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ただの魔法使いですが、推しのアイドル騎士様に執着されています。  作者: 湊一桜
第一章

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絶対零度の青狼、スタニスラス騎士団長

 今日は休店日。つまり、仕事が休みだ。私は趣味で仕事をしているようなものだから、休みといっても困る。知り合いもいないから、することがないのだ。


 (お兄は魔術師団だし、アリスさんは遠くへ出かけているし。

 スタンは……


 あれ?スタンって何の仕事をしているんだろう)


 スタンと友達になったとはいえ、スタンのことを何も知らないことに気付いた。


 (いつもカフェに来てくれるから、休みの時くらいスタンの職場に顔を出したいのになぁ)


 そんなわけで、スタンに会えるかと期待しつつ店を回る。だが、広大なニーズの街でスタンの職場に巡り合うことなんて不可能に近かった。

 それでも、僻地で暮らしていた私にとって、首都の街は魅力的だった。店はどれも都会的で洒落ていて、店自体が魔法のようにさえ思えた。


 (うわー、この髪飾り可愛い)


 (この服も可愛い!)


 (あっ、これスタンに似合いそう。いつも来てくれるお礼に買ってあげようかなぁ)


 気付けば、スタンのことばかり考えている私。キラキラのビーズで出来た青いブローチを手に取っていた。


 (スタンのことを考えるのも無理ないよね。

 だって知り合いがいないんだもん)


 会計を済ませて店を出た時だった。





「ねぇーッ!! あそこにいるの、青狼のスタニスラス様じゃない!? 」


「えーッ、マジで!? 」


 女性の甲高い声が聞こえた。スタニスラス様、その名前に即座に反応した私は、彼女たちの指さすほうを見た。すると、少し離れたところに数人の騎士が立っている。そして、遠巻きに騎士たちを取り囲んで、ぐるっとギャラリーの輪が出来ているのだ。


 私はギャラリーの一番後ろから彼を見た。銀色の髪を輝かせてブルーグレーの騎士服を着た彼は、騎士たちとともにこちらへ歩いてくる。遠くから見てもその凜とした佇まいに痺れてしまう。


 (ど、どうしよう!スタニスラス様がこっちへ来る)


 狼狽える私と、歩く騎士たち。そして大名行列のように、そのあとにぞろぞろとギャラリーが続く。私だってファンとしてあのギャラリーに混ざりたいが、どう考えても勤務の邪魔だ。


 (推しの仕事を邪魔するのは良くないよね。

 私は良識あるファンでいたいから)


 スタニスラスが近付くと、必死で叫ぶギャラリー。


 (でも、やみくもに声をかけるのは、ファンとしてマナー違反だわ)


 そう思ってぐっと黙った。


 推し活をしている時、隙あれば推しに近付こうとしているファンもいた。だが、大抵嫌われるのが関の山だ。

 私はスタニスラスに認知されたいとも思っていないし、ひっそりと応援するのがファンの鏡だろう。



 スタニスラスたちがゆっくり近付いてくる。彼が近付くにつれ、その美貌が明らかになる。銀色の髪の先は、微かに青みがかかっている。白い透き通るような肌に、すらりとした上品な鼻筋。きゅっと結ばれた口元。その瞳は伏目がちで、明らかにギャラリーを迷惑がっている。だが、スタニスラスほどのアイドルは、ギャラリーに苦言も言わないのだろう。


 私は微かに違和感を感じた。


 (彼……どこかで見たことがあるような……)


 だが、すぐに解決に至る。


 (あぁ、そうだ!夢の中で見たんだ。

 推しの夢を見るのは当たり前だもんね)




 ぼーっと彼に見入っていると、ふと彼が顔を上げた。そして視線がぶつかる。


「!? 」


 飛び上がりそうな勢いの私。そして彼はなんと、少し驚いたようにこちらを見ているのだ。


 (えーーッ!? )


 動揺する私の後ろから、きゃあああっと悲鳴が上がる。


「スタニスラス様、こっち見てるわよ!」


「やだぁぁあッ!目が合っちゃったぁぁ!!」


 それで私は思い出した。


 (アイドルと目が合うのは錯覚よ。

 誰もが皆、推しが自分を見ていると勘違いしてしまうのだから)


 だから、スタニスラスが私なんかを見るはずがない。と思う。実際、彼らはそのまますたすたと行ってしまったのだから。




 スタニスラスたちが去った後も、ファンたちは彼の話に花を咲かせる。

 クールだとか、笑わないだとか。声援を送ったら嫌な顔をされただとか。


 (だってあの反応、嫌がってそうじゃん。

 しつこい声かけは失礼に当たるんだよね)


 だけどそんなことは言えるはずもなく、ただ黙ってスタニスラスの噂話を聞く。そして聞けば聞くほど、彼は異次元の人だと思い知る。


 (かっこいいから、目の保養として応援するのが一番だよね)


 むしろ、今世でお菓子を贈ったりするのはやめようと思う。前世、推しにメディアの前で「やめてくれ」と宣言されたのも覚えているから。スタニスラスが私の手料理を食べてくれるはず、ないのだから。





 それから私は、しばらく楽しく店巡りをした。店巡りをしながら考えた。


 (この街って、アイドルショップとかはないんだね。

 スリースターズのアイドルショップがあったら、絶対に行くのになあ)



いつも読んでくださって、ありがとうございます!

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