第44話 夜の散策で見つけた不気味な落書き
祭りの1週間前 深夜の祢古町
三人は、最終確認のため夜の町を歩いていた。
提灯の明かりが道を照らし、春の夜風が心地よい。桜のつぼみも、もうすぐ咲きそうなほど膨らんでいる。
「飾り付けも順調ね」
美久が提灯を見上げる。赤、青、黄色の提灯が、商店街を彩っている。
「でも、なんだか町が静かすぎません?」
ルナが違和感を口にする。
普通なら、祭りの前は準備で賑わっているはずなのに、人通りがほとんどない。家々の窓から漏れる明かりも、どこか弱々しい。
その時、ユイが立ち止まった。
「あれ...」
古い塀に、子供の落書きがあった。
クレヨンで描かれた、カラフルだが不気味な絵。
『ごはん おいしかった』
『また たべたい』
『もっと もっと』
そして、絵も描かれていた。
大きな口が、虹色の何かを吸い込んでいる絵。その虹色は、ナイルのハーモニー・コアにそっくりだった。
「子供の落書きかな?」
美久が覗き込むが、ユイは違うと感じていた。
この文字から感じる「飢え」は、普通の空腹ではない。
もっと深い、底なしの飢餓感。1000年分の飢えが、凝縮されているような。
「この下に...何かある」
ユイが地面を指差した。
確かに、よく見ると地面に古い扉の跡があった。錆びた金属の取っ手が、土に埋もれている。
「地下への入り口?」
美久がアミュレットをかざすと、微かに反応した。
「でも、今は開かないみたい」
ルナが月の魔法で調べたが、強力な封印がかけられていた。
「1000年前の封印です」
「でも、少しずつ弱まっている」
「まるで、何かが内側から押し開けようとしているみたい」
三人は顔を見合わせた。
「急いで祭りを成功させないと」
「第三の試練をクリアすれば、きっと...」
でも、不安は消えなかった。




