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魔人4

花藤は歩き去るスーツ姿の男の背を見ていた。

そして耐えきれなくなり噴き出すように笑った。

人目を気にすることも無く大きく口を開いて笑い続ける。

周りを行く人たちは花藤に目を向けながらも眉を顰め花藤から距離を取ろうとするが、スーツの男は振り返ることも無く歩き去って行く。

おいおい!気にしないのかよ?そこの路地裏で仲間が死んでいるんだぜ?

喉に鶏の骨を詰まらせて!

花藤は大声で笑い続ける。


腹痛てぇ。

花藤は両手を腰に当て落ち着こうとするが笑いは止まらない。

幽霊として過ごした五年を笑い吐き出すかのように。

笑いが落ち着きかけるが先ほど殺した男を思い出すとまた笑いが噴き出してくる。

死んだぜ、あいつ・・・。


あいつは三途の川かどっかできっとこう聞かれるだろうよ。

お前はなんで死んだんだ?ってさ。

そうなったらこう答えるよな。

鶏の骨を喉の詰まらせて・・って。

なんだお前は唐揚げを食ってて死んだのか?

いえ、その骨は誰か別の奴の残飯で・・・。

なんだ?お前は残飯を漁っていて死んだのか?

イヤそうではなくて・・・。

ワケが分からない!お前のような馬鹿は地獄いきだ!!


どこからかビリーアイリッシュのバッドガイが聞こえてきた。

それは路駐し窓を全開にしている車からだった。

女でも待っているのだろうか?アホそうな男が電子煙草を咥えているが、この曲は好きだ。


シャツに血が付いた

でも俺の血じゃない

首に縄を掛けられたお前は必死に爪先を伸ばし立っているんだから

お前はクソ野郎だからな

俺はお前の前で膝をつく

何も言わなくていい

お前を殺すだけなんだから

俺の気持ち?


花藤は笑い続け出てきた涙を拭いながら歩き続ける。

死んだぜ。

死んじゃったよ!

ふう・・・。面白ぇよな。

ああ、クソ!あんまり面白くてコーラ置いてきちまったぜ。

花藤は歩き続けた。


左右を見渡し目的地に着いたことを確認した花藤はコンビニへと入りペットボトルのコーラとライターを買い求めた。

コーラは缶の方が美味いんだがな。

花藤は周囲を見渡しながらペットボトルのキャップを外しコーラを呷ってからタバコを咥え火を点けた。

ここで田中が・・・。

自分から乗り込んだ。拉致されたわけではない。

マツダのCX3の赤。

マツダ車の赤はオプションだ。

色は赤がいいなぁと選んだだけで5万以上を支払う必要がある。

車を買ってやるってのに色を選ぶだけで金を払えなんてアホみたいだが、マツダ好きはそんなアホが多いんだろう。赤いマツダ車は実に多い。

ナンバーも分からねえし赤いマツダ車がレアだったとしても意味はねえけど・・。

花藤はコンビニの防犯カメラも確認していた。

車に乗り込む田中が映っていた可能性はあるが、データはとっくに上書きされているだろうし仮に残っていたとしてもコンビニのバイト店員の指をへし折ってデータを出させるわけにもいかない。

ここに来ても意味はない。

ここに来たのはそれを確認するためだ。


まあ、明日の1700までは暇だしな。

花藤は煙草を吹かしながら周りを見ていたがコンビニの向かいのマンションから大きな箱を押しながら二人の男が出てきた。年齢は30代半ばといったところだろう。一人は180と少しでもう一人は170くらいか。

箱は巨大なクーラーボックスと言った感じでそれを二人でトラックの荷台に積み込もうとしている。

なんだ?

花藤は煙草をプッと吐き捨て踏み消すと二人に近寄って行った。


「重そうだな手伝おうか?」

二人の男の小柄な方がビクッとして花藤を見た。

もう一人の男が「大丈夫だ」と首を振った。

花藤が見ている前で二人の男はトラックにクーラーボックスを積み終えた。

「随分重そうだったな、中身はなんだ?」

もう一人の方が答える。

「さあな、オレ達は運ぶだけだしな」

「中身も知らずに運ぶのか?」

「そりゃあなぁ、宅配便のドライバーが中身を気にするか?この中身がぎっしり詰まった札束かティッシュペーパーかを選べるならオレはティッシュを選ぶぜ」

花藤は鼻で笑って煙草を取り出した。

「火を貸してくれないか?」

「いいぜ、少し待ってくれ」

二人の男はトラックの荷台を閉めてから、もう一人の方が運転席の中に手を伸ばした。

「ライターは無いんでな」

そう言って真っ赤に焼けたシガーソケットを花藤へと向けた。

花藤は煙草に火を点け一服してから二人にラッキーストライクを差し出した。

「いるか?」

男は花藤の差し出した煙草を見てから首を振りポケットからクールブーストを取り出し花藤に差し出した。

「いるか?メンソールだけどな」

「いや、いい。ありがとう」

「ライターくらい買えよ」

男はコンビニを顎で指し示しトラックに乗って走り去って行った。


あの二人はただの配達員ではないだろう。

小柄な方が異常に周囲を警戒していた。

もう一人の方も・・・人ではないのは確かだろうが、よく分からない。

なぜだ?

なぜだか分からないがあの二人が人ではないことは分かる。

小柄の方は過剰なほどに周囲を警戒していることでそれと分かった。

もう一人は実にめんどくさそうに荷物を運ぶ運転手といった感じだった。俺が近寄っても警戒するそぶりは見せなかったし、シガーソケットを差し出す様も普通だった。

だが分かる。

あの二人は人ではないと。

花藤は煙草を吹かし勢いよくコーラを飲んだ。


そうか。

あと二、三人殺せばもっとよく分かるのかもしれないな。

俺もお前らのようになればいいってことだな。


花藤は煙草を吐き捨て、再び歩き出した。


















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