第86話 それぞれの成長と変化
3ヶ月後 猫カフェ「ねこまち」 午後2時
初夏の日差しが、カフェの窓から差し込んでいる。
店内は、いつものように穏やかな時間が流れていた。
美久は、カウンターでコーヒーを淹れている。
3ヶ月で、彼女の技術はさらに向上した。
「今日のブレンドは、少し酸味を抑えめにしました」
常連客に説明する姿は、もうすっかりプロのバリスタだ。
ユイは、いつもの窓辺で日向ぼっこをしながら、時々翻訳の仕事をこなしている。
「このお客さん、実は犬が苦手みたいです」
「席を変えましょうか」
細やかな気配りで、全ての客が心地よく過ごせる空間を作る。
ルナは、週末だけ店を手伝うようになった。
「月光プリン、お待たせしました」
銀色に輝く不思議なプリンは、店の名物になっている。
「これ、本当に美味しいのよね」
田中さんが満足そうに食べる。
「魔法の力かしら?」
「いえ、愛情です」
ルナが照れくさそうに答える。
翔太も、常連客として頻繁に訪れる。
「今日の配信、ここでやってもいい?」
「もちろん」
最近の配信タイトルは『猫カフェで過ごす午後』。
特別なことは何もない。
ただ、コーヒーを飲みながら、猫と戯れ、時々常連客と話す。
それだけで、視聴者は満足してくれる。
『平和だなぁ』
『こういう日常、いいね』
『猫カフェ行きたくなった』
『祢古町、いつか訪れたい』
穏やかなコメントが流れる。
ミユキは、正式に店員として雇われた。
エプロン姿が板につき、接客も上手になった。
「いらっしゃいませ」
明るい声で客を迎える。
3ヶ月前の、おどおどしていた姿はもうない。
「ミユキさん、今日も可愛いね」
常連客に褒められて、嬉しそうに耳を動かす。
「ありがとうございます」
新しい猫も増えた。
捨て猫だった子猫を保護し、「ホープ」と名付けた。
小さな白黒の子猫は、すぐに店のアイドルになった。
「ホープちゃん、おいで」
客の膝の上で、ゴロゴロと喉を鳴らす。
店の雰囲気は、さらに温かくなっていた。




