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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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『南港の夜、いちばん怖かったのは味方でした!』 ――特殊部隊到着時、敵拠点すでに壊滅。「トリオ・ザ・大阪」と西日本精鋭隊、戦隊ヒロインなのに音声だけ完全に任侠映画

大阪府堺市で繰り広げられた、ジェネラス・リンクとの激闘。


地元の町工場から職人技を盗み出す大規模な犯罪計画は、「トリオ・ザ・大阪」を中心とする戦隊ヒロインたちによって阻止された。


地元・堺を荒らされた谷口佳乃――通称「けちのん」は珍しく怒りをむき出しにし、最後は敵の中枢システムを停止。


ジェネラス・リンクの野望を叩き潰した。


ただし、その戦いでは別の犠牲も出た。


赤嶺美月の戦隊ヒロイン制服である。


派手な回転。


無駄に大きな跳躍。


必要以上に深いひねり。


そして最近のスイーツ三昧。


それらが複合的に作用した結果、


ビリッ。


という非常に嫌な音とともに、数十万円するオーダーメイド制服の縫い目が裂けた。


佳乃による厳格な査定の末、新品購入は却下。


制服は高耐久補修布を内側へ当てる形で修繕された。


美月本人は、


「継ぎ接ぎの制服には夢がない!」


と最後まで抵抗したものの、


「ほな自腹で買ってください」


の一言で完全に沈黙した。


そんな堺事件から、まだ日も浅いある日。


再び仙台から、不穏な情報が届いた。



まゆちゃん、今度は南港を見つける


ノースフロント仙台分室。


巨大なモニター。


最新鋭の通信解析設備。


全国各地の不審なデータを監視する情報システム。


その中央に座る菅野真結――通称「まゆちゃん」は、複数のモニターを素早く切り替えていた。


南港周辺から、異常な通信量が検出されている。


物流倉庫。


コンテナヤード。


閉鎖された港湾整備施設。


複数の偽装会社。


それらが夜間になると、一つの暗号通信網へ接続していた。


真結は解析結果を見つめた。


「……堺と同じ形式」


さらに追跡。


暗号通信の一部から、物資一覧が復元される。


特殊防護装備。


無人戦闘装置。


通信妨害機器。


改造車両。


国外へ送られる予定の機密物資。


真結の表情が険しくなった。


すぐに遥室長へ連絡する。


「遥室長。ジェネラス・リンクが大阪南港で大規模な活動を始めています」


画面に遥室長が現れる。


「堺事件との関連はありますか?」


「あります。暗号形式が一致しています。ただ……今回は、かなり危険です」


真結は画面を切り替えた。


ジェネラス・リンク工作員。


複数の武装車両。


倉庫周囲を巡回する無人装置。


「南港を、西日本方面への補給中枢にするつもりだと思われます。堺の時より、明らかに武装しています」


遥室長が小さく息を吐く。


真結は続けた。


「それから、美月さんたちへ……前回の堺での任務、本当にありがとうございましたと、もう一度伝えてください」


「分かりました」


「佳乃さんが中枢を止めて、美月さんたちが正面を押さえてくださったおかげで、多数の工場を守れました」


この話を遥室長から聞いた美月は、当然のように舞い上がった。


「聞いたか!」


西日本分室の机を両手で叩く。


「まゆちゃん、うちらにもう一回お礼言うてくれたんやて!」


佳乃は書類から顔を上げない。


「最後にシステムを止めたんは、うちです」


まどかも言う。


「結月もデータ取り返したしな」


「うちも派手に戦ったやろ!」


佳乃。


「制服まで派手に破りました」


美月が補修された脇腹を押さえた。


「それは功績一覧に入れんでええ!」


だが、まゆちゃんに評価された。


美月のやる気は一気に上昇する。


「南港も大阪や! 大阪でジェネラス・リンクが好き勝手するいうんやったら、またうちらが――」


遥室長から渡された資料を開く。


赤字。


太字。


危険度――極めて高い。


美月の声量が半分になった。


「……“極めて”まで付いとる」


まどかが資料を横から読む。


「武装工作員四十人以上の可能性あり」


佳乃も確認する。


「今回は、前回みたいな人数では無理ですね」


遥室長が頷いた。


「そのため、精鋭部隊を編成します」


美月は椅子へ座り直した。


「……まゆちゃん、最後にえらい情報付けてきたな」



海の大阪――南港


大阪南港。


大阪という街を語る時、多くの人が繁華街を思い浮かべる。


難波。


道頓堀。


新世界。


梅田。


しかし、商都・大阪を支えているのは中心街だけではない。


大阪湾へ突き出す広大な港湾地区。


巨大な倉庫。


コンテナヤード。


大型トラックが走る港湾道路。


フェリーが発着するターミナル。


高くそびえる港湾クレーン。


物流施設。


業務施設。


夜になれば無数の照明が海面へ映り、大阪中心部とはまるで違う巨大都市の顔を見せる。


人。


食料。


工業製品。


生活用品。


ありとあらゆる物がここを通り、大阪から西日本各地へ動いていく。


まさに、


「商都・大阪を海から支える巨大物流都市」


である。


現場へ向かう車内で、美月は窓の外を指さした。


「見てみ! 大阪いうたら、たこ焼きと道頓堀だけちゃうで!」


まどかが返す。


「誰も、そこまで狭く思うてへん」


「船も来る! トラックも来る! 巨大倉庫もある! これが大阪の物流や!」


佳乃も頷いた。


「ここ止められたら、困るんは大阪だけやないですからね」


美月が得意げになる。


「そうやろ! けちのん、もっと言うたれ!」


まどか。


「いつの間に観光番組になったん?」


しかしその時。


遠くのコンテナ群の向こうに、赤い警戒灯が見えた。


美月の笑顔が消える。


通信機から真結。


「その先です。ジェネラス・リンクの主要拠点があります」


南港の夜景が、静かに戦場へ変わった。



精鋭十人、集めたらちょっと強すぎました


今回召集されたのは十人。


地元大阪から、


赤嶺美月。


谷口佳乃。


坂井まどか。


和歌山から「紀州の舞姫」白浜麻衣。


四日市から「四日市の突貫娘」山本あかり。


姫路から「播州の烈火」西川彩香。


広島から、ヒロ室広島支部長にして柔道有段者、戦隊ヒロイン屈指の実戦能力を持つ江波のどか。


高知から「土佐の突貫娘」神代なつめ。


盛岡から、薙刀の達人・中野柚希。


そして総指揮は、西園寺綾乃。


全員がそろった作戦室で、美月は左右を見回した。


「なあ」


誰も答えない。


「これ、敵を逮捕するメンバーやんな?」


佳乃。


「そうですが」


「何か、敵の拠点そのものを地図から消しに行くみたいなメンバーになってへん?」


のどかが腕を組む。


「向こうが大人しゅうしとればええ話じゃろ」


彩香も言う。


「抵抗せんかったら、こっちも何もせん」


なつめ。


「逃げんかったら追わん!」


あかり。


「先に攻撃してこんかったら、私も突っ込まん!」


まどかが頭を抱える。


「最後の二人、もう自分から突っ込む気満々やん」


綾乃は作戦表を開いた。


美月、彩香、のどかとは同級生である。


普段なら同世代同士の気安い関係。


しかし今回、綾乃は指揮官。


「美月さん」


「何?」


「作戦中は指示、ちゃんと聞いてな」


「同級生やのに急に他人行儀やな」


「指揮官やさかい」


彩香が笑う。


「美月は待て言われても待たへんぞ」


美月。


「彩香に言われたない!」


のどか。


「二人とも同じじゃろ」


綾乃は三人を見た。


すでに疲れた表情になっている。


「……任務始まる前から不安やわ」


佳乃が同情した。


「綾乃さん。今日は大変やと思います」


「始まってもないのに慰めんといて」



作戦名「オペレーション・ベイシールド」


綾乃は十人を明確に役割分担した。


第一陣。


山本あかり。


神代なつめ。


敵前衛を突破して隊列を乱す。


第二陣。


白浜麻衣。


崩れた敵陣へ入り、機動力でさらに混乱させる。


主力。


赤嶺美月。


西川彩香。


江波のどか。


敵戦力が分断された段階で一気に制圧。


捕縛。


坂井まどか。


中野柚希。


刺股を用いて退路を封鎖し、逃走工作員を確保する。


後方。


谷口佳乃と西園寺綾乃。


真結の情報を受けながら、作戦全体を統括。


説明を聞いた美月が尋ねる。


「うちら、最初待機?」


「待機どす」


「もう行ってええ?」


「まだ」


三秒。


「今?」


「まだ」


さらに三秒。


「そろそろ?」


佳乃が言った。


「散歩前の犬やないんですから」


「誰が犬や!」


彩香が笑う。


「しっぽ付いてたら振っとるやろな」


美月。


「彩香ぁ!」


綾乃が机を叩かずに、ただ一言。


「静かに」


三人が黙る。


佳乃は感心した。


「同級生でも効くんですね」


綾乃。


「もう先生の気分どす」



四日市の一番槍、速すぎる


深夜。


真結から通信。


「敵前衛、十二名。中央倉庫から増援が動きました」


綾乃が右手を上げる。


「あかりさん、なつめさん」


あかりの身体が前へ傾く。


「行っておくれやす」


次の瞬間。


「一番槍ぃぃぃぃっ!」


四日市の突貫娘が飛び出した。


速い。


とにかく速い。


敵が盾を構え終える前に目の前へ到達。


一人目の防護盾へ身体ごと飛び込み、


「どりゃあああっ!」


そのまま後方へ押し込む。


敵の隊列が崩れた。


美月が叫ぶ。


「ほんまに真正面から行きよった!」


佳乃。


「それが作戦です」


数秒後。


「四日市だけに一番槍取らせるかぁ!」


土佐の突貫娘・なつめも突入。


あかりが道を開き。


なつめが広げる。


敵前衛は一気に混乱。


綾乃が通信。


「あかりさん、なつめさん。突破口できたら戻ってください」


返事がない。


「あかりさん?」


遠くから、


「次あっち!」


「行くでぇ!」


佳乃が言う。


「聞こえてますね」


綾乃。


「聞こえとるけど、聞く気がないんやね」


「突貫娘を二人同時に放しましたから」


綾乃は小さくため息をついた。


「自分で決めた配置やけど、ちょっと後悔してます」



紀州の舞姫は、戦場まで優雅


崩れた敵陣へ、白浜麻衣が入る。


あかりとなつめとは正反対。


突っ込まない。


力で押さない。


一歩。


半歩。


軽く身体をひねる。


工作員の攻撃が空を切る。


麻衣は手首へ触れ、方向だけを変える。


相手は勢いのまま、隣の工作員へぶつかった。


「そんな慌てたら危ないよお」


柔らかな声。


別の工作員が背後から迫る。


麻衣は一歩横へ。


二歩前へ。


くるり。


攻撃をかわし、そのまま足を払う。


一人。


さらに一人。


コンテナの間を縫うように舞う。


敵が麻衣を狙えば狙うほど、自分たちの隊列が崩れていく。


美月が感心する。


「麻衣、ほんま戦場でも舞姫やな」


佳乃。


「美月さん、見学ではありません」


「まだ待て言われとる!」


麻衣は二人の敵の間を抜ける。


双方の攻撃が互いに衝突。


二人がよろめく。


麻衣は笑顔。


「ほらあ、ちゃんと前見よなあ」


そして軽やかな一撃。


二人同時に倒れる。


美月が呟く。


「口調一番優しいのに、やっとること結構えげつないな」


麻衣。


「聞こえとるよお」


「ここも地獄耳!」



そして、出してはいけない三人が解放されました


敵陣が完全に乱れた。


綾乃が通信を入れる。


「美月さん」


「はい!」


「彩香さん」


「はいよ」


「のどかさん」


「ほい」


綾乃は一瞬、ためらった。


この三人は全員、同級生。


普段から性格もよく知っている。


そして三人とも――


戦闘スイッチが入ると、ちょっと人が変わる。


「……お願いします」


美月。


「待ってましたぁ!」


彩香。


「やっとか!」


のどか。


「ほいじゃ、片付けるかの」


佳乃が綾乃を見る。


「今、ちょっと後悔しました?」


「もうしてます」



河内のスピーカー、南港へ沈める宣言


美月が飛び込む。


コンテナ脇を蹴る。


方向転換。


敵の攻撃をかわす。


補修済みの制服の脇腹を一瞬確認。


「今日は破れへん!」


まどか。


「戦闘中に制服の心配すな!」


三人の工作員が美月を囲んだ。


美月の顔が変わる。


「何や、おどれら」


後方の綾乃が目を閉じた。


もう始まった。


美月は一歩前へ。


「三人で囲んだら何とかなる思うとんか? 甘いわ。三人まとめて来いや!」


工作員が構える。


「往生際悪いのぉ! こっちは早よ帰りたいんじゃ! 大人しゅう手ぇ上げえ!」


一人が後ろへ回る。


美月が即座に振り返る。


「おいコラ、後ろからコソコソ何しとんねん! 正面から来いや!」


さらに、


「逃げても無駄やぞ! 南港広いからいうて隠れられる思うな!」


敵が後退。


美月は追う。


「何下がっとんねん! 自分から来たんやろが!」


まどか。


「逃げるんやったら逃がして捕まえたらええ!」


美月。


「分かっとる!」


さらに別の敵へ、


「おどれらまとめて南港へ沈めたるで! 南港の水は冷たいぞ! 夜中に泳ぎたなかったら今すぐ座れ!」


工作員が本当に座ろうとする。


佳乃。


「美月さん。敵が本気で受け取ってます」


「素直でええやん!」


綾乃。


「脅して座らせるんは、戦隊ヒロインの理想像と違います」


美月。


「効率ええで?」


佳乃。


「効率の問題ではありません」



播州の烈火、敵へ説教を始める


西川彩香の前には四人。


彩香は人数を確認。


笑う。


「四人?」


一人が攻撃姿勢。


彩香が低い声で言う。


「何や、その構え。そんなもんで、うち止められる思うたん?」


敵が一歩前へ。


「来るんやったら来いや。途中でやっぱりやめた言うても知らんで」


美月が隣から、


「彩香、怖いぞ!」


「お前が言うな!」


工作員が武器を構え直す。


彩香の播州弁がさらに荒くなる。


「何モタモタしとんねん。やるんか、やらんのか、どっちや!」


敵が下がる。


「下がるんかい! 最初から出てくんな!」


もう一人が横へ回る。


彩香。


「横から行ったら分からん思うたんか。なめとったらあかんぞ」


敵が完全に固まる。


「ほら。武器置け」


敵が少し動く。


「ゆっくりや! こっちもびっくりするやろが!」


佳乃が通信で言う。


「彩香さん。人質交渉の犯人側みたいになってます」


「誰が犯人や!」


綾乃。


「音声だけやったら、判別難しいどす」


彩香。


「綾乃まで!」


同級生からの冷静な指摘が一番効いた。



のどか、広島弁で柔道指導


江波のどか。


こちらは言葉より先に、敵が飛んでいた。


一人目。


腕を取る。


腰を入れる。


投げる。


二人目。


足を止める。


重心を崩す。


投げる。


三人目。


「何遍来ても同じじゃ言うとるじゃろ」


投げる。


倒れた敵が起きようとする。


のどかが低い声。


「寝ときんさい」


敵が止まる。


「今起きたら、また投げることになるけえ」


敵、静かに寝る。


美月が遠くから叫ぶ。


「のどか! 敵が自主的に寝たぞ!」


のどか。


「言うこと聞くんはええことじゃろ」


別の敵が背後から迫る。


のどかは振り返る。


「おい」


敵が止まる。


「後ろから何しよるん?」


敵が武器を下げ始める。


「そうそう。最初からそうしときゃええんよ」


さらに別の一人。


「まだ来るんか? あんたら、そんなに床が好きなん?」


工作員が迷う。


のどか。


「来るなら来んさい。帰るなら手ぇ上げんさい。中途半端が一番いけん」


彩香が感心する。


「のどか、今日ほんま怖いな」


のどか。


「彩香に言われとうないわ!」


美月も。


「それはほんま!」


のどか。


「美月もじゃ!」


三人が戦闘中に言い争う。


綾乃の声が飛ぶ。


「三人とも!」


同時に、


「はい!」


佳乃が呟く。


「同級生やのに、完全に担任と問題児三人ですね」


綾乃。


「うちもそう思い始めてます」



任侠映画、さらに音声が悪化する


三人の戦闘通信。


録音されている。


「そこ動くな言うとるやろ!」


「何逃げとんねん!」


「往生際悪いぞ!」


「武器置け言うとんねん!」


「次来たら知らんぞ!」


「大人しゅうしんさいや!」


「誰にケンカ売っとるか分かっとんか!」


綾乃が突然通信へ割り込む。


「美月さん」


「何や!」


「最後の台詞、あかん」


「どれ?」


「“誰にケンカ売っとるか分かっとんか”」


美月。


「彩香や!」


彩香。


「うちちゃう!」


のどか。


「今、美月が言うた!」


美月。


「雰囲気で出ただけや!」


佳乃。


「その雰囲気が問題なんです」


彩香が敵へ、


「おい、こっち見いや!」


綾乃。


「彩香さん」


「何?」


「それもあかん」


「普通やろ!」


「戦隊ヒロインとしては普通やあらしまへん」


のどかが、


「ええ加減にせんと――」


綾乃。


「のどかさん。その続き、慎重に」


のどか。


「……大人しゅう捕まってもらいます」


佳乃。


「急に公務員みたいになりましたね」


美月が笑い出す。


「のどか、急に丁寧!」


その隙に敵が動く。


のどかが振り向く。


「おどれ動くな言うとるじゃろ!」


綾乃。


「戻った!」


後方指揮所で、綾乃がついに両手で顔を覆った。


「もう嫌や、この同級生ら……」


真結が仙台から小さな声で言う。


「音声ログ、全部残っています」


綾乃。


「お願いやから、外部研修教材には使わんといて」



まどかと柚希、刺股で一番まともに働く


一方、まどかと柚希は極めて冷静だった。


逃走する敵。


まどかが刺股を構える。


「止まって。これ以上抵抗せんかったら、何もせえへんから」


敵が方向転換。


反対には柚希。


薙刀の技術で培った間合い。


長い柄を自在に操り、相手が踏み込めない距離を維持する。


逃走方向を限定。


壁側へ。


まどかが反対から押さえる。


そのまま拘束。


二人目。


三人目。


非常に効率がいい。


柚希。


「刺股は相手との距離を保てるので、無理に接触しなくても制圧できますね」


まどか。


「こっちも安全やし、相手も余計なケガせんで済む」


そこへ美月が走ってくる。


「まだ一人逃げた!」


まどかが刺股を横へ出す。


美月の進路を止める。


「美月、もうええ」


「何でうちを止めんねん!」


「柚希が捕まえた!」


今度は彩香。


「まだ向こうにおる!」


柚希が刺股で止める。


「彩香さん、もう確保済みです!」


「一言言うとかな!」


「言わんでええ!」


さらにのどか。


「もう一人――」


まどか。


「味方や!」


「そうなん?」


佳乃から通信。


「刺股が、敵より美月さんらを止めるために使われ始めました」


綾乃。


「予想以上に有効どす」


まどか。


「こういう有効性は求めてへん!」



あかりとなつめも、悪い影響を受ける


三人の暴れっぷりを見たあかりが目を輝かせる。


「まだ行っていいんや!」


なつめも、


「美月らまだ戦いゆう! うちらも行くで!」


綾乃。


「もう突破口はできてます!」


あかり。


「でも敵残ってる!」


佳乃。


「捕縛班へ任せてください!」


なつめ。


「最後まで片付けた方が早いき!」


二人が再突撃。


綾乃が呆れる。


「悪影響が伝染しました」


佳乃。


「火力三人組を見える位置へ置いたんが失敗ですね」


あかりは逃走する工作員の前へ俊足で回り込む。


「どこ行くん!」


反対側からなつめ。


「逃がさんで!」


敵が方向転換。


そこにまどか。


刺股。


「はい、終了」


まどかは呟く。


「うち、定置網みたいになってきたな」


柚希。


「前から追ってもらえると、捕まえやすいです」


「突貫娘の使用方法として正しいんかなあ……」



特殊部隊、満を持して到着――仕事なし


遠くから車列。


当局特殊部隊が南港へ到着する。


完全装備。


緊迫した表情。


危険な武装組織との大規模戦闘を想定して現場へ展開。


そして――


全員、止まる。


動く敵がいない。


破損した特殊車両。


停止した無人機。


機能を失った通信設備。


番号札を付けて整理された証拠物件。


一か所へ集められた工作員。


医療班の到着を待つ負傷者。


まどかと柚希は刺股を持って警戒。


佳乃は証拠目録を作っている。


綾乃は現場全体を確認。


美月、彩香、のどかは、


「まだ誰か隠れとらん?」


と探していた。


特殊部隊の指揮官がしばらく黙る。


「……現場指揮官は?」


綾乃が前へ出る。


「うちどす」


「状況は?」


「ジェネラス・リンク工作員、全員身柄確保。主要倉庫制圧。通信設備停止。車両停止。証拠物件確保済みどす」


指揮官が周囲を見る。


「……我々は?」


綾乃が申し訳なさそうに微笑む。


「証拠と身柄の引き継ぎをお願いできますやろか」


特殊部隊員。


「もう全部終わってるんですか?」


佳乃。


「大方は」


美月が胸を張る。


「ちょっと遅かったな!」


まどかが美月の後頭部を軽く叩いた。


「当局の人に勝ち誇るな!」



想定以上の成果。想定以上の被害


結果は圧倒的だった。


ジェネラス・リンク南港拠点。


事実上壊滅。


工作員全員拘束。


秘密輸送資料。


資金ルート。


偽装会社一覧。


他拠点との通信記録。


大量の証拠物件を押収。


民間人被害なし。


戦隊ヒロイン側にも大きな負傷なし。


しかし――


ジェネラス・リンク側は、相応の負傷者を出していた。


抵抗が激しかったこともあり、打撲や捻挫などを中心に、多数が医療処置を受けることになる。


佳乃が集計表を見る。


「……多いですね」


美月。


「向こう本気やったからな」


彩香。


「こっちも危なかったんやから仕方ないやろ」


のどか。


「危険な装備持っとったけえな」


佳乃は別紙を見る。


「この負傷者の多い区画……美月さん、彩香さん、のどかさんの担当ですね」


三人が黙る。


佳乃。


「こっちは?」


あかりが小さく手を挙げる。


「私となつめ……」


なつめ。


「ちょっと勢い付いてもうた」


綾乃は同級生三人と突貫娘二人を順番に見た。


「“ちょっと”いう言葉の意味を、今度みんなで勉強しまひょか」


五人。


「はい……」



当局はベタ褒め、綾乃は頭を抱える


西日本分室。


任務報告。


遥室長が当局から届いた評価書を読む。


「民間人被害なし。西日本におけるジェネラス・リンク補給網へ重大な打撃。全工作員の身柄確保。重要資料多数押収――」


美月がニヤニヤする。


「もっとある?」


「特殊部隊到着以前に主要脅威が排除されており、想定を大幅に上回る成果」


美月が立ち上がる。


「ほらぁ!」


彩香も胸を張る。


「結果出しとるやん!」


のどかも、


「仕事は完璧じゃろ」


あかりとなつめはハイタッチ。


佳乃が冷静に言う。


「成果と反省点は別です」


美月の顔が曇る。


「まだあるん?」


綾乃が笑顔を浮かべた。


美月、彩香、のどか。


同級生三人には分かる。


この綾乃の笑顔は危ない。


「三人とも、前へ来てくれはる?」


彩香。


「何で?」


「ええから」


のどか。


「嫌な予感しかせんの」


三人が並ぶ。


綾乃は穏やかな京都ことばで始める。


「三人とも、本当によう頑張らはりました」


美月。


「せやろ?」


「成果については、何も文句あらしまへん」


彩香。


「ほな終わりやな」


「せやけど」


三人。


「……」


佳乃が音声ログを開く。


綾乃が読み上げる。


「“おどれら、まとめて南港へ沈めたるで”」


美月が目をそらす。


次。


「“寝言は寝て言いや。往生際悪いねん”」


彩香が口笛を吹くふり。


次。


「“寝ときんさい。起きたらまた投げることになるけえ”」


のどかが天井を見る。


さらに。


「“誰にケンカ売っとるか分かっとんか”」


三人が互いを見る。


美月。


「それ彩香や!」


彩香。


「美月やろ!」


のどか。


「どっちかじゃ!」


佳乃。


「美月さんです」


美月。


「特定早っ!」


綾乃はこめかみを押さえた。


「うちら、同級生やん?」


三人。


「うん」


「同じ年頃の女の子が言う言葉とは、どうしても思えへんのよ」


美月。


「戦闘中やったから!」


彩香。


「相手が悪かった!」


のどか。


「向こうが抵抗したけえ!」


綾乃は笑顔。


「暴力団同士の抗争でも、もう少しお上品どすえ」


後ろでまどかが吹き出す。


あかりは腹を抱える。


柚希まで顔を伏せて笑う。


美月。


「そこまで!?」


綾乃。


「戦隊ヒロインプロジェクトは、健全な青少年育成も大事な目的なんどす」


彩香。


「うち、美月に釣られただけや!」


美月が彩香を指す。


「何言うとんねん! 彩香の播州弁が怖いから、うちもつい強うなったんや!」


のどかも彩香を指す。


「うちも彩香じゃ!」


彩香がのどかを指す。


「一番敵投げまくってたん、のどかや!」


のどかが美月を指す。


「最初に南港へ沈める言うたんは美月じゃ!」


美月が彩香。


彩香がのどか。


のどかが美月。


三人同時。


「こいつに釣られた!」


静寂。


佳乃が一言。


「全員、自分からスイッチ入ってました」


まどか。


「三人並べたら、悪い方向へ相乗効果出るんやな」


綾乃が深く頷く。


「次から、三人を同じ前線へ置かんようにしよかな」


三人。


「そこまでせんでもええやろ!」


綾乃。


「同級生として、ほんま恥ずかしいんどす」


美月。


「最後に個人的感情入った!」



事件は終わった。でも彩香が余計なものを思い出した


説教終了。


ようやく解放された三人。


彩香が伸びをする。


「疲れたわぁ」


そして横にいる美月を見る。


赤い戦隊ヒロイン制服。


前回の堺事件で裂けた場所は、佳乃による高耐久補修布で修理済み。


外からはほとんど見えない。


彩香の口元が、ゆっくり上がる。


美月はすぐ気づいた。


「何や」


「いやぁ?」


「その顔、何や」


彩香は美月の周囲を一周する。


「今日は大丈夫やったんやな」


「何が」


「制服」


美月の眉が動く。


彩香は満面の笑み。


「破れスーツの美月~」


一同。


「あっ……」


美月の顔が赤くなる。


「誰が破れスーツや!」


「堺でビリッていったんやろぉ?」


「もう直っとる!」


「けちのんに、ぼろ布当ててもろて?」


佳乃が即座に訂正。


「高耐久補修布です」


美月が佳乃を見る。


「何でそこだけ彩香側に付くねん!」


彩香はさらに調子へ乗る。


「今日、回し蹴りするたびに心配やったわぁ」


「何が!」


「また“ビリッ”いうんちゃうかな思うて」


「いわへん!」


「ジャンプするたびに、縫い目が“もう無理~”言うとったで」


「制服の声を捏造すな!」


彩香は美月の脇腹をちらちら見る。


「そこ、何か苦しそうやなぁ」


美月が両手で押さえる。


「見るな!」


「昨日スイーツ何食べた?」


「関係ない!」


「パフェ?」


「食べた」


「ケーキ?」


「食べた」


「プリン?」


美月が一瞬黙る。


彩香。


「食べとるやん!」


部屋中が爆笑。


美月が怒る。


「お前、さっきの戦闘より今の方が腹立つぞ!」


彩香。


「捕まえてみいや、破れスーツ!」


彩香が逃げる。


美月が追う。


「待てコラァ!」


綾乃が叫ぶ。


「美月!」


美月が急停止。


綾乃。


「今、“コラ”言うた?」


美月。


「……言うてません」


彩香。


「言うた! めっちゃ言うた!」


美月。


「彩香ぁ!」


また追う。


佳乃が叫ぶ。


「人の制服破ったら弁償ですからね!」


美月が急停止。


「彩香の制服、なんぼ?」


佳乃が概算額を言う。


美月。


「……やめとく」


彩香が床を叩いて笑う。


「金額で正気戻った!」


まどか。


「けちのんの一言が、一番強力な制圧技やな」



のどか、止めに入って巻き込まれる


のどかが呆れる。


「二人とも、さっき綾乃に怒られたばっかりじゃろ。いい加減、大人になりんさい」


美月と彩香が同時に振り返る。


「のどかに言われたない!」


のどか。


「何じゃと?」


美月。


「戦闘中、一番怖かったん、のどかや!」


彩香。


「敵が投げられる前から謝っとったやん!」


のどか。


「自分らが先に敵を脅しとったんじゃろ!」


美月。


「脅してへん!」


佳乃。


「“南港へ沈める”は一般的には脅迫に近いです」


美月。


「例えや!」


彩香。


「うちの“寝言は寝て言え”は普通や!」


まどか。


「普通ではない」


のどか。


「ほいじゃ、うちだけ悪いみたいに言うな!」


美月。


「誰もそんなこと言うてへん!」


彩香。


「今、自分で認めたやん!」


また三人で口論。


あかりとなつめが楽しそうに見物。


柚希は壁に立て掛けた刺股を見る。


「……また使います?」


まどか。


「任務終わった後に、同級生三人を刺股で止めるんは嫌や」


綾乃は三人を眺め、静かに呟いた。


「さっきまで南港であんなに格好よかったのに……」


佳乃。


「これが通常運転です」


遥室長まで遠くで笑っている。


勇ましい精鋭部隊が帰ってきたはずの西日本分室。


数十分後には、


完全な動物園


になっていた。



南港では精鋭、帰ったら小学生


まどかが両手を叩く。


「はい! もう終わり!」


美月。


「でも彩香が!」


彩香。


「美月が先に!」


のどか。


「うちは巻き込まれただけじゃ!」


「全員黙る!」


三人が止まる。


まどかが指を一本立てる。


「今回の成果」


「南港拠点、壊滅」


二本。


「工作員、全員拘束」


三本。


「重要証拠、大量確保」


四本。


「民間人被害なし」


五本。


「特殊部隊到着前に、ほぼ任務終了」


美月たちが胸を張る。


まどか。


「ただし」


三人の表情が曇る。


「敵側の装備、想定以上にボロボロ」


佳乃。


「負傷者も想定以上」


柚希。


「刺股が味方の暴走防止にも大活躍」


綾乃。


「美月、彩香、のどかの会話は任侠映画」


美月。


「最後だけ余計や!」


当局の評価書を佳乃が読む。


「“極めて高い制圧能力を発揮した”」


三人。


「ほら!」


「“想定を大幅に上回る成果”」


さらに胸を張る。


綾乃が微笑む。


「次は、成果も言葉遣いも“想定の範囲内”でお願いしとうおす」


笑いが起こる。


彩香が最後に美月を見る。


「分かったわ。次は気ぃ付ける」


美月。


「そうせえ」


彩香。


「破れスーツの美月もな」


美月。


「何でそこへ戻るねん!」


再び美月が追いかける。


彩香が逃げる。


のどかがまた口を挟む。


あかりとなつめが応援。


柚希が笑う。


佳乃が、


「机と椅子壊したら弁償です!」


と怒鳴る。


綾乃は、同級生三人のあまりの大人げなさに額を押さえた。


まどかは最後に、しみじみ言う。


「南港では、西日本最強クラスの精鋭部隊」


全員が振り返る。


「帰ってきたら、小学生の休み時間やな」


部屋中が爆笑に包まれた。


大阪南港を舞台にした危険な総力戦。


ジェネラス・リンクが用意した武装も。


無人兵器も。


大量の工作員も。


西日本精鋭隊の圧倒的な連携の前に敗れ去った。


四日市の突貫娘が先陣を切り。


土佐の突貫娘がその穴を広げ。


紀州の舞姫が華麗に敵を翻弄。


まどかと柚希の刺股が逃走路を塞ぎ。


佳乃と綾乃が全体をまとめ。


美月、彩香、のどかの三人が圧倒的な火力で敵の主力を制圧した。


任務は文句なしの大成功。


ただ一つ、問題があった。


戦闘中、いちばんジェネラス・リンク工作員を震え上がらせたのは、拳でも蹴りでもなかった。

河内弁、播州弁、広島弁が同時に戦闘モードへ入った時の、三人の「口」だった。


そしてその恐ろしい三人も、分室へ戻れば、


「破れスーツ言うな!」


「破れたん事実やろ!」


「二人とも大人になりんさい!」


「のどかに言われたない!」


と、いつもの子どもじみた喧嘩を始める。


勇ましい戦闘の夜は、最後にはいつもの笑い声で終わった。


それが、「トリオ・ザ・大阪」と西日本戦隊ヒロインたちの日常なのである。

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