第53話 住民たちの集団パニック
同時刻 地上の祢古町
地上では、住民たちがパニックに陥っていた。
ハーモニー・コアが崩壊し、抑えられていた感情が一気に爆発したのだ。
「私の記憶が!大切な思い出が消えてる!」
佐藤会長が頭を抱えて叫ぶ。
「息子の名前も、妻の顔も思い出せない!」
山田さんは泣き崩れている。
「私の人生が...空っぽになってる...」
さらに悪いことに、地面から不気味な声が聞こえ始めた。
地面の至る所から、まるで地下に巨大なスピーカーがあるかのように。
『もうすぐ ごはんの じかん』
『みんな おいしそう』
『とくに こどもが おいしそう』
子供たちが怯えて泣き叫ぶ。
「怖い!地面から声がする!」
「お腹すいたって言ってる!」
「食べられちゃうの?」
クロード町長が必死に住民を落ち着かせようとする。
「皆さん、落ち着いて!」
「美久様たちが、きっと解決してくれます!」
しかし、住民たちの恐怖は収まらなかった。
一部の住民は、町から逃げ出そうとする。
しかし、町の境界に見えない壁があり、出ることができない。
「閉じ込められた!」
「もう終わりだ!」
絶望が町を覆っていく。
そして、その絶望の感情もまた、地下へと吸い込まれていく。
黒田大佐が、自衛隊に緊急連絡を取る。
「至急、増援を!」
「祢古町で、異常事態が発生している!」
しかし、通信は途中で途切れた。
「くそっ...電波が...」
町全体が、外界から遮断されていた。




