第28話 政府機関による異変察知
第一の試練完了の翌日 東京・防衛省特殊現象対策室 午前6時
地下3階にある特殊現象対策室は、24時間体制で日本全土の異常現象を監視していた。
薄暗い部屋の中、無数のモニターが青白い光を放っている。壁一面に並んだ画面には、日本各地の電磁波データ、気象情報、そして市民からの通報内容がリアルタイムで表示されていた。コーヒーの匂いと、機械の低い唸り声が室内に充満している。
「報告します。昨夜22時47分、群馬県北部で大規模な電磁波異常を観測しました」
若い分析官の田村が、徹夜明けで充血した目をこすりながら報告する。手にはプリントアウトされたデータの束。グラフには、通常の1000倍を超える電磁波のスパイクが記録されていた。
「規模は?」
室長の黒田大佐が、椅子から立ち上がった。50代の元自衛官で、鋭い眼光の持ち主。これまで数々の異常現象に対処してきた経験から、今回の事態が尋常ではないことを直感していた。
「半径10キロメートルに影響。しかし、奇妙なことに...」
「奇妙なこと?」
「電子機器への影響が、ほとんど報告されていません」
田村がモニターを指差す。
「通常なら、これだけの電磁波なら停電や通信障害が起きるはずですが」
「まるで、物理法則を無視しているような...」
黒田の眉間に深い皺が刻まれた。
「場所は?」
「祢古町という小さな町です。ただ...」
田村が困惑した表情を見せる。
「ただ?」
「この町、公式な地図には載っていません」
「国土地理院のデータベースにも、住民基本台帳にも記録がない」
「まるで、存在しない町のようです」
室内の空気が一変した。他の分析官たちも、自分の作業を止めて振り返る。
「詳しく調べろ。必要なら、現地調査班を派遣する」
黒田が命令を下す。
「それと、過去の記録を洗い直せ」
「同様の現象が起きていないか、徹底的に調査しろ」
副官の山田が、古いファイルを持ってきた。
「室長、これを見てください」
「1000年前の文献に、似たような記述があります」
黄ばんだ和紙に、古文で書かれた文章。
『祢古の地にて、天地鳴動す。人と獣の境界崩れ、魂喰らう者現る』
黒田の顔が青ざめた。
「魂喰らう者...」
「まさか、都市伝説じゃなかったのか」




