第35話 第二の試練 - 人間の子供たちとの交流
第二の試練当日 祢古町 廃校になった小学校
第二の試練の本番は、地元の子供たちとの交流だった。
廃校の体育館に、机と椅子が並べられている。壁には、子供たちが描いた絵が貼られていた。猫の絵、虹の絵、家族の絵。
「子供たちなら、偏見なく受け入れてくれるはずです」
ユイの提案で、秘密の交流会が開かれた。
参加したのは、田中さんの孫を含む10人の小学生。年齢は6歳から12歳まで。みんな、キラキラした目で入ってきた。
「本当に、猫がしゃべるの?」
7歳の女の子、ミサキが興奮気味に尋ねる。
「うん!見て!」
ユイが前に出た。黒い毛並みを整え、金色の瞳を輝かせる。
「こんにちは、みんな」
「わあ!本当だ!」
子供たちの歓声が響く。
「かわいい!」
「触ってもいい?」
「もちろん」
ユイは子供たちに囲まれた。小さな手が、優しく黒い毛を撫でる。
「ふわふわ〜」
「あったかい」
ニャンコタウンから来た子猫たちも、人間の子供たちと打ち解け始めた。
チビタが男の子と追いかけっこを始める。
「待て〜!」
「捕まえてみろ〜!」
言葉は違っても、遊びは同じ。笑い声が体育館に響く。
しかし、一人だけ、隅で黙っている男の子がいた。
10歳のタケシ。暗い表情で、みんなを見ている。
ユイが近づいた。
「どうしたの?」
「...別に」
でも、ユイの翻訳能力が、タケシの心の声を聞いていた。
『猫なんて嫌いだ』
『去年、飼ってた猫が死んじゃった』
『もう、動物なんて好きになりたくない』
『また別れるのが怖い』
「タケシくん、猫を飼ってたんだね」
タケシが驚いて顔を上げた。
「なんで分かるの?」
「心の声が聞こえたの」
「去年、大切な猫ちゃんを亡くしたんだね」
タケシの目に涙が浮かんだ。
「ミーちゃん...病気で...」
「僕が もっとちゃんと世話してれば...」
「それは、タケシくんのせいじゃないよ」
ユイが優しく言った。
「ミーちゃんは、タケシくんと過ごせて幸せだったはず」
「最後まで、愛されていたんだから」
タケシが泣き始めた。一年間、誰にも言えなかった悲しみが溢れ出す。
「ミーちゃん...ごめんね...」
「大好きだったよ...」
ユイはそっと、タケシに寄り添った。
「ミーちゃんも、天国でタケシくんのこと見守ってるよ」
「本当?」
「うん。そして、タケシくんがまた笑顔になることを願ってる」
タケシが、ゆっくりとユイを撫でた。
「ありがとう...」
「また、猫と友達になってもいいかな」
「もちろん」
その光景を見ていた美久が、涙を拭いた。
「これが、私たちが目指す未来です」
田中さんも頷く。
「子供たちには、偏見がない」
「純粋に、心で繋がれる」
交流会は大成功だった。
子供たちと猫たちが、一緒に歌を歌い、ゲームをして、お菓子を食べる。
言葉や種族の違いを超えて、心が一つになった瞬間だった。




