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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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1022/1045

東海地方での地盤強化 大垣カンガルー頂上決戦――真白父の挨拶が長すぎて、たつをが優秀選手賞を持っていく

大垣市民ホールに、東西の人気戦隊ヒロインが集結した。


イベント名は、戦隊ヒロインサミット大垣 supported by 濃尾運輸。


奥の細道むすびの地、水都・大垣。交通の要衝であり、天下分け目の関ヶ原にも近い。東西ヒロインが集まるには、これ以上ない舞台だった。


冠スポンサーは、カンガルーマークのトラックで知られる総合物流企業・濃尾運輸。真白の勤務先でもあり、戦隊ヒロインプロジェクトを物流面から支える重要スポンサーである。


会場には、美月、真央、真白、あかり、明日香、ひかり、みのり、陽菜、美紀、小春、澪、沙羅、彩香、まどか、麻衣、美咲が勢揃い。


そして、なぜかたつをもいた。


美月が聞く。


「たつを、呼ばれた?」


たつをのフリップ。


呼ばれていない


美月は少し考えた。


「……まぁええか」


彩香が呆れる。


「なんで認めるねん」


美月は肩をすくめた。


「ここまで来たら、もう舞台装置や」


開会式で登壇したのは、総責任者である真白の父だった。


濃尾運輸子会社の専務。超が付くほどの堅物ビジネスマンである。仕立ての良い背広、白いワイシャツ、落ち着いたネクタイ、七三分け、銀縁メガネ。まさに昭和の取締役そのもの。


真白父は深々と礼をして、重々しく口を開いた。


「本日は、戦隊ヒロインサミット大垣 supported by 濃尾運輸にご来場賜り、誠にありがとうございます。大垣市は古来より水と交通に恵まれ、奥の細道むすびの地として文化的意義を有し、また関ヶ原に近接する地理的条件から、東西交流の要衝として――」


長い。


かなり長い。


大垣の歴史、物流の使命、濃尾運輸の成り立ち、安全運行、地域振興、SDGs、環境配慮、エコドライブ、青少年育成。


話はためになる。

だが、長〜〜〜〜い。


美月が小声で言う。


「これ、まだ序章ちゃうか?」


真央。


「今、会社沿革に入ったがね」


澪。


「眠い」


真白は顔を赤くして父を止めに入る。


「お父さん、そろそろ開会宣言を……」


真白父は頷いた。


「そうだな。では最後に、娘の真白につきましても、皆様どうかよろしくお願いいたします。この子は幼少期より大変几帳面で、遠足の弁当箱の配置にも――」


真白が慌てる。


「そこは言わなくていいです!」


美月が爆笑する。


「真白の幼少期物流管理編、始まったで!」


ようやく開会宣言が終わると、会場には大きな拍手が起きた。内容への拍手半分、終わったことへの安堵半分だった。


司会は女子アナ志望のひかり。隣ではみのりが資料を整理しながら、完璧にサポートする。


「それでは、戦隊ヒロインサミット大垣 supported by 濃尾運輸、開幕です」


ステージは過去最大級に豪華だった。濃尾運輸のカンガルーマーク、トラック模型、野球部員の応援参加、企業ブース、ヒロイングッズ売り場。企業祭とヒロインフェスが合体したような賑やかさである。


メイン企画は、大垣東西ヒロイン対決。


「奥の細道・早口朗読リレー」

「関ヶ原東西綱引き」

「カンガルー荷積みタイムアタック」


東軍は小春、澪、陽菜、美紀、ひかり、みのり。

西軍は美月、彩香、あかり、まどか、麻衣、美咲。


最初は順調だった。


しかしカンガルー荷積みタイムアタックで、西軍が崩壊する。


美月が段ボールを積みながら怒鳴る。


「彩香、そこちゃう! 重い箱は下や!」


彩香も負けない。


「分かっとるわ! 美月こそ口ばっかりで手ぇ動いてへんやろ!」


「なんやと!」


「河内のスピーカー、ちょっと黙れ!」


「姫路の現場番長が偉そうに!」


荷物より口が動く。


まどかが慌てて割って入る。


「二人とも、鉄板の上でもないのに熱くならんといて!」


麻衣は一歩下がる。


「巻き込まれたら負けやな」


美咲も静かに離れる。


「うん、危険区域」


あかりも言う。


「これは三重県人として距離取ります」


美月と彩香の子供じみた喧嘩のせいで、西軍の荷物は見事に崩壊。


一方、東軍は澪がぼーっと積んだ箱がなぜか安定し、小春が江戸前の勢いでまとめ、ひかりとみのりが綺麗に指示を出して圧勝した。


美月は不満げ。


「納得いかん!」


たつをのフリップ。


自業自得


美月と彩香が同時に叫ぶ。


「うるさい!」


表彰式では、基準が曖昧なまま優秀選手賞が発表された。


受賞者は、たつを。


会場大爆笑。


美月。


「なんでや!」


たつを。


存在感


賞品は濃尾運輸社員食堂の食券3000円分。


真白父が厳粛に手渡すと、たつをはフリップを掲げた。


社員ではないが、昼食には貢献したい


真央が笑う。


「無駄に粋だがね」


そして最高殊勲選手は、伊吹真白。


これは文句なしだった。スポンサー企業の社員として、地元大垣のヒロインとして、イベント全体を支えた功績が評価された。


真白父は食券5000円分を手渡しながら、少しだけ表情を緩めた。


「真白、よく頑張りました」


真白は嬉しいやら恥ずかしいやらで、目を伏せる。


「ありがとうございます……でも、賞品が社員食堂の食券なんですね」


美月が笑う。


「実用性最強やん」


記念撮影では、真白父、真白、そしてなぜかたつをが中央に映り込んだ。堅物の父、照れる娘、謎のタツノオトシゴ。


妙にいい写真だった。


まどかが言う。


「これ、伊吹家の家族写真みたいやな」


たつを。


親戚枠


真白。


「違います」


閉会式。


再び真白父が登壇した瞬間、会場に軽い緊張が走った。


「地域振興と健全な青少年育成、そして治安維持という理念に賛同し、濃尾運輸はこれからも戦隊ヒロインプロジェクトを物流面で全面的にサポートいたします」


ここまでは良かった。


だが、当然続く。


「そもそも物流とは、社会の血流であり、地域経済を支える見えざる基盤であります。安全運転、環境配慮、労働環境改善、次世代人材育成――」


長〜〜〜〜い。


でも、いい話が多い。


美月が小声で言う。


「ええ話やけど長いねん」


澪。


「帰りたい」


たつをのフリップ。


安全運転で帰ろう


それだけは正しかった。


こうして、戦隊ヒロインサミット大垣 supported by 濃尾運輸は幕を閉じた。


長い挨拶。

東西ヒロインの大騒ぎ。

美月と彩香の喧嘩。

たつをの謎受賞。

そして、真白と父の少し照れくさい家族写真。


濃尾の秘密兵器・伊吹真白は、この日、大垣のど真ん中で確かに主役になった。

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