第87話 新たな出会いと小さな奇跡
ある雨の日 猫カフェ「ねこまち」 午後4時
激しい雨が、窓を叩いている。
店内には客が少なく、静かな午後だった。
突然、ドアが勢いよく開いた。
「すみません!」
飛び込んできたのは、ずぶ濡れの少女だった。
10歳くらい、ランドセルを背負っている。
顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
「どうしたの?」
美久が駆け寄る。
「迷子になっちゃった...」
「お母さんとはぐれて...」
「雨で...何も見えなくて...」
しゃくりあげながら話す少女。
美久は、すぐにタオルを持ってきた。
「大丈夫よ、ゆっくりでいいから」
優しく髪を拭いてあげる。
「お名前は?」
「さ、斉藤あいり...」
「あいりちゃんね。何年生?」
「4年生...」
ユイが、あいりの前に現れた。
そっと膝の上に乗る。
「大丈夫、ここは安全だよ」
小さな温もりに、あいりの泣き声が少し収まった。
「猫さん...」
「私はユイ。よろしくね」
ユイが話しかけると、あいりの目が丸くなった。
「えっ...猫さんが喋った!」
驚きで、涙が止まった。
「うん、ここは特別な猫カフェなの」
「すごい...」
恐怖から驚きに変わり、少し落ち着いてきた。
その時、店にミユキが入ってきた。
「美久さん、外であいりちゃんのお母さんが探してましたよ」
「あいりー!どこー!」って」
「本当?」
美久がすぐに外を確認する。
確かに、傘を差した女性が、必死に娘を探していた。
「あいりちゃん、お母さんが来たよ」
「ママ!」
あいりが店を飛び出す。
「あいり!」
母親が娘を抱きしめる。
雨の中、親子が再会した。
「心配したのよ」
「ごめんなさい...」
美久が傘を差しかける。
「中でお茶でも飲んでいきませんか?」
「雨も強いですし」
親子が店に入る。
母親は、最初ミユキを見て驚いたが、すぐに状況を理解した。
「あの、ありがとうございました」
深々と頭を下げる。
「いえいえ、無事で何よりです」
温かいココアを出す。
あいりは、すっかり元気を取り戻していた。
「ママ、ここすごいよ!」
「猫さんが喋るし、猫の耳がある人もいるの!」
母親は、最初戸惑ったが、美久の説明を聞いて納得した。
「そうなんですね」
「祢古町、テレビで見たことあります」
「共生特区でしたっけ」
「はい、まだ始まったばかりですが」
親子がココアを飲みながら、猫たちと遊ぶ。
あいりは、特にユイがお気に入りのようだった。
「ユイちゃん、また来てもいい?」
「もちろん、いつでも歓迎よ」
1時間後、雨が止んだ。
「本当にありがとうございました」
母親が改めてお礼を言う。
「また、落ち着いたら伺います」
「娘が、とても気に入ったみたいで」
「いつでもお待ちしています」
親子が帰った後、美久が微笑んだ。
「小さな出会いが、また一つ」
ユイが頷く。
「きっと、また来てくれますよ」
「あいりちゃん、いい子でしたから」




