第61話 翔太の発見(廃校舎にて)
廃校舎 3階 理科室
一方、藤原翔太は廃校舎の教室で、絶望の淵にいた。
3日前、都市伝説の取材でこの町に迷い込んだ。祢古町の噂を聞きつけ、「誰も知らない秘密の町」として、YouTube配信のネタにしようと思ったのだ。
チャンネル登録者数20万人。それなりに有名な配信者だった。しかし、その承認欲求が、彼を地獄に導いた。
理科室の机に突っ伏し、もう動く気力もない。喉はカラカラに渇き、唇は割れて血が滲んでいる。胃は激しく痛み、手足の感覚も薄れてきている。
手元には、見つけた子供の日記。古いノートで、ページは黄ばんでいる。
そこには、恐ろしいことが書かれていた。
『ゴーストハンターおじさんへ』
『きみは、ぼくたちの ごはん』
『さいごまで にげてね』
『そのほうが おいしいから』
『3かめに なったら』
『たべごろ だよ』
今日がちょうど3日目だった。
「俺は...ここで死ぬのか...」
翔太は絶望していた。涙も枯れ果て、もう泣くこともできない。
「20万人の登録者...夢だったのに...」
「有名になりたかった...認められたかった...」
「でも、こんな終わり方...」
スマートフォンは電池切れ。最後の配信もできない。誰にも、この恐怖を伝えることができない。
その時、翔太の心に温かい声が響いた。
それは、頭の中に直接響く、不思議な声だった。
『聞こえますか...助けを求めている方...』
「誰...?」
声は幻聴かもしれない。でも、確かに聞こえる。
『私はユイ。あなたを助けに来ました』
『諦めないで。必ず助けます』
翔太の目に涙が浮かんだ。今度は、希望の涙だった。
「本当に...誰かいるの?」
『はい!私たちは三人で来ています』
『美久さんとルナさんと一緒です』
『もう少しだけ、頑張ってください』
翔太の心に、小さな希望の火が灯った。
「分かった...もう少しだけ...頑張る...」
立ち上がる気力はないが、せめて意識を保とうと努力する。
しかし、教室の外から、子供たちの歌声が聞こえてきた。
『もうすぐ ごはんの じかん』
『フジワラおじさん おいしそう』
『3かめ たべごろ』
翔太は震えた。
もう、時間がない。




