第24話 ルナの過去と心の傷 - 孤独な王女の真実
ルナの過去と心の傷 - 孤独な王女の真実
王宮庭園 その夜
月明かりが庭園を銀色に染めていた。白い花が月光を受けて、幻想的に輝いている。噴水の水音だけが、静寂を破っていた。
ユイは一人でルナを訪ねた。
月明かりの下、ルナは一人で座っていた。その姿は、昼間の強気な態度とは違い、とても寂しそうだった。銀髪が風に揺れ、青い瞳には涙が光っている。
「ルナさん」
「...何しに来たの」
ルナは顔を背けた。涙を見られたくないようだった。
「お話がしたくて」
ユイが隣に座ると、ルナは身を硬くした。
「私には話すことなんて...」
「1000年前のこと、聞かせてもらえませんか?」
ルナの肩が震えた。
長い沈黙の後、ルナが口を開いた。震える声で、堰を切ったように話し始める。
「私には、姉がいました」
「姉?」
「ユリ姉様...あなたの前世です」
ユイの心臓が跳ねた。
「私は、ユリ姉様が大好きでした」
ルナの声に、深い愛情が込められていた。
「優しくて、強くて、いつも私を守ってくれて...」
「人間と猫族のハーフだったから、どちらの世界でも疎外されていたけど」
「それでも、いつも笑顔で、みんなを愛していた」
「私にとって、姉様だけが家族でした」
ルナの目から涙があふれる。
「でも、戦争であの人は...私を庇って...」
涙がルナの頬を伝った。月光が涙を銀色に輝かせる。
「最後の戦いで、人間の魔導師が私を狙って禁呪を放った」
「姉様は、自分の体で私を守って...」
「『ルナ、生きて』って言いながら...」
「私が弱かったから。私に力がなかったから、姉様は死んでしまった」
ルナの声が慟哭に変わった。
「それから1000年、私は修行を続けました」
「もう二度と、大切な人を失わないために」
「でも、いくら強くなっても、姉様は戻ってこない...」
「孤独に耐えることが強さだと教え込まれた」
「でも、本当は...」
「誰かと一緒にいたかった」
「誰かに優しくしてほしかった」
「姉様のように、誰かに愛されたかった」
ユイは、そっとルナの手を取った。小さな前足で、震える手を包み込む。
「ルナさん、私はユリ王女の記憶は持っていません」
「でも、一つだけ分かることがあります」
「何?」
「ユリ王女は、あなたを守れて幸せだったと思います」
「大切な妹を守れたんですから」
「最後まで、あなたを愛していたはずです」
ルナの目から、大粒の涙がこぼれた。
「それに」
ユイは優しく続けた。
「私、ルナさんの姉になりたいです」
「血は繋がってないけど、心で繋がる姉妹に」
「前世の記憶はないけど、今のルナさんが大好きです」
「強がりで、寂しがりで、でも本当は優しいルナさんが」
「ユイ...さん...」
「ユイでいいですよ、ルナちゃん」
その瞬間、ルナの心の壁が崩れた。
1000年間の孤独と悲しみが、ユイの優しさに溶けていく。
「ユイ姉様...」
ルナがユイに抱きついた。小さな猫の体を、震えながら抱きしめる。
「ごめんなさい...ひどいこと言って...」
「偽物なんて言って、ごめんなさい...」
「本当は、最初に会った時から感じてた」
「姉様と同じ、優しい魂を持ってるって」
「でも、認めるのが怖かった」
「また失うのが怖かった」
「いいんです。家族なんですから」
ユイが優しく言った。
「これからは、一人じゃありません」
「美久さんも、私も、ずっと一緒です」
月明かりの下、二人の新しい絆が生まれた。




