第63話 美久とルナの恐怖体験
地下施設 別区画
美久とルナは、恐ろしい部屋を発見していた。
壁一面に並んだ培養槽。その中には、精神体となった人間たちが浮かんでいる。
緑色の液体に満たされた槽の中で、人々は目を開けたまま、永遠の苦痛の表情を浮かべている。
槽には、それぞれラベルが貼られていた。
『田中一郎:1724年収穫:画家の挫折』
『山田花子:1856年収穫:失恋の痛み』
『鈴木太郎:1945年収穫:戦争の恐怖』
『佐々木梅:1985年収穫:子を失った悲しみ』
「これは...」
美久が息を呑む。口を手で覆い、吐き気を抑える。
「300年以上も、人間の絶望を収穫し続けていたなんて」
ルナが月の魔法で、培養槽の一つに触れた。
すると、中の人物の記憶が流れ込んできた。
『助けて...出して...』
『300年...ずっと意識がある...』
『死ぬこともできない...』
ルナが手を離し、震えた。
「彼らは...まだ生きています」
「意識を保ったまま、永遠に苦しんでいる」
そして、最新のカプセルには——
『藤原翔太:本日収穫予定:承認欲求の崩壊』
「藤原翔太...これが助けを求めていた人?」
ルナが確認する。
「急がないと、収穫されてしまう」
その時、部屋の奥から声が響いた。
それは、機械的でありながら、どこか有機的な、不気味な声だった。
『ようこそ、陽の巫女、月の王女』
闇の中から、恐ろしい存在が姿を現した。
無数の触手を持ち、その一本一本に目がついている。体の中心には巨大な口があり、その中には渦巻く闇が見える。
『私はコレクター。この魂喰いの環の管理者』
『君たちも、素晴らしい素材になるだろう』
『特に、陽の巫女の希望と、月の王女の孤独』
『1000年ものの、極上の味がするはずだ』
美久とルナは、戦闘態勢を取った。
しかし、コレクターの気配は圧倒的だった。
1000年分の絶望と飢餓が、実体化したような存在。




