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死神3

蔵井戸は1911がスライドする音を聞き横を見た。

そこには右手の人差し指を左の耳に突っ込んでいるという妙な姿勢をしている後藤がいた。

そして左手にはハンドガンが握られておりそれは顔を机に伏せている瑠衣の後頭部を指していた。

「え・・・?」

後藤は何をしようとしているのか?蔵井戸がそれを理解する寸前に後藤は引き金を引いた。

1911の銃声が密室を満たし、それは蔵井戸の聴覚をオーバーフローさせ、思考がスローになる。

瑠衣の顔面が机に叩きつけられてゆっくりと跳ね返り、再び机に落ちるとそれ以上は微動だにせず瑠衣の顔の下から赤い血が広がり始めた。

瑠衣が机に顔面を打ち付けた為に鼻血を流したのだと思ったがそれはゆっくりと机に広がり続けていく。


瑠衣の後頭部に撃ち込まれた弾丸は一瞬で脳組織を完全に破壊しその衝撃波は人体の骨の中でも最も脆い骨の一つである篩骨をも砕いた。

篩骨とは脳頭蓋と眼窩や鼻腔を隔てている四角い骨だ。ふるいという字が示すように視神経と嗅覚神経が通るための穴が無数に空いているために形状は複雑で非常にもろい。

もちろん、外部からこの骨に直接的に力を加えることは難しいが、脳頭蓋内部に打ち込まれ破片となった弾丸の衝撃波にすら耐えられず鼻孔との仕切りが無くなると、そこから血液と十分に混ぜられた脳髄が鼻腔を通じ前鼻孔、つまりは鼻の穴から流れ出したのだ。

「るい・・・?」

蔵井戸がそう呟き、そして達しビクッと腰を二度、三度震わせた。

瑠衣の鼻から溢れ出る血液は机全体へと広がり端から流れ落ち始めた。

「なんだお前、肛門に突っ込んでんのかよ。やっぱり屑だな」

蔵井戸は射精した刺激で腰をすくめながらも後藤を見た。

「てめえ!!!」

蔵井戸の叫び声は後藤の手にした1911のグリップがこめかみに叩きつけられた衝撃と、同時に暴発した発砲音が脳を満たし再び思考がスローになり、丸出しのケツが氷のように冷たい床に付いたことにすら反応できなかった。

脳を満たす銃声を振り払うかのように首を振り、こめかみの痛みを感じたところで作業場のドアが開いた。銃声に驚いた岸が飛び込んできた。

「何やってんだ!」

後藤は銃を蔵井戸に向けたまま振り返らない。

「これ・・・は・・。なん・・・で?」

女が突っ伏したままの机から血が流れ落ちていることに対してなのか、それとも・・・。

「この屑を殺す。同意しろよ」

後藤は蔵井戸に銃を向けたまま岸に言った。

「先輩!!」

剥き出しの尻が冷たかったのか丸出しのペニスをしまおうとしたのかは分からないが、立ち上がろうとする蔵井戸を後藤は蹴り飛ばす。

「立つ必要なんてねえだろ」


どうせ死ぬんだからな。

「いいな、殺すぞ」

「お前、なんでここに・・?」

「それは同意したってことでいいのか?」

後藤は引き金から指を外し、やっと岸に振り返った。

「頼む!待ってくれ!これは!?なんだよ!待ってくれ!」

岸は蔵井戸に寄り添うと手を貸し、立たせた。

そしてジーンズをズリ下げられた女の死体と下半身丸出しの蔵井戸を見た。

「お前、まさか」

蔵井戸はさすがに岸の顔を見ることは出来なかったのか、顔を逸らしズボンを上げる。

岸と後藤の二人は蔵井戸がズボンを履くのを黙って見ている。

蔵井戸がズボンを履き終えると後藤が銃を向け直す。

「まあそうだな、尻の穴に突っ込んだちんぽを触りたくはねえな。よし、いいだろ?」

後藤は岸を見つめてもう一度確認する。

「いいな?」

だが岸は後藤に手を向けて言う。

「待ってくれ!!」

岸が蔵井戸を庇うような素振りを見せた為か、それとも単に馬鹿なだけなのか蔵井戸が口を挟んできた。

「さっきからなんだテメエ!撃てもしねえくせに!撃ってみろよ!」

後藤は驚いた様子で蔵井戸を見て、そして岸を見た。

そして蔵井戸に笑みを向けた。


岸が咄嗟に蔵井戸を突き飛ばすのと後藤が引き金を引いたのはほとんど同時だったが、銃弾は二人の間を貫きコンクリートの壁をほんの少し削った。

「な?なにしやがる・・・?」

三発目の銃声は何か撃てない理由があるのだろうと踏んで強気に出た蔵井戸の心をへし折った。

「なにしやがるって、そりゃあ殺すんだよ」

「なん・・で?」

「なんでってそりゃあ、多数決ってやつか?俺はお前を殺したい。でもこいつは殺さないでくれって言うし、お前はまあ死にたくないんだろ?でも撃ってみろって言うなら・・・・。そりゃあ殺すだろ?なあ?いいんだよな?」

後藤がもう一度確認するように岸に顔を向けると、岸はまた床に座る蔵井戸に歩み寄った。だが今度は立たせようとするわけではなく蔵井戸の頭を掴んで無理やり押し下げた。

「バカやろう!謝れ!」


それを見た後藤は歯を食いしばり静かに目を閉じた。

そしてゆっくりと目を開け岸を見ると呆れて大きく息を吐いた。

「岸・・」

名前を呼ばれた岸はビクッと身体を震わせ顔を上げて後藤を見た。

だが唇を嚙み見下ろしてくる後藤と視線を交わすことを避けるように蔵井戸ともに頭を下げた。

「頼む!許してやってくれ!!」

後藤は銃を右手に持ち替え、蔵井戸へと向けた。

「一度、許したぞ」

重く、低い口調で後藤が告げる。

「頼む!ほら!お前も謝れ!!!」

岸が蔵井戸の頭を掴んで揺さぶり、蔵井戸が口を開きかけるが後藤は遮った。

「口を開いたら殺すぞ」

その重い口調は誰が聞いても脅しではないと分かるだろう、蔵井戸は何も言わなかった。


そのまま後藤は頭を下げる二人を数分の間、見下ろしてから引き金を引いた。四度目の銃声が作業場に鳴り響いた。そして後藤は言った。

「失せろ」

二人は顔を上げた。そして後藤は告げる。

「次はない。5秒以内に失せろ」

蔵井戸はその言葉を理解できなかったが、即座に理解した岸は蔵井戸を立たせた。

「行け!」そう言って蔵井戸を作業場から押し出した。


「すまない・・」岸は振り返りながら言ったが後藤はそれには答えずに銃のマガジンを抜き薬室の弾丸を抜くとマガジンに装填し直した。

「なんでここに?って言ったのはあのクズに対してか?それともオレにか?」

「それは・・いや・・」

後藤はマガジンを抜き、薬室に装填されてもいない銃を岸へと向けて言った。

「あのクズがこれを手にしたらお前を撃つぞ」


後藤はドア脇の机の引き出しに銃とマガジンを入れ閉じた。

岸は小さく首を振ってはいたがそれは否定ではなく、認めたくないわけでもなく理解したくなかっただけだろう。

「すまない・・・」岸はそう、もう一度言い作業場から出て行った。















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