第83話 地下街の段階的な開放
地下の猫人間街 夕方5時
地下への階段に、新しい手すりと照明が設置されていた。
もう暗くて危険な道ではない。明るく、安全な通路になっている。
クロード長老が、集まった住民たちに説明していた。
場所は地下の中央広場。100人以上の猫人間が集まっている。老人から子供まで、様々な年齢層の猫人間たち。
「今日から、地上への移動が自由になります」
クロードの声が、広場に響く。
「ただし、いくつかルールがあります」
彼は黒板に書かれた内容を示した。
1.最初の1ヶ月は、日中のみの外出
2.必ず身分証明書を携帯
3.トラブルがあったら、すぐに連絡
4.地上の法律を守る
5.急激な変化は避ける
「慣れ親しんだ地下を、完全に捨てる必要はありません」
「地上で働いて、地下で暮らす」
「それでもいいんです」
「大切なのは、選択肢があることです」
年配の猫人間、トモじいさんが手を挙げた。
「わしらは、もう地下でええ」
「でも、若い者が地上で活躍できるなら、それは嬉しいことじゃ」
隣に座るハナばあさんも頷く。
「50年前、地上から逃げてきた時は、もう二度と太陽を見られないと思った」
「でも、孫が堂々と地上を歩ける日が来るなんて」
涙を拭いながら話す。
若い世代の代表、ミユキが報告する。
「私、今日地上のパン屋さんで、バイトの面接を受けてきました」
「そして...受かりました!」
歓声と拍手が起こる。
「おめでとう!」
「よかったにゃ~」
別の若者、ケンも続く。
「俺は、建設会社の面接を受ける予定です」
「力仕事なら、自信があります」
ハナが付け加える。
「私は、美久さんの猫カフェで働くことになりました」
「料理の腕を活かせるって」
少しずつ、でも確実に、地下と地上の壁が低くなっていく。
クロード長老が最後に言った。
「300年以上、我々は隠れて生きてきました」
「でも、もうその必要はありません」
「これからは、堂々と生きていけます」
「ただし、焦りは禁物です」
「一歩一歩、確実に進みましょう」
地下の街にも、電気が完全に通った。
もう松明やろうそくの明かりではない。
明るい電灯が、通りを照らしている。
水道も整備され、清潔な水が使えるようになった。
「地下も、住みやすくなったな」
住民の一人が呟く。
「地上との行き来が自由なら、ここも悪くない」
「静かで、落ち着くし」
それぞれが、それぞれの生き方を選べる。
それが、新しい祢古町の形だった。




