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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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四日市コンビナート・ナイトラン――あかり、工場夜景に地元愛をぶちまける

モータースポーツ聖地で麗奈と美里がホームストレートを守り抜いてから数日後。

ヒロ室東海(仮称)は、三重県北部最大級の都市、四日市市へ入った。


四日市。


三重県の商業・工業・物流を支える実力派都市である。名古屋圏との結びつきも強く、鉄道も道路も港も揃い、街そのものが大きな産業のエンジンのように動いている。特に石油化学コンビナートは全国的にも知られ、巨大なタンク、配管、煙突、精製設備が海沿いに並ぶ景色は、昼は迫力、夜は幻想的な美しさを放つ。


かつて公害という重い歴史を背負った街でもある。

だが四日市は、そこから逃げなかった。企業、市民、行政が向き合い、環境対策を重ね、今では産業と環境の両立を語れる街になった。


山本あかりにとって、ここは単なる地元ではない。


誇りそのものだった。


この日の参加メンバーは、美月、真央、あかり、真白、ひかり、みのり、澪、明日香、美紀、陽菜。


そして、なぜかたつをもいた。


集合場所の近鉄四日市駅前で、美月はたつをを見るなり聞いた。


「たつを、呼ばれた?」


たつをはフリップを出した。


夜景見にきた


美月は一瞬黙った。


「……普通に観光客やん」


真央が笑う。


「今回は目的がまともだがね」


たつを、次のフリップ。


工場萌え


美月。


「お前、意外と分かっとるな」


だが美月は、別のことで納得していなかった。


駅前に立った瞬間から、彼女はずっと不満げだった。


「あかり」


「はい?」


「なんで四日市は“ひのとり”停まらへんねん」


あかりは嫌な予感がした。


美月は止まらない。


「県都の津には停まるやろ? なのに三重の商業の中心地、四日市に停まらんのはおかしいやん。なぁ、地元ヒロインとして何とかせえ」


あかりは困った顔をする。


「私に言われても……四日市民としても抗議したい気持ちはありますけど……」


美月は詰める。


「駅前で署名活動や。『ひのとりを四日市へ』や」


真央が横から呆れる。


「美月さん、それ鉄道会社に言う話だがね」


たつをのフリップ。


あかりに言うな


美月がのけぞる。


「たつをに正論言われた!」


あかりは小声で言った。


「そこだけは、たつをさんに同意します」


この日のイベントは、四日市工場夜景クルージングとのタイアップ企画だった。


夕方、港に集まった一行は、ファンや地元客と一緒にクルージング船へ乗り込む。船上ではヒロインたちのトーク、四日市の産業紹介、限定グッズ販売、そしてあかりによる地元案内が行われる予定だった。


船に乗るなり、たつをは甲板の端に立った。


フリップ。


乗船完了


美月。


「お前、海似合うな」


たつを。


タツノオトシゴなので


「そこだけ設定活かすな」


陽が沈み始める。

港の空が赤紫に染まり、四日市コンビナートの輪郭が少しずつ浮かび上がってくる。


煙突。

タンク。

配管。

無数のライト。

海面に揺れる光。


昼間は無骨に見える工場群が、夜になるとまるで未来都市のように輝き始めた。


陽菜が素直に声を上げる。


「すごい……綺麗です。工場って、こんなに綺麗なんですね」


美紀も目を細める。


「普通の夜景と違いますね。働いている場所の光だから、迫力があります」


ひかりは穏やかに頷く。


「産業の光が、そのまま街の景色になるんですね。機能美という言葉が合います」


みのりも理知的に続けた。


「観光資源としての夜景でありながら、実態は稼働する生産設備です。景観と産業が重なっているのが面白いですね」


澪は海を見ながら、ぼそっと言った。


「光ってる」


美月が即座に突っ込む。


「それは見たら分かる」


たつをもフリップを出した。


光ってる


美月。


「お前も澪側に回るな!」


真央は船上限定の軽食をつまみながら言う。


「でもほんと、ええ夜景だがね。これはもっと知られてええわ」


その言葉に、あかりの目が輝いた。


「そうなんです!」


来た。


全員が思った。


あかりの四日市愛スイッチが入った。


あかりはマイクを握る。


「皆さん、見てください。あの光が四日市です。石油化学工業の街として、四日市は日本の産業を支えてきました。ウチの父も、このコンビナートで働いています」


船内が静かになる。


いつもの突貫娘の勢いではない。

地元を語るヒロインの声だった。


「四日市は、昔、公害が大きな問題になりました。これは四日市が背負ってきた重い歴史です。でも、そこで終わった街やありません。企業も、市民も、行政も、みんなで向き合って、環境対策を重ねてきました。今は、環境技術や監視体制も進んで、産業と環境を両立させる街として歩んでいます」


美月も真央も茶化さなかった。


ひかりとみのりは静かに聞いている。

陽菜は目を潤ませていた。

美紀も真剣な顔で頷いている。


あかりは続けた。


「あの光は、ただ綺麗なだけやないんです。働く人の光です。街を支える光です。過去を忘れず、それでも前へ進んできた四日市の光です」


たつをがフリップを出しかける。


美月が小声で言う。


「今は茶化すなよ」


たつをは一度フリップを引っ込めた。


そして改めて出した。


四日市、すごい


あかりは少し笑った。


「そう。すごいんです」


さらにあかりの地元愛は止まらない。


「四日市は工業だけやないんです。商業も強いし、交通も便利やし、名古屋にも近い。買い物もできる。港もある。自然もある。夜景もある。ほんで、地元の人は温かいんです」


美月がようやく口を挟む。


「でも“ひのとり”は停まらへん」


あかりがずっこけそうになる。


「今それ言います!?」


たつをのフリップ。


停車希望


美月が食いつく。


「せや! たつを、分かっとるやん!」


あかりは頭を抱える。


「せっかく綺麗に語ってたのに!」


真央が笑う。


「これも四日市愛だがね」


美月はマイクを奪いかける。


「皆さん、四日市に“ひのとり”を――」


あかりが止める。


「やめてください! 今日のスポンサーさん、夜景クルーズです!」


たつを。


署名活動?


あかり。


「しません!」


船内は爆笑に包まれた。


それでも、あかりの話はきちんと届いていた。


陽菜が小さく言う。


「あかりさん、かっこよかったです。四日市、好きなんだなって伝わりました」


あかりは照れた。


「そりゃ好きやに。ここがウチの街やもん」


みのりも頷く。


「公害の歴史まで含めて、きちんと語ったのが良かったです。観光PRとしても深みがあります」


ひかりが穏やかに言う。


「過去を隠さず、乗り越えてきたことを誇る。とても大切ですね」


美月も珍しく素直だった。


「あかり、今日は地元ヒロインとして満点やな」


あかりは胸を張る。


「いつも満点です」


たつを。


たまに突貫


美月が吹き出す。


「それは合ってる」


あかり。


「たつをさん、今日ちょいちょい余計です!」


クルーズは佳境に入った。


コンビナートの光がさらに強くなり、海面に金色や白色の筋を伸ばす。遠くに見える煙突の灯りは、静かな夜空の中で規則正しく瞬いていた。


澪は船の手すりにもたれながら、また呟いた。


「きれい」


今度は誰も突っ込まなかった。


その一言が、一番正直だったからだ。


イベント後半、美月はしっかり営業も忘れなかった。


「皆さん、本日はありがとうございました! 四日市の工場夜景、最高でした! そして出口では、戦隊ヒロイングッズも販売しております。夜景の余韻に浸りながら、アクスタ、タオル、缶バッジ、ぜひお願いします〜!」


真央が呆れる。


「最後はやっぱり営業だがね」


美月は胸を張る。


「地域振興とグッズ販売は両立できるんや」


たつをのフリップ。


夜景より安い


美月。


「夜景は無料の価値がデカすぎるから比較すな!」


あかりが笑いながら締める。


「皆さん、今日は四日市に来てくれてありがとうございました。工場夜景も、コンビナートも、商店街も、食べ物も、全部四日市です。また来てください。ほんで、できれば昼の四日市も見ていってください」


船内には大きな拍手が起きた。


四日市の夜景は、ただ美しいだけではない。


そこには働く人の誇りがあり、産業の歴史があり、乗り越えてきた痛みがあり、前へ進む街の力があった。


その光の中で、山本あかりは確かに地元ヒロインとして立っていた。


ただし、船を降りた後、美月はまだ言っていた。


「ほんま、四日市に“ひのとり”停めてほしいわぁ」


たつをのフリップ。


四日市停車運動


あかりは最後まで困り顔だった。


「それだけは、私に言わんといてください」

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