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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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1011/1021

迷宮の王国を守れ――あかりと美音、スタンプラリー裏導線を走る

三重県南部のスペイン風テーマパークで行われたヒロ室東海(仮称)のイベントは、午前の時点では完全にお祭りだった。


美月はフラメンコに河内音頭を混ぜ、スペイン人パフォーマーを爆笑させながら「情熱は本物」と認めさせた。真央は巨大パエリア対決で、しゃべりながらも手が止まらない「真央のおしゃべりクッキング」を披露し、巻き髪チームを圧勝に導いた。澪は試食だけして「真央チームは料理、美月チームは思い出」と鋭すぎる一言を残し、たつをは呼ばれていないはずなのにフリップ芸で美月の集中力を削った。


ちなみに、たつをは完全に「呼ばれていないのにいる」扱いになっていたが、実際には隼人補佐官がテーマパーク側との調整でこっそりねじ込んだゆるキャラである。


ただし今後も公式設定上は、


「誰も呼んでいないのにいる」


ということにされる。


美月いわく、


「その方がおもろい」


である。


午後のメイン企画は、スペイン式迷路スタンプラリーだった。


園内のスペイン風の街並みを巡り、各ポイントでスタンプを集める。景品は本当に豪華だった。テーマパーク年間パスポート、志摩の高級リゾート宿泊券、地元海産物セット、スペイン料理ディナー券、そしてヒロ室東海限定グッズの豪華詰め合わせ。


当然、客の期待も高い。


だが、スタート直前、スタッフから隼人補佐官へ緊急連絡が入る。


「景品保管エリア周辺で、不審な外国人グループが確認されています」


調べると、彼らは一般客に紛れた外国人窃盗団だった。狙いはスタンプラリーの豪華賞品。人が少なめでゆったりしているテーマパークの空気に紛れ、景品を持ち出すつもりらしい。


美月は顔をしかめた。


「せっかくええ雰囲気やのに、水差すなや」


真央も頷く。


「楽しいイベントを壊したらかんでよ」


そこで前に出たのが、四日市の突貫娘・山本あかりだった。


普段は勢い任せに見えるが、彼女はNSTメンバーである。隠密活動の経験もあり、ここは一般客に気づかれないよう動く必要があると瞬時に判断した。


あかりは腕を組み、いつもより低めの声で言った。


「全員、一般客には気付かれんように動くで。イベントの一環に見せかけて包囲する。派手に騒いだら負けや」


美月がすぐ不服そうな顔になる。


「なんでウチがあかりに仕切られるねん」


あかりは胸を張る。


「今はウチが現場指揮や。彩香さんの真似や」


「真似事かいな」


「真似でも役に立てばええんや」


美月はまだ納得していなかったが、任務となれば話は別だった。


「しゃあないな。今回だけ従ったるわ」


真央が笑う。


「美月さん、意外と切り替え早いだがね」


あかりは次々に指示を出す。


美音には裏導線の確認。彼女はサポートメンバーとしての経験があり、移動経路や逃走ルートを見る力がある。


真白には搬入口と景品保管エリア周辺の導線確認。物流に強い彼女は、物が動くルートを読むのがうまい。


ひかりには一般客の誘導。穏やかな声と雰囲気で、混乱を起こさず人の流れを変えられる。


みのりには全体状況の分析。


美月には、目立つ動きで観客の視線を引きつけ、アクションを「ショー」に見せる役。


澪には、退路を塞ぐ役。


そして、あかりはたつをにも指示を出した。


「あんたは広場でフリップ芸して、客の視線を集めといて」


たつをはフリップを掲げる。


了解


美月が吹き出す。


「たつを、普通に指示受けるな!」


たつを、続けてフリップ。


任務参加


美月が即座に突っ込む。


「呼ばれてへん設定やろ!」


たつを。


でも働く


「そこは偉いな!」


作戦が始まった。


窃盗団は、スタンプラリー客のふりをしていた。だが行動はかなり怪しい。地図を見ているふりをしながら景品保管エリアに近づき、裏口らしき通路を探している。しかもテーマパークのスペイン風の街並みが似ているせいで、本人たちも少し迷っていた。


美音は素早く園内の裏導線を把握した。


「景品を持って逃げるなら、搬入口から外周通路。けど、その手前はスタッフ用ゲートが二つ。片方はイベント機材で塞がってる」


真白が頷く。


「もう一方は荷物搬入用ですが、車両が入れない時間帯です。徒歩なら通れますが、荷物を持つと遅くなります」


みのりが冷静に加える。


「相手は計画が甘いです。逃走ルートを複数確保していない」


あかりはにやりと笑った。


「ほな、潰せるな」


表では、あくまでイベントが続いていた。


ひかりが一般客を柔らかく誘導する。


「こちらで特別パフォーマンスが始まります。皆さん、広場の方へどうぞ」


たつをは広場でフリップ芸を始める。


ただいま特別ショー中


拍手。


あっちを見るな


笑い。


こっちを見て


子どもたちが大喜び。


さらに、


景品は守ります


美月が慌てて叫ぶ。


「それは出すな!」


たつを。


間違えた


観客は、それも含めて演出だと思って笑っている。


窃盗団の一人が景品保管エリアへ近づく。そこへ澪が立っていた。


「こっち通れないよ〜」


声はゆるい。

だが位置取りは完璧だった。


窃盗団は別の通路へ回る。


そこにも澪。


「そこも通れないよ〜」


美月が小声で言う。


「澪、なんで毎回先回りできるん?」


澪は首を傾げる。


「近道しただけ」


それが一番怖い。


美音が別の一人を裏導線へ追い込む。通路の角であかりが待っていた。


「ここまでや!」


あかりは彩香を真似たつもりで、妙に低い声を出す。だが少し大げさで、ポーズが決まりすぎていた。


美月が横から言う。


「彩香はそんな舞台役者みたいに出てこないで」


「うるさい! 今ええとこや!」


窃盗団が走って逃げようとする。


ここで美月が飛び込む。


午前中に披露した河内フラメンコのステップを応用し、衣装の裾を翻しながら相手の前へ躍り出る。


「イヤコラサー!」


フラメンコなのか、河内音頭なのか、戦闘なのか、誰にも分からない。


だが派手だった。


観客は大歓声。


「すごい! これもショー?」


「美月ちゃん、キレキレ!」


「スペイン村の本気すごい!」


そこへ、たつをまでアクションに参加した。


窃盗団の前に立ちはだかり、フリップを掲げる。


止まれ


窃盗団は無視しようとする。


たつをは次のフリップを出す。


止まらないと恥ずかしい


窃盗団が一瞬戸惑う。


さらにフリップ。


観客見てる


窃盗団が固まる。


美月がその隙を見逃さない。


「たつを、ナイスや!」


あかりと美音が左右から押さえ、真白が景品箱を安全な場所へ移動する。ひかりは一般客を別エリアへ自然に流し、みのりは残りの窃盗団の動きを読み切る。


最後の一人が裏口へ走る。


その先に澪。


「やっぱり、こっち通れないよ〜」


完全に締まった。


外国人窃盗団は排除され、豪華賞品も無事に戻った。


しかも一般客には、ほとんど本当のことは伝わっていない。全員、ヒロ室東海の特別アクションショーだと思い込んでいる。


美月はあとで映像を見て大満足だった。


「ウチ、めっちゃ派手に決まってるやん。たつをも意外と使えるな」


たつをはフリップを出す。


相棒?


「そこまでは言うてへん」


その後、スペイン式迷路スタンプラリーは予定通り開催された。


一般客は楽しそうにスタンプを集め、園内を巡り、パフォーマーと写真を撮り、最後には優勝者が決まった。


賞品は本当に豪華だった。


テーマパーク年間パスポート、志摩の高級リゾート宿泊券、地元海産物セット、スペイン料理ディナー券、ヒロ室東海限定グッズ一式。


それらは、美月と真央から優勝者へ手渡された。


美月が笑顔で言う。


「おめでとうございます! いやぁ、無事に渡せてほんまよかったわ」


真央が慌てて小声で言う。


「美月さん、それ以上言ったらかんでよ」


優勝者は感激していた。


「まさかこんな豪華な賞品がもらえるとは思いませんでした!」


会場は拍手に包まれる。


イベント終了後、テーマパーク関係者はヒロ室東海(仮称)を大絶賛した。


「皆さん、本当に凄かったです。お客様に不安を与えず、イベントとして成立させたまま解決してくださった」


午前中に美月の河内フラメンコを絶賛したスペイン人フラメンコダンサーも、笑顔で親指を立てる。


「情熱も、動きも、すごかったです。今日のショーは忘れません」


美月はご満悦だった。


「ほら見てみい。河内フラメンコ、世界に通用するやん」


あかりは胸を張る。


「まあ、今回はウチの指示も良かったやろ」


美月はすぐに言う。


「彩香の真似事やけどな」


「それ言うな!」


美音は笑いながら言った。


「でも、あかりちゃんの判断は早かったよ。裏導線を使う判断もよかった」


あかりは少し照れる。


「まあな」


たつをがフリップを出す。


活躍しました


美月が笑う。


「今回は認めたる」


たつを。


正規メンバー?


「ちゃう」


澪がぼそっと言う。


「準レギュラー」


たつを。


昇格


「勝手に昇格すな!」


こうして、志摩のゆるいスペイン風テーマパークでのイベントは、笑いと隠密任務と豪華賞品の無事返還で幕を閉じた。


報告書には、こう記された。


「たつをは誰も呼んでいない設定だが、隼人補佐官による事前調整あり。ただし演出的価値が高いため、引き続き“呼ばれていない”扱いとする」


ヒロ室東海(仮称)は、三重でも確かな爪痕を残した。


そして美月は最後に、こう言った。


「次も特急しまかぜで来たいなぁ」


結局そこだった。

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