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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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1015/1021

モータースポーツ聖地に女王激怒――麗奈と美里、ホームストレートを制圧する

鈴鹿ものづくりフェスは大成功だった。


巨大書道チャレンジでは真央、ひかり、みのり、澪、そして意外にも麗奈が達筆ぶりを披露し、美月は雑な字でたつをに酷評されて大騒ぎ。抹茶スイーツPRでは真央の食レポが光り、工場安全確認ゲームでは真白がトラックドライバー目線で本気解説を行った。


イベントは無事終了。


控室には、鈴鹿抹茶スイーツと冷たい飲み物が並び、ヒロ室東海(仮称)の面々はようやく一息ついていた。


美月は椅子にもたれながら言った。


「鈴鹿、ええ街やなぁ。サーキットだけやと思ってたら、墨も工場もスイーツもあるやん」


真央が頷く。


「ものづくりの街だがね」


澪は抹茶菓子を食べて、ぼそっと言った。


「甘い」


たつをはフリップを出す。


帰りたい


美月が突っ込む。


「お前、呼ばれてへんのに来たんやろ。最後までおれ」


その時、麗奈のスマホが震えた。


続けて、美里のスマホも鳴る。


二人は画面を見た瞬間、顔つきが変わった。


麗奈の声が低くなる。


「……サーキット?」


美里も表情を引き締める。


「関係者エリアで、不審人物が出入りしているそうです。機材搬入口付近にも怪しい動きがあると」


空気が一変した。


鈴鹿の世界的に有名なサーキットは、日本のモータースポーツ文化を象徴する聖地である。国際レース、二輪レース、メーカーイベント、ファン感謝祭、安全運転講習。数え切れないほどの熱狂と技術と努力が積み重なってきた場所だった。


そこは、麗奈と美里にとっても特別な場所だった。


イベントコンパニオンとして何十回も訪れ、ピット裏も、控室も、メディアセンターも、搬入口も、関係者通路も知っている。巨大な施設でありながら、二人にとっては庭のようなものだった。


麗奈は立ち上がった。


普段の高飛車で涼しい表情は消えていた。


「私のホームを荒らしてる奴がいるのね」


美月が思わず呟く。


「こんな麗奈さん見たん初めてや……」


麗奈は怒っていた。


本気で怒っていた。


美里も静かに立ち上がる。


「行きましょう。あそこは、私たちの現場です」


ヒロ室東海(仮称)はすぐに動いた。


美月、真央、あかり、真白、美音、ひかり、みのり、澪、麗奈、美里。


そして当然のように、たつを。


美月が睨む。


「なんで来るねん」


たつを。


呼ばれてないけど行く


「知っとるわ!」


サーキットへ到着すると、麗奈と美里の動きは明らかに違った。


麗奈が迷いなく指示する。


「こっち。正面から行くと遠い。関係者通路を抜ける」


美里も即座に続ける。


「この時間なら搬入口側が空いています。ピット裏へ回れます」


みのりが感心する。


「完全に地図が頭に入っていますね」


麗奈は短く返す。


「当たり前よ」


その一言に、ホームを知り尽くした者の自信があった。


不審人物たち――ジェネラス・リンクの工作員は、計測機器と広報映像データを狙っていた。高価な機材だけではない。サーキットで積み上げられた技術情報や映像素材を盗み出そうとしていたのだ。


麗奈の怒りは頂点に達した。


「ふざけないで」


その声を聞いて、美月が一歩引いた。


「ほんまに怒ってる……」


工作員が機材ケースを持って走り出す。


まず飛び出したのは美月だった。


「河内のスピーカー、出番や!」


派手なステップで通路へ飛び込み、わざと目立つ動きで工作員の注意を引く。観客や関係者には、特別アクションショーのように見える。


「こっちやで!」


工作員が反応した瞬間、麗奈が横から入った。


長い脚が伸びる。


まるでホームストレートを切り裂くレーシングマシンのような動きだった。


膝を高く上げ、長い脚を大きく振り抜く。相手の手首を蹴り上げ、機材ケースを落とさせる。さらに長い腕で相手の襟元を捕まえ、流れるように体勢を崩す。


見た目はモデル。


動きは猛獣。


あまりにも大袈裟で、あまりにも派手だった。


美月が叫ぶ。


「麗奈さん、脚長すぎて攻撃範囲おかしいやろ!」


麗奈は冷たく言う。


「邪魔」


その一言だけで、さらに一人を薙ぎ払う。


美里も続く。


華やかな笑顔の裏に、しなやかな強さがあった。サーキットで培った導線感覚を活かし、相手の逃げ道に先回りする。


「そちらは関係者出口です。通れません」


柔らかい口調なのに、動きは鋭い。


美里が相手の腕を受け流し、麗奈が長い脚で進路を遮る。二人の連携は完璧だった。


「美里、右」


「はい!」


短いやり取りだけで十分だった。


グレースフォースのひかりとみのりも参戦する。


ひかりが穏やかに言う。


「みのりさん、左をお願いします」


みのりが即答する。


「任せて」


二人の動きは、愛の力と言っていいほど噛み合っていた。片方が相手を誘導し、片方が退路を塞ぐ。見つめ合う時間すら作りながら、敵を徹底的に排除していく。


美月が呆れる。


「戦闘中にラブラブすな!」


あかりは四日市の突貫娘らしく、真正面から突っ込んだ。


「どいたらんかい!」


勢いだけに見えて、ちゃんと相手の動きを読んでいる。肩から入るように距離を詰め、相手を壁際へ追い込む。


「鈴鹿で好き勝手したらあかんのやに!」


一方、澪は相変わらずぼーっとしていた。


工作員が通路を曲がる。


そこに澪。


「こっち通れないよ」


別の通路へ逃げる。


また澪。


「向こうも多分無理」


工作員が叫ぶ。


「なんで先にいるんだ!」


澪は首を傾げる。


「近道」


美月が小声で言う。


「澪が一番怖いかもしれん」


広いサーキットでは、美音と真白が大活躍した。


美音は大型二輪で外周を走る。


エンジン音が夕方のサーキットに響く。広い敷地を縦横に駆け抜け、逃走ルートを次々に潰していく。


「外側は私が見る!」


真白はカンガルーマークのトラックで搬入口側へ回った。


「物流導線を押さえます」


トラックが静かに、しかし確実に退路を塞ぐ。


真白は無線で告げる。


「搬出口、封鎖完了。荷物の持ち出しはできません」


美月が感心する。


「真白、渋すぎるやろ!」


そして、なぜかたつをも活躍した。


工作員が観客席側へ逃げようとした瞬間、たつをがフリップを出す。


そっち行った


あかりが反応する。


「助かった!」


次のフリップ。


止まれ


工作員は無視する。


さらにフリップ。


止まらないと麗奈が来る


工作員が一瞬止まる。


麗奈が来た。


「呼んだ?」


工作員は即座に制圧された。


美月が腹を抱える。


「たつを、脅し文句として麗奈さん使うな!」


たつを。


効果あり


実際、効果はあった。


クライマックスはホームストレート付近だった。


最後の工作員が、機材データの入ったケースを抱えて逃げる。


麗奈と美里が並ぶ。


夕陽を背に、二人はホームストレートへ踏み出した。


麗奈が長い腕を広げる。


「ここは、私たちの場所よ」


美里が静かに続ける。


「勝手なことはさせません」


工作員が強引に突破しようとする。


美月が横から飛び込み、派手な動きで相手の視線を奪う。


あかりが正面から圧をかける。


ひかりとみのりが左右を封じる。


美音の大型二輪が外周側に止まり、真白のトラックが搬出口を塞ぐ。


澪は後ろで、


「戻る道もないよ」


とだけ言った。


完全包囲。


最後は麗奈と美里だった。


麗奈の長い脚が大きく弧を描き、相手の進路を断つ。美里が反対側から入って腕を押さえる。麗奈が一歩踏み込み、長い腕でケースを奪い返す。


あまりに派手で、美しい制圧だった。


美月が思わず拍手する。


「これは見せ場持っていかれたわ」


麗奈は息を整え、静かに言った。


「当然でしょ。ここはホームだから」


任務完了。


計測機器も映像データも守られた。


サーキットの平和は保たれた。


夕暮れ。


静かになったホームストレートに、ヒロ室東海(仮称)の面々が立っていた。


麗奈はコースを見つめる。


美里も隣に立つ。


何十回も訪れた場所。

笑顔で立った場所。

カメラの前でポーズを決めた場所。

歓声を聞いた場所。


そこを守れた。


そのことが、二人には深く沁みていた。


美月がぽつりと言う。


「麗奈さん、美里さん、今日はほんまに格好良かったで」


麗奈は少しだけ笑った。


「当たり前よ」


美里は柔らかく微笑む。


「でも、嬉しいですね」


たつをが最後にフリップを出す。


今日のMVPは僕


全員が一斉に言った。


「違う!」


夕陽がコースを染めていく。


そこに、エンジン音はない。


だが、確かに走り抜けた者たちの熱が残っていた。


モータースポーツ聖地を守ったヒロ室東海(仮称)。

その中心には、ホームを知り尽くした二人の女王がいた。


クールに見えて、誰よりも熱い女。

華やかに笑って、誰よりも現場を知る女。


麗奈と美里。


この日、二人はイベントコンパニオンではなかった。


サーキットを守る、誇り高き守護者だったのである。

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