表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1018/1045

名馬の里でワイド180円――笠松で澪だけが勝つ

ヒロ室東海(仮称)は、今度は岐阜県の名馬名手の故郷へ乗り込んだ。


舞台は、木曽川の流れにも近い地方競馬場。かつて地方から中央へ駆け上がり、日本中を熱狂させた伝説のアイドルホースを輩出した地である。派手な中央競馬場とは違う。馬との距離が近く、騎手の息遣い、蹄の音、パドックの空気まで生々しい。泥臭く、温かく、そして妙に熱い。ここは地方競馬の誇りが残る場所だった。


参加するのは、美月、真央、あかり、真白、澪、美音、明日香、すみれコーチ、あかね。


そして、なぜかたつをもいた。


美月が聞く。


「たつを、呼ばれた?」


たつをのフリップ。


予想しに来た


「お前、馬券買えへんやろ!」


買えないけど当てる


真央が呆れる。


「一番タチ悪いタイプだがね」


イベントステージでは競馬トークショーが始まった。


ゲストは有名競馬評論家の井田修三郎。長年、競馬中継や予想番組で親しまれ、こじつけデータ、珍理論、豪快な笑いで場をさらう名物評論家である。


そこへ登壇したのが内田あかねだった。


あかねは府中市出身。府中刑務所の官舎に住んでおり、近くには大競馬場がある。さらに乗馬クラブに通っていた経験もあり、馬の生態や歩様、気性の見方にやけに詳しい。


パドック映像を見たあかねは、静かに語り始めた。


「この馬、耳の動きが落ち着いています。周囲を気にしていないので、精神面は良さそうです。ただ、首の使い方が少し硬いですね。歩様は悪くないですが、返し馬でどれだけほぐれるか見たいです」


井田修三郎が目を丸くした。


「いやぁ、君すごいねぇ。馬券師じゃなくて厩務員目線だよ、ガハハ!」


すみれコーチも競馬新聞を握りしめて頷く。


「これは本物だねぇ。パドック見れる人は強いよ」


そのすみれコーチも競馬には少々詳しい。博打好きな血が騒いでいるらしく、新聞の端から端まで赤ペンだらけだった。


そこへ井田がすみれを見て笑う。


「君、どこの大学?」


すみれが答える。


「御茶ノ水の、紫紺の旗と“前へ”の精神で知られる大学です」


井田は手を叩いた。


「おお、後輩じゃないの!」


すみれが嬉しそうにする。


「大先輩ですね」


井田は豪快に笑った。


「実はねぇ、大学除籍されているんだよねぇ。最初から居なかったことになっているんだ、ガハハ!」


美月が即座に突っ込む。


「笑って言うことちゃうやろ!」


たつをのフリップ。


幻の先輩


井田はさらに笑う。


「うまいねぇ、君!」


この日の第8レースは、特別にヒロ室東海(仮称)賞という副賞付きレースだった。


副賞は戦隊ヒロイングッズ。

手ぬぐい。

そして、在庫調整のために持ち込まれた美音のタオル。


美音が小声で言う。


「売れ残りって言わないでください」


美月は真顔で言った。


「在庫の健全化や」


「もっと嫌です」


いよいよ全員の予想大会。


美月は最初から荒れていた。


「ウチは3連単や。1000倍超え狙うで!」


真央は堅実。


「本命から手広く流すでよ。地方は堅い時は堅いんだわ」


真白も冷静。


「安定感と近走成績で選びます」


あかりは何も分かっていない。


「四日市の4、三重の3、勢いで8やに!」


美音は馬体重と距離適性を見て慎重。


明日香は目を閉じる。


「今日は六番に気配を感じるだら」


美月が笑う。


「スピリチュアル馬券や」


すみれコーチは新聞に顔を近づけている。


「調教、持ち時計、騎手、展開、馬場……これは渾身だねぇ」


あかねは落ち着いて言った。


「私はパドックを見てから変えます。現時点では2番人気から中穴狙いです」


井田修三郎はニヤニヤしながら言う。


「今日はねぇ、馬名の文字数と笠松の“笠”の字の画数から考えると、万馬券の匂いがするんだよ、ガハハ!」


美月が感心する。


「そこまで行くと芸やな」


そして澪。


出走表を少しだけ見て、ぼそっと言った。


「ワイド一点でいい」


美月が聞く。


「理由は?」


澪。


「多分当たる」


たつをのフリップ。


一番怖い予想


最後にたつを。


ブービー人気から総流し


美月が叫ぶ。


「ウチよりハチャメチャやん!」


レース本番。


ゲートが開く。


実況が響く。


美月は叫ぶ。


「行け! 1000倍!」


あかりも叫ぶ。


「4番来い! 四日市やに!」


すみれコーチは新聞を握りしめる。


「差せ! そこ差せ!」


井田修三郎は笑いながら、


「こじつけを証明しろー!」


と叫んでいる。


たつをのフリップ。


ブービー後方待機


美月。


「そら人気ないからな!」


しかしレースは、驚くほど順当だった。


人気馬が好位から抜け出し、2番人気がしっかり追い上げる。大荒れなし。波乱なし。夢なし。現実だけがゴール板を駆け抜けた。


美月は崩れ落ちる。


「1000倍どこ行ったんや……」


すみれコーチは新聞を畳む。


「読みすぎたねぇ」


井田修三郎は笑う。


「いやぁ、つまんない結果だねぇ、ガハハ!」


その中で、澪が静かに言った。


「当たった」


ワイド一点。


配当180円。


会場がざわつく。


美月が叫ぶ。


「澪、それ当たりは当たりやけど、夢が小さすぎるやろ!」


澪は平然としている。


「増えた」


真央も手広く流していたので的中していた。


たつをのフリップ。


10点買えば当たる


真央が眉を吊り上げる。


「うるさいがね!」


的中率重視


「言い方が腹立つわ!」


レース後、表彰式が行われた。


的中者代表として、澪と真央がプレゼンターに選ばれる。


そして、なぜかたつをも一緒に出てきた。


美月が呆れる。


「なんでたつをもおるん?」


たつを。


存在感的中


「馬券は外れとるやろ!」


表彰式では、勝利関係者に副賞の戦隊ヒロイングッズが渡された。


澪は淡々と手ぬぐいを渡す。


「おめでとうございます」


真央は笑顔で美音のタオルを渡す。


「おめでとうございますだがね」


美音は小さく言う。


「売れ残りじゃないです」


たつをは横でフリップを掲げる。


美音タオル、好評発売中


美音。


「表彰式で宣伝しないで」


さらに口取り式にも澪、真央、たつをが参加。


馬、騎手、オーナー、関係者、澪、真央、たつを。


写真の情報量が多すぎた。


井田修三郎はそれを見て、腹を抱えて笑った。


「いやぁ、地方競馬らしくて最高だねぇ、ガハハ!」


イベントは大成功だった。


あかねの本格的すぎるパドック解説。

井田修三郎とすみれコーチの危ない先輩後輩トーク。

美月の万馬券夢想。

真央の堅実的中。

澪のワイド180円。

そして、たつをの存在感だけの的中。


最後に美月は言った。


「今日の教訓。競馬は夢や。でも澪みたいに180円でも当てた者が勝ちや」


澪はぼそっと返す。


「勝った」


たつをのフリップ。


回収率は聞くな


美月が慌てる。


「それ言うたらあかん!」


笠松の競馬場に、笑いと拍手が残った。


名馬名手を育てた地で、ヒロ室東海(仮称)はまた一つ、地方の熱を味方につけたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ