第59話 廃墟の町の恐怖と翔太の声
真の祢古町 メインストリート
崩れかけた商店街を進む三人。かつては賑わっていたであろう通りも、今は死の街と化している。
店のショーウィンドウは全て割れ、中には埃を被った商品が散乱している。マネキンが不自然なポーズで倒れ、その顔は溶けて歪んでいる。道路にはひび割れが走り、所々に深い穴が開いている。
建物の影から、緑色に光る無数の瞳がこちらを見つめている。
ユイの翻訳能力が、彼らの心の声を拾う。
『新しいのが来た』
『陽の巫女...極上の味がするだろう』
『月の巫女も...なかなか』
『小さい猫も、デザートにちょうどいい』
『1000年ぶりの、ごちそうだ』
「みんな、私たちを完全に『食材』として見ています」
ユイが警告する。小さな体が恐怖で震えている。
その時、ユイの翻訳能力が、遠くから微かな心の声を感じ取った。
それは、廃墟の住人たちとは明らかに違う、現代人の心の声だった。
『助けて...誰か...助けて...』
『もう3日も...食べ物も水もない...』
『誰か...お願い...』
『死にたくない...まだ死にたくない...』
「誰かが助けを求めています!」
ユイが声の方向を探る。耳をピクピクと動かし、集中する。
「とても弱っています。急がないと...」
声は断続的で、意識が朦朧としているのが分かる。
「でも、罠かもしれません」
ルナが警戒する。月の魔法で周囲を探査するが、あまりにも邪気が濃すぎて、詳細が分からない。
「いえ、この絶望は本物です」
ユイが断言する。
「純粋な人間の恐怖と絶望...そして、微かな希望」
「生きたいという、必死の願い」
美久が決断した。
「助けに行きましょう」
「誰も見捨てない。それが私たちの使命です」
三人は声の方向へ向かって進み始めた。
しかし、その道のりは困難を極めた。




