第78話 翔太の新たな決意
祢古町 中央広場 午後
騒動から数時間後、四人は広場のベンチで休んでいた。
体のあちこちに包帯が巻かれ、疲労困憊だが、表情は晴れやかだ。
翔太のスマートフォンが、ようやく電波を捉えた。
ピコン、ピコン、ピコン...
通知が大量に届く。
『翔太くん、大丈夫?』
『3日間行方不明って、心配したよ』
『配信待ってる』
『何があったの?』
視聴者からのメッセージだった。
しかし、翔太の反応は以前とは違っていた。
「数字じゃない...」
翔太が呟く。スマートフォンの画面を、愛おしそうに見つめる。
「この人たちは、本当に僕を心配してくれてた」
翔太がカメラを構えた。
3日ぶりの配信。しかし、もう以前の翔太ではない。
「みんな、ただいま」
カメラに向かって、心からの笑顔を見せる。
「すごい体験をしてきました」
「でも、一番の収穫は...本当の仲間ができたことです」
カメラを美久、ユイ、ルナに向ける。
「この人たちが、命をかけて僕を救ってくれました」
「承認欲求の化物だった僕を」
「だから、これからは違う配信をします」
「数字じゃなくて、心を大切にする配信を」
コメント欄に温かいメッセージが流れる。
『おかえり、翔太』
『新しい翔太も応援するよ』
『本当の仲間、よかったね』
『何があったか分からないけど、成長したね』
視聴者数は以前より少ない。
20万人から、15万人に減っている。
でも、翔太は心から笑顔になれた。
「これでいいんだ」
「本当に大切なものが、やっと分かった」
美久が優しく言う。
「翔太さん、あなたも私たちの大切な仲間です」
ユイが付け加える。
「一緒に頑張りましょう」
ルナも頷く。
「あなたの勇気に、救われました」
翔太が涙ぐむ。
「みんな...ありがとう」
「生まれて初めて、本当の居場所ができた」
四人は手を取り合った。
夕陽が、四人を金色に染める。
新しい絆が、ここに生まれた。
エピローグ:新たな日常へ
1週間後 祢古町
町は少しずつ、日常を取り戻していた。
魂喰いの環の影響で失われた記憶も、完全に回復した。
陥没穴は埋め立てられ、その上に慰霊碑が建てられた。
『1000年の悲劇を忘れず、未来への希望を紡ぐ』
碑には、そう刻まれている。
翔太は祢古町に留まることを決めた。
「ここが、僕の新しいスタート地点です」
配信スタイルも変わった。
数字を追うのではなく、人と人との繋がりを大切にする配信。
登録者数は減ったが、コメントの質が変わった。
温かく、深い繋がりを感じるコメントが増えた。
「これが、本当の『承認』なんだな」
翔太が満足そうに呟く。
美久、ユイ、ルナ、そして翔太。
四人の絆は、これからも続いていく。
新しい日常の中で、新しい物語を紡ぎながら。




