第49話 ナイルの告白と真実
同日午後 神社 本殿
ナイルが三人を呼び出した。
昨日の祭りから、彼の様相は一変していた。銀色だった髪は白く色褪せ、紫の瞳は濁り、頬はこけている。まるで、一晩で10歳も老けたかのよう。
彼の顔は青白く、瞳には恐怖が宿っていた。体は小刻みに震え、冷や汗が止まらない。
「私は...とんでもないことをしてしまった」
声も掠れていて、以前の凛とした響きは失われている。
「どういうことですか?」
美久が問い詰める。アミュレットが不安そうに明滅している。
「ハーモニー・コアは、確かに私が作り出した」
ナイルは震える手で、空中に虹色の光を描いてみせる。しかし、その光は不安定で、すぐに霧散してしまう。
「でも、それが何か別のものに利用されている」
「いや、最初から罠だったのかもしれない」
ナイルが震える手で地面を指差した。
そこには、昨夜よりもはっきりとした文字が刻まれていた。土が盛り上がり、まるで下から何かが押し上げたかのように文字を形作っている。
『もっと たべさせて』
『まだ おなかすいてる』
『1000ねん まってた』
『ナイルおじさん やくめ おわり』
最後の一文を見て、ナイルは崩れ落ちた。
「私は...ただの道具だった」
「1000年前から仕組まれていた、餌を集めるための...」
美久が息を呑んだ。
「1000年前...」
「まさか、1000年前の戦争の時から?」
ナイルが頷いた。涙が頬を伝い落ちる。
「私の前世、虚無の神も、実は操られていたのかもしれない」
「戦争を起こし、負の感情を生み出し、それを『何か』に捧げるために」
ルナが震え声で尋ねる。
「その『何か』とは?」
「私の力は、もっと古い『何か』を目覚めさせてしまったようです」
ナイルは立ち上がり、神社の古い絵馬を指差した。
1000年前の絵馬には、恐ろしい絵が描かれていた。
巨大な口が、人々の感情を吸い込んでいる絵。そして、その口の奥には、無数の子供の顔が描かれている。
「人々の感情を調整した時、それが下へ下へと流れていく」
「まるで、地下に巨大な『胃袋』があるように」
ユイが小さく震えた。
「コレクター...」
「いいえ」
ナイルが首を振る。
「コレクターは、もっと大きな存在の一部に過ぎなかった」
「『魂喰いの環』という、もっと恐ろしいシステムの...」




