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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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鳥羽パール・クエスト――たつを、真珠を買わされかける

志摩のスペイン風テーマパークでの一件を終えた翌日、ヒロ室東海(仮称)の一行は鳥羽市へ向かった。


鳥羽市は、三重県の魅力がぎゅっと詰まった港町である。


海がある。

島々がある。

真珠がある。

海女文化がある。

水族館がある。

海産物がある。


そして、芸名がそのまま地名になっているかのような有名演歌歌手の出身地でもある。


「兄弟船は〜親父の形見〜♪」


美月がバスの中で妙にこぶしを利かせて歌うと、真央が笑った。


「美月さん、朝から濃いでかんわ」


あかりは窓の外の海を見ながら言う。


「鳥羽はええとこやで。海の匂いがちゃんとする」


前日のテーマパーク騒動で疲れているはずなのに、一行は妙に元気だった。


参加メンバーは、前日と同じく美月、真央、あかり、真白、美音、ひかり、澪、みのり、美里、麗奈。


そして当然のように、たつをもいた。


美月がたつをを見つけて言う。


「たつを、またおるんか」


たつをはフリップを出す。


海が呼んだ


真央が即座に突っ込む。


「誰も呼んどらんがね!」


たつを、次のフリップ。


潮の香り


美月。


「何を詩的に言うてんねん」


最初のイベント会場は、鳥羽市内の大型水族館だった。


水族館のステージには、家族連れ、観光客、地元ファンが集まっていた。鳥羽の海の生き物を学びつつ、ヒロ室東海(仮称)のメンバーがトークをするという企画である。


美月は開口一番、たつをを指さした。


「水族館の皆さん、こいつも展示しませんか?」


たつをは胸を張る。


フリップ。


展示可


水族館スタッフはにこやかに答えた。


「タツノオトシゴはもう展示していますので、大丈夫です」


会場爆笑。


たつをはゆっくりフリップを出した。


不採用


真央が腹を抱える。


「そりゃそうだがね! 本物がもうおるんだわ!」


美月がさらに畳みかける。


「でもこいつ、フリップ出せますよ?」


スタッフは真顔で言った。


「展示生物には不要な機能です」


たつを。


機能過多


真央。


「自分で言うんかい!」


水族館ステージは、そこから完全にたつをいじりで温まった。


真白はバックヤードの物流目線で、餌や展示設備の搬入について語る。


「水族館も展示だけではありません。餌、海水、機材、清掃用具。裏側の物流があって初めて成り立ちます」


美音は海の乗り物や港との関係を語り、ひかりは海の環境保全について穏やかにまとめる。


澪は水槽を見て、ぼそっと言う。


「魚、泳いでるね」


美月が突っ込む。


「そら泳ぐやろ!」


たつをのフリップ。


魚なので


「お前も乗るな!」


水族館ステージは、ゆるく、楽しく、そして妙に勉強になるイベントとして盛況だった。


続いて一行は、地元のアコヤ貝養殖業者とのタイアップによる真珠イベントへ向かった。


会場は海の見える特設ステージ。


アコヤ貝の養殖、真珠の核入れ、海の環境管理、筏での作業、そして真珠ができるまでの長い時間を紹介する企画である。


養殖業者の説明に、ひかりは静かに頷く。


「真珠は、海と人の手間が作るものなんですね」


みのりも真面目にメモを取る。


「時間の積み重ねが価値になる、ということですね」


真白は搬出入の箱を見ている。


「保管と輸送も大切ですね。傷がついたら価値が変わります」


美月は展示されている真珠のネックレスを見て、目を輝かせた。


「うわ、綺麗やなぁ」


そして、たつをを見る。


「たつを、真珠のネックレス買って〜」


たつをは即フリップ。


無理


美月。


「即答すな!」


たつを。


予算なし


真央が笑う。


「たつをもヒロ室東海みたいな財政状況だがね」


あかりも乗ってくる。


「たつを、頑張って買うたれや。美月さん、意外と似合うかもしれへんで」


たつをは少し間を置いてフリップを出した。


真珠が似合う女性になったら考えてもいい


会場がどっと沸く。


美月が叫ぶ。


「やかましいわ〜!」


あかりは腹を抱える。


「たつを、よう言うた!」


美月があかりを睨む。


「あかり、笑いすぎや!」


あかりはまだ笑っている。


「いや、これはたつをの勝ちやわ」


たつを、さらにフリップ。


勝利


美月。


「勝手に勝つな!」


真珠イベントは笑いに包まれていた。


だが、その裏でクエストが発生する。


養殖業者の一人が、隼人補佐官へ慌てて駆け寄った。


「展示用の特別真珠がありません」


その真珠は、今回のイベントの目玉だった。


鳥羽の海で育った大粒の真珠。

名付けて、月雫の真珠。


金銭的価値もあるが、それ以上に地元養殖業者の誇りを象徴する展示品だった。イベント最後に一般客へ披露する予定だったが、保管ケースごと消えていた。


盗難か。

紛失か。


ここで騒げばイベントは台無しになる。


美月は表情を引き締めた。


「またかいな。けど、楽しい空気は壊したらあかん」


あかりも頷く。


「一般客に気付かれんように探すで」


真央はステージ側に立つ。


「じゃあ、表は私と美月さんで繋ぐでよ」


美月がマイクを握る。


「皆さん、ここからは特別企画、真珠探しクイズショーやで〜!」


客席は歓声を上げる。


裏では、全員が動き出した。


あかりはNST仕込みで周囲の人の動きを確認する。


美音は港や養殖筏へ続く動線を見る。


「持ち出すなら海側か、搬入口側だね」


真白は保管ケースと搬入箱を確認する。


「箱の移動履歴がおかしいです。海産物の保冷箱がひとつ、予定外に動いています」


みのりは証言を整理する。


「最後に見たスタッフ、箱を動かした業者、通路を通った客。時間がずれています」


ひかりは一般客を自然に別エリアへ誘導する。


「こちらでは真珠の選び方を紹介しています。どうぞご覧ください」


澪は水槽の前でぼーっとしていたが、突然言った。


「真珠、魚の匂いがする方にあるかも」


美月が聞き返す。


「澪、なんで?」


「帰りたそうだった」


美月は額を押さえる。


「また気持ち系かい」


たつをのフリップ。


真珠の気持ち


「お前も乗るな!」


しかし、半信半疑で海産物用の保冷箱を確認すると、保冷材の下にケースがあった。


月雫の真珠だった。


「ほんまにあった!」


たつをのフリップ。


発見


澪は静かに頷く。


「魚の匂い、した」


そこへ、ケースを紛れ込ませた小悪党が逃げようとする。転売目的でイベントに紛れ込んでいた人物だった。


美音が海側の退路を塞ぐ。


「そっちは行けないよ」


あかりが正面から詰める。


「鳥羽の真珠に手ぇ出すとは、ええ度胸やな」


真白は保管ケースを安全な場所へ運び、ひかりは観客の視線をステージへ向ける。


美月は派手に動いた。


「さあ皆さん、ここからは真珠を守れ! 鳥羽パールショーや!」


観客はショーだと思って拍手。


たつをもフリップで参戦する。


盗むな


次。


買え


次。


美月も買え


美月が叫ぶ。


「なんでウチまで巻き込むねん!」


この緩いフリップ芸の隙に、あかりと美音が小悪党を取り押さえた。


クエストは無事解決。


イベント最後、月雫の真珠は予定通り披露された。


養殖業者は少し涙ぐんでいた。


「これは鳥羽の海が育てた宝です。守ってくださって、本当にありがとうございました」


ひかりが静かに言う。


「真珠は、海と人の時間が作るものなんですね」


美月も珍しく真面目に頷いた。


「鳥羽、ええとこやな。海も人も強いわ」


だが、最後はやはり美月だった。


マイクを握り、満面の笑みで言う。


「皆さん、本日はありがとうございました! 真珠も素敵ですけど、出口では戦隊ヒロイングッズも販売しています〜! 真珠よりはお求めやすいので、ぜひお願いします〜!」


たつをのフリップ。


真珠より安い


美月。


「売り文句としては正しいけど雑や!」


会場は最後まで笑いに包まれた。


鳥羽の海、水族館、真珠、海女文化、海産物、そしてたつを。


三重県の魅力がぎっしり詰まった一日は、ヒロ室東海(仮称)にとって、またひとつ大きな成功となった。

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