第21話 古代猫王国への道
同日午後 音無神社地下
音無神社の本殿の奥に、隠し階段があった。美久のアミュレットが導くように光を放ち、道を示している。
地下への階段は、思っていたより深く続いていた。壁には古代文字が刻まれ、ところどころに猫の彫刻が施されている。空気はひんやりとしていて、どこか神聖な雰囲気が漂っていた。
「これは...」
階段を下りきると、巨大な石の扉があった。高さは5メートルはあろうかという巨大な扉。古代文字で覆われたその扉は、まさに異世界への入り口だった。
扉の中央には警告文が刻まれている。
『これより先、古代猫王国への道』 『陽と月、二つの力なくして開かれず』 『覚悟なき者は引き返すべし』
そして、扉の隅に小さく不吉な文字が刻まれていた。
『絶望を蒐集する影あり』 『コレクターの名において』
美久が震えた。
「これって...」
「コレクターの警告...いや、署名みたいなものでしょうか」
ユイが不安そうに言った。
その時、地下通路に足音が響いた。
「お待ちしておりました」
現れたのは、黒い毛並みの威厳ある老猫だった。金色の瞳が、暗闇の中で光っている。
「クロード長老!」
ユイが驚いて声を上げた。
「ユイ殿、お久しぶりです。そして美久様も」
クロードは優雅に頭を下げた。
「私は、ニャンコタウンと祢古町、そして古代猫王国を行き来している、数少ない存在です」
「クロードさん、この扉を開けることはできますか?」
美久が尋ねると、クロードは頷いた。
「できます。ただし、条件があります」
「条件?」
「陽の巫女の力と、王家の血筋。この二つが揃わなければ、扉は開きません」
美久とユイは顔を見合わせた。
「私たちなら...」
「はい、開けられます」
クロードが説明を続ける。
「しかし、警告しておきます」
「扉の向こうは、1000年間封印されていた世界」
「何が待っているか分かりません」
「そして、コレクターの影響が残っているかもしれません」
二人は覚悟を決めて、扉に手をかけた。美久は人間の手で、ユイは小さな前足で。
扉に触れた瞬間、激しい光が二人を包んだ。美久のアミュレットと、ユイの首の紋章が共鳴し、古代文字が金色に輝き始めた。
ゴゴゴゴ...
重い音を立てて、扉がゆっくりと開いていく。1000年ぶりに開く扉。軋む音が、地下通路全体に響き渡る。
向こう側から、暖かい光が差し込んできた。それは太陽の光のようで、月の光のようでもある、不思議な輝き。
「行きましょう」
美久が決意を込めて言った。
「1000年前にできなかったことを、今度こそ成し遂げるために」




