第23話 月の巫女ルナとの出会い
王宮修行場 3日後
美久とユイは、王宮で修行を始めて3日目を迎えていた。陽の力と王家の力を高めるための特訓。朝から晩まで、魔法の制御と身体能力の向上に励んでいた。
その日の午後、新たな来訪者があった。
「ルナ王女がお帰りになりました!」
衛兵の声が響き渡る。
王宮の門が開き、一人の人影が入ってきた。
銀髪に青い瞳、そして背中に小さな翼を持つ美しい猫人間だった。身長は160センチほどで、人間と猫の特徴を併せ持っている。銀色のドレスを纏い、額には月の紋章が輝いていた。
その所作は完璧だった。王族としての品格、流暢な古代語、そして強力な月の魔法力。一挙手一投足に、長年の修行の成果が現れている。
「父上、ただいま戻りました」
シロウ皇帝に優雅に跪く。
「ルナ、長い修行の旅、ご苦労だった」
「はい。北の氷原で、月の魔法の奥義を習得してまいりました」
しかし、ルナがユイを見た時、その表情が一変した。青い瞳に、明らかな警戒心が宿る。
「あなたが...転生者ですか」
その声には、明らかな敵意が含まれていた。冷たい風が吹いたように、場の空気が凍りつく。
「はい、ユイといいます。よろしくお願いします」
ユイが挨拶すると、ルナは冷たく言い放った。
「転生者に、真の王家の血は流れていません」
「偽物が、なぜここにいるのです?」
「ルナ!」
皇帝が叱責するが、ルナは引かない。
「でも、この紋章は...」
ユイが首の紋章を示す。
「紋章だけでは証明になりません」
ルナが手をかざすと、銀色の光がユイを包んだ。月の魔法の中でも、特に強力な術。
「月光審判...あなたの真の姿を見せなさい」
光の中で、ユイの姿が揺らいだ。一瞬、人間だった頃の佐藤ユイの姿が重なって見える。孤独な女子高生の姿が。
「やはり...ただの人間じゃないですか」
ルナの声には失望が滲んでいた。
「私は1000年間、王国のために修行してきました」
「生まれてすぐに、たった一人で北の氷原に送られました」
「『王国の最後の希望』として、誰にも頼ることを許されず」
「孤独に耐え、厳しい修行を続けてきました」
ルナの声に、深い孤独が滲んでいた。
「その間、あなたは何をしていたのです?」
「のうのうと人間界で暮らしていただけでしょう?」
「私は...」
ユイが言葉に詰まった時、美久が前に出た。
「ルナちゃん、ちょっと待って」
「陽の巫女...いえ、ミク様」
ルナの態度が少し和らいだ。陽の巫女に対しては、敬意を持っているようだった。
「あなたまで、この偽物を庇うのですか?」
「偽物じゃないわ。ユイちゃんは—」
その時、ユイの翻訳能力が、ルナの心の声を拾った。
『怖い...また失うのが怖い...』
『信じて裏切られるのが怖い...』
『300年間、たった一人で修行してきた』
『誰も味方がいなかった』
『寒くて、寂しくて、辛かった』
『でも、それが王女の運命だと言われた』
『力とは孤独に耐えて得るもの』
『仲間なんて、弱者の慰めに過ぎない』
『でも本当は...』
『ユイたちのように、仲間と協力する姿が羨ましい』
「ルナさん」
ユイが静かに言った。
「あなた、本当は怖いんですね。また大切な人を失うのが」
ルナの顔が青ざめた。体が小刻みに震え始める。
「な、何を...」
「300年間、一人で修行していたんですね」
「寒くて、寂しくて、でも誰にも頼れなかった」
「どうして...私の心が...」
ルナの膝が震えて、崩れ落ちそうになった。




