第20話 美久の前世記憶と1000年前の真実
翌日 祢古町 音無神社 午前10時
美久とユイは、朝早くから祢古町に向かっていた。美久の運転する軽自動車は、山道を慎重に進んでいく。ユイは助手席のカゴの中で、外の景色を眺めていた。
「ユイちゃん、実は私...」
美久が意を決して話し始めた。ハンドルを握る手が、少し震えている。
「最近、前世の記憶が蘇ってきているの」
「前世の?」
「1000年前、私は『陽の巫女ミク』という名前でした」
美久の手首のアミュレットが、記憶と共鳴するように脈動する。金色の光が車内を優しく照らす。
「陽の巫女は、太陽の力を借りて、世界の調和を保つ役目を担っていました」
「すごい...」
「そして、親友がいました。猫族の王女、ユリちゃん」
「ユリ王女...」
その名前を聞いた瞬間、ユイの首元の紋章が、急に温かくなった。まるで、その名前に反応しているかのように、金色の光を放ち始める。
「ユリちゃんは、人間と猫族のハーフでした。両方の血を引く、唯一の存在」
美久の声が震えた。過去の記憶が、走馬灯のように蘇ってくるようだった。
「私たちは、三つの世界を平和に繋ごうとしていました」
「でも、戦争が起きてしまった。人間と猫族の間で...」
美久は車を道路脇に停めた。これ以上運転を続けられないほど、感情が高ぶっていた。
「原因は些細なことでした。領土争い、資源の奪い合い、そして互いへの恐怖」
「人間は猫族の魔法を恐れ、猫族は人間の数と技術を恐れた」
「そして、ユリちゃんは私を守って...」
涙が美久の頬を伝った。1000年前の記憶が、昨日のことのように鮮明に蘇る。
「最後の戦いで、ユリちゃんは自分の命を犠牲にして、封印を作った」
「三つの世界を分離させて、これ以上の犠牲を防ぐために」
「でも、その時...」
美久の声が途切れた。
「コレクターが現れたんです」
「戦争で生まれた膨大な負の感情を食べて、恐ろしい存在に成長した」
「ユリちゃんは、コレクターも一緒に封印しようとしたけど...」
「完全には封印できなかった」
ユイは優しく美久の手に前足を乗せた。小さな肉球の温もりが、美久の心を少し落ち着かせる。
「美久さん、それは美久さんのせいじゃありません」
「でも...私が もっと強ければ...」
「過去は変えられません。でも、今なら違う未来を作れます」
ユイの言葉に、美久は顔を上げた。涙で濡れた顔に、小さな希望の光が宿る。
「そうね...今度こそ、平和な世界を作りましょう」
「そして、コレクターの脅威も終わらせましょう」




