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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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1021/1022

柳ヶ瀬に消えた帝王と、金華山のリス探偵――真白、岐阜の空から故郷を語る

長良川河川敷でのイベントを終えたヒロ室東海(仮称)は、真白の提案で金華山へ向かうことになった。


「岐阜市内が一望できます。せっかくですから、岐阜城も見ていきませんか」


普段は控えめな真白が、少しだけ胸を張って言った。大垣市出身で、加入当初は“濃尾の秘密兵器”と呼ばれた彼女にとって、岐阜はただの遠征先ではない。自分の地元圏そのものだった。


そこへ、まさにゃんが妙にそわそわしながら腕時計を見る。


「私はこの後、地元のラジオ局との重要な打ち合わせが……」


美月は一切取り合わない。


「知らんがな。柳ヶ瀬行くんやろ」


まさにゃんは涼しい顔で答える。


「地域経済への貢献です」


真央が呆れる。


「それ、飲みに行く言い訳だがね」


結局、元・柳ヶ瀬の帝王はイソイソと繁華街へ消えた。


そして気づけば、たつをもいない。


美月が周囲を見る。


「あれ、たつをは?」


澪がぼそっと言う。


「まさにゃんと柳ヶ瀬だよ、多分」


「まあええか」


誰も探さなかった。


隼人補佐官とヒロインたちはロープウェイに乗り、金華山を登る。眼下には岐阜市街が広がり、長良川が銀色に曲がり、遠くには濃尾平野が続いていた。


隼人補佐官は真面目に景色を眺める。


「これは強いですね。県都の中心に山と川と城がある。都市PRとして相当な武器です」


美月も素直に感心した。


「名古屋から近いのに、空気が違うな。水が綺麗やし、街が落ち着いとる」


真央は頷く。


「ベッドタウンとしてもええし、ちゃんと地元媒体も頑張っとる感じがするがね」


あかりは長良川を見下ろす。


「川が主役の街ってええやに。四日市とはまた違う強さやわ」


澪は短く言う。


「風がいい」


すみれコーチは腕を組んだ。


「イベントにも任務にも使いやすい街だねぇ。山、川、街、全部ある」


あかねは自然に目を細める。


「水が綺麗な場所は、生き物の気配も穏やかですね」


明日香は岐阜城を見上げる。


「信長の拠点だら。ここから見たら、天下取りたくなる気持ちも分かるだら」


真白は静かに笑った。


「岐阜って、派手すぎないんです。でも水が綺麗で、名古屋にも近くて、暮らしやすくて、歴史もある。大垣も岐阜も、濃尾の街はちゃんと底力があります」


美月が茶化すように言う。


「濃尾の秘密兵器、今日は岐阜愛強めやな」


真白は少し照れた。


「はい。強めです」


岐阜城を見学した後、一行は名物のリス園へ向かう。


途端に空気がゆるんだ。


リスが小さな手で餌を持つ。走る。止まる。尻尾をふる。


美月は完全に崩れた。


「かわええ! ちっさい! でも速い!」


真央も笑顔になる。


「これは癒やされるがね」


あかりはしゃがみ込む。


「連れて帰りたいに」


澪の肩には、なぜか一匹のリスが乗る。


澪は無表情で言う。


「軽い」


すみれコーチですら頬が緩む。


「小さいのに勝負勘ありそうだねぇ」


あかねはリスの尻尾や耳の動きをじっと見る。


「警戒と好奇心が混ざっていますね。かわいいけど、ちゃんと周囲を見ています」


そこへ、リス園スタッフが困った顔で近づいてきた。


「すみません。奥の方にいる数匹が、さっきから物置の方ばかり気にして落ち着かなくて……」


あかねの目が変わる。


「音か匂いか、何かに反応しているのかもしれません」


ヒロインたちは物置の裏へ向かう。すると草むらから、小さな機械音が聞こえた。


ウィーン。

カリカリ。

ウィーン。


真白が草をよける。


そこには、観光客の子どもが落とした小型ラジコンカーが、スイッチの入ったまま草に絡まっていた。リスからすれば、得体の知れない動く怪物である。


美月が呆れる。


「犯人ラジコンかい!」


真央が笑う。


「リスからしたら怪獣だがね」


ラジコンは草と根に絡まり、なかなか取れない。真白が慎重に手を伸ばすが、車輪が空回りしてさらに絡まる。


その時、草むらの奥からフリップが出た。


任せろ


全員が固まる。


美月が叫ぶ。


「お前、どこから出てくんねん!」


たつをだった。


フリップ。


柳ヶ瀬、飽きた


真央が吹き出す。


「飽きるの早いがね!」


たつをはなぜか小枝を器用に使い、車輪に絡まった草を外していく。最後にスイッチを切ると、音が止まった。


リスたちが一斉に落ち着いた。


美月は悔しそうに言う。


「たつをが解決した……」


たつをのフリップ。


リスに呼ばれた


澪。


「嘘だね」


しかし、今回は本当にお手柄だった。


ラジコンの持ち主の男の子も見つかり、真白が優しく返す。


「次は落とさないようにしてくださいね」


男の子は笑顔で頭を下げた。


「ありがとう!」


すると、リスたちがヒロインたちの周りへ集まってくる。


美月の足元に一匹。

真央の手に一匹。

澪の肩に一匹。

あかねの膝に一匹。

真白の近くにも、明日香の足元にも、すみれコーチのバッグの上にも、小さなリスが寄ってきた。


まるで、ありがとうと言っているようだった。


あかねが微笑む。


「感謝してくれているみたいですね」


澪が頷く。


「言ってる」


美月はリスに囲まれながら笑う。


「今日はええ任務やったな。敵もおらんし、リスかわいいし」


たつをのフリップ。


本日のMVP


美月が即答。


「調子乗るな。でも今日は認めたる」


帰り際、真白は金華山を振り返った。


「岐阜、いいでしょう?」


隼人補佐官が頷く。


「ええ。東海の地盤を固めるなら、岐阜は外せません」


美月も笑った。


「岐阜、かなりアリやな」


そしてその頃、まさにゃんは柳ヶ瀬で「重要な打ち合わせ」をしていた。


領収書の但し書きは、誰も追及しなかった。

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