第60話 子供たちとの最初の遭遇
廃墟の路地裏
狭い路地裏を進んでいると、突然子供たちが現れた。
10人ほどの子供たち。年齢は5歳から12歳くらい。しかし、その目は全員、飢餓に満ちていた。瞳孔が開き、緑色に光っている。服はボロボロで、肌は青白い。
「あ、新しいごはんだ」
先頭の男の子が言った。声は無邪気だが、その裏に潜む飢餓感が恐ろしい。
「美味しそう」
「特にあの猫、いい匂いがする」
「ひさしぶりの、ごちそうだね」
子供たちが、じりじりと距離を詰めてくる。手には錆びたナイフや、折れた瓶を持っている。
ユイが震えた。
子供たちの心の声は、純粋な飢餓感に満ちている。罪悪感も、良心の呵責もない。ただ、食べたいという欲求だけ。
しかし、その奥底に、微かに人間性の欠片が残っているのも感じた。
『さみしい...』
『おかあさん...どこ...』
『いつになったら...かえれるの...』
「みんな、話を聞いて」
美久が優しく語りかけるが、子供たちは聞く耳を持たない。
「ごはん、ごはん」
「早く食べたい」
「もう、がまんできない」
リーダー格の少年が前に出た。10歳くらいの男の子で、他の子供たちよりも理性的な光が瞳に宿っている。
「僕は周平。300年前からここにいるんだ」
「300年...」
美久が息を呑む。
「新しいごはんが来るの、久しぶりだね」
「前に来た人は、すぐに食べちゃったから」
「でも、君たちは違う。特別な匂いがする」
周平の瞳が、一瞬人間らしい色を取り戻した。
「ねえ、お姉ちゃんたち」
「逃げた方がいいよ」
「ここにいると、僕たちみたいになっちゃう」
しかし、すぐに飢餓の色に戻る。
「でも、逃がさない」
「だって、お腹すいてるんだもん」
子供たちが一斉に襲いかかってきた。
三人は必死に逃げながら、別の道を探した。
子供たちは追ってこなかった。まるで、獲物を追い詰める遊びを楽しんでいるかのように、後ろで笑い声を上げている。
『にげて にげて』
『でも つかまえる』
『たのしい たのしい』




