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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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1004/1025

紙の街で早巻きせよ――春日井、ツインテール対巻き髪のトイレットペーパー決戦

愛知県春日井市。


名古屋の北東に位置し、住宅地としての暮らしやすさ、交通の便利さ、そしてものづくりの力を併せ持つ街である。サボテンの街としても知られ、地味に見えて実は個性が強い。派手に前へ出る名古屋とは違い、春日井は生活の足腰がしっかりした街だった。


その春日井市のイベント広場に、ヒロ室東海(仮称)がやってきた。


今回の主役は山田真央。


真央の父が勤める、国内最大手級の製紙会社の大きな工場が全面協力してくれることになった。春日井の産業を支え、紙を通じて暮らし、物流、教育、衛生、文化まで支えてきた地元の誇りである。


真央は朝から気合十分だった。


「春日井はサボテンだけじゃにゃあで! 紙も強いんだわ!」


美月は横で腕を組む。


「ええやん。紙でイベントって、地味そうで逆におもろいな」


隼人補佐官は丁寧に言う。


「地味ではありません。紙は生活基盤そのものです。今回は地域産業を楽しく伝える良い機会です」


だが、美月と真央がいる以上、真面目なイベントだけで終わるはずがなかった。


イベント名は、


春日井ペーパー大運動会


である。


チーム分けはなぜか髪型だった。


美月チームは、ツインテールチーム。


赤嶺美月、山本あかり、伊吹真白。


全員ツインテール姿で登場した。


美月はノリノリである。


「どうや! 河内のツインテールや!」


あかりも妙に似合っていた。


「勝てばええんやろ! 髪型なんか関係あらへん!」


真白だけは無表情だった。


「なぜ私までツインテールなんですか」


美月が即答する。


「チーム感や」


「納得できません」


一方、真央チームは、巻き髪チーム。


山田真央、杉山ひかり、稲生明日香。


全員巻き髪で登場した。


真央は堂々としている。


「春日井の巻き髪、見せたるでよ!」


ひかりは少し照れながらも上品だった。


「巻き髪、思ったより落ち着かないですね」


明日香は静かに髪を触る。


「暑いだら」


第一種目は、トイレットペーパー早巻き選手権。


長く伸ばしたトイレットペーパーを、どれだけ速く、どれだけ綺麗に巻き戻せるかを競う。くだらない。だが、観客はなぜか真剣に見ている。


号砲と同時に、美月は猛烈な勢いで巻き始めた。


「いける! これ勝てる!」


しかし勢いが強すぎて紙が切れた。


「ああっ!」


あかりは力任せに回しすぎて、芯が飛んだ。


「なんで飛ぶねん!」


真白は几帳面に巻きすぎて遅い。


「美しく巻くべきです」


美月が叫ぶ。


「今は速さや!」


対する真央チームは堅実だった。


ひかりが丁寧に紙を送り、明日香が角度を整え、真央が最後に勢いよく仕上げる。


「これが春日井の紙さばきだで!」


第一種目は巻き髪チームの勝利。


第二種目は、紙飛行機・春日井横断チャレンジ。


紙飛行機を作り、イベント広場の的へ向けて飛ばす。


美月の紙飛行機は勢いだけはあったが、まさかの横方向へ飛んだ。


「なんでや!」


あかりの紙飛行機は、力強く飛んだが途中で急降下して地面に刺さった。


「飛行機ちゃう、槍やんけ!」


真白の紙飛行機は一番美しい軌道を描いたが、惜しくも的を外れた。


「風を読み違えました」


一方、真央チームはまた強い。


明日香が理詰めで折る。


「翼の角度はこれくらいだら」


ひかりが風を読む。


「少し右から来ています」


真央が投げる。


「いけだわ!」


見事に高得点。


美月は悔しそうに言う。


「なんか普通に強いやん」


第三種目は、新聞紙かぶと高速制作対決。


子ども向けのはずだったが、全員が本気になった。


美月は「河内武将かぶと」を作ろうとして謎の三角帽子を完成させた。


あかりは巨大すぎる兜を作り、頭に乗せた瞬間に前が見えなくなった。


真白は折り目が完璧すぎたが時間切れ。


真央チームは、ひかりが丁寧に折り、明日香が修正し、真央が観客へアピールして得点を稼いだ。


結果。


巻き髪チームの勝利。


優勝賞品はない。


なぜなら、ヒロ室東海(仮称)はまだ予算不足だからである。


美月が不満げに言う。


「勝っても賞品なしってどういうことやねん」


隼人補佐官は丁寧に説明する。


「今回は予算の都合で、賞品ではなく名誉のみです」


「名誉で帰りの特急が良くなるんか?」


「なりません」


その代わり、敗者には罰ゲームがあった。


ツインテールチームは、春日井らしくサボテン型の紙帽子をかぶり、製紙会社のPRソングを全力で歌いながら、手動で紙吹雪を撒くことになった。


美月はサボテン帽子をかぶって叫ぶ。


「なんでウチがサボテン頭やねん!」


あかりは意外と楽しんでいる。


「これはこれで目立つな!」


真白は淡々と紙吹雪を撒く。


「仕事だと思えばできます」


三人が紙吹雪を撒きながら歌うと、会場は大爆笑だった。


真央は腹を抱えて笑う。


「美月さん、似合っとるでよ!」


美月は悔しそうに返す。


「覚えとけよ、巻き髪チーム!」


イベントの最後、美月が突然マイクを握った。


「みんなー! 帰りに戦隊ヒロイングッズ買っていってな~!」


真央が驚く。


「美月さん、急にどうしたんですか?」


美月は真顔で言った。


「ウチ、けちのんとインセンティブ契約してん」


「インセンティブ?」


「グッズ売上ノルマ達成したら、帰りの名阪特急が“ひのとり”のプレミアム席になるねん」


真央は妙に感心した。


「インセンティブつけるとは、助っ人外国人の野球選手みたいだがね」


美月は畳みかける。


「タオルでもアクスタでも缶バッジでもええ! ウチの快適な帰路のために買うてな!」


この正直すぎる呼びかけが、なぜか観客に刺さった。


「美月ちゃんをプレミアム席に乗せよう!」


「紙帽子がんばったしな!」


「真白ちゃんのツインテール写真ある?」


グッズ売り場は盛況となり、売上は見事にノルマを突破。


美月の鶴橋までの復路は、無事に“ひのとり”プレミアム席となった。


配信で見ていた遥室長は、呆れたように笑った。


「くだらない……ノムさんとこのヒロヒロと一緒だら」


だが、その表情は明らかに楽しそうだった。


紙の街・春日井で開かれた、トイレットペーパー早巻きと紙飛行機とサボテン帽子のイベント。


くだらない。

しかし本気。

そして、地元の産業もきちんと伝わった。


ヒロ室東海(仮称)は、また少しだけ形になった。


そして美月は帰りの特急で、プレミアム席に深く座りながら呟いた。


「紙って、ええなぁ」


目的は完全に快適な帰路だったが、春日井のイベントは確かに成功したのである。

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