第30話 美久の勇気ある告白
同日夕方 猫カフェ「ねこまち」
閉店後のカフェは、夕陽に染まって金色に輝いていた。テーブルの上には、お茶とお菓子が用意されている。
美久は、最も信頼できる常連客の田中さんを呼んでいた。60代の優しい女性で、毎日のようにカフェに通ってくる。猫たちからも慕われている、心優しい人だった。
「田中さん、実は大切なお話があります」
美久は震える声で切り出した。手のひらには汗が滲み、心臓が早鐘を打っている。
「なあに?美久ちゃん」
田中さんが優しく微笑む。皺の刻まれた顔に、慈愛の表情が浮かんでいる。
「何でも聞くわよ」
「私...普通の人間じゃないんです」
美久は意を決して、アミュレットを見せた。古代の紋様が刻まれた銀のアミュレット。それが急に光り始める。
「これは、1000年前から受け継がれた、陽の巫女の証です」
「陽の巫女?」
田中さんが首を傾げる。
美久は深呼吸をして、アミュレットの力を少しだけ解放した。
金色の光が美久を包み、彼女の姿が変化する。髪が光り輝き、瞳が金色に染まる。そして一瞬、背後に巨大な太陽の幻影が現れた。1000年前の陽の巫女ミクの姿が、現代の美久に重なって見える。
部屋の中の植物が一斉に花を咲かせ、時計が逆回りを始め、空間そのものが震える。
「まあ...」
田中さんは驚いたが、恐れる様子はなかった。むしろ、感動したような表情を浮かべている。
「美久ちゃん、あなたって特別な子だと思っていたけど...」
「こんなに美しい力を持っていたのね」
「怖くないですか?」
美久が不安そうに尋ねる。
「どうして?」
田中さんが優しく美久の手を取った。温かい手のひらが、美久の震えを止める。
「あなたは、いつも優しい美久ちゃんでしょう?」
「特別な力を持っていても、それは変わらない」
「むしろ、そんな秘密を打ち明けてくれて嬉しいわ」
その時、ユイが現れた。小さな黒猫の姿で、窓から飛び込んでくる。
「美久さん、大丈夫ですか?」
人間の言葉を話す猫を見て、田中さんは一瞬驚いた。
「きゃあ!猫がしゃべった!」
でも、すぐに目を輝かせた。
「まあ、可愛い!あなたがユイちゃんね?」
「は、はい...」
ユイも田中さんの反応に戸惑った。
「美久ちゃんから聞いたことがあるわ」
「特別な友達がいるって」
田中さんは膝をついて、ユイと目線を合わせた。
「初めまして、ユイちゃん」
「私は田中よ。よろしくね」
その自然な受け入れ方に、ユイは感動した。
「田中さん...ありがとうございます」
「実は、もっとお話があるんです」
美久が続ける。
「この世界には、人間だけじゃなく、猫族という存在もいて...」
「そして今、三つの世界が統合されようとしています」
田中さんは真剣に聞いていた。時折頷きながら、理解しようと努めている。
「それで、私に何かできることがあるの?」
「はい。他の人たちにも、少しずつ理解してもらいたいんです」
「平和的に、世界を繋げるために」
田中さんは微笑んだ。
「もちろん、協力するわ」
「私の友達にも、きっと理解してくれる人がいるはずよ」




