第32話 政府調査班の接近
一方、祢古町の外では...
同日夕方 祢古町外周部
迷彩服を着た特殊部隊が、森の中を静かに進んでいた。
「アルファ小隊、こちらベース。現在位置を報告せよ」
無線機から指令が響く。
「こちらアルファ。目標地点まで、あと5キロ」
隊長の佐々木三佐が、低い声で応答する。元陸上自衛隊のレンジャー部隊出身で、数々の特殊任務を成功させてきた歴戦の軍人だった。
「電磁波の発生源は、この先です」
観測班の若い隊員が、計器を見ながら報告する。
「反応が異常に強い。通常の1000倍以上です」
「慎重に行け。何が待っているか分からん」
佐々木の言葉通り、隊員たちは慎重に前進した。
しかし、祢古町に近づくにつれ、異変が起き始めた。
「隊長、GPSが狂ってます」
「方位磁針も回転してる」
「電子機器が次々と故障していきます」
祢古町の結界が、彼らの接近を阻んでいた。1000年前から存在する、強力な魔法の結界。科学技術では突破できない、神秘の壁。
「なんだ、これは...」
佐々木が困惑する。
目の前の空間が、歪んで見える。まるで、水の中を通して見ているような、不自然な屈折。
そして、どこからか声が聞こえてきた。
『ここから先へは、来るな』
『平和を乱す者は、去れ』
女性の声だった。威厳があり、古めかしい響きを持っている。
「誰だ!姿を見せろ!」
佐々木が叫ぶが、返事はない。
代わりに、霧が立ち込め始めた。濃い霧が視界を遮り、隊員たちは互いの姿さえ見失いそうになる。
「くそっ...一旦、撤退だ」
「全員、撤退!」
隊員たちは慌てて引き返した。
しかし、佐々木の心には、強い興味が残った。
(あの声は...人間じゃない)
(まさか、本当に異世界が...)




