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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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1170/1295

ヒロヒロ山陰どうでしょう 午前3時、知佳まで悪ノリ。――梨乃は鼻笛、ノムさんには逆に騙された!?

出雲大社近くの老舗高級旅館、二泊目の夜。


前日は、しまね和牛に舌鼓を打ち、ノムさんが酒を飲みながら生配信に居座った結果、コメント欄の**「芹沢遥(本人)」**から、


『ノムさん出演禁止!!』


と書き込まれる騒動こそあったものの、その後は驚くほど平和だった。


早朝バズーカもない。


寝起きドッキリもない。


梨乃の鼻にピロピロ笛を付ける者もいない。


一行は普通に一晩を過ごした。


だから。


山根梨乃は安心していた。


完全に。


安心し切っていた。


そして、その油断こそが――。


翌午前3時。


新たな伝説を生む。


午前3時02分――なぜか一条知佳が廊下にいる


真夜中。


高級旅館の廊下。


静まり返っている。


時計。


午前3時02分。


その静寂の中。


小声。


「始まってます?」


「始まっとる」


そこにいたのは。


江波のどか。


そして。


何と。


一条知佳。


画面には。


『緊急生配信 午前3時、知佳さんが悪いことを覚えました』


と表示されている。


配信開始からわずか数十秒。


深夜にもかかわらず通知に気づいた視聴者が集まり始める。


《え?》


《午前3時なんだけど》


《知佳さん!?》


《仕掛け人側にいるw》


《早朝バズーカの被害者だった人ですよね?》


知佳。


カメラを見る。


小声。


「誤解のないよう申し上げますが、私は本来、この種の企画を推奨していません」


のどか。


「でも来たじゃないですか」


「江波さんが、“梨乃ちゃんの寝顔は絶対に面白い”と言うので」


「はい」


「そこだけは……」


少し。


間。


「確認したくなりました」


のどか。


口。


押さえる。


「知佳さん完全にこっち側じゃん!」


「声が大きいです」


「悪いことしに来とる人に怒られた!」


知佳。


「梨乃ちゃんを起こさないためです」


のどか。


「やる気あるじゃん!」


コメント欄。


《知佳さん言い訳してるw》


《めちゃくちゃ乗り気じゃん》


《クイズ王、深夜バラエティー堕ち》


《ヒロヒロに染まった》


知佳。


「染まってはいません」


のどか。


「誰も声に出してないですよ」


知佳。


「コメントを読みました」


「なるほど」


まだ。


理知的。


まだ。


上品。


しかし。


午前3時。


カメラ片手。


他人の寝室へ向かっている時点で。


かなり。


手遅れである。


午前3時05分――因幡の太陽、完全無防備


ターゲット。


山根梨乃。


ただし。


梨乃は一人ではない。


同室。


神門結衣。


そこで。


事前に。


のどかが結衣へ小声で連絡。


結衣。


すでに起きている。


「静かにね」


のどか。


「分かっとる」


知佳。


「神門さんまで協力者なのですか?」


結衣。


「見るだけ」


「それは協力者と呼ぶのでは?」


「たぶん」


結衣。


布団の中。


上半身だけ。


起こす。


そして。


隣。


梨乃。


寝ている。


……いや。


転がっている。


布団。


大幅。


ずれている。


枕。


本来あるべき位置から半分脱落。


片腕。


頭上。


万歳。


右脚。


布団。


外。


髪。


顔。


かかる。


そして。


口。


少し。


ぽかん。


開く。


「すぅー……」


「すぅー……」


何より。


表情。


幸せ。


とにかく。


幸せそう。


この世には。


悩みなど。


一つもありません。


と言わんばかりの顔。


のどか。


梨乃。


見る。


数秒。


無言。


そして。


小声。


「……頭の弱いラブラドールそのものじゃん」


結衣。


後ろ。


布団。


肩。


揺れる。


知佳。


すでに。


片手。


口元。


「これは……」


梨乃。


「すぅー……」


知佳。


「非常に……安心して眠っていますね」


結衣。


「警戒心ゼロだがね」


のどか。


「野生じゃ絶対生きていけんタイプ」


知佳。


「ただ、こういう子は人に飼われれば非常に幸せなのでは」


結衣。


耐えられない。


「ふっ……」


のどか。


振り向く。


「結衣!」


結衣。


口。


押さえる。


「静かに……」


コメント欄。


大盛況。


《梨乃は平和だね》


《幸せそうすぎる》


《頭の弱いラブラドール感満載》


《梨乃の前世は多分愛玩動物だったのでしょう。今もか?》


《この寝顔、何の不安もない》


《絶対いい夢見てる》


《世界平和ってこういうことかもしれない》


のどか。


最後。


読む。


「“今もか?”って……!」


知佳。


肩。


震える。


「江波さん、読まないでください……」


「知佳さん笑っとるじゃん!」


「笑わせないでください」


結衣。


後ろ。


静かに。


「梨乃の周りだけ世界平和だがね」


のどか。


「うち昨日出雲大社で世界平和お願いしたけど、梨乃だけもう達成しとる」


コメント。


《wwww》


《梨乃式世界平和》


《本人寝てるだけ》


そして当然、例の道具


のどか。


鞄。


ごそ。


知佳。


見る。


「まさか」


出てくる。


例の。


ピロピロ笛。


吹き戻し。


知佳。


「……まだ持っていたんですか」


のどか。


「常備」


結衣。


「何に使うん」


「梨乃」


知佳。


「用途が限定的すぎます」


梨乃。


相変わらず。


「すぅー……」


のどか。


ゆっくり。


鼻先。


近づける。


知佳。


息。


止める。


結衣。


布団。


口。


押さえる。


吹き戻し。


梨乃。


鼻。


当たる。


すぅーー。


ぴろ。


戻る。


知佳。


目。


見開く。


梨乃。


ふーー。


ぴろろろろっ。


知佳。


肩。


ぶる。


のどか。


カメラ。


揺れる。


結衣。


後ろ。


布団。


顔。


埋める。


梨乃。


さらに。


深い。


呼吸。


すぅぅぅぅ。


ふーーーーーーー。


ぴろろろろろろろろろっ!


知佳。


ついに。


「ふふっ……!」


慌てて。


口。


押さえる。


のどか。


知佳。


見る。


「知佳さん!」


「言わないでください……!」


「笑っとる!」


「これは……これは反則です……!」


結衣。


声。


出さず。


大爆笑。


布団。


揺れている。


梨乃。


全く。


気づかない。


すー。


ぴろ。


ふー。


ぴろろろ。


視聴者。


《wwwwwww》


《梨乃起きろw》


《いや起きないでほしい》


《ピロピロと完全同期》


《知佳さんの上品な笑い声かわいい》


《結衣ちゃん後ろでめっちゃ笑ってる》


《ヒロヒロって本当に何やってるの?》


《午前3時です》


そして。


梨乃。


寝返り。


ごろん。


のどか。


慌てる。


「やば」


知佳。


「起きます!」


しかし。


梨乃。


向き。


変わる。


口。


また。


少し。


開く。


「すぅー……」


寝る。


結衣。


ぽつり。


「強い」


知佳。


「すごいですね……」


のどか。


「何しても寝るじゃん」


コメント。


《最強の睡眠耐性》


《危機察知能力ゼロ》


《愛されて育ったラブラドール》


《梨乃ちゃん可愛い》


結衣。


梨乃。


布団。


少し。


掛け直す。


「風邪引くけん」


その仕草。


優しい。


のどか。


「結衣、完全に飼い主じゃん」


梨乃。


寝言。


「……犬じゃ……ないで……」


三人。


止まる。


数秒。


そして。


知佳。


口。


両手。


押さえる。


結衣。


顔。


伏せる。


のどか。


肩。


震える。


「寝ながら反応すんな!」


視聴者。


大爆発。


本人。


また。


すー。


すー。


知らない。


最後まで。


知らない。


午前3時20分――知佳、復讐へ燃える


梨乃の部屋。


撤収。


廊下。


知佳。


まだ。


笑い。


残る。


「……駄目です」


のどか。


「何が?」


「思い出すと笑ってしまいます」


「知佳さん、ヒロヒロ適性めっちゃ高いですよ」


「ありません」


「午前3時に梨乃の鼻ピロピロ見て笑っといて?」


「それは……」


知佳。


一瞬。


黙る。


そして。


少し。


悔しそう。


「あれは梨乃ちゃんが面白すぎるんです」


のどか。


「認めた!」


知佳。


咳払い。


「それより次です」


のどか。


にや。


「お」


知佳。


今度。


ちょっと。


乗り気。


「野村さんですよね?」


のどか。


「はい」


知佳。


目。


少し。


輝く。


「以前、私は早朝バズーカでかなり驚かされました」


「はい」


「野村さんにも一度くらい、同じ気持ちを味わっていただく必要があると思います」


のどか。


「知佳さん、仕返しする気満々じゃん!」


「教育的措置です」


「復讐を上品に言い換えんといて!」


コメント。


《知佳さんノリノリw》


《恨んでたw》


《クイズ王の復讐》


《知佳さん意外と根に持つ》


知佳。


カメラ。


見る。


「根に持ってはいません」


のどか。


「でもノムさん起こすんですよね」


「はい」


「めっちゃ根に持っとる!」


作戦――ノムさんの枕元に「出演禁止」


のどか。


準備。


巨大。


紙。


文字。


『芹沢遥(本人) ノムさん出演禁止!!』


知佳。


見る。


「くだらない……」


のどか。


「知佳さんが書いたんですよ」


「江波さんに頼まれたからです」


「字めっちゃ綺麗」


「ありがとうございます」


「褒めてない」


知佳。


ちょっと。


笑う。


作戦。


ノムさん。


寝ている。


枕元。


この札。


置く。


そして。


起きる瞬間。


撮る。


知佳。


「それだけですか?」


のどか。


「それだけ」


「……少し弱いですね」


のどか。


止まる。


「え?」


知佳。


真面目。


考える。


「せっかくなら、起きた瞬間に昨日の“出演禁止”コメントも読み上げては?」


のどか。


「知佳さん!」


「何です?」


「めっちゃノリノリじゃん!」


「公平性です」


「何の公平性!」


しかし――知佳だけが知らない


ここで。


視聴者だけに。


真相。


伝える。


画面。


テロップ。


【逆ドッキリです】


実は。


ノムさん。


起きている。


まさにゃん。


起きている。


そして。


のどか。


最初から。


グル。


今夜の本当の企画。


『理知的な学生クイズ王・一条知佳、仕掛け人になったら逆に簡単に騙される説』


知佳。


人は良い。


基本。


相手を疑わない。


しかも。


ちょっと。


天然。


だから。


「ノムさん寝とる」


と言えば。


普通に。


信じる。


視聴者。


《知佳さん逃げて》


《全部信じてるw》


《人が良すぎる》


《今めちゃくちゃやる気なのが余計面白い》


偽ノムさん


ノムさん。


まさにゃん。


部屋。


暗い。


布団。


こんもり。


中。


ノムさん。


……ではない。


枕。


座布団。


布団。


詰め物。


そして。


スマートフォン。


再生。


「ぐぅー……」


ノムさんらしい。


いびき。


知佳。


そっと。


部屋。


入る。


「寝ていますね」


のどか。


真顔。


「ぐっすりです」


知佳。


完全。


信用。


「野村さんらしいですね」


のどか。


「ですね」


知佳。


札。


持つ。


そー。


そー。


近づく。


コメント。


《知佳さんww》


《クイズ王なのに気づかない》


《いびき音スマホだぞ》


《後ろ後ろ》


知佳。


偽ノムさん。


枕元。


しゃがむ。


「この辺でしょうか」


のどか。


「もうちょい近く」


知佳。


さらに。


近づく。


「朝、これを見た時の顔が楽しみですね」


のどか。


心。


中。


笑う。


知佳。


珍しく。


完全。


悪い顔。


「一度くらい仕返ししても罰は当たりません」


視聴者。


《知佳さんかわいいw》


《数十秒後が楽しみ》


そして。


布団。


端。


ずれる。


知佳。


「あれ?」


中。


枕。


見える。


知佳。


「……?」


布団。


そっと。


めくる。


座布団。


枕。


そして。


紙。


『知佳ちゃん 逆ドッキリ大成功!』


知佳。


「…………」


固まる。


その瞬間。


ぱっ。


照明。


襖。


がらっ。


ノムさん。


「知佳ちゃん、おはよう!」


まさにゃん。


「大成功ー!」


知佳。


「えっ!?」


振り向く。


のどか。


カメラ。


大爆笑。


知佳。


見る。


「…………」


のどか。


見る。


ノムさん。


見る。


まさにゃん。


見る。


もう一度。


のどか。


「……江波さん?」


のどか。


笑いながら。


「はい!」


知佳。


「あなたもですか?」


「はい!」


知佳。


顔。


赤い。


完全。


悔しい。


そして。


笑い。


こらえきれない。


「もう……!」


のどか。


腹。


抱える。


「知佳さん、本気で信じとった!」


「信じますよ!」


「何で?」


「江波さんが真顔で“寝ています”と言ったからでしょう!」


「人良すぎ!」


知佳。


半笑い。


頬。


少し。


膨れる。


「普通、味方を疑いません!」


ノムさん。


「ヒロヒロでそれは危険じゃぞ」


知佳。


「あなたが言わないでください!」


まさにゃん。


「でも知佳ちゃん、結構楽しそうだったよ」


知佳。


「葛城さん!」


「札持ってめちゃくちゃ嬉しそうに――」


「言わなくていいです!」


コメント欄。


完全。


祭り。


《知佳さん可愛いw》


《好感度爆上がり》


《頭いいのに人良すぎる》


《「あなたもですか?」最高》


《頬膨らませてるの可愛い》


《知佳さん、天然入ってるの好き》


《クイズ王また敗北》


知佳。


コメント。


見る。


ますます。


恥ずかしい。


「……皆さん笑いすぎです」


のどか。


「怒った?」


知佳。


「怒っています」


でも。


笑っている。


のどか。


「めっちゃ半笑いじゃん」


「悔しいんです!」


ノムさん。


「仕返しする気満々じゃったのう」


知佳。


札。


ノムさん。


前。


突き出す。


「これは本当に適用してください!」


ノムさん。


「何でじゃ!」


のどか。


「知佳さん、最後うまい!」


そして。


この場面。


切り抜き。


爆発。


知佳の好感度。


急上昇。


普段。


理知的。


上品。


何でも。


知っている。


でも。


人を疑うことが苦手。


ちょっと。


天然。


悔しい。


でも。


笑って許す。


その素。


視聴者。


刺さる。


グレースフォースは――そっとしておこう


知佳。


まだ。


悔しい。


「もう終わりですよね?」


のどか。


「あと一部屋」


「誰です?」


「みのりんとひかり」


知佳。


「ああ……」


二人。


部屋。


そっと。


覗く。


そして。


止まる。


みのり。


睡眠。


ひかり。


睡眠。


別々の寝具。


なのに。


何故か。


間。


狭い。


みのり。


ひかり側。


向く。


ひかり。


みのり側。


向く。


手。


布団。


境界。


近い。


実に。


仲良し。


知佳。


数秒。


見る。


のどか。


見る。


二人。


目。


合う。


知佳。


小声。


「……これは」


のどか。


「起こしたらいけん気がしますね」


「私もそう思います」


「邪魔したら罰当たりそう」


「同感です」


二人。


静か。


扉。


閉める。


コメント。


《撤退w》


《そこは空気読むんだ》


《尊い》


《何もするな正解》


《梨乃との扱いの差》


のどか。


最後。


読む。


「あ」


知佳。


「何です?」


「“梨乃との扱いの差”って」


知佳。


少し。


考える。


「梨乃ちゃんは……何となく大丈夫そうです」


のどか。


「分かる!」


結衣。


後で聞いて。


「分かる」


梨乃だけ。


知らない。


朝食――一人だけ世界から置いていかれている


朝。


高級旅館。


朝食。


梨乃。


元気。


「おはよう!」


のどか。


「おはよう」


結衣。


「よく寝とったね」


梨乃。


「めっちゃ寝た!」


知佳。


梨乃。


見て。


思い出す。


鼻。


ピロピロ。


「ふふっ……」


梨乃。


「何?」


「何でもありません」


のどか。


知佳。


見る。


笑う。


知佳。


「江波さん、言わないでくださいね」


梨乃。


「何の話?」


結衣。


「何でもないがね」


梨乃。


三人。


見る。


「怪しいで」


そこへ。


ノムさん。


朝食。


食べながら。


「さて、今日は松江へ行くぞ」


梨乃。


「松江!」


結衣。


「県都だね」


知佳。


気持ち。


切り替える。


「島根県庁所在地ですね」


伊織。


「今度は東ですね」


みのり。


「松江城!」


ひかり。


「行きたいね」


のどか。


「今日はサイコロ?」


ノムさん。


「移動は普通じゃ」


全員。


一瞬。


疑う。


知佳。


「本当に?」


ノムさん。


「知佳ちゃん、急に人を疑うようになったのう」


知佳。


笑顔。


「誰のせいですか?」


ノムさん。


黙る。


のどか。


爆笑。


逆ドッキリ。


一応。


効果。


あった。


出雲から松江へ――今度は七人の鉄道旅


高級旅館。


チェックアウト。


二泊。


お世話。


礼。


そして。


出雲大社方面から。


再び。


地元私鉄。


会社名は作中では出さない。


説明するなら。


「出雲大社方面と出雲市街をつなぎ、さらに宍道湖北岸を走って県都・松江へ向かう、島根を代表するローカル私鉄」


とする。


ヒロイン。


七人。


のどか。


梨乃。


結衣。


知佳。


伊織。


みのり。


ひかり。


こちら。


列車。


そして。


ノムさん。


まさにゃん。


車。


梨乃。


「また車!?」


まさにゃん。


「荷物もあるから!」


のどか。


「絶対それだけじゃないですよね!」


ノムさん。


「松江で待っとる」


梨乃。


「ずるい!」


知佳。


「今回は列車の方が楽しそうですよ」


伊織。


「私もそう思います」


みのり。


「宍道湖見たい!」


ひかり。


「私も」


梨乃。


「じゃあええか!」


のどか。


「切り替え早っ!」


車内――朝の悪ノリから一転、穏やかな山陰旅


列車。


走る。


出雲。


田園。


集落。


そして。


次第。


車窓。


大きな水面。


見え始める。


宍道湖。


山陰を代表する湖。


淡水と海水が混じる汽水湖。


広い。


穏やか。


遠く。


対岸。


山。


空。


水面。


光。


線路は。


その北岸。


寄り添うように。


松江へ。


梨乃。


窓。


見る。


「うわぁ……!」


みのり。


「すごい!」


ひかり。


自然。


みのり。


横。


「綺麗だね」


「うん」


伊織。


「湖というより海のようですね」


知佳。


「かなり広いですからね」


のどか。


「知佳さんガイド復帰!」


知佳。


「私は元々こちらです」


のどか。


「午前3時にノムさんの枕元へ“出演禁止”置こうとしとった人が?」


知佳。


「…………」


梨乃。


「何それ?」


知佳。


「何でもありません!」


のどか。


必死。


笑う。


梨乃。


「怪しい」


結衣。


「あとでアーカイブ見れば分かるよ」


梨乃。


「アーカイブ?」


のどか。


「結衣!」


「何?」


「それ言うん!?」


梨乃。


ますます。


疑う。


列車。


ゆっくり。


進む。


湖。


時々。


近づく。


また。


離れる。


古い集落。


小さな駅。


田畑。


低い山。


水辺。


山陰らしい。


ゆったりした。


風景。


伊織。


「今回の旅、水辺が多いですね」


のどか。


「ほんまじゃね」


知佳。


「三次から江の川を追い、日本海へ出て、今度は宍道湖ですから」


結衣。


「島根は水の景色が綺麗だがね」


梨乃。


「結衣、この辺もよく来た?」


「うん。松江へ行く時とか」


「子どもの頃?」


「そう」


梨乃。


「結衣にも子どもの頃あったんだな」


結衣。


「またそれ言う?」


のどか。


「梨乃の中で結衣何歳から存在しとるん!」


七人。


笑う。


公共の車内。


だから。


声。


大きく。


しない。


周囲。


配慮。


でも。


楽しそう。


これくらいが。


ちょうどいい。


みのり。


窓。


眺める。


「夕陽も綺麗なんだろうなあ」


ひかり。


「今度一緒に見よう」


「うん」


梨乃。


二人。


見る。


口。


開く。


のどか。


すぐ。


「梨乃、言わんでええ」


「まだ何も」


「顔で分かる」


知佳。


小さく。


笑う。


みのり。


「何?」


梨乃。


「何でもないで」


ひかり。


「ほんと?」


梨乃。


「尊いなって」


のどか。


「結局言うた!」


みのり。


「梨乃ちゃん!」


ひかり。


顔。


少し。


赤い。


結衣。


「まあ仲ええのはええことだがね」


伊織。


「そうですね」


知佳。


「車内ですので、この話題はこの辺で」


梨乃。


「はい」


素直。


のどか。


「知佳先生強い」


少し。


静か。


七人。


それぞれ。


景色。


見る。


列車。


走る。


湖。


光る。


梨乃。


今回は。


寝ない。


のどか。


見る。


「梨乃、今日は起きとるじゃん」


「寝ないで!」


「何で?」


「この景色見たい」


結衣。


「ええね」


梨乃。


少し。


考える。


「あと寝たら何されるか分からん気がする」


のどか。


ぴく。


知佳。


目。


そらす。


結衣。


窓。


見る。


梨乃。


三人。


見る。


「……やっぱり何かした?」


のどか。


「景色見んさい!」


コメント欄。


《バレかけてるw》


《梨乃アーカイブ見ろ》


《午前3時のラブラドール》


《七人の鉄道旅ほっこりする》


《宍道湖きれい》


《このメンバー好き》


そして。


松江。


近づく。


宍道湖。


景色。


続く。


県都。


建物。


増える。


終点。


松江しんじ湖温泉。


列車。


ゆっくり。


ホーム。


入る。


梨乃。


「着いた!」


結衣。


「松江だがね」


知佳。


「無事到着です」


伊織。


「いい鉄道旅でしたね」


みのり。


「楽しかった!」


ひかり。


「うん」


のどか。


「午前3時から色々ありすぎじゃけどね」


知佳。


「その話はもう終わりです」


「まだ悔しい?」


知佳。


少し。


むっ。


でも。


笑う。


「悔しいです」


のどか。


「かわいい」


知佳。


「江波さん!」


梨乃。


「何が?」


全員。


「何でもない!」


駅。


外。


出る。


そこ。


乗用車。


ノムさん。


まさにゃん。


先着。


ノムさん。


手。


振る。


「おーい! 遅かったのう!」


のどか。


「またそれ言うん!?」


知佳。


ノムさん。


見る。


まだ。


少し。


悔しい。


ノムさん。


にや。


「知佳ちゃん、列車楽しかったか?」


知佳。


笑顔。


「ええ。野村さんのおかげで人を疑うことも覚えました」


ノムさん。


「それは良かった」


「褒めていません」


まさにゃん。


吹き出す。


のどか。


笑う。


梨乃。


「何の話?」


結衣。


「梨乃も近いうち分かるよ」


梨乃。


「何が?」


誰も。


答えない。


こうして。


『ヒロヒロ山陰どうでしょう』。


舞台。


ついに。


島根県の県都。


松江。


しかし。


午前3時に。


梨乃の鼻。


ぴろぴろ。


知佳。


逆ドッキリ。


グレースフォース。


尊いので撤退。


そして。


朝になれば。


美しい宍道湖。


七人。


穏やかな鉄道旅。


この番組。


一体。


何を目指しているのか。


相変わらず。


誰にも。


分からない。


ただ。


視聴者コメント。


最後。


一つ。


すべて。


表していた。


《ヒロヒロって、バカやってる時も旅してる時も結局みんな楽しそうなんだよな》


それで。


たぶん。


十分なのだった。


戦隊ヒロイン小説 ヒロヒロ三人娘によるヒロヒロ山陰どうでしょう 『ヒロヒロ山陰どうでしょう 午前3時、知佳まで悪ノリ。――梨乃は鼻笛、ノムさんには逆に騙された!?』 の詳しいあらすじを爆笑コメディ小説書いて

・このあらすじでOK

※このあと松江での騒動につなげる感じで書いて

『ヒロヒロ山陰どうでしょう 午前3時、知佳まで悪ノリ。――梨乃は鼻笛、ノムさんには逆に騙された!?』


出雲大社近くの老舗高級旅館、二泊目の夜。


前日は奇跡的に何も起こらなかった。早朝バズーカもなければ、鼻にピロピロ笛を当てられる者もいない。夕食ではノムさんが酒を飲みながら配信に居座り、遥室長から「ノムさん出演禁止!!」と書き込まれた程度である。


――それを「何もなかった」と表現してよいのかはさておき。


七人のヒロインたちは出雲大社を真面目に参拝し、午後には結衣の実家の土産物店を手伝い、売れ筋商品を次々に完売させた。半日だけなら過去最高という売り上げを記録し、「たまにはヒロヒロも本当に良いことをする」と視聴者からも褒められた。


その晩。


誰もが思った。


――今夜こそ平和だろう。


実際、午前零時は平和だった。


午前一時も平和。


午前二時も平和。


そして。


午前三時。


その平和は、江波のどかによって破壊された。


午前3時――なぜ一条知佳がここにいる


旅館の廊下。


照明を落とした静かな館内を、二人の女が忍び足で歩いていた。


一人は、もちろん江波のどか。


そしてもう一人は――。


「江波さん、もう配信は始まっているんですか?」


「始まっとります」


「……本当に午前三時ですよ?」


「知っとります」


「私、改めて考えると、とんでもないことをしている気がするんですが」


「今さらですか?」


一条知佳だった。


配信画面には、既にタイトルが出ている。


『緊急生配信 午前3時、知佳さんが悪いことを覚えました』


通知をオンにしていた物好きな視聴者たちが、午前三時にもかかわらず次々と集まってくる。


《え?》


《今3時なんだけど》


《知佳さん!?》


《なんで仕掛ける側にいるのw》


《早朝バズーカ食らった人ですよね?》


コメントを読んだ知佳は、少し眉を寄せた。


「誤解のないように申し上げておきますが、私はこの種の企画を推奨しているわけではありません」


のどかはニヤニヤする。


「でも来たじゃないですか」


「江波さんが、“梨乃ちゃんの寝顔は絶対に面白い”と強く主張するので」


「それで?」


知佳は一瞬だけ黙った。


「……確認してみたくなりました」


のどかは口を押さえた。


「知佳さん、完全にこっち側じゃん!」


「声が大きいです」


「人を起こしに来とる人から注意された!」


「起こすつもりはありません。観察です」


「もっと悪い言い方になっとる!」


コメント欄。


《知佳さん言い訳が苦しい》


《めっちゃ楽しそう》


《クイズ王が深夜バラエティーに堕ちた》


《ヒロヒロ恐るべし》


知佳は画面を見て、小さく咳払いした。


「……染まってはいません」


のどかが首を傾げる。


「誰も今、声に出して言ってないですよ?」


「コメントに書いてあります」


「そこはちゃんと読んどるんですね」


理知的。


上品。


冷静。


けれども午前三時に他人の寝室へ向かっている。


時すでに遅しだった。


午前3時5分――因幡のラブラドール、完全熟睡


梨乃は結衣と同室だった。


もちろん結衣には事前に話を通してある。結衣は布団の中で既に目を覚ましており、のどかたちが入ってくると人差し指を唇へ当てた。


「静かにね」


「分かっとる」


知佳が小声で尋ねる。


「神門さんまで協力者なんですか?」


「私は見るだけ」


「十分、協力者だと思いますが」


「たぶん」


そして三人の視線が、もう一つの布団へ向く。


そこに。


山根梨乃がいた。


いや。


散らかっていた。


布団は斜め。


枕は半分外れている。


右腕は頭上へ伸びて万歳状態。


片脚は布団の外へ飛び出している。


髪は好き勝手な方向へ広がり、口は少しだけ開いていた。


「すぅー……」


「すぅー……」


寝息。


規則正しい。


そして何より。


ものすごく幸せそうだった。


人生における不安、悩み、課題、レポートの締め切り、将来設計、その他すべて。


この瞬間の梨乃には何一つ関係ない。


のどかはしばらく黙って眺めたあと、とうとう呟いた。


「……頭の弱いラブラドールそのものじゃん」


後ろの結衣の肩が揺れた。


知佳は口元へ手を当てる。


「これは……」


梨乃。


「すぅー……」


知佳は言葉を選んだ。


「非常に……安心して眠っていますね」


結衣が小声で付け加える。


「警戒心ゼロだがね」


「野生じゃ絶対生きていけんタイプじゃ」


「でも人に飼われたら幸せそうですね」


知佳まで真顔で分析し始めた。


のどかが振り返る。


「知佳さんも犬扱いしとるじゃん!」


「一般論です」


コメント欄はすでに大喜利大会になっていた。


《梨乃は平和だね》


《世界で一番幸せそう》


《頭の弱いラブラドール感満載》


《梨乃の前世は多分愛玩動物だったのでしょう。今もか?》


《この子だけ悩みなさそう》


《世界平和ってこういう状態なのかもしれない》


のどかが「今もか?」を見つけてしまい、声を出さないよう身体を折る。


「ちょっ……“今もか?”って……!」


「江波さん、読まないでください……」


知佳も笑っている。


後ろの結衣まで布団へ顔を伏せた。


「梨乃の周りだけ、もう世界平和達成しとるがね」


「うち昨日、本気で世界平和祈ったんじゃけど、梨乃だけ先に御利益来とる」


本人。


すー。


すー。


まったく知らない。


そして。


のどかが鞄から取り出した。


細長い。


色鮮やかな。


あの物体。


知佳の目が細くなる。


「……まさか」


ピロピロ笛。


「まだ持っていたんですか?」


「予備があるけえ」


結衣が呆れる。


「何の予備?」


「梨乃用」


「専用品になっとるがね」


知佳は冷静に指摘する。


「旅の装備品ではありませんよね?」


「ヒロヒロの旅には必要」


「必要ありません」


だが言いながらも、知佳は梨乃の鼻を見ている。


やる気。


ある。


のどかがそーっと吹き戻しの先を梨乃の鼻先へ当てる。


三人。


息を止める。


梨乃が息を吸う。


「すぅぅー……」


ぴろ。


戻る。


そして吐く。


「ふぅー……」


ぴろろろろっ。


知佳の目が見開く。


結衣が布団を握る。


のどかは既に限界。


梨乃は起きない。


もう一度。


すぅー。


ぴろ。


ふぅー。


ぴろろろろろろっ。


「……っ」


知佳が両手で口を押さえる。


のどかが小声で囁く。


「知佳さん!」


「言わないでください……!」


「笑っとる!」


「これは……これは駄目です……!」


梨乃は幸せそうなまま。


そして。


次の寝息。


大きい。


「すぅぅぅぅぅ――」


三人。


構える。


「ふぅぅぅぅ――」


ぴろろろろろろろろろろろっ!


知佳。


「ふふっ……!」


とうとう声が漏れた。


結衣は布団へ突っ伏して無言で笑う。


のどかも涙を拭う。


「何で起きんの……!」


コメント欄。


《wwwwwww》


《梨乃ちゃん起きろw》


《いや起きないで》


《ピロピロと呼吸が同期してる》


《知佳さん笑ってるのかわいい》


《後ろの結衣ちゃんも限界》


《午前3時に何やってんだこの番組》


梨乃。


寝返り。


ごろん。


三人。


「!」


のどかが慌ててピロピロ笛を引く。


知佳が身構える。


結衣も息を止める。


しかし。


梨乃。


体勢を変えただけ。


再び。


「すぅー……」


知佳が呆れたように呟いた。


「……強いですね」


結衣。


「睡眠だけはね」


のどか。


「ヒロインとして使う場所間違えとる能力じゃ」


そして結衣が梨乃のはだけた布団をそっと掛け直す。


「風邪引くけん」


のどかがそれを見てニヤリ。


「完全に飼い主じゃん」


その瞬間。


梨乃。


寝言。


「……犬じゃ……ないで……」


三人。


停止。


一秒。


二秒。


結衣。


顔を伏せる。


知佳。


両手で口。


のどか。


肩。


震える。


「寝ながら否定すんな!」


コメント欄。


《奇跡w》


《聞こえてるのか》


《魂レベルで犬扱いを拒否》


《ラブラドールじゃないで》


そして梨乃はまた。


何事もなかったように。


すー。


すー。


最後まで起きなかった。


午前3時20分――知佳、すっかり仕掛け人になる


梨乃の部屋を撤収。


廊下。


知佳はまだ笑っていた。


「……思い出すと駄目です」


のどか。


「知佳さん、めちゃくちゃ楽しんどるじゃん」


「梨乃ちゃんが悪いんです」


「寝とるだけですよ?」


「それが面白いんです」


「もう完全にヒロヒロ」


「違います」


否定。


速い。


しかし。


次の瞬間。


知佳の表情が少し変わる。


「それより」


「はい」


「次は野村さんですよね?」


のどか。


ニヤリ。


「もちろん」


知佳。


意外なほど。


乗り気。


「私は以前、早朝バズーカという非常に理不尽な目に遭わされました」


「はい」


「ですから」


少し。


笑う。


「野村さんにも、一度くらい同じような気分を味わっていただくべきかと」


のどか。


「知佳さん、仕返しする気満々!」


「教育的措置です」


「復讐を上品に言い換えんでください!」


コメント。


《知佳さんノリノリw》


《本当は根に持ってたw》


《クイズ王の復讐》


《今日一番楽しんでない?》


知佳は画面へ向かって。


「根に持ってはいません」


のどか。


「じゃあやめます?」


「いえ」


即答。


「やります」


「根に持っとる!」


作戦はこうだった。


ノムさんとまさにゃんの部屋へ忍び込み。


ノムさんの枕元に。


巨大な札。


置く。


そこには。


『芹沢遥(本人) ノムさん出演禁止!!』


知佳。


札。


持つ。


「非常にくだらないですね」


のどか。


「知佳さんが清書したんですよね」


「江波さんに頼まれたからです」


「字めっちゃ綺麗」


「ありがとうございます」


「褒めたつもりじゃないです」


そして知佳。


さらに。


「起きた瞬間、昨日のコメントを読み上げるのもいいのでは?」


のどか。


振り返る。


「知佳さん」


「何です?」


「めちゃくちゃノリノリじゃん!」


「中途半端にやる方が失礼です」


「誰に!?」


ところが――逆ドッキリだった


問題は。


知佳だけが。


知らなかった。


これは最初から、知佳を騙すための逆ドッキリだったのである。


企画したのは。


ノムさん。


そして。


のどか。


まさにゃん。


共犯。


視聴者には既に説明済み。


配信画面。


《逆ドッキリ進行中》


コメント。


《知佳さん逃げて》


《めちゃくちゃやる気になってるのが面白い》


《この人ほんと人疑わないな》


《クイズなら絶対騙されないのに》


《人が良すぎる》


ノムさんの布団。


こんもり。


いびき。


「ぐぅー……」


知佳。


小声。


「寝ていますね」


のどか。


完璧な真顔。


「ぐっすりです」


知佳。


疑わない。


実際は。


布団の中身。


枕。


座布団。


丸めた毛布。


いびき音はスマートフォン。


知佳。


巨大な「出演禁止」札。


持つ。


そーっと。


近づく。


「ここへ置けばいいんですね?」


「はい」


「できれば起きた瞬間、最初に目に入る位置に……」


本気。


配置まで考える。


コメント欄。


《知佳さん完全に仕掛け人の顔w》


《もうかわいい》


《あと10秒》


知佳。


しゃがむ。


布団。


少し。


ずれる。


枕。


見える。


「……?」


知佳。


首。


傾げる。


「江波さん」


「はい?」


「野村さんの頭が随分四角いような……」


のどか。


危ない。


笑い。


堪える。


知佳。


布団。


つまむ。


めくる。


中。


座布団。


枕。


そして。


一枚。


紙。


『知佳ちゃん 逆ドッキリ大成功!』


知佳。


完全停止。


「…………」


ぱっ。


照明。


点灯。


襖。


開く。


ノムさん。


満面。


「知佳ちゃん、おはよう!」


まさにゃん。


「大成功!」


知佳。


「えっ!?」


振り向く。


のどか。


カメラ。


持って。


爆笑。


知佳。


ノムさん。


見る。


まさにゃん。


見る。


のどか。


見る。


また。


のどか。


見る。


「…………江波さん?」


「はい!」


「あなたもですか?」


「はい!」


知佳。


真相。


全部。


理解。


頬。


赤い。


悔しい。


めちゃくちゃ。


悔しい。


自分は完全に仕掛ける側だと思っていた。


ノムさんに仕返しできると結構楽しみにしていた。


だからこそ。


余計。


悔しい。


そして。


自分でも。


ちょっと。


面白い。


知佳は巨大な札を抱えたまま。


半笑い。


「もう……!」


のどか。


腹。


抱える。


「知佳さん、本気で信じとった!」


「信じますよ!」


「何で?」


「江波さんが真顔で『寝ています』と言ったからでしょう!」


「ヒロヒロで味方を信用しすぎ!」


「普通、味方は信用するものです!」


ノムさん。


「知佳ちゃん、人良すぎじゃ」


知佳。


即。


「野村さんが言わないでください!」


まさにゃん。


「でも知佳ちゃん、さっき相当楽しそうだったよ」


知佳。


「葛城さん!」


「札をどこへ置くかすごく真剣に――」


「その説明はいりません!」


コメント欄。


爆発。


《知佳さんかわいいww》


《好感度爆上がり》


《人を疑わないクイズ王》


《「あなたもですか?」最高》


《悔しくて半笑いなのかわいい》


《知的なのにちょっと抜けてるの好き》


《知佳さん今日一番好きになった》


知佳。


画面。


見て。


さらに。


恥ずかしい。


「皆さん、笑いすぎです」


のどか。


「怒っとる?」


「怒っています」


「でも笑っとる」


「悔しいんです!」


普段なら何でも落ち着いて分析する知佳。


その知佳が。


完全に騙され。


悔しくて。


半笑いで。


「もう……!」


その姿。


視聴者。


直撃。


この夜。


一条知佳。


好感度。


爆上がり。


そして知佳。


手にしていた巨大札を。


ノムさんの胸。


どん。


「これは予定通り適用してください」


ノムさん。


札。


見る。


「何でじゃ!」


のどか。


「出演禁止!」


まさにゃん。


「正式適用!」


ノムさん。


「お前ら!」


午前3時35分――ここだけは触れてはいけない


知佳。


「もう終わりですよね?」


のどか。


「あと一部屋」


「誰です?」


「みのりんとひかり」


知佳。


「ああ」


二人。


静かに。


グレースフォースの部屋。


扉。


わずか。


開く。


覗く。


そして。


沈黙。


みのり。


寝ている。


ひかり。


寝ている。


ちゃんと。


別々。


寝具。


なのに。


なぜか。


距離。


近い。


みのり。


ひかりの方。


向く。


ひかり。


みのりの方。


向く。


二人の手。


布団越し。


かなり。


近い。


完全に。


カップル。


のどか。


数秒。


見る。


知佳。


見る。


二人。


目。


合う。


のどか。


小声。


「……これは」


知佳。


「そっとしておきましょう」


「ですよね」


「はい」


「邪魔したらいけん気がする」


「同感です」


そーっと。


扉。


閉める。


コメント。


《撤退ww》


《そこは起こさない》


《尊い》


《スタッフが空気読んだ》


《梨乃との扱いの差よ》


のどか。


最後のコメント。


読む。


「知佳さん。“梨乃との扱いの差”って」


知佳。


少し。


考える。


そして。


「梨乃ちゃんは……何となく大丈夫そうです」


のどか。


即。


「分かる!」


この理不尽。


翌朝。


梨乃だけ。


知らない。


朝――一人だけ平和


朝食会場。


山根梨乃。


元気。


「おはよう!」


のどか。


「おはよう」


結衣。


「よく寝とったね」


「うん! めっちゃ寝た!」


知佳。


梨乃の顔。


見る。


昨夜の。


ぴろろろろ。


思い出す。


「……ふふっ」


梨乃。


「何?」


知佳。


すぐ。


「何でもありません」


のどか。


知佳。


見る。


にや。


知佳。


小声。


「言わないでください」


梨乃。


「何を?」


結衣。


「何でもないよ」


「怪しいで」


知佳。


さらに。


ノムさん。


見る。


ノムさん。


にや。


知佳。


睨む。


しかし。


少し。


笑ってしまう。


ノムさん。


「知佳ちゃん、昨夜はよく寝られたか?」


知佳。


「野村さんのおかげで、人を疑うことの大切さを学びました」


「成長したのう」


「褒めていません」


梨乃。


「何の話?」


全員。


「何でもない」


梨乃。


ますます。


怪しい顔。


本日の目的地――島根県の県都・松江


朝食。


終盤。


ノムさん。


茶。


一口。


「さて」


全員。


見る。


「今日は松江へ行くぞ」


梨乃。


「松江!」


結衣。


「県都だね」


知佳。


「島根県庁所在地ですね」


伊織。


「東へ移動ですね」


みのり。


「松江城行きたい!」


ひかり。


「私も」


のどか。


まず。


確認。


「今日はサイコロ?」


ノムさん。


「移動は普通じゃ」


全員。


「…………」


ノムさん。


「何じゃ、その顔」


知佳。


「本当でしょうね?」


ノムさん。


「知佳ちゃん、急に疑り深うなったのう」


知佳。


笑顔。


「誰のせいですか?」


一同。


笑う。


この日。


ノムさん。


まさにゃん。


乗用車。


先行。


ヒロイン七人。


鉄道。


梨乃。


「またノムさんら車?」


まさにゃん。


「荷物あるんだから仕方ないだろ!」


のどか。


「でも絶対楽したいだけですよね」


ノムさん。


「松江で待っとるぞ」


梨乃。


「うちらも車!」


のどか。


「七人乗れん!」


知佳。


「列車の方が景色を楽しめますよ」


梨乃。


即。


「じゃあ電車!」


のどか。


「切り替え早っ!」


出雲から松江――七人のほっこり鉄道旅


七人が乗り込むのは。


出雲大社方面から出雲市街を経て、宍道湖の北岸を走りながら県都松江へ向かう地元私鉄。


終点。


松江しんじ湖温泉。


今度は。


ドッキリ。


なし。


ピロピロ。


なし。


サイコロ。


なし。


車内。


ごく。


穏やか。


列車。


走る。


田園。


小さな集落。


駅。


山。


そして。


徐々に。


窓の向こう。


水面。


大きくなる。


宍道湖。


梨乃。


窓。


見る。


「うわぁ……!」


みのり。


「広い!」


ひかり。


「ほんとに綺麗」


伊織。


「湖というより海のようですね」


知佳。


「汽水湖ですから、海とのつながりもあります。山陰を代表する景観ですね」


のどか。


「知佳さん、ようやく本来の仕事に戻った!」


知佳。


「私は元々こちらです」


のどか。


「午前三時にノムさんの枕元へ“出演禁止”置こうとしとった人が?」


知佳。


「…………」


梨乃。


振り向く。


「何それ?」


知佳。


「何でもありません!」


梨乃。


「怪しい」


結衣。


窓。


見ながら。


「アーカイブ見たら分かるよ」


のどか。


「結衣!」


梨乃。


「アーカイブ?」


知佳。


顔。


赤い。


「今は景色を見ましょう!」


宍道湖。


穏やか。


光。


反射。


遠く。


山。


線路。


水辺。


寄り添う。


七人。


窓。


眺める。


伊織。


「今回の旅、本当に水の景色が多いですね」


のどか。


「江の川から日本海、今度は宍道湖」


知佳。


「山陰を移動してきた実感があります」


結衣。


「松江へ行く時、この景色よく見たよ」


梨乃。


「子どもの頃?」


「うん」


「結衣にも子どもの頃あったんだなあ」


結衣。


「何回言うの、それ」


のどか。


「梨乃の中で結衣いつ誕生したん!」


七人。


笑う。


公共交通。


だから。


声。


控えめ。


でも。


雰囲気。


明るい。


みのり。


湖。


見る。


「夕陽も綺麗なんだろうね」


ひかり。


すぐ。


「今度一緒に見ようよ」


みのり。


「うん」


梨乃。


じー。


二人。


見る。


口。


開く。


のどか。


即。


「梨乃、何も言わんでええ」


「まだ言ってないで」


「顔で分かる!」


知佳。


小さく。


笑う。


梨乃。


「でも尊いなって」


みのり。


「梨乃ちゃん!」


ひかり。


少し。


顔。


赤い。


結衣。


「まあ仲ええのはええことだがね」


伊織。


「そうですね」


知佳。


「車内ですので、その話題はその辺で」


梨乃。


「はい」


素直。


のどか。


「知佳先生強い」


そして。


珍しく。


梨乃。


寝ない。


のどか。


「梨乃、今日は寝んの?」


「寝ん」


「疲れとるでしょう」


「景色見る」


「えらい」


梨乃。


少し。


考える。


そして。


「あと寝たら何されるか分からん気がする」


のどか。


固まる。


知佳。


窓。


見る。


結衣。


口元。


笑う。


梨乃。


三人。


見る。


「……やっぱり何かした?」


のどか。


「ほら、宍道湖きれいじゃろ!」


「話そらした!」


知佳。


「山根さん、あちらに水鳥が」


「知佳さんまで!」


結衣。


「梨乃、あとで全部分かるけん」


梨乃。


「何が!?」


コメント欄。


《wwww》


《気づき始めた》


《アーカイブ見ろ》


《午前3時のラブラドール》


《宍道湖きれい》


《この七人ずっと見てられる》


それでも。


梨乃。


しばらく。


景色。


見る。


「……ほんに綺麗だな」


結衣。


「うん」


のどか。


「来てよかったね」


梨乃。


「うん」


そこだけは。


普通。


旅。


友達。


笑い。


穏やかな。


時間。


そして松江へ――次の騒動の匂い


やがて。


建物。


増える。


松江。


市街。


近づく。


宍道湖を横目。


列車。


終点。


松江しんじ湖温泉。


入る。


梨乃。


「着いたで!」


結衣。


「松江だね」


みのり。


「県都!」


ひかり。


「何するんだろ」


知佳。


「普通に観光できればいいのですが」


のどか。


「知佳さん、完全に信用なくしとるじゃん」


「今朝の経験がありますので」


伊織。


「学習は大切ですね」


七人。


駅。


出る。


すると。


駅前。


乗用車。


一台。


そこに。


ノムさん。


まさにゃん。


既に。


待っていた。


ノムさん。


手。


上げる。


「おーい!」


そして。


第一声。


「遅かったのう!」


のどか。


「またそれ言うん!?」


まさにゃん。


「こっちは車だから!」


梨乃。


「ずるい!」


ノムさん。


「まあまあ」


何やら。


楽しそう。


にやにや。


している。


知佳。


それ。


見る。


目。


細く。


なる。


「野村さん」


「何じゃ?」


「今日は本当に普通なんでしょうね?」


「もちろん」


即答。


知佳。


「…………」


ノムさん。


「何じゃ」


知佳。


「今朝の江波さんも、同じくらい自然な顔で嘘をつきました」


のどか。


「まだ根に持っとる!」


「根には持っていません」


「じゃあ何?」


知佳。


半笑い。


「悔しいだけです」


梨乃。


「何が?」


結衣。


「梨乃、それより」


「何?」


結衣。


駅前。


少し。


離れた場所。


示す。


そこ。


ノムさん。


用意したらしい。


何か。


大きな。


荷物。


フリップ。


のようなもの。


みのり。


「……あれ何?」


ひかり。


「嫌な予感するね」


伊織。


「私もです」


のどか。


ノムさん。


じろ。


「先輩。松江で何するんです?」


ノムさん。


にやり。


「それはのう――」


知佳。


すぐ。


「ちょっと待ってください」


全員。


「?」


知佳。


指。


ノムさん。


向ける。


「その前に、“普通”の定義から確認しましょう」


のどか。


吹き出す。


梨乃。


「知佳さん慎重になっとる!」


ノムさん。


「わし、信用ないのう」


全員。


「自業自得!」


宍道湖。


穏やか。


松江。


爽やか。


ヒロイン七人。


無事。


到着。


――しかし。


ノムさん。


笑顔。


そして。


駅前。


怪しい。


荷物。


どう見ても。


このまま普通に松江観光をして終わる顔ではなかった。


『ヒロヒロ山陰どうでしょう』。


舞台は。


ついに。


島根県の県都。


松江へ。


午前三時に梨乃の鼻をピロピロさせ。


知佳を逆ドッキリに嵌め。


ひかりとみのりの尊い眠りだけはそっと守り。


朝には何食わぬ顔で宍道湖を眺めてきた一行。


次に待っているのは。


松江城か。


宍道湖か。


城下町か。


それとも。


また。


ノムさんの。


どう考えてもろくでもない企画なのか。


知佳が一番警戒している。


そして。


梨乃だけは。


まだ自分が午前三時に全国へ向けて**「ぴろろろろろろっ」**を披露していたことを知らない。


松江編。


開幕前から。


既に。


嫌な予感しかしなかった。

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