第62話 地下施設の発見と分断
地下施設入り口
三人は翔太の声を辿って、町の中央にある巨大な建物の廃墟に到着した。
かつては市役所だったらしい建物で、正面玄関は崩れ落ちている。しかし、地下へ続く階段が、不気味に口を開けていた。
「ここから、さっきの声が聞こえます」
ユイが階段を指差す。
階段は真っ暗で、底が見えない。壁は湿っていて、ヌルヌルとした何かが付着している。異臭が立ち込め、息をするのも苦痛だ。
「気をつけて」
美久がアミュレットの光で道を照らしながら、慎重に降りていく。
しかし、地下に降りた瞬間、罠が発動した。
床が突然崩れ、三人はバラバラに分断されてしまった。
ガラガラガラ!
瓦礫が崩れ、埃が舞い上がる。
「美久さん!ルナちゃん!」
ユイが叫ぶが、返事はない。代わりに聞こえてきたのは、子供たちの笑い声。
『わかれた わかれた』
『ひとりずつ たべられる』
『たのしい たのしい』
ユイは一人、暗い通路に取り残された。
小さな猫の体で、巨大な地下施設を進まなければならない。恐怖で体が震えるが、翔太を助けるという使命が、彼女を前に進ませる。
一方、美久とルナは別の区画に落ちていた。
瓦礫の山に埋もれ、体のあちこちに擦り傷ができている。
「ユイちゃんとはぐれてしまいましたね」
ルナが月の魔法で周囲を探る。しかし、邪気が濃すぎて、ユイの居場所が分からない。
「でも、きっと大丈夫」
美久が信じる。アミュレットを握りしめ、ユイの無事を祈る。
「あの子は強い。必ず、助けを求めている人を見つけてくれる」
「私たちも、別のルートから中心部を目指しましょう」
二人は、それぞれの道を進み始めた。
地下施設 ユイ側
ユイは暗い通路を進みながら、翻訳能力を最大限に拡張していた。
小さな体を震わせながら、必死に翔太の心の声を探る。
『どこ...どこにいるの...』
壁は冷たく、湿っている。天井からは水滴が落ち、ユイの黒い毛を濡らす。足元は滑りやすく、何度も転びそうになる。
すると、より強い絶望の波動を感じた。
それは、上の階から伝わってくる。
『もうダメだ...誰も来ない...』
『承認欲求に負けて...こんなところで死ぬなんて...』
『せめて、最後の配信ができれば...』
「見つけた!」
ユイは階段を見つけ、必死に駆け上がった。
小さな足で、一段一段を懸命に登る。息が切れ、心臓が破裂しそうなほど鼓動する。
そして、全力で心の声を送った。
『聞こえますか!私はユイ!』
『あなたは一人じゃない!必ず助けます!』
『もう少しだけ、生きる希望を持って!』
翔太の意識に、ユイの声が届いた。
今度ははっきりと、確実に。
『本当に...誰かいるの?』
『はい!私は猫の姿をしていますが、元は人間です』
『美久さんとルナさんと一緒に来ました』
『もう少しだけ、頑張ってください』
翔太の心に、希望が芽生えた。
『猫...?信じられないけど...』
『でも、この声は確かに聞こえる...』
『ありがとう...もう少しだけ...頑張るよ...』
ユイは翔太の居場所を特定した。
廃校舎の3階、理科室。
そこまで、あと少し。
しかし、道のりは危険に満ちていた。




