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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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1163/1170

『ヒロヒロ山陰どうでしょう 三次で飲んでる場合じゃない。』 ――鳥取へ行くはずが唐麺焼、ワイン、緊急企画会議!? 知佳と伊織も緊急参戦――そして配信欄に現れた「芹沢遥(本人)」がノムさんへ最後通牒

鳥取へ行く。


島根へ行く。


出雲まで行く。


それが今回の目的だった。


少なくとも、出演者はそう聞かされている。


ところが。


広島市のお好み焼き店「みさちゃん」前で江波のどかが振った巨大サイコロが示したのは、


「4 在来線で三次へ」


だった。


まだ。


広島県。


とはいえ三次市は、広島県北部、いくつもの川が集まる中国山地の盆地に開けた備北の中心都市。


山々。


川。


田園。


歴史。


果物。


ワイン。


そして、条件が整った朝に盆地を覆う幻想的な「霧の海」。


広島市街の都市的な景色から一転し、ここまで来れば空気にはもう中国山地の街らしい色が濃い。


山陰へ向かう旅の途中に立ち寄るには、実に面白い街である。


もっとも。


そんなことを考えているのは江波のどかと神門結衣くらいだった。


三次駅。


列車を降りる。


山根梨乃。


ホームへ。


きょろきょろ。


「着いたで!」


のどか。


「着いたね」


梨乃。


「鳥取?」


のどか。


「三次じゃ!」


「まだ広島?」


「広島県三次市!」


結衣。


荷物を持ちながら静かに、


「北には進んだがね」


梨乃。


「鳥取、もう近い?」


のどか。


「梨乃、今日それ何回聞くん!」


「だってうちの地元だで」


「地元愛は分かったけえ!」


梨乃。


少し考える。


「じゃあ三次って何があるん?」


のどか。


「着いてから聞くん!?」


結衣。


「お腹空いたわ」


梨乃。


ぱっと笑う。


「うちも!」


のどか。


「そこだけ意見合うの早いね!」


こうして。


山陰を目指す戦隊ヒロイン三人。


三次駅到着後、最初に向かった先は。


北でも。


鳥取でも。


島根でもない。


お好み焼き屋だった。


駅前の店。


鉄板。


じゅうううう。


広島のお好み焼きらしい香ばしい匂い。


その中で。


ひときわ目を引く。


赤みを帯びた麺。


梨乃。


「のどか」


「何?」


「麺、赤いで」


「唐麺じゃろ」


「辛い?」


「辛い」


「どれくらい?」


「食べたら分かる」


梨乃。


「それ一番怖いやつだで」


結衣。


鉄板を覗く。


「でも、いい匂いだわ」


本日の昼食。


三次唐麺焼。


のどか。


スマートフォンを立てる。


「ほいじゃ配信始めるよ!」


梨乃。


「もう?」


「ヒロヒロ山陰どうでしょうじゃけえ」


結衣。


「まだ山陰じゃないけどね」


のどか。


「それ言わんといて!」


配信。


開始。


画面。


『ヒロヒロ山陰どうでしょう 三次緊急企画会議』


コメント欄。


《三次きた》


《まだ広島》


《山陰どこ》


《梨乃もう食べてる?》


梨乃。


画面を覗く。


「まだ食べとらんで!」


のどか。


「何でそこ律儀に答えるん!」


その時。


店の外。


一台の乗用車。


すっ。


停車。


のどか。


「あ」


運転席。


まさにゃんこと葛城正男室長代理。


助手席。


ノムさん。


のどか。


「先輩ら来た」


梨乃。


「まさにゃーん!」


店の中から手を振る。


まさにゃん。


車外。


手を振り返す。


「お疲れー!」


のどか。


「何で梨乃とまさにゃん、いつの間にあんな仲ええん」


結衣。


「梨乃だもの」


それで説明がつく。


しかし。


後部ドア。


開く。


一人。


降りる。


のどか。


「……え?」


知的で。


端正。


上品。


いかにも、


「この人に間違ったこと言ったら、その場で訂正されそう」


な雰囲気。


一条知佳。


さらに。


反対側。


もう一人。


すらり。


静かな気品。


凛とした立ち姿。


沖縄が誇る琉球空手の達人。


金城伊織。


梨乃。


「……増えたで」


結衣。


「増えたね」


のどか。


店から飛び出す。


「何で知佳さんと伊織さんがおるんです!?」


ノムさん。


何事もなかったかのように。


「広島駅で拾うた」


知佳。


「野村さん、“拾った”という表現は訂正してください」


伊織。


「普通に合流しました」


まさにゃん。


「俺が広島駅まで迎えに行ったんや!」


のどか。


「ちょっと待ってください!」


指。


自分たち。


「うちら!」


路面電車。


在来線。


リュック。


「サイコロで三次!」


指。


ノムさん。


「先輩!」


車。


人気ヒロイン二人。


「エアコン効いた車でドライブしながら知佳さんと伊織さん迎えに行ったんですか!?」


ノムさん。


「わしは進行役じゃ」


「進行役が一番楽してどうするんです!」


まさにゃん。


「俺は運転しかしとらんし!」


梨乃。


「まさにゃん、お土産は?」


「何で俺がお土産買うの!?」


「三次来たがな」


「君も三次にいるよね!?」


結衣。


「話が進まんけん、中入ろう」


一人だけ。


冷静。


全員。


「はい」


出雲の静謐。


強かった。


鉄板。


全員。


着席。


知佳。


焼かれているお好み焼きを見る。


「これは三次唐麺焼ですね」


のどか。


「さすが知佳さん」


梨乃。


「知っとる?」


「はい」


知佳。


人差し指。


軽く立てる。


のどか。


嫌な予感。


「……始まるね」


「三次唐麺焼は、単に辛いお好み焼きというわけではありません」


梨乃。


「ほう」


「特徴は唐辛子を練り込んだ“唐麺”を用いること。それに地元系の辛口ソースを組み合わせることで、麺そのものの刺激とソースの風味を重ねています」


結衣。


「なるほどね」


知佳。


「三次らしい食材や地域企業を結びつけたご当地グルメとして育てられてきた点も重要です」


のどか。


「ほうほう」


梨乃。


鉄板。


「もう食べてええ?」


知佳。


「説明はまだ途中です」


梨乃。


「まだ?」


知佳。


「はい」


梨乃。


しょんぼり。


伊織。


「説明を聞きながら食べればいいんじゃない?」


梨乃。


目。


輝く。


「伊織さん、頭ええ!」


知佳。


「それくらいは誰でも思いつきます」


のどか。


「辛辣!」


焼き上がる。


三次唐麺焼。


皿。


梨乃。


一口。


もぐ。


「…………」


目。


開く。


「辛っ!」


全員。


笑う。


知佳。


「ただし辛味だけではなく――」


のどか。


「知佳さん続けるんですね!」


結衣。


一口。


「辛いけど美味しいわ」


伊織。


上品に。


「美味しいですね」


梨乃。


水。


「辛いけどまた食べたくなるで」


のどか。


「それがええんよ」


知佳。


「唐辛子の刺激は――」


のどか。


「知佳さん、その話どこまで行くんです!?」


「必要であれば唐辛子の成分まで」


「そこまではいいです!」


配信コメント。


《楽しそう》


《女子会始まった》


《知佳先生》


《梨乃ずっと食ってる》


《伊織さん絵になる》


梨乃。


画面。


「うち、ずっと食べとらんで」


のどか。


「食べとるじゃろ!」


鉄板を囲んで。


緊急企画会議。


知佳。


姿勢。


正す。


「では、確認します」


のどか。


「お願いします」


「本日の最終目的地は?」


沈黙。


知佳。


「宿泊先は?」


沈黙。


「明日、鳥取と島根のどちらへ先に向かうのですか?」


沈黙。


一条知佳。


ノムさんを見る。


「何も決まっていないんですね」


ノムさん。


唐麺焼。


食べながら。


「サイコロ旅じゃけえ」


知佳。


「サイコロは旅程表ではありません」


のどか。


机。


ばん。


「知佳さん、もっと言うたってください!」


伊織。


「私は面白いと思う」


のどか。


「伊織さんまでノムさん側!?」


結衣。


「行き先が分からんのも、ちょっと楽しいがね」


のどか。


「結衣まで!」


梨乃。


「うちは鳥取行ければええで」


のどか。


「その鳥取へ行く方法が分からんのんよ!」


ノムさん。


ふと。


「そういや三次まで来たんじゃったら」


「はい?」


「ワインじゃ」


知佳。


「今の会話を聞いていましたか?」


「聞いとる」


「鳥取へ向かう話をしていたのですが」


「三次を素通りしてどうする」


のどか。


「急に地域振興の話に戻った!」


ノムさん。


「せっかく来たんじゃけえ、三次を紹介せにゃいけんじゃろ」


伊織。


「ワイナリーなら行きたい」


知佳。


「三次の地理的条件を考えても興味深いですね」


梨乃。


「ワイン飲める?」


のどか。


「梨乃、そんな強うないじゃろ」


「ちょっとなら」


結衣。


「私も少しだけ」


ノムさん。


「決まりじゃ」


のどか。


「今から取材お願いするんです?」


「話はしとる」


のどか。


「……え?」


ノムさん。


「大丈夫じゃ」


まさにゃん。


「じゃあ行こう!」


のどか。


少し首を傾げる。


妙に。


話が早い。


しかし。


ノムさんである。


芸能界五十年。


顔が広い。


こういうこともある。


のどか。


「まあ、先輩じゃけえね」


梨乃。


「行こうで!」


細かいことを気にしない。


それがヒロヒロ。


一行。


ワイナリー。


到着。


ブドウ畑。


醸造設備。


商品。


明るい施設。


知佳。


完全に目が変わる。


「三次は盆地ですよね」


スタッフ。


「はい」


知佳。


「昼夜の寒暖差が比較的大きいことが、ブドウ栽培にも一つの利点になるわけですね」


スタッフ。


「そうですね」


「日中に十分な日射を受け、夜間には気温が下がる。そうした気候条件は、ブドウが成熟していく過程で糖度や香りを育てる上でも有利に働きます」


梨乃。


「へえー」


のどか。


「知佳さん、ここでもガイドできるじゃん」


知佳。


「地理条件と農産物の関係は興味深いですから」


結衣。


「知佳、楽しそうだがね」


知佳。


「楽しいです」


本当に。


楽しそう。


伊織。


ブドウを見る。


「こういう場所、落ち着きますね」


梨乃。


「うちも」


のどか。


「梨乃は試飲が楽しみなんじゃろ」


「ばれた?」


「顔に書いてある!」


そして。


試飲コーナー。


ノムさん。


鞄。


ごそごそ。


サイコロ。


出す。


のどか。


嫌な顔。


「先輩」


「何じゃ」


「ここでも振るんです?」


「ヒロヒロ山陰どうでしょうじゃろ」


「便利な言葉みたいに使わんでください!」


ルール。


単純。


偶数なら試飲。


奇数なら香りだけ。


梨乃。


「えー!」


結衣。


「運だがね」


知佳。


「飲食権をサイコロで決定する合理的理由が見当たりません」


ノムさん。


「盛り上がる」


知佳。


「合理的理由ではありません」


伊織。


「私はどっちでも」


のどか。


「伊織さん余裕ですね」


一人ずつ。


サイコロ。


のどか。


偶数。


「よし!」


梨乃。


偶数。


「やったで!」


結衣。


奇数。


「外れたわ」


のどか。


「残念」


結衣。


「香りだけでもええよ」


知佳。


振る。


奇数。


知佳。


「…………」


梨乃。


「知佳さんも外れだで」


知佳。


「六面体のサイコロにおいて奇数が出る確率は二分の一ですので、何ら不自然な結果ではありません」


のどか。


「悔しいんですね?」


「違います」


「絶対悔しいじゃん!」


伊織。


偶数。


「いただきます」


そして。


ノムさん。


ころん。


偶数。


「よし!」


のどか。


「何で一番喜んどるんです!」


最後。


まさにゃん。


サイコロ。


持つ。


スタッフ。


「運転されるんですよね?」


まさにゃん。


「……はい」


スタッフ。


「でしたら香りだけで」


サイコロ。


そっ。


テーブル。


戻す。


まさにゃん。


「サイコロ旅なのに俺だけ運命に参加できない」


結衣。


「運転手だけん仕方ないがね」


梨乃。


「匂いだけでも一緒に楽しもうや」


まさにゃん。


「梨乃ちゃんだけが優しい」


のどか。


「その子、誰にでも優しいです」


ワイン。


試飲。


のどか。


少量。


「おいしい!」


梨乃。


ちょっとだけ。


「うち、これくらいでええわ」


二人とも。


そこまで酒は強くない。


結衣。


香り。


「甘い香りするね」


知佳。


香り。


「果実香だけでも品種の個性はかなり――」


のどか。


「飲めんでも全然平気ですね、知佳さん」


「情報は取得できます」


一方。


伊織。


グラス。


静かに。


持つ。


一口。


目。


少し細くなる。


「美味しいですね」


スタッフ。


説明。


伊織。


「なるほど」


次。


別の銘柄。


「こちらもどうぞ」


「ありがとうございます」


姿勢。


綺麗。


所作。


上品。


落ち着いた美女が。


地元ワインを。


本当に美味しそうに。


静かに飲む。


スタッフとのワイン談議。


「こちらの方が、さっきより香りに厚みがありますね」


「そうなんです」


「でも後味は重すぎないですね」


「よく分かりますね」


「飲みやすいです」


カメラ。


伊織。


抜く。


コメント欄。


《伊織さん美しい》


《ワインCM》


《急に高級番組》


《このワイン飲んでみたい》


《最高のPR》


《ヒロヒロの画じゃない》


のどか。


「最後のコメント余計じゃ!」


梨乃。


「伊織さん全然顔変わらんな」


結衣。


「強いね」


のどか。


「水みたいに飲んどる……」


伊織。


「?」


三人。


「何でもありません」


上品。


冷静。


酒。


強い。


金城伊織。


ワイナリーPR。


完璧。


問題。


もう一人。


ノムさん。


「いやあ!」


一杯。


「うまいのう!」


のどか。


ぴく。


ノムさん。


別銘柄。


「これもええ!」


のどか。


「先輩」


「何じゃ?」


「試飲ですよ」


「分かっとる」


「配信中ですよ」


「分かっとる」


三杯目。


「伊織ちゃん、こっち飲んだ?」


「はい」


「ええじゃろ!」


「美味しいですね」


ノムさん。


上機嫌。


完全に絶好調。


のどか。


「……」


嫌な記憶。


東広島。


造り酒屋。


新酒。


巴投げ。


浮かぶ。


のどか。


「先輩」


「ん?」


「ほんまにええ加減にしんさいよ」


ノムさん。


「今日は絡んどらんじゃろ!」


「そういう問題じゃない!」


その時。


配信コメント欄。


一つの書き込み。


芹沢遥(本人)


『ノムさん飲酒出演禁止!』


コメント欄。


一瞬。


止まったように見えた。


直後。


《え?》


《本人?》


《芹沢遥って室長?》


《(本人)って書いてある》


《マジすげぇ》


《室長見てるw》


《ノムさん終わった》


梨乃。


画面。


「のどか」


「何?」


「遥室長来とるで」


のどか。


見る。


固まる。


「……」


結衣。


「ほんとだがね」


知佳。


「本人ですね」


のどか。


「先輩!」


ノムさん。


「何じゃ?」


「配信!」


「後で見る」


「今見てください!」


ノムさん。


聞いてない。


伊織。


「この赤も美味しいですね」


ノムさん。


「じゃろ!」


のどか。


「伊織さん、今だけ先輩と話すのやめてもらえます!?」


伊織。


「え?」


何も知らない。


グラス。


上品。


ノムさん。


上機嫌。


再び。


配信欄。


芹沢遥(本人)


『ノムさん、飲むのやめるのら!』


コメント。


《ガチだww》


《室長怒ってる》


《リアルタイム説教》


《野村さん逃げろ》


《東広島の再来》


梨乃。


「巴投げする?」


のどか。


「せん!」


知佳。


「今回は暴力的手段ではなく、出演を中止させるべきでしょう」


のどか。


「知佳さんが一番冷静!」


結衣。


「ノムさん気づいとらんね」


のどか。


「気づかんふりしとるんじゃない!?」


ノムさん。


カメラ。


「皆さん、三次のワインはええぞ!」


のどか。


「普通に配信続けとる!」


コメント。


《ノムさん無敵》


《本人コメント完全無視》


《室長vsノムさん》


そして。


三度目。


芹沢遥(本人)


『ノムさん、画面から離れるのら』


視聴者。


《命令になった》


《段階的に怒ってる》


《怖い》


《ノムさんまだ飲んでる》


ノムさん。


グラス。


「うまい!」


のどか。


「先輩いい加減にしてください!」


そして。


遂に。


四度目。


配信欄。


芹沢遥(本人)


『ノムさん、帰ったら緊急スタッフ会議なのら』


コメント。


止まる。


一秒。


二秒。


そして。


《…………》


《あ》


《終わった》


《これは怖い》


《遥室長怖い~》


《ノムさん御愁傷様》


《笑えなくなってきたw》


《緊急スタッフ会議www》


《酒飲んでる場合じゃない》


《帰京拒否しろノムさん》


《いや帰れ》


梨乃。


ぽつり。


「……これ、ほんまに怒っとるやつだで」


結衣。


「うん」


知佳。


「明確ですね」


のどか。


無言。


スマートフォン。


ノムさんへ。


見せる。


「先輩」


「何じゃ」


「これ」


ノムさん。


読む。


『帰ったら緊急スタッフ会議なのら』


ノムさん。


「…………」


グラス。


ゆっくり。


置く。


視聴者。


《置いたw》


《効いたww》


《ついに止まった》


伊織。


隣。


上品にワイン。


一口。


「頑張ってください」


ノムさん。


「伊織ちゃん、急に他人事じゃの!」


知佳。


「規則は規則です」


結衣。


「自業自得だがね」


梨乃。


「ノムさん、元気出しんさい」


「梨乃ちゃん……」


「帰ったら怒られるだけだで」


ノムさん。


「慰めになっとらん!」


のどか。


腹を抱える。


「梨乃、それ追い打ちじゃ!」


配信。


爆発的にバズった。


そして。


皮肉にも。


予定外に見えたワイナリー生配信。


PR効果。


抜群。


金城伊織。


上品なワイン紹介。


一条知佳。


地理・ブドウ栽培解説。


ヒロヒロ三人娘。


明るいリアクション。


そして。


ノムさん。


遥室長。


生配信上の公開説教。


全部合わさる。


再生数。


ぐんぐん。


三次ワイン関連検索。


上昇。


三次市。


検索。


上昇。


のどか。


数字を見る。


「……バズっとる」


ノムさん。


元気を取り戻す。


「ほら見い! 大成功じゃ!」


知佳。


「それと規則違反は別問題です」


のどか。


「知佳さん、正しい!」


結衣。


「山陰にはまだ入っとらんけどね」


全員。


「…………」


その通り。


食べた。


飲んだ。


配信した。


バズった。


でも。


まだ。


広島県三次市。


夕方。


のどか。


「で」


ノムさん。


「何じゃ?」


「今日」


間。


「どこ泊まるんです?」


ノムさん。


「……」


梨乃。


「宿?」


まさにゃん。


「まさか」


知佳。


「未定なんですか?」


結衣。


「企画書には未定って書いてあったがね」


知佳。


深く。


息。


「本当に未定なんですね」


ノムさん。


「ほいじゃ」


鞄。


ごそごそ。


サイコロ。


のどか。


「またサイコロ!?」


「サイコロ旅じゃろ」


ルール。


今回。


二択。


奇数――三次市内のビジネスホテル。


偶数――地元の民家へ泊めてもらう。


のどか。


「……」


梨乃。


「民家?」


結衣。


「昔あった田舎を訪ねて泊めてもらう旅番組みたいだがね」


のどか。


「そう! 急に別番組になっとる!」


ノムさん。


「交流じゃ」


知佳。


「本当に突然一般家庭へ押しかけるわけではありませんよね?」


ノムさん。


「そこはスタッフが話つける」


知佳。


「なら問題ありません」


のどか。


「知佳さんのコンプライアンスチェック入った!」


まさにゃん。


「俺ホテルがいい!」


のどか。


「うちも!」


知佳。


「ホテルを希望します」


伊織。


「私はどちらでも」


結衣。


「私もどっちでもええよ」


梨乃。


「民家楽しそうだで!」


のどか。


「梨乃はすぐ他人の家に馴染むけえ怖いんよ!」


結衣。


「翌朝には朝ご飯食べてそう」


のどか。


「みさちゃんと同じことをよその家でもやるな!」


梨乃。


「やらんで!」


のどか。


「信用ない!」


サイコロ。


担当。


山根梨乃。


のどか。


「梨乃!」


「何?」


「頼むけえ奇数!」


「ホテルだで?」


「そう!」


「分かった!」


サイコロ。


両手。


振る。


「ホテル来い!」


ころ。


ころころ。


止まる。


3。


全員。


「おおー!」


のどか。


「よっしゃ!」


まさにゃん。


「ベッド!」


知佳。


「奇数ですね」


結衣。


「ホテルだがね」


伊織。


「よかったね」


梨乃。


サイコロ。


見る。


「…………」


首。


傾げる。


のどか。


「何?」


梨乃。


真顔。


「3って、どっち?」


のどか。


「……何が?」


梨乃。


「偶数?」


沈黙。


カメラ。


山根梨乃。


アップ。


コメント欄。


《????》


《え》


《大学生》


《梨乃?》


のどか。


ゆっくり。


「梨乃」


「何?」


「本気?」


「うん」


結衣。


普通の顔。


「梨乃ならあり得るがね」


のどか。


「あり得たらあかんのんよ!」


伊織。


「3は奇数」


梨乃。


「そうなん?」


まさにゃん。


「そうだよ!」


ノムさん。


「奇数じゃ」


梨乃。


「へえ」


そして。


一条知佳。


静かに。


梨乃の方へ身体を向ける。


教育モード。


「山根さん」


「はい」


「3は奇数です」


「はい」


「偶数とは2で割り切れる整数です。例えば2、4、6。奇数は2で割った際に――」


のどか。


「知佳さん!」


「はい?」


「大学生にそこから教えんでええんです!」


知佳。


「しかし本人が理解していません」


のどか。


「そうじゃけど!」


梨乃。


「知佳さん、もう一回教えて」


のどか。


「ほんまに大学生なん!?」


梨乃。


「大学通っとるで!」


結衣。


「通っとるだけかもしれんがね」


梨乃。


「結衣!」


珍しく。


出雲の静謐。


強烈。


コメント欄。


《結衣ww》


《3は偶数事件》


《知佳先生》


《梨乃算数教室》


《因幡の太陽、整数に敗北》


《ラブラドール算数》


梨乃。


「誰がラブラドールだで!」


のどか。


「そこだけ瞬時に理解するんじゃね!」


何はともあれ。


3。


奇数。


ビジネスホテル。


確定。


一同。


ホテル。


チェックイン。


のどか。


部屋。


ベッド。


ばたっ。


「……よかった」


梨乃。


隣室。


すぐホテル案内を確認。


「朝ご飯あるで!」


のどか。


壁越し。


「最初にそこ確認するん!?」


「大事だがな!」


結衣。


「大浴場もあるみたいだわ」


梨乃。


「行こう!」


「あとでね」


知佳。


部屋。


翌日の予定を整理。


伊織。


購入した三次ワインを丁寧に荷物へ。


まさにゃん。


ベッド。


「やっと運転終わった……」


そして。


ノムさん。


ホテル廊下。


スマートフォン。


配信結果。


「おお、伸びとる!」


のどか。


部屋。


ドア。


開ける。


「先輩」


「何じゃ?」


「喜んどる場合じゃないですよ」


「何が?」


のどか。


スマートフォン。


見せる。


スクリーンショット。


芹沢遥(本人)


『ノムさん、帰ったら緊急スタッフ会議なのら』


ノムさん。


「…………」


まさにゃん。


隣室から。


「俺、その会議出るの?」


のどか。


「室長代理じゃけえ、多分出ます」


まさにゃん。


「何で俺まで!」


ノムさん。


「一緒に怒られようや」


まさにゃん。


「誘わないでください!」


梨乃。


廊下。


顔。


出す。


「大丈夫だで!」


ノムさん。


「梨乃ちゃん……」


「怒られるだけだけぇ!」


ノムさん。


「じゃけえ、それ慰めになっとらん!」


夜。


のどか。


ベッド。


今日一日。


振り返る。


朝。


広島。


サイコロ。


三次。


唐麺焼。


知佳と伊織。


ワイナリー。


遥室長。


緊急スタッフ会議。


そして。


梨乃。


「3って偶数?」


のどか。


一人。


吹き出す。


「……濃い一日じゃった」


スマートフォン。


配信再生数。


伸びている。


行き当たりばったり。


何が起こるか分からない。


それでも。


妙に結果だけ出る。


ヒロヒロ。


通知。


ノムさん。


『明日の六択できたぞ』


のどか。


嫌な予感。


続けて。


『6がおもろい』


のどか。


スマートフォン。


伏せる。


「絶対ろくでもない……」


隣室。


梨乃。


「のどかー!」


「何ー!」


「奇数と偶数、もう一回教えてー!」


のどか。


布団。


顔。


埋める。


「知佳さんに聞きんさい!」


廊下向こう。


知佳。


「構いませんよ」


梨乃。


「ありがとう!」


結衣。


笑い声。


「明日は山陰に入れるとええね」


のどか。


顔を上げる。


そう。


目的地。


鳥取。


島根。


出雲。


なのに。


一日目。


広島から三次へ来て。


お好み焼きを食べ。


ワインを飲み。


新橋から怒られ。


ホテルに泊まった。


移動距離。


それほどでもない。


再生数。


数百万へ向かって爆走。


これぞ。


半公認・広島支部。


ヒロヒロ。


そして。


『ヒロヒロ山陰どうでしょう』。


翌日こそ。


三人娘は。


本当に山陰地方へ足を踏み入れることができるのか。


それとも。


ノムさんが考えた、


「6がおもろい」


がすべてを台無しにするのか。


誰にも分からない。


少なくとも――。


山根梨乃には。


明日の行先以前に。


3が奇数だということを、今夜中に覚えてもらう必要があった。

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