鶴見住まいなので川崎臨海部は生活圏に近い。


接近戦能力は極めて高いが、複雑な電子機器を前にすると少し弱い。


七人目。


蛯沢紗耶。青森県八戸市出身、川崎市在住。


港町育ち。


社会経験豊富。


人の言葉をそのまま信用せず、表情や言葉の綻びを見る。


「その人、本当にそう思ってる?」


と誰も気づかなかった違和感を拾うタイプ。


八人目。


阿部柚葉。秋田県にかほ市出身、川崎市在住。


実務型。


情報整理が得意。


表立って仕切るより、地図、時刻、人員、車両情報をまとめ、チーム全体を支える。


仙台から真結が送る解析データを現場で咀嚼し、美波に渡す役割に向いている。


従妹には高校一年生の小野寺彩音がいるが、今回はもちろん非参加。


全員が席へ着く。


遥室長が口を開いた。


「では、ジェネラス・リンクの――」


波田顧問。


「その前に名前を決めよう」


遥、


「…………」


美波、


「名前?」


「臨時チーム名だ。形から入るのも大事だろ」


遥、


「私は作戦から入りたかったんですが」


「十分で終わる」


その言葉を、この場の全員が後で恨むことになる。


波田顧問がホワイトボードへ書く。


相模湾一家


沈黙。


次。


神奈川八州会


さらに、


湘南一家


横濱相模組


神州八人会


相模若衆会


八人が無言でホワイトボードを見る。


エミリーが恐る恐る聞く。


「Hata-san」


「何だ?」


「This team is……YAKUZA?」


「違う!」


沙羅、


「『横濱相模組』に至っては“組”って書いてありますけど」


「組織の組だ」


澪、


「神奈川八州会も怖いよ。近所に看板あったら道変える」


伊織、


「戦隊ヒロインというより任侠団体に見えるさー」


遥室長。


「全部却下です」


波田、


「まだ説明してない」


「説明されたらもっと怖くなると思います」


そこへ元レディース総長・美波。


「ったく。センスねえなあ」


波田、


「ならお前が出してみろ」


「いいべ」


美波がペンを取った。


湘南紅蓮連合


波田、


「……」


次。


相模爆走麗女隊


遥、


「……」


さらに、


湘南喧嘩上等


神奈川女帝連合


相州麗心会


湾岸紅姫


湘南麗華連合


美波が満足そうに振り返る。


「どうだべ」


波田顧問、


「俺より悪化してるぞ」


「どこがだよ!」


沙羅、


「どう見てもレディースです!」


澪がまとめる。


「波田顧問が任侠、美波さんがレディース」


柚葉、


「どちらも採用できませんね」


美波、


「相州麗心会なんて上品じゃねえか」


伊織、


「最後に“会”が付いた瞬間に危なく見えるさー」


そこから各自の案が始まる。


沙羅。


KANAGAWA BLUE8


「都会的で神奈川らしいでしょう?」


美波、


「健康サプリみてえ」


「何でですか!」


陽菜。


KANAGAWA MARINE8


「海のイメージを前に出したらどうです?」


伊織。


SAGAMI BLUE


「シンプルで覚えやすいと思います」


エミリー。


BLUE SHORE 8


「Internationalにも分かりやすい!」


柚葉。


KANA♡LINK


澪、


「敵の名前にリンクって入ってなかった?」


「……」


柚葉がホワイトボードから静かに消した。


さらに、


SHONAN BLUE★8


KANA☆BAY!


KANA☆WAVE


などが並ぶ。


ここから地獄の議論。


沙羅、


「湘南を名前に入れたら、横浜が脇役みたいじゃないですか」


美波、


「神奈川で湘南嫌いな奴なんかいねえべ」


澪、


「それ藤沢市民の意見だよ」


陽菜、


「相模原には海がないので“MARINE”だとちょっと……」


エミリー、


「でもKanagawaのイメージはSea!」


陽菜、


「相模原は違います!」


伊織、


「県全体を代表する名前となると難しいですね」


紗耶、


「そんな真剣に考えること?」


全員、


「考えることです!」


一時間経過。


決まらない。


波田、


「だから神奈川八州会で――」


全員、


「それはない!」


一時間半。


澪が机に突っ伏した。


「もう何でもいいよ……」


沙羅、


「澪、ちゃんと考えて」


「不評だったら後で変えればいいじゃん」


美波、


「それもそうだべ」


柚葉、


「ここまでの一時間半を否定しましたね」


二時間。


遥室長は、ホワイトボードを無言で眺めていた。


青。


赤。


黒。


消した跡。


ハート。


星。


任侠団体。


レディース。


英語。


会議が完全に迷走している。


遥は一つの名前を見た。


そして、ぽつり。


「……『KANA☆WAVE』がいいら」


静寂。


エミリーが最初に立ち上がる。


「Oh! それいい!」


沙羅も見る。


「……あ。普通にいいですね」


伊織、


「神奈川全体を表現できますね」


陽菜、


「相模原でも違和感ないです」


柚葉、


「短くて覚えやすい」


紗耶、


「それでいいんじゃない?」


澪、


「もう絶対それでいい」


美波が立ち上がる。


「じゃあ決定!」


ホワイトボードの文字を大きく丸で囲む。


「ウチら『KANA☆WAVE』でいくべ!」


ほぼ満場一致。


波田、


「神奈川八州会は?」


八人、


「却下!」


二時間かけた会議は、遥室長の一言で約30秒後に終了した。


イメージカラーも決定。


ブルー、ホワイト、レッドのトリコロール。


海と港、都市的な知性を象徴するブルー。


清潔感と正統派ヒロインらしさを示すホワイト。


情熱と行動力を表すレッド。


同じ制服へ統一するのではなく、各自の衣装へ三色を共通アクセントとして取り入れる。


出身地も経歴もバラバラ。


神奈川県生まれは四人。


地方出身が四人。


それでも全員が現在は神奈川県在住。


その共通点を名前にしたユニット。


KANA☆WAVE。


ようやく形が整った。


遥室長が時計を見る。


「では」


全員が見る。


「二時間遅れで、本題へ入ります」


美波、


「誰のせいだべ?」


全員の視線が波田顧問へ。


波田、


「名前は大事だ」


遥、


「二時間は大事にしすぎです」


会議室の照明が落ちる。


大型モニター。


先ほどまでのお笑いムードが消える。


川崎市沿岸部の詳細地図。


工業地帯。


物流施設。


運河。


高速道路。


埠頭。


倉庫街。


そして複数の赤いマーク。


仙台分室から真結が再びオンラインで参加する。


「KANA☆WAVEの皆さん。改めてよろしくお願いします」


美波が軽く手を上げる。


「よろしく、まゆちゃん」


澪は画面の場所を見て表情を変えた。


「……この辺なんだ」


真結、


「澪さん、分かります?」


「うん。この道路も、この辺の施設もだいたい分かる」


紗耶も身を乗り出す。


「私も生活圏から遠くない」


伊織、


「横浜側から入るなら、鶴見からのルートも使えますね」


真結は赤い点を指す。


「現時点で最も疑わしいのは、この三つのエリアです」


一つ目。


工業施設と物流倉庫が密集する区域。


二つ目。


港湾道路へ接続する大型物流拠点周辺。


三つ目。


運河沿いの施設群。


「ただし、ジェネラス・リンクの本拠地がここにあるという意味ではありません」


柚葉、


「中継点ですね」


「その可能性が高いです」


真結は頷く。


「今回は派手な突入作戦ではありません。まず、何を作っているのか確認してください」


沙羅、


「聞き込み中心?」


「聞き込み、監視、施設周辺の確認。それと、不自然な設備がないかの調査です」


美波、


「戦うのは最後だな」


「できれば戦闘なしで終わるのが理想です」


伊織が静かに頷く。


「一般の方が働いている場所ですからね」


真結、


「はい。物流や工場を止めるようなことは避けてください」


ここで美波が八人を見渡した。


「役割決めよう」


遥室長も頷く。


自然と形が決まっていく。


美波――全体指揮。


澪――川崎側の土地勘と現地案内。


沙羅――企業・施設関係者との交渉。


陽菜――一般人対応と周辺観察。


エミリー――外国人関係者、国際物流関係の確認。


伊織――護衛と不測の事態への即応。


紗耶――聞き込みと人物観察。


柚葉――真結から送られてくる情報の整理と現場共有。


そして仙台の真結が、KANA☆WAVE全体の情報面を支える。


澪が地図を見ながら、


「これ、結構広いよ」


美波、


「最初から八人まとまって歩く気はねえべ」


沙羅、


「班分けですね」


真結、


「私もその方がいいと思います」


そこで波田顧問が口を開く。


「明日は――」


遥、


「待ってください」


「何だ?」


「今回の話は、作戦会議までです」


全員、


「……?」


遥が妙にカメラ目線になる。


「川崎臨海部で何が起きるかは、次回です」


美波、


「誰に向かって言ってんだべ?」


澪、


「室長、最近そういうことするようになったの?」


遥、


「気のせいら」


そして大型モニターへ、改めて川崎臨海部の地図が映る。


複数の赤い点。


まだ正体の見えないネットワーク。


真結の解析では、活動は今も続いている。


新しく誕生したばかりのKANA☆WAVE。


実績ゼロ。


チームワーク未知数。


ユニット名を決めるだけで二時間。


しかもリーダーは元レディース総長。


横浜代表を自称する者が一人。


「もう何でもいい」と投げた川崎市民が一人。


外国人が一人。


沖縄、青森、秋田から神奈川県へ移り住んだ者もいる。


どう見ても統一感はない。


しかし。


それこそが神奈川県だった。


横浜も。


川崎も。


湘南も。


相模原も。


地方から移り住んだ人々も。


それぞれ違うまま、一つの県にいる。


美波が地図を見ながら言う。


「ま、せっかく名前まで決めたんだ。初仕事くらいちゃんとやるべ」


澪、


「川崎で変なことされるの嫌だしね」


沙羅、


「KANA☆WAVEの華麗なる初陣ですね」


美波、


「だからお前は華麗とか考えんな」


「どうしてですか!」


エミリー、


「I think this team is going to be fun!」


紗耶、


「遊びじゃないからね」


伊織、


「でも、いいチームになりそうさー」


柚葉、


「まずは明日の任務を成功させましょう」


陽菜も頷く。


「神奈川県の問題ですから、神奈川県在住者で片付けましょう」


波田顧問が満足そうに腕を組む。


「ほら。俺の言った通りだ」


遥室長、


「ユニット名以外は、ですね」


「まだ言うか」


画面に大きく表示される。


KANA☆WAVE

FIRST MISSION

――川崎臨海部


その下に小さな文字。


※「神奈川八州会」は正式に不採用となりました。


波田顧問、


「注釈いらないだろ!」


――次回。


KANA☆WAVE初陣。


舞台は川崎市沿岸部。


仙台のまゆちゃんが見つけた「点」が、何につながっているのか。


八人はまだ知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。