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第89話 3年後の春 - 変わりゆく町

3年後 春 祢古町 朝7時


桜が満開の朝、美久は猫カフェの前で深呼吸をした。


3年前、ユイと出会った頃には想像もできなかった風景が、目の前に広がっている。


通りでは、人間のサラリーマンと猫人間の会社員が、一緒に通勤している。


「おはようございます、美久さん」


猫人間の会社員、リュウが挨拶する。紺のスーツに、尻尾用の穴。もうすっかり見慣れた光景だ。


「おはようございます。今日も早いですね」


「ええ、今日は大事なプレゼンがあるんです」


「頑張ってください」


3年で、町は大きく変わった。


いや、正確には「偽りの平和」から「真の共生」へと変わったのだ。


美久は、猫カフェ2号店の準備を進めていた。


場所は、地下街への入り口近く。元は寂れた雑貨屋だった建物を改装している。


「地下の人たちも、気軽に来られるように」


設計図を見ながら、ミユキと相談する。


ミユキは、この3年で店長代理にまで成長した。


「ここに、猫用の通路を作りましょう」


「高さの違う席も必要ですね」


「子供用、大人用、そして猫人間用」


二人は、もうすっかり仕事のパートナーだった。


「美久さん」


ミユキが少し改まった口調で言う。


「3年前、初めてこの店に入った時のこと、覚えてます」


「もちろん」


「震えてましたよね、私」


「でも、美久さんが普通に接してくれて」


「田中さんも優しくて」


ミユキの目に、涙が浮かぶ。


「あの日から、私の人生は変わりました」


「大げさよ」


美久が照れくさそうに言う。


「でも、私も変わった」


「ユイちゃんと出会って、みんなと出会って」


「本当の意味で、生きている実感がある」

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