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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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1013/1066

津ぎょうざ大作戦――県都であかり、四日市愛をいったん封印する

三重県での地盤拡大を目論むヒロ室東海(仮称)は、ついに県都・津市へやってきた。


津市。


一文字で「つ」。

日本一短い発音の都市名として知られ、名前のインパクトだけでも強い。しかも県庁所在地であり、三重県の行政、文化、教育の中心でもある。古くは港町として栄え、城下町としての歴史も持ち、伊勢湾に面した穏やかな街並みと、県都らしい落ち着きが同居している。


四日市のような工業都市の迫力、伊勢志摩のような観光地の華やかさとはまた違う。津には、三重県全体を静かに支える芯の強さがあった。


そんな津市の商店街広場で、ヒロ室東海(仮称)は地元食品メーカーと商店街のタイアップ企画を開催することになった。


テーマはもちろん、津ぎょうざ。


大きな皮で具を包み、油でカラッと揚げた、津市らしい迫力ある名物である。学校給食から広がったと言われる親しみやすいご当地グルメで、子どもにも大人にも分かりやすく、イベント映えも抜群だった。


参加メンバーは、美月、真央、あかり、真白、美音、ひかり、澪、みのり、麗奈、美里。


そして、なぜかたつをもいた。


美月は開始前、たつをを見つけてすぐに言った。


「たつを、呼ばれた?」


たつをはフリップを出した。


呼ばれてないけど来た


美月。


「堂々と言うなや!」


たつを、次のフリップ。


津ぎょうざ食べに来た


真央が腹を抱える。


「目的がはっきりしとるがね!」


あかりも笑う。


「まあ、津ぎょうざ食べたい気持ちは分かるわ」


イベントはまず、地元食品メーカーの担当者による津ぎょうざ紹介から始まった。


大きな皮。

たっぷりの具。

揚げた時の香ばしさ。

給食発祥の親しみやすさ。

そして、津市民にとっての懐かしさ。


美月は感心していた。


「これ、見た目からして強いな。普通のぎょうざよりイベント向きやん」


真央も頷く。


「大きいものは盛り上がるでよ」


第一企画は、ヒロイン津ぎょうざ作り対決。


美月チームは、美月、真白、澪。

真央チームは、真央、ひかり、美音。

あかりは地元三重代表として解説と応援に回る。


料理が始まると、すぐに真央の独壇場になった。


「まず皮の中心に具を置くでよ。入れすぎたら閉じられんし、少なすぎたら津ぎょうざらしさが出ん。ここが勝負だがね」


手が速い。

説明も止まらない。

しかも作業は正確。


「揚げる時は中の空気も考えなあかんでよ。閉じ方が甘いと油の中で開くんだわ。味噌カツもそうだけど、料理は段取りだがね」


ひかりが感心する。


「真央ちゃん、本当に料理上手ですね」


美音も笑う。


「また真央のおしゃべりクッキング始まった」


一方、美月チーム。


美月は対抗してしゃべろうとする。


「ほなウチも津ぎょうざの魅力をな――」


手が止まる。


真白が即座に言う。


「美月さん、包んでください」


「あ、せやった」


澪は具を見つめている。


「多い方が嬉しい」


そして、明らかに包めない量を皮に乗せる。


真白が止める。


「閉じません」


澪。


「夢はある」


美月。


「ぎょうざに夢詰めすぎや」


そこへ、たつをが近づく。


フリップ。


手が止まってる


美月。


「またお前か!」


たつを。


真央は動いてる


美月。


「比較すな!」


たつを。


澪は入れすぎ


澪。


「ばれた」


美月がたつをに詰め寄る。


「お前、津ぎょうざ食べに来たんちゃうんか。なんで審査員みたいになっとんねん」


たつを。


見守り隊


「邪魔し隊やろ!」


観客は大爆笑だった。


第二企画は、津ぎょうざ早包み選手権。


制限時間内にどれだけきれいに津ぎょうざを包めるかを競う。


真央は相変わらず速い。


「こうやって端を押さえて、空気抜いて、形整えて、はい次!」


ひかりも丁寧に続き、美音も器用にこなす。


美月は勢いで包むが、たつをのフリップにいちいち反応するせいで遅れる。


たつを。


美月、遅い


「うるさい!」


たつを。


口は速い


「やかましいわ!」


たつを。


手は遅い


「二段構えで来るな!」


真白は無言で美月の分まで包み始める。


「美月さん、反論しないで作業してください」


美月は悔しそうに言う。


「たつをが邪魔なんや!」


たつを。


責任転嫁


観客はまた爆笑。


あかりは腹を抱えて笑っていたが、司会から津市と四日市について聞かれると、急に真面目な顔になった。


「四日市は工業で強い街やし、津は県都として三重全体を支えとる街やに。どっちが上とかやなくて、それぞれ役割が違うんさ」


美月がにやっとする。


「ほんまか? 四日市愛が漏れてるで」


あかりは首を振る。


「そんなんちゃうわ。三重県人は温厚やし、争いごとは好まんの。津も四日市もええとこやし、仲良しなんやに」


真央が笑う。


「きれいにまとめたがね」


たつをがフリップを出す。


三重県人は平和


あかりが満足げに頷く。


「そうや。それでええ」


たつを、次のフリップ。


でも目は四日市


あかり。


「そこ余計や!」


会場がどっと沸いた。


試食タイムでは、津ぎょうざが次々と揚げられた。


外はカリッと香ばしく、中は熱々。大きなサイズなので、一つ食べるだけでも満足感がある。


美月がかじって目を見開く。


「うまっ! これ、給食で出たらテンション上がるやつやん」


真央も頷く。


「大きさが正義だがね」


真白は冷静に言う。


「揚げ物としての安定感があります。持ち帰り販売にも向いていますね」


澪は一口食べて、ぼそっと言う。


「大きいぎょうざは、心が広い」


美月。


「何やその感想」


ひかりは穏やかに微笑む。


「でも分かる気がします」


結果は、料理の完成度で真央チームの圧勝。


美月チームは、たつをへの反論で時間を失いすぎた。


美月は悔しそうに言う。


「たつをが邪魔せんかったら勝ってたわ」


たつを。


たぶん負け


「言い切るな!」


優勝賞品は、地元食品メーカー提供の津ぎょうざ詰め合わせセット。


真央は嬉しそうだった。


「これは家で食べるでよ」


美月は最後にマイクを握った。


「皆さん、今日はありがとうございました! 津ぎょうざ、めっちゃ美味しいです! 地元商店街でも販売してますので、ぜひ食べて帰ってください!」


ここまではまともだった。


だが、もちろんそれだけでは終わらない。


「そして、戦隊ヒロイングッズもよろしくお願いします〜! 津ぎょうざ食べたあとは、アクスタ、タオル、缶バッジもぜひ!」


真央が呆れる。


「最後はやっぱり営業だがね」


美月は胸を張る。


「地域振興とグッズ販売は両立できるんや」


たつをがフリップを出す。


津ぎょうざもグッズも買って


美月。


「珍しくええ宣伝やん」


たつを、次のフリップ。


僕のグッズも


美月。


「それはまだない!」


津市イベントは、クエストなし、純粋な地域PRイベントとして大成功に終わった。


県都・津の落ち着き。

津ぎょうざの迫力。

あかりの三重愛。

真央の料理力。

美月とたつをの口げんか。


ヒロ室東海(仮称)は、三重県の中心でもしっかり笑いと地盤を作った。


そしてあかりは最後に、少し誇らしげに言った。


「津も四日市も、三重は全部ええとこなんやに」


たつをのフリップ。


平和


今回は、誰も突っ込まなかった。

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